80年代B級SFホラー映画傑作(?)選
PART 1

 

 

エクストロ
Xtro (1983)
日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P) New Line/Image (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/83分/製作:イギリス・アメリカ

映像特典
未公開エンディング
削除シーン
ダヴェンポート監督インタビュー
スチル・ギャラリー
オリジナル劇場予告編
監督:ハリー・ブロムリー・ダヴェンポート
製作:マーク・フォーステイター
製作総指揮:ロバート・シェイ
脚本:ロバート・スミス
    イアン・キャシー
撮影:ジョン・メトカーフ
特殊メイク:ロビン・グランサム
音楽:ハリー・ブロムリー・ダヴェンポート
出演:バーニス・スティガース
    フィリップ・セイヤー
    ダニー・ブレイニン
    マリアム・ダボ
    サイモン・ナッシュ
    ピーター・マンデル
    デヴィッド・カーディ
    アンナ・ウィング

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トニーの父親サム(P・セイヤー)はUFOにさらわれた

悪夢に悩まされる少年トニー(S・ナッシュ)

 リドリー・スコット監督の『エイリアン』(79年)の大ヒットで、80年代には数多くのSFホラー映画が誕生した。H・R・ギーガーの手掛けた醜悪なエイリアンのクリーチャー・デザインは映画界に多大な影響を及ぼし、実に様々なタイプの地球外モンスターがスクリーンの中を暴れまわることに。
 中でもB級映画の世界では『エイリアン』の二番煎じ・三番煎じが大流行したわけだが、SFXにお金をかけることができないため、なかなか宇宙を舞台にすることもままならない。そもそも、宇宙船や惑星のセットを組むだけでも大層な予算がかかってしまう。そんな時は、エイリアン様に地球へいらっしゃって頂いた方が、商売として大変に好都合だった。
 そんな事情もあってか(って、あくまでも憶測だけど)、80年代のB級SFホラーはエイリアンやモンスターが地球へやって来る作品が圧倒的に多い。もちろん、この『エクストロ』も例外ではない。ただ、そのあまりにもシュールでファンタジックなストーリー展開と、独創的なクリーチャー・デザインにおいて、本作は当時のB級SFホラー映画の中でも特にユニークで興味深い作品に仕上がっている。
 ストーリーの基本コンセプトは『エイリアン』と『未知との遭遇』。3年前エイリアンによって連れ去られた父親がひょっこりと戻り、最愛の息子をエイリアンの仲間にして連れ帰ってしまうというもの。実にシンプルで他愛ないプロットなのだが、その語り口が何とも不条理で奇妙で変わっている。資金を出したのはアメリカのニュー・ライン・シネマだが、映画そのものはイギリスでの製作。その不思議と心地よい後味の悪さも含めて、ハリウッドでは決して作ることの出来ないビザールなSFホラーと言えるだろう。

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息子トニーの心理状態を心配する母レイチェル(B・スティガース)

地球に降り立ったエイリアン

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エイリアンは付近に住む女性をレイプする

女性の子宮から出てきたのは行方不明のサムだった

 幼い少年トニー(サイモン・ナッシュ)は、大好きな父親サム(フィリップ・セイヤー)と別荘の庭で遊んでいた。すると、いきなり空が真っ暗となり、近づいてきた巨大な光によって父親が連れ去られてしまう。それ以来、トニーはたびたび悪夢に悩まされていた。
 夫のサムが突然失踪してから3年。トニーの母親レイチェル(バーニス・スティガース)は、女手1つで息子を育ててきた。現在はファッション・フォトグラファーの恋人ジョー(ダニー・ブレイニン)が同居しており、夫に捨てられたという心の傷も癒えつつあった。しかし、息子はトラウマから未だに父親がエイリアンにさらわれたと信じ込んでいる様子で、彼女はそれが不憫でならなかった。
 ある晩、郊外の森に空から隕石らしきものが飛来する。それは爬虫類のような姿をした不気味なエイリアンだった。エイリアンは付近の民家に住む女性をレイプする。急速に肥大していく女性の腹部から姿を現したのは、なんとトニーの父親サムだった。
 ベビー・シッターのアナリース(マリアム・ダボ)に連れられて小学校へと向うトニー。その後姿をサムがじっと見つめている。恋人ジョーの職場を訪れたレイチェルは、その帰り道にトニーを迎えに小学校へ立ち寄る。ところが、トニーは姿を消してしまっていた。慌てて付近を捜すレイチェルの前に、トニーを連れたサムが姿を見せた。
 レイチェルは怒りを爆発させてサムを平手打ちにする。そんな彼女に、サムは記憶喪失であったことを告白した。偶然トニーを見かけたことから、記憶が蘇ったのだと。戸惑いながらも夫を家に連れ帰るレイチェル。恋人ジョーを交えた奇妙な共同生活が始まった。
 ある日、トニーは父親サムがペットの蛇が生んだ卵を貪り食おうとしている現場を目撃する。恐ろしくなって逃げ出したトニーに、父親が語って聞かせる。自分は別世界に行っていたのだと。その世界で生きるために体も変わってしまった。そして、お前とお母さんを一緒に連れて行くために戻ってきたのだと。
 父親の言葉を理解したトニーに、サムは異星人の体液を注入する。やがて、トニーは不思議な超能力を身に付けるようになるのだが、彼はそれを悪用するようになった。周囲で起きる不可解な出来事に恐怖と戸惑いを隠せないレイチェル。彼女には別世界での暮らしは不可能だと判断したサムは、今やエイリアンと化したトニーを連れて地球を去ろうとするのだが・・・。

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3年ぶりに帰って来たサムの目的とは・・・

怪しげな行動を取るようになるサム

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サムは息子の体に自分の体液を注入する

恋人ジョー(D・ブレイニン)と気まずくなるレイチェル

 そもそもSF映画において、地球に来訪するエイリアンというのは侵略型か友好型の2パターンに分かれるわけだが、本作はそのどちらでもないというのが面白い。エイリアンに拉致された父親が、家族も一緒に連れて行くために戻ってくるのである。異星の生活に順応するため体質が変わってしまった父親は、改めて女性の子宮から“生まれる”ことによって人間の姿を取り戻す。しかし、あくまでも人間の皮を被っているだけで、体質そのものはエイリアンのまま。自分の体液を注入することにより息子も同化させていく・・・という発想自体も非常にユニークだった。2人が共にクリーチャー化して光に包まれていくシーンなどは、予想外に感動的ですらある。
 また、父親に体液を注入されることで不思議な能力を身に付けたトニーが、ペットの蛇を殺した老婆に復讐をするシーンも印象的だった。大切にしているG・I・ジョーを巨大化させるのである。SFXなどは一切使わず、仮面を被った人間がG・I・ジョーを演じているのだが、パントマイムよろしく動き回るアナログなイメージが妙にシュールで楽しい。また、冒頭とクライマックスに登場するエイリアンのいびつなクリーチャー・デザインも非常に良く出来ている。
 監督のハリー・ブロンブリー・ダヴェンポートは脚本家出身で、本作が2本目の演出作品。続編の『エイリアン・ウォーズ』(91年)と『シークレット・ファイル/接・近・遭・遇』(95年)は内容的に1作目とは全く無関係の作品で、どちらも残念ながら大変な失敗作だった。しかし、その後は風刺コメディ“Life Among The Cannibals”(96年)や児童虐待の実話を映画化した“Mockingbird Don't Sing”(01年)で高い評価を得ている。
 ちなみに、当初ダヴェンポート監督は全く別のエンディングを用意していた。ところが、製作総指揮を担当したニュー・ライン・シネマのロバート・シェイは、特殊効果の見栄えが良くないからと勝手にクライマックスを削除。それを不服としたダヴェンポートは急遽新たなエンディングを撮影して劇場公開にこぎ着けたのだそうだ。上記のアメリカ盤DVDでは、その削除されたオリジナル・エンディングを見ることが出来る。個人的には、こちらの方がよりシュールかつ不気味で良かったのではないかと思う。
 脚本を手掛けたロバート・スミスとイアン・キャシーの2人は、これが処女作に当たる。また、撮影監督のジョン・メトカーフは、イギリスの最低映画監督ノーマン・J・ウォーレンによるSFホラーの怪作『悪魔の受胎』(81年)のカメラマンだった人物。
 その他、『恐竜の島』(76年)や『狼男アメリカン』(81年)のロビン・グランサムが特殊メイクを、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02年)のトム・ハリスが特殊効果を、デレク・ジャーマン作品の美術デザイナーとして有名なクリストファー・ホッブスが視覚効果を担当している。

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フランス人のベビシッター、アナリース(M・ダボ)

トニーはアナリースの体内にあるものを注入する

 主人公の少年トニーを演じているサイモン・ナッシュだが、いわゆる可愛らしい子役でないのが逆に良かった。アンファン・テリブル的な不気味さをとても上手く出していたと思う。『未来世紀ブラジル』(85年)にも出演していたらしいが、残念ながらそちらは全く記憶にない。
 父親サム役のフィリップ・セイヤーは日本映画『アフリカ物語』(80年)に出ていた俳優。なかなか雰囲気のある役者だが、あまり大成はしなかった。1989年に41歳という若さで亡くなっている。
 一方、母親のレイチェルを演じているのは、巨匠フェリーニの『女の都』(80年)で脚光を浴びたバーニス・スティガース。アニタ・エクバーグを思い切り下品にしたような顔をした女優で、アラン・タネールの『光年のかなた』(80年)やジェームズ・アイヴォリーの『カルテット』(81年)などにも出演していたが、その後は主にB級ホラーやサスペンス映画専門となった。
 そして、トニーのベビー・シッターであるフランス人アナリースを演じているのは、『007/リビング・デイライツ』(87年)のボンド・ガ−ルとして有名なマリアム・ダボ。これがデビュー作に当たり、かなり大胆なヌード・シーンも披露している。
 また、階下に住む口うるさい老婆を演じているアンナ・ウィングは、イギリスでは古くからテレビを中心に活躍する大ベテラン。特に国民的な人気を誇る昼メロ・ドラマ“East Enders”の初代レギュラーとして、下町の頑固婆さんルー・ビール役を演じて人気を博した。90歳を過ぎた今もバリバリの現役である。

 

 

ビーイング
The Being (1983)
日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2005 Shriek Show (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/ステレオ/音声:英語・スペイン語/字幕:なし/地域コード:1/82分/製作:アメリカ

映像特典
プロモーション用予告編
プロモーション用スチル・ギャラリー
監督:ジャッキー・コング
製作:ビル・オスコ
脚本:ジャッキー・コング
撮影:ハナニア・ベアー
    ロバート・エビンジャー
音楽:ドン・プレストン
出演:マーティン・ランドー
    ホセ・ファーラー
    ビル・オスコ
    マリアンヌ・ゴードン
    ドロシー・マローン
    ルース・ブッツィ
    マレー・ラングストン

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怪事件を捜査するラッツ刑事(B・オスコ)

放射能研究の第一人者ジョーンズ博士(M・ランドー)

 こちらも『エイリアン』ブームにあやかって製作されたB級SFホラー。ただし、今回のモンスターは宇宙からやって来たのではなく、核廃棄物から生まれたミュータント。一つ目の不細工なクリーチャー・デザインは、どことなく愛嬌があって憎めない。同時期に公開された『デッドリー・スポーン』と何となく似ているのも笑える。
 とはいえ、映画の出来そのものは“酷い”の一言。上記の『エクストロ』がイギリス映画らしいユニークな傑作だったのに対し、こちらは大味で安っぽい典型的なアメリカ産トラッシュ・ムービーだ。
 監督のジャッキー・コングは、80年代のワースト・コメディ映画の1つとして悪名高い『ナイト・パトロール』(84年)を撮った女流監督(!)。あちらも『ポリス・アカデミー』人気に便乗した露骨なパクり映画だったが、こちらも『エイリアン』のエピゴーネンとしては最低レベルの仕上がり。とにかく演出が適当なのだ。無人のまま走っているはずの車に、しっかりとドライバーの姿が映りこんでいたりなんて初歩的な撮影ミスは当たり前。女流監督なのでアクションやホラーの演出はちょっと苦手・・・なんて可愛いレベルじゃない(笑)
 ということで、真面目に怖いSFホラーを探している人には絶対オススメしないものの、ポップコーン片手に下らないバカ映画を見て大爆笑したい方は是非どうぞ。

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町の人が次々と謎のモンスターに殺されていく

己の政治的野心しか頭にないレイン市長(J・ファーラー)

 舞台はアイダホ州の田舎町ポッツヴィル。世界有数(?)のジャガイモ産地を自称するこの町では、最近のハリケーン来襲で多くの人が行方不明になっている。廃棄物処理場を必死で逃げ回る若者。彼は車に飛び乗ったものの、謎のモンスターによって首を引きちぎられてしまう。
 さらに、ドライブ・イン・シアターでホラー映画を見ていた若者たちが次々と惨殺される。地元警察のラッツ刑事(ビル・オスコ)は、被害者たちの乗っていた車にスライム状の液体がこびりついていることに気付く。
 恋人ローリー(マリアンヌ・ゴードン)の働くダイナーに立ち寄り、自宅に帰ったラッツ刑事だったが、ベッドがスライム状の液体だらけになっているのを発見。次の瞬間、ベッドの下に隠れていたモンスターに襲われるが、間一髪で逃げ出すことが出来た。
 ラッツ刑事はレイン市長(ホセ・ファーラー)に大規模な捜査を願い出るが、ワシントン進出を狙っている市長はジャガイモ産地としての名声に傷がつくことを恐れ、聞く耳を持とうとはしない。
 そうしている間にも次々と行方不明者が続出するが、町では市長夫人ヴァージニア(ルース・ブッツィ)がポルノ撲滅運動に息巻き、地元の有名な放射能研究者ジョーンズ博士(マーティン・ランドー)は核廃棄物が水質に無害であるという見解を繰り返している。一方、マージ・スミス(ドロシー・マローン)という女性が、行方不明の息子を探して街中を彷徨っていた。
 ある晩、地質調査に出かけたジョーンズ博士からラッツ刑事に電話がかかってくる。すぐに現場へ来てほしいというのだ。連絡を受けたラッツ刑事は、すぐに恋人ローリーのもとへ向う(!?)。彼女を自宅へ送り届けようと車に乗ろうとしたところ、例のモンスターが襲い掛かってきた。
 モンスターを冷蔵庫に閉じ込めたラッツ刑事とローリーは、早速市長を呼び出す。しかし、市長が到着した頃には、モンスターは
跡形もなく消えていた。自宅へ戻った市長はガレージでモンスターを発見して逃げ出し、妻ヴァージニアが殺された。
 廃棄処理場の近くで待っていたジョーンズ博士のもとに、ラッツ刑事とローリーが到着する。ジョーンズ博士はモンスターの棲家を発見したのだ。そこへ襲い掛かってくるモンスター。なんとか3人は逃げ出すことに成功する。ラッツ刑事は警察署にローリーを送り届け、ジョーンズ博士と共に武装してモンスター退治に出かけるのだったが・・・。

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恋人ローリー(M・ゴードン)を守るラッツ刑事

ラッツ刑事とローリーがモンスターに襲われる

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行方不明の息子を探す女性マージ(D・マローン)

市長夫人(R・ブッツィ)までもがモンスターの餌食に

 って、せめて警官隊くらい引き連れていけよ!と思わず突っ込みたくなる後半の展開。そもそも、ストーリーの流れ自体がムチャクチャで、前後の繋がりすら一切無視されている。編集もズサンそのもの。昼間のシーンが途中で夜になっちゃったり、登場人物たちの立ち位置が一瞬にして変わってしまったり(笑)
 恐らく行き当たりばったりの撮影だったに違いない。ジャッキー・コング監督自身が脚本にもクレジットされているが、もしかしたらシナリオそのものが現場では存在しなかったのではないだろうか?細かいディテール説明を全てナレーションで処理しているので、それも全くあり得ない話ではないだろう。
 ちなみに、編集を担当したカリン・ノワーラはドイツ人の編集者で、これが初仕事だったらしい。その後、母国では一流の編集者として活躍するようになったようだ。まあ、誰にでも下積み時代はあるものだしね(笑)
 また、撮影監督には『死霊のしたたり』を途中でクビになったロバート・エビンジャーがクレジットされている。しかし、実際には『ブレイクダンス』(84年)や『マスターズ/超空の覇者』(87年)を手掛けたハナニア・ベアーが現場をサポートしていたようだ。
 そして、クリーチャー・デザインと特殊効果を手掛けたのは、『魔界からの逆襲』(81年)や『クリーチャー』(85年)、『マニアック・コップ2』(90年)などのジョン・エゲット。モンスターが人間の首を引きちぎったり、胸を突き破ったりする残酷描写そのものは、それほど悪い出来ではない。
 ちなみに、本作はもともと1980年に撮影が行われたものの、3年間もお蔵入りしていたらしい。どのような経緯で劇場公開するに至ったのかは定かでないが、少なくとも映画館でこれを見せられたら頭に来るだろう(笑)

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ラッツ刑事を呼び出したジョーンズ博士だったが・・・

遂にその全貌を現すモンスター

 主人公のラッツ刑事を演じているのは、本作のプロデューサーでもあるビル・オスコ。ジャッキー・コング監督のダンナさんである。全米でチェーン展開するドラッグ・ストアの経営者一家に生まれたボンボンで、70年代から『フレッシュ・ゴードン』(74年)や『エッチの国のアリス』(76年)といった低予算のポルノ映画を製作してきた人物だ。俳優としてはずぶの素人だったらしく、本作での演技も相当に酷い。
 その恋人ローリーを演じるマリアンヌ・ゴードンは60年代から活躍するテレビ女優で、カントリー界の大御所ケニー・ロジャースの奥さんだったことでも有名な人。また、口やかましい市長夫人を演じているルース・ブッツィは、アメリカのお笑い番組やバラエティ番組でお馴染みのコメディエンヌ。
 そして、この手のB級ホラーに欠かせないのが、落ちぶれた往年の大スターだ。本作には『スパイ大作戦』や『スペース1999』のマーティン・ランドー、オスカー俳優のホセ・ファーラー、そしてオスカー女優のドロシー・マローンの3人が出演している。
 後にコッポラの『タッカー』(88年)とウディ・アレンの『重罪と軽罪』(89年)で高く評価され、ティム・バートンの『エド・ウッド』(94年)で見事にオスカーを受賞するランドーだが、当時はキャリアのどん底だった。一方のホセ・ファーラーは、70年代以降はビッグ・バジェットの大作からC級映画に至るまで、来る仕事は拒まずといった調子でバンバン出ていた。
 しかし、本作で一番惨めなのはドロシー・マローンだろう。一応、設定上は行方不明になったマイケルという少年の母親で、ひたすら息子の行方を捜し求めている。そのマイケルが核廃棄物の影響でミュータント化し、モンスターとなってしまったというわけらしい(笑)・・・というのも、本編中で具体的な説明がほとんどされていないのだ。なので、彼女はマイケルが怪物になってしまったことも知らず、ただひたすら息子の名前を呼んでは町の中を彷徨っている。それも、本当に文字通り彷徨っているだけ。こんなに意味のない役を、オスカーも受賞した往年のセクシー女優にやらせてしまうとは(笑)本人もその辺は割り切っている様子で、全くやる気のない適当な演技でお茶を濁している。いろんな意味で複雑なキャスティングだ。

 

 

デッドリー・スポーン
The Deadly Spawn (1983)

日本では1986年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2004 Synapse Films (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL
/82分/製作:アメリカ

映像特典
監督・スタッフ・キャストの音声解説
撮影風景スチル・ギャラリー
特殊メイク スチル・ギャラリー
ニューヨーク・プレミア スチル・ギャラリー
オリジナル・コミック
オリジナル劇場予告編
オープニング 別バージョン
未公開シーン
オーディション・テープ
スタッフ&キャスト バイオグラフィー
監督:ダグラス・マッケオン
製作:テッド・A・ボーハス
    ジョン・ドッズ
製作総指揮:ティム・ヒルデブラント
脚本:テッド・A・ボーハス
    ジョン・ドッズ
    ダグラス・マッケオン
撮影:ハーヴェイ・M・バーンボウム
特殊効果:ジョン・ドッズ
音楽:マイケル・ペリルステイン
出演:マイケル・ロバート・コールマン
    チャールズ・ジョージ・ヒルデブラント
    ジェームズ・ブリュースター
    エリッサ・ニール
    カレン・タイ
    トム・デフランコ
    ジョン・シュマーリング
    エセル・ミケルソン

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山奥の森に墜落した隕石に付着していたものとは・・・

見る見るうちに大きく成長するエイリアン

顔面を食いちぎられる・・・!

 日本でも80年代のホラー・ビデオ・ブーム真っ只中で話題を集め、あまりの反響からビデオをフィルムに起こして劇場公開してしまったという名作カルト映画。16ミリで撮影された自主制作映画ゆえに見てくれは良くないものの、作り手のSFホラー映画に対する愛情がめいっぱい詰め込まれた力作だ。
 中でも特に有名なのがインパクト強烈なデッドリー・スポーンのクリーチャー・デザイン。巨大な口に無数の歯が敷き詰められ、片っ端から人間を食って食って食いまくる。“こいつは喰うためだけに生まれてきた”という当時のキャッチコピーそのものだ。デザインを担当したジョン・ドッズは製作と脚本にも携わっており、後に『ポルターガイスト2』(88年)や『ゴーストバスターズ2』(89年)、『永遠に美しく』(92年)、『Xファイル』(98年)などのSFXや特殊メイクにも参加している。また、フレッド・オーレン・レイのB級SF映画『宇宙要塞からの脱出』(87年)にデッドリー・スポーンがゲスト出演(?)しているのも、マニアの間では有名な話だ。

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いつもと変わらぬ朝を迎えた一家

地下室に下りたチャールズの見たものとは・・・?

エイリアンに食い散らかされる人間

 とある山奥の森に隕石が墜落した。付近でキャンプをしていた若者たちは様子を見に行ったが、隕石に付着していた謎の生物によって次々と食い殺されてしまう。翌朝、ふともの家ではサム(ジェームズ・ブリュースター)と妻バーブ(エリッサ・ニール)の2人が早くに目覚めていた。夫婦は旅行に出かける予定だったが、外はあいにく悪天候の様子。地下室の水漏れをチェックに行ったサムは、巨大化したエイリアンに食い殺されてしまう。夫の様子を見に行ったバーブも同様の運命を辿る。
 やがて、高校生の長男ピート(トム・デフランコ)とSFマニアの次男チャールズ(チャールズ・ジョージ・ヒルデブラント)、伯父のハーブ(ジョン・シュマーリング)と伯母のミリー(エセル・ミケルソン)が起きてくる。彼らはサムとバーブが旅行に行ってしまったものと思い、普段と変わらない朝を迎えた。
 長男ピートはガールフレンドのエレン(ジーン・タフラー)、友人のフランキー(リチャード・リー・ポーター)とキャシー(カレン・タイ)を自宅に招いて勉強会を開く。また、伯母ミリーは近所のご婦人方を招いて昼食会の準備をしていた。電気工事の技師がブレイカーを修理するために地下室へ入っていくのを見たチャールズは、自作のモンスター・マスクで脅かそうと地下室へと降りていく。
 ところが、そこには無数の小さな生物がうようよとしており、奥からは巨大なエイリアンが姿を現す。電気技師も既に食い殺されていた。さらに足元を見ると、母バーブの生首が転げ落ちている。ショックと恐怖で足が立ちすくむチャールズ。小さな生物はエイリアンの子供で、見る見るうちに母バーブの生首を食い散らかしていく。
 その頃、近所の家では主婦たちが集まっての昼食会が行われようとしていた。ご婦人方はエイリアンの子供たちがチョロチョロと動き回っているのにも気付かず、ミキサーにかけて料理に混ぜ込んでしまう。食事を口にして絶句する主婦たち。そこへ無数のエイリアンの子供たちが襲い掛かり、賑やかな昼食会はたちまち阿鼻叫喚のパニックへと陥る。
 さらに、勉強会をしていたピートたちが、エイリアンの子供に食い散らかされた伯父ハーブを発見。そこへ成長したエイリアンが襲い掛かる。一方、地下室のチャールズはエイリアンに目がなく、動く音で物を感知して襲い掛かることに気付く。間一髪のところで地上のドアベルの音が鳴り響き、エイリアンが気を取られている隙にチャールズは地下室から脱出した。
 部屋に立て篭もっていたピートたちだったが、巨大化したエイリアンが乱入してくる。フランキーとキャシーは屋上へ逃げ、ピートも窓から脱出したが、エレンだけが逃げ遅れてエイリアンに首を食いちぎられてしまった。
 フランキーとキャシーに合流したピートは何とか家から脱出しようとするが、エイリアンが襲い掛かってくる。そこへチャールズが現れ、エイリアンが音を頼りに動いていることを伝え、物音を立てないよう警告した。彼にはある秘策があったのだが・・・。

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ウヨウヨと発生するエイリアンの子供たち

生首を食い散らかしていく

勉強会を開くピートたちだったが・・・

 山よりも大きく成長してしまうエイリアンや続編を予感させるエディングなど、最後まで見るものを全く飽きさせないストーリー展開はお見事。随所に散りばめられたマニアックなSF映画ネタや、手作り感覚の凝った特殊メイク&視覚効果なども実に楽しい。低予算の弱点を脚本の面白さとスタッフの情熱によって十分すぎるくらいにカバーしていると言えるだろう。
 監督のダグラス・マッケオンは教師から舞台俳優になった人で、根っからのSFマニアだった。趣味が高じて本作を監督することになったわけだが、劇場用映画はこれ1作のみ。その後はビデオ作家としてゲイ&レズビアンを題材にしたドキュメンタリーなどを撮り続けており、自らもゲイであることをカミングアウトしている。
 また、製作アシスタントとして参加しているティム・サリヴァンは後に監督兼プロデューサーとして活躍するようになり、『デトロイト・ロック・シティ』(99年)の製作も手掛けている。その他、本作の撮影に関わった人物は、当時はいずれもずぶの素人ばかり。唯一、製作総指揮のティム・ヒルデブラントのみが、『スターウォーズ』シリーズのポスターのイラストレーターとして有名だった。撮影が行われたのもニュージャージーにあるヒルデブラントの自宅だったという。

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昼食会がたちまち阿鼻叫喚のパニックに

エレンの首が食いちぎられる

チャールズにはエイリアン退治の秘策があった


 出演者たちも殆どが無名の俳優ばかり。主人公チャールズを演じているのはティム・ヒルデブラントの息子だが、それ以外は一応プロの俳優を雇っている。ピート役を演じたトム・デフランコのみ、その後も何本かのSf映画に出演しているようだ。
 なお、上記のアメリカ盤とほぼ同一内容の日本盤DVDが2006年にキング・レコードから発売されている。

 

 

 

スペース・インベーダー
Invaders From Mars (1986)
日本では1986年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)1997 Anchor Bay (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/ステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/102分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
監督:トビー・フーパー
製作:メナハム・ゴーラン
    ヨーラム・グローバス
脚本:ダン・オバノン
    ドン・ジャコビー
原作:リチャード・ブレイク
撮影:ダニエル・パール
特殊効果:スタン・ウィンストン
視覚効果:ジョン・ダイクストラ
音楽:クリストファー・ヤング
出演:カレン・ブラック
    ハンター・カーソン
    ティモシー・ボトムズ
    ルイーズ・フレッチャ−
    ラレイン・ニューマン
    ジェームズ・カレン
    バド・コート
    エリック・ピアポイント
    クリストファー・オールポート
    ジミー・ハント

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デヴィッド(H・カーソン)はUFOの着陸を目撃する

裏山へと降りていく巨大なUFO

 公開当時からケチョンケチョンにけなされ、興行成績も奮わず、挙句の果てにはラジー賞まで逃してしまう(笑)という悲惨な運命を辿ったSFホラー・アドベンチャー。圧倒的にネガティブな評価の多い作品だし、それ自体は理解できなくもないのだが、個人的にはとても愛着のある作品である。
 ご存知の通り、本作は往年のB級SF映画『惑星アドベンチャー』(53年)のリメイク。時代設定やテクノロジーは80年代風にアップデートしてあるものの、ストーリーはもとより作品そのものの通俗性に至るまで、50年代B級SF映画の精神をそっくりそのまま再現した作品と言えるだろう。要は、80年代当時においても既に十分古臭い作品であり、その昔懐かしいレトロ感覚こそが本作の面白さなのだろうと思う。
 不細工で滑稽なエイリアンのデザインや子供だましのストーリー展開、スクリーンを彩るどぎつい原色カラーなど、まさに人口着色料とサッカリンがたっぷり含まれた駄菓子的センス。体には良くないけど子供は大好き。それはかつてのB級SF映画が与えてくれた醍醐味であり、本作におけるトビー・フーパー監督の狙いだったのではないかと思う。
 思い返せば、トビー・フーパーは前作の『スペース・バンパイア』(85年)でも、50年代〜60年代の英国産SFホラーを彷彿とさせるレトロで怪奇趣味的な世界を80年代流SFXで蘇らせてくれた。本作は50年代の侵略型SF映画に対する、トビー・フーパーならではの愛情溢れるオマージュと呼ぶべきだろう。
 スピルバーグが王道中の王道である『宇宙戦争』をリメイクしたのに対し、あえてB級カルトである『惑星アドベンチャー』を選んでしまうという辺りのセンスを理解できる人ならば、十分に楽しめる作品だろうと思う。

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別人のようになってしまった両親(L・ニューマン、T・ボトムズ)

カエルを丸呑みするマッケルチ先生(L・フレッチャー)

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保健室の先生リンダ(K・ブラック)に相談するデヴィッドだったが・・・

宇宙船の内部へと足を踏み入れるデヴィッド

 天文学マニアの少年デヴィッド(ハンター・カーソン)は、ある晩自宅の裏山にUFOが着陸するのを目撃してしまう。驚いたデヴィッドは寝ていた両親を起こすが、もちろんそんな話を信じてはもらえない。息子を安心させるために裏山を見に行った父ジョージ(ティモシー・ボトムズ)だったが、それ以来様子がすっかり変わってしまった。デヴィッドは父親の首筋に妙な傷があることに気付く。
 やがて母親エレン(ラレイン・ニューマン)も別人のように感情がなくなってしまい、学校の女教師マッケルチ(ルイーズ・フレッチャー)やクラス・メートも徐々に様子が変わってしまった。マッケルチ先生がカエルを丸呑みしているのを目撃したデヴィッドは、いつも親切にしてくれる保健室の先生リンダ(カレン・ブラック)のもとへ駆け込む。町の人々が宇宙人に操られてるというデヴィッドの話に耳を傾けるリンダだったが、さすがに信じることは出来なかった。
 そこで、デヴィッドはマッケルチ先生を尾行することにする。先生は裏山へと向かい、地下へ通じる秘密の穴を通り抜けていった。そこには今まで見たことのない世界が広がり、彼の見ている目前でカバのような巨大モンスターと、脳味噌だけが発達した異様な姿のエイリアンが現れる。
 デヴィッドは急いでリンダを探して裏山へ案内するも、秘密の穴は既に塞がれてしまっていた。ところが、2人は裏山の調査に来た人々が砂に呑み込まれて消えていく姿を目撃する。さらに、地下施設で異星人のものと思われる奇妙な物体と遭遇。重大な危険が迫っていることを感じた2人はNASAへと向った。
 2人の話を聞いてくれたのはウィルソン長官(ジェームズ・カレン)。もちろん、2人の話をにわかには信じられなかった。ところが、その直後に2人のスタッフが長官の命を狙う。捕まえようとしたところ、いきなり首筋がショートして2人とも死んでしまった。デヴィッドの話と一致することに気付いたウィルソン長官は、異星人の侵略が始まっていることを悟る。
 しかし、次の瞬間何者かの運転する車がスペース・シャトルへ突っ込み、シャトルが爆破されてしまった。ウィルソン長官はエイリアンの陰謀を阻止するため、軍隊を裏山へ送り込むことにする・・・。

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脳味噌が異常に発達したエイリアン

デヴィッドとリンダに危機が迫る!

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デヴィッドの言葉を信じるようになったウィルソン長官(J・カレン)

スペース・シャトルが爆破されてしまう

 基本的なプロットはオリジナルの『惑星アドベンチャー』とほぼ一緒。エイリアンやモンスターのデザインも、オリジナルより遥かに本格的だ。“宇宙人、みな顔でかい”なんて妙なキャッチコピーの原因となった(笑)不恰好なモンスターも、今見るとなんとなく微笑ましい姿。異星人たちの地下基地のデザインにしても、当時のイメージを踏襲しつつスケール感を大きくしている。そればかりか、スペースシャトルの大爆破や大規模な軍隊の投入など、よく見るとなかなかスケールの大きな作品と言えるだろう。
 リチャード・ブレイクの書いたオリジナル版のシナリオを脚色したのは、ダン・オバノンとドン・ジャコビー。2人とも前作の『スペース・バンパイア』から引き続いての、トビー・フーパー監督作品への参加となった。オバノンは言わずと知れたSF&ホラー映画界の大御所。『バタリアン』(85年)の監督であり、『エイリアン』や『トータル・リコール』(90年)の脚本家としてもおなじみ。一方のドン・ジャコビーも、『フィラデルフィア・エクスペリメント』(84年)や『ヴァンパイア/最後の聖戦』(98年)、『エボリューション』(01年)などホラーやSFの分野に造詣の深い脚本家。2人は『ブルー・サンダー』(83年)でも一緒に組んでいる。
 撮影のダニエル・パールは『悪魔のいけにえ』(74年)以来久々にフーパー監督と組んだカメラマン。その後はマライア・キャリーやホイットニー・ヒューストン、U2などのプロモビデオのDPとして活躍し、最近では『テキサス・チェーンソー』03年)や『AVP2 エイリアンVSプレデター』(07年)などの劇場用映画も再び手掛けるようになった。
 クリーチャー・デザインと特殊効果を手掛けたのは、先ごろ急逝した特殊メイクの第一人者スタン・ウィンストン。また、視覚効果を『スターウォーズ』(77年)や『スタートレック』(79年)で有名な大御所ジョン・ダイクストラが担当した。
 音楽を担当したクリストファー・ヤングも、『ヘルレイザー』(87年)や『スピーシーズ/種の起源』(95年)、『THE JUON/呪怨』(04年)などホラー映画やSF映画で知られる作曲家。本作ではフル・オーケストラによる迫力満点のスコアを聴かせてくれており、音楽だけでもかなりテンションが上がるはずだ。

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エイリアンの本拠地に総攻撃を仕掛ける軍隊

不恰好で愛嬌のあるクリーチャー・デザイン

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エイリアンに捕らえられてしまったデヴィッド

警察官役を演じるジミー・ハント(右)

 主演のハンター・カーソンとカレン・ブラックは実の親子。『パリ・テキサス』(84年)の脚本を書いたL・M・キット・カーソンとカレン・ブラックの間に生まれたのがハンターだったというわけだ。その『パリ・テキサス』の子役で映画デビューを果たしたハンターだが、一時期はインディペンデント系の監督兼脚本家として活躍していたようだ。
 一方のカレン・ブラックは、言わずと知れた70年代ハリウッドを代表するトップ女優。決して美人ではなかったものの、『エアポート’75』(75年)や『イナゴの日』(75年)、ヒッチコックの『ファミリー・プロット』(76年)など、数多くの大作・話題作に主演したものだった。確かに個性的な顔ではあったものの、演技力も特にずば抜けているとは言えなかったし、個人的には70年代ハリウッド最大の謎の1つだと思っている(笑)まあ、いずれにせよ、当時は正直なところ人気落ち目で、すっかり低予算のB級映画専門女優となりつつあった頃だった。
 カエルを丸呑みするマッケルチ先生を演じているルイーズ・フレッチャーにしても、『カッコーの巣の上で』(75年)でアカデミー主演女優賞を受賞した名女優だったわけだが、やはり当時の出演作は低予算映画ばかり。もともとアクの強い個性を持った女優ではあるが、本作での怪演はかなり強烈なインパクトだった。オスカー女優がカエルを丸呑みするわけだしね(笑)
 その他、70年代にテレビ『サタデー・ナイト・ライブ』で一世を風靡した美人コメディエンヌ、ラレイン・ニューマン、『ラスト・ショー』(71年)や『ジョニーは戦場へ行った』(71年)などのアメリカン・ニューシネマで青春スターとなったティモシー・ボトムズ、同じく『BIRD★SHT』(70年)や『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』(71年)などのアメリカン・ニューシネマで脚光を浴びたバッド・コートなど、かつて一時代を築いたスターたちが脇を固めている。
 また、ウィルソン長官役のジェームズ・カレンは60年代からB級ホラー映画などに出演している俳優で、当時は『バタリアン』(85年)の悲哀あふれる名演技でホラー・マニアの注目を集めていた。近年はオリヴァー・ストーンの『エニイ・ギヴン・サンデー』(99年)やロジャー・ドナルドソンの『13デイズ』(00年)、デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』(01年)、『幸せのちから』(06年)などのメジャー作品に出演し、すっかり味のある名脇役となっている。
 なお、オリジナル『惑星アドベンチャー』で主人公の少年を演じたジミー・ハントが、中年の警察官役で顔を出しているのにも注目しておきたい。

 

 

ブロブ/宇宙からの不明物体
The Blob (1988)
日本では1989年劇場公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2001 Comubia Tristar (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆

DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/2.0chサラウンド/音声:英語・フランス語・スペイン語・ポルトガル語/字幕:英語・フランス語・スペイン語・ポルトガル語・中国語・韓国語・タイ語/地域コード:ALL/95分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編

監督:チャック・ラッセル
製作:ジャック・H・ハリス
    エリオット・カストナー
脚本:チャック・ラッセル
    フランク・ダラボン
撮影:マーク・アーウィン
特殊効果デザイン:ライル・コンウェイ
音楽:マイケル・ホーニッグ
出演:ケヴィン・ディロン
    ショウニー・スミス
    ドノヴァン・リーチ
    キャンディ・クラーク
    ジョー・セネカ
    ジェフリー・デマン
    デル・クローズ
    ポール・マックレーン
    マイケル・ケンウォーシー
    ビル・モスレー
    ジャック・ナンス
    エリカ・エレニアック

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不良少年ブライアン(K・ディロン)が町に戻ってきた

隕石に近づく浮浪者の老人(B・ベック)

 『遊星からの物体X』(82年)、『スペース・インベーダー』(86年)、『ザ・フライ』(86年)と、往年のSF映画やホラー映画のリメイクが相次ぐ中で公開された、まさに決定版とも言うべき80年代SFホラーの傑作。こちらのオリジナルはスティーブ・マックイーン主演『マックイーンの絶対の危機(ピンチ)』(58年)。アメーバ状・・・というよりもスライム状の人喰いモンスターが襲いかかる、という基本設定だけを拝借し、SFXと残酷描写満載の痛快なホラー・エンターテインメントに仕上がっている。
 なんと言っても注目したいのは、スライム状モンスターの暴飲暴食ぶりだ。女子供だろうと情け容赦なく食いまくっていく。ヤツにとって人間は食い物だから当たり前なのだけどね(笑)とはいえ、通常この手のハリウッド・メジャー系ホラーでは子供を殺さないというのは鉄則。ところが、このスライム状モンスターは子供まで呑み込んでしまう。半分溶けてしまった状態の子供が“助けて〜”と飛び出してくるシーンは相当ショッキングだ。
 監督は後にジム・キャリーの『マスク』(94年)やシュワルツェネッガーの『イレイザー』(96年)で大ヒットを飛ばすチャック・ラッセル。アクション・シーンやパニック・シーンの演出も非常にテンポが良く、かなりスピード感のある展開が素晴らしい。今見るとSFXには多少の粗が目立つし、マット合成の仕上がりなんか、いかにも合成しています!って感じだが、その手作り感覚も含めて楽しみたいところ。当時の興行成績は全く奮わなかったものの、80年代を代表するSFホラー映画の1つとしてオススメしたい作品だ。

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メグ(S・スミス)とポール(D・リーチ)はデートに出かける

ダイナーの女主人フラン(C ・クラーク)

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老人がモンスターに食い殺されてしまった

ポールまでもがモンスターの犠牲に

 舞台はコロラド州の田舎町。チアリーダーの女子高生メグ(ショウニー・スミス)は、アメフト部の花形選手ポール(ドノヴァン・リーチ)とデートの約束をする。小学生の弟ケヴィン(マイケル・ケン・ウォーシー)も、同級生のエディとホラー映画のレイトショーに行く計画を立てていた。
 その頃、バイク好きの不良少年ブライアン(ケヴィン・ディロン)が町へ戻ってきた。人情肌のゲラー保安官(ジェフリー・デマン)は、トラブルを起こさないよう注意する。メグの前にブライアンが姿を現す。彼はメグの元彼で、その場に居合わせたポールと小競り合いになる。
 その晩、付近の森に隕石が墜落した。浮浪者の老人(ビリー・ベック)が近づいたところ、スライム状の小さな物体が手にこびりついてしまった。森の中でバイクの整備をしていたブライアンは半狂乱となった老人を発見。その後を追いかけるが、老人はメグとポールの乗った車の前に飛び出してしまった。
 3人は老人を病院へ運びこむ。ブライアンはそのまま帰ってしまうが、メグとポールは診療中の医師を待つことにした。老人の様子を見に行ったポールは、老人がスライム状の物体に食い殺されているのを発見。病院はパニックとなり、ポールは警察に電話をしようとする。ただならぬ雰囲気を察知したメグがポールを探すと、彼は今まさに巨大なスライム状モンスターに食われようとしていた。必至に助けようとしたメグだったが、ポールの腕が引きちぎれてしまう。そのまま彼女は気絶してしまった。
 ポールのとの小競り合いが目撃されていたことから、ブライアンがポール殺害の容疑者として拘束された。しかし、動機も証拠も全くないことから釈放される。そこへ、ブライアンを心配したメグがやって来る。二人はゲラー保安官の恋人でもある女性フラン(キャンディ・クラーク)の経営するダイナーへ向った。
 2人が食事をしながら話をしていると、奥の厨房からフランの悲鳴が。調理人のジョージがキッチンの排水口に呑み込まれようとしていた。そして、巨大化したスライム状モンスターが厨房に侵入してくる。とっさに冷蔵室へ逃げ込むブライアンとメグ。モンスターは低温が苦手らしく、冷蔵室には入ってこなかった。しかし、電話ボックスから保安官に電話をかけようとしたフランは無残にも食い殺されてしまう。
 行方不明の保安官を探しに向ったブライアンとメグは、森の中で防護服に身を包んだ集団と遭遇した。それは政府の派遣した軍隊だった。責任者のミドウス博士(ジョン・セネカ)は、ブライアンとメグを保護する。しかし、軍隊の対応に疑問を感じたブライアンは脱走。
 護送車に乗せられて町へ戻ったメグは、住人たちの強制避難が始まっていることを知る。ところが、弟のケヴィンと友達のエディの2人が映画を見に行ったまま帰らないことを知り、彼女は映画館へと向った。案の定、映画館はスライム状モンスターの乱入で大パニックに。ケヴィンとエディを探し出したメグは下水溝からの脱出を図るものの、エディが犠牲となってしまった。ケヴィンを外へ脱出させたメグだったが、自分は逃げ遅れてしまう。
 そこへ、バイクに乗ったブライアンが救出にやって来た。隕石の墜落現場を探索していたブライアンは、スライム状モンスターが実は政府の開発した生物兵器であることを知る。軍隊は生物兵器を守るために町の住人を犠牲にするつもりだった。2人は下水溝を脱出。政府の陰謀を白日の下にさらし、町の人々を救うために立ち上がる・・・。

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調理師がキッチンの排水口に吸い込まれる

厨房に侵入してくるスライム状モンスター

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電話ボックスに閉じ込められてしまったフラン

軍隊を率いるミドウス博士(J・セネカ)

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メグは弟たちを救おうとする

無残にも食い殺されてしまう少年

 誰も主人公であると疑わなかったポールが食い殺されてしまう辺りから、物語は一気にスピードアップ。強烈な残酷シーンと派手なアクション、迫力のSFXに阿鼻叫喚のパニック・シーンが怒涛のごとく展開される。
 中でも、ダイナーの女主人フランが殺されるシーンは、悪趣味スレスレのユーモア・センスが悲惨さを大いに盛り上げる。恋人ゲラー保安官に助けを求めようと電話したフランだったが、保安官は食事のために外出中。たちまち電話ボックスはスライム状モンスターに囲まれてしまう。すると、そのドロドロのスライム状の中に消化されかけた保安官の死体が!食事に出かけたはずの保安官が、逆にモンスターの食事となっていたわけだ。何とアイロニックなジョーク(笑)!それを見て断末魔の悲鳴をあげたフランは、ガシャーンと破壊された電話ボックスと共に、エイリアンの餌食となってしまうのだった。これまた何たる哀れ!
 チャック・ラッセルと共に脚本を手掛けたのはフランク・ダラボン。そう、『ショーシャンクの空に』(94年)や『グリーンマイル』(99年)といった感動ヒューマン・ドラマでお馴染みの名監督だ。しかし、もともと彼はホラー映画を得意とした脚本家。ラッセルの監督デビュー作『エルム街の悪夢3/惨劇の館』(87年)や『ザ・フライ2/二世誕生』(89年)など、本作にも相通ずる悪趣味一歩手前の冷酷なリアリズムとユーモア・センスは彼の真骨頂だった。
 スライム状モンスターのSFXを手掛けたのはライル・コンウェイ。『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(86年)のオードリーUを作った人だ。もともとジム・ヘンソンの工房で活躍していた人で、『オズ』(85年)や『ドリームチャイルド』(85年)などのクリーチャー・デザインを手掛けたのも彼である。
 一方、撮影監督を担当したのはカナダ出身のマーク・アーウィン。『ザ・ブルード/怒りのメタファー』(79年)から『スキャナーズ』(81年)、『ヴィデオドローム』(82年)、『ザ・フライ』(86年)など、デヴィッド・クローネンバーグ作品には欠かせないカメラマンだった。近年は『メリーに首ったけ』(98年)や『最“狂”絶叫計画』(03年)などのコメディ映画でお馴染み。

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メグも危機一髪!

ブライアンがメグの救出に現れる

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街中を暴れまわるスライム状モンスター

小さな町はたちまち大パニックに陥る!

 主人公の不良少年ブライアンを演じるのはケヴィン・ディロン。兄マット・ディロンのソックリさんみたいな感じで、当時はどちらかというと2流の若手スターだった。今では人気ドラマ『アントラージュ★俺たちのハリウッド』の落ちぶれ俳優ドラマ役でお馴染み。すっかり強面の俳優になってしまったが、当時はまだまだ初々しかった。
 対するメグ役のショウニー・スミスも、今では『SAW』シリーズの女殺人鬼アマンダ役でお馴染みだろう。この頃はアイドル女優として売り出し中だったが、残念ながらいまひとつブレイクしなかった。『SAW』シリーズのアマンダ役で久々に見たときは、ビックリした反面ちょっと嬉しく思ったものだ。
 前半で殺されてしまうポール役のドノヴァン・リーチは、あの有名なシンガー・ソングライター、ドノヴァンの息子。彼も当時は2枚目アイドルとして売り出していたが大成せず、その後ロック・バンド、ナンシー・ボーイのリード・ヴォーカリストとなった。
 そして、あまりにも悲惨な殺され方をするダイナーの女主人フラン役を演じているのは、『アメリカン・グラフィティ』(72年)や『地球に落ちてきた男』(76年)などで映画ファンに愛された女優キャンディ・クラーク。『ブルー・サンダー』(83年)の勝気なヒロイン役も良かった。当時は本作を見て、ああ、キャンディ・クラークも過去の人になっちゃったんだな、と複雑な思いを禁じえなかったもんだ。
 その他、なぜかスティーブン・キング原作の映画には大抵顔を出しているジェフリー・デマンが保安官役を、『クロスロード』(86年)や『マルコムX』(92年)でお馴染みの黒人俳優ジョー・セネカがミドウス博士役を演じている。また、『イレイザーヘッド』(77年)のジャック・ナンスがドクター役で顔を出していたり、当時まだ無名だったエリカ・エレニアックがモンスターに食い殺されたり、『悪魔のいけにえ』で有名なビル・モスレーが兵士役でちょろっと登場したりと、端役の顔ぶれにも注目したい。

 

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