カンパニー・B Company B
〜マイアミの一発屋ガールズ・グループ〜

 

COMPANY_B.JPG

 

 フリースタイル・ミュージックが、基本的にマイアミ派とニューヨーク派に分かれるという話は以前に説明したと思う。マイアミ派はトロピカルをベースにしており、ニューヨーク派はヒップ・ホップをベースにしている。マイアミ派のメロディがメジャー・コードなら、ニューヨーク派のメロディはマイナー・コード。そして、マイアミ派の代表格がエクスポゼなら、ニューヨーク派の代表格はカバー・ガールズである。
 マイアミのフリースタイル・シーンはニューヨークに比べると規模が小さかったが、メジャー・レベルでの活躍はマイアミ系アーティストの方が強かった。それを象徴する存在がエクスポゼだろう。彼女たちはデスティニーズ・チャイルドが登場するまで、シュープリームス以来アメリカで最も成功したガールズ・グループだった。
 その他、アメリカのみならず日本やヨーロッパでも大成功したスティーヴィー・B、ウィル・トゥ・パワー、デビー・デブ、リニアー、タイガー・ムーンといったアーティストがマイアミから登場し、80年代末の全米チャートを大きく席巻した。やはり、メジャー・コードを基調にした華やかなポップ路線がチャート・アクション的に有利だったのだろう。
 そうした中でフリースタイルのみならず、80年代のダンス・シーン全般を語る上で欠かすことの出来ない名曲“Fascinated”を大ヒットさせたのが、マイアミ出身のガールズ・グループ、カンパニー・Bである。
 86年にリリースされたシングル“Fascinated”はビルボードのダンス・チャートでナンバー・ワンをマーク。さらに、翌年には全米ポップ・チャートでも21位まで駆け上がり、イギリスやヨーロッパ各国でも大ヒットを記録した。
 ラテン風のサイケデリックなシンセ・リフとトロピカルでパーカッシブなリズムが非常に斬新で、ハイエナジーやユーロビート、後のハウス・ミュージックなどにもクロスオーバーするような魅力があった。当時のフリースタイル作品の多くがアメリカ的な泥臭さを拭いきれていなかったのに対し、国際マーケットでも十分に通用する洗練されたポップ・センスを持ち合わせていたと言える。この曲に多大な影響を受けたPWLのミキサー、フィル・ハーディングが、バナナラマのヒット曲“I Heard A Rumour”のマイアミ・ミックスでシンセ・リフを丸ごとパクったのも納得できるだろう。

 そのカンパニー・Bを仕掛けたのが、イッシュの名前で知られるプロデューサー、イッシュ・アンヘル・レデスマ。キューバ系アメリカ人で、70年代にシングル“Get Off”を大ヒットさせたマイアミのディスコ・バンド、フォクシーのメンバーだった人物だ。フォクシー解散後にOXOというロック・バンドを組んだイッシュだったが、残念ながらシングルとアルバムを1枚づつ出しただけで空中分散してしまった。
 そこで、彼は折からのフリースタイル・ブームに着目し、妻ロリー・Lを中心としたガールズ・グループを結成する。それがカンパニー・Bだった。初代メンバーはロリー・Lとシャーロット・マッキノン、スーザン・ジョンソンの3人。しかし、マッキノンはデビュー直前になってクビになり、レズリー・リヴラーノが代わりとして加わった。
 デビュー・シングル“Fascinated”は先述したように世界的な大ヒットとなり、ファースト・アルバムもトップ200にチャート・イン。しかし、続いて発売されたシングル“Full Circle”、“Perfect Lover”、“Signed In Your Book Of Love”はクラブ・チャートでヒットしたものの、ポップ・チャートではことごとく失敗してしまう。
 イメージを一新するために大幅なメンバー・チェンジを行い、アンドリュー・シスターズの名曲“Boogie Woogie Bugle Boy”のカバーで正統派コーラス・グループへの転向を図った彼女たちだったが、この目論みは大失敗。セカンド・アルバム“Gotta Dance”もセールス的に全く伸びず、これを最後にアトランティック・レコードとの契約を解除されてしまった。

 その後、メンバー・チェンジを繰り返しながら、フリースタイル系ライブ・イベントへの出演を中心に細々と活動を続けているカンパニー・B。それ以外にも、マイアミのインディペンデント・レーベルからシングルやアルバムをリリースし、イッシュが企画した音楽プロジェクトにも必ず参加している。ここ数年は、あちこちのマイナー・レーベルのコンピレーション盤で“Fascinated”のリミックス・バージョンなるものを見かけるが、いずれもこの別メンバーによるリメイクだ。
 現在は初代メンバーのシャーロット・マッキノンとスーザン・ジョンソンが復帰し、新しくレイチェル・レスリーを加えた3人編成で活動を続けているという。“Fascinated”の一発ヒットで20年以上も食いつないでいるわけだが、それだけ強烈なインパクトを残す楽曲だったということなのだろう。

 

FASCINATED.JPG PERFECT_LOVER.JPG COMPANY_BEATS.JPG JAM_ON_ME.JPG

Fascinated (Remix) (1987)

Perfect Lover (1987)

Company Beats (1988)

Jam On Me (1988)

(P)1987 Blue Bird (UK) (P)1987 Atlantic (USA) (P)1988 ZYX Germany) (P)1988 ZYX (Germany)

Side One
1,Fascinated (Spellbound Remix) 6:46 ビデオ
Side Two
1,Fascinated 3:45 * ビデオ
2,Fascidubbed 3:18 *

produced by Ish
remixed by Herbie of Mastermind
* mixed by Ciro Llerena & Randy Miller

A Side
1,Perfect Lover (Vocal/Club Mix) 7:52 ビデオ
B Side
1,Perfect Lover (Dub Version) 9:08
2,Perfect Lover (Vocal/Radio Edit) 4:10

produced by Ish
mixed by Ciro Llerena & Ish
1,The Miami Megamix 7:14 * 
 Fascinated
 Spin Me Around
 I'm Satisfied
 Perfect Lover
 Full Circle
 Jam On Me
2,Fascinated Beats 2:14
3,Circle Tracks 2:16
4,Perfect Beats 2:28

produced by Ish
* mixed by Peter Vriends
Side A
1,Jam On Me (F(acid)ated Mix) 5:30 *
Side B
1,Spin Me Around 4:57

produced by Ish.
* remixed by Double Trouble
 これはUK及びヨーロッパのみで発売されたリミックス・バージョン。オリジナル・ミックスを生かしながら、よりシャープでキレのある打ち込みと派手なサンプリングを加えた、むちゃくちゃカッコいい仕上がり。フリースタイルというよりも、ラテン風ハイエナジーといった感じですかね。80年代ディスコ・ファンなら必携のアイテムだと思います。  これまたカッコいいナンバーですね。音的には“Fascinated”路線を踏襲したバリバリのマイアミ・フリースタイルですが、より滑らかなメロディ・ラインと官能的なムードが魅力的。そこはかとなく漂う退廃感が何ともいえずセクシーです。個人的には“Fascinated”に負けず劣らず大好きな作品ですが、ダンス・チャートでは12位止まりでした。  ドイツ盤のみでリリースされたメガミクスです。“Fascinated”のバック・トラックを生かしながらノンストップ・ミックスに仕上げたという感じで、特にこれといった目新しさはありません。基本的にはコレクター向けのアイテムですね。アメリカでも発売されてない企画盤なので、当時のドイツにおける彼女たちの人気の高さが良く分かります。  アメリカでは“Fascinated”の直後にインディーズ・リリースされていたセカンド・シングル。このリミックスはもともと87年にUKでリリースされています。一応、アシッド・ハウス・ミックスということみたいですが、ぶっちゃけハウス風のマイアミ・フリースタイルといった感じ。しかも、ボーカル・トラックほぼナシのダブ・バージョンです。

GOTTA_DANCE.JPG YOU_STOLE_MY_HEART.JPG GODDESS_OF_LOVE.JPG 3.JPG

Gotta Dance (1989)

You Stole My Heart (1989)

Goddess Of Love (1990)

Company B 3 (1996)

(P)1989 Atlantic (USA) (P)1989 Atlantic (USA) (P)1990 ZYX (Germany) (P)1996 Hot Productions (USA)
1,You Stole My Heart 5:42
2,Face To Face 3:54
3,The Way I Feel 4:01
4,I Know You Know 3:56
5,Boogie Woogie Bugle Boy 2:55
6,808 Express 10:19
7,Gotta Dance 4:43
8,My Best Shot 4:06
9,Easy To Be Hard 3:33
10,Incredible Boy 3:53
11,Show Me Love (Extended Version) 8:34

produced by Ish
A Side
1,You Stole My Heart (Fasination Remix) 7:44
2,You Stole My Heart (Alternative Mix) 6:08
3,You Stole My Heart (5-10-89 Drums) 2:19
B Side
1,You Stole My Heart (5-10-89 Mix) 6:56
2,You Stole My Heart (Long LP Version) 6:40
3,You Stole My Heart (Urban Radio) 4:11

produced by Ish
Side 1
1,Goddess Of Love (The Vogue Dance Remix) 7:18
2,Goddess Of Love (The Talk Box Speaks) 1:21
Side 2
1,Goddess Of Love (Club Mix) 8:03 *

produced by Ish
remixed by The Freshline Allstars
* mixed by Triple L Mixers
1,I Should Have Never Loved U 4:10
2,A Little To The Left To The Right 6:24
3,You Got Me Goin' 5:06
4,All Dressed Up 4:30
5,Any Kind Of Love 5:10
6,I Wanna Be Your Lover 4:33
7,Love Is Not Fair 6:10
8,Learn It, Burn It 4:32
9,Body Time/Party Time 6:11

produced by Ish
 デビュー当時からのトレード・マークだったホワイト・ウィッグを脱ぎ捨て、本格的ボーカル・グループへのイメ・チェンを図ったセカンド・アルバム。アンドリュー・シスターズのカバー#5はビッグバンド・ジャズ風ファンクでなかなかカッコいい仕上がりだし、10分以上にも渡る実験的なアシッド・ハウス#6も力作でしたが、アルバム全体的には極めて凡庸な仕上がり。  アルバム“Gotta Dance”からのセカンド・シングル。モロに“Fascinated”路線のマイアミ・フリースタイルです。ファースト・シングル“Boogie Woogie Bugle Boy”が売れなかったので、安全パイとして用意されたんでしょうね。でも、この路線は散々やり尽くしているので、やはり出がらし感は否めず。事実、ポップ・チャートはおろかダンス・チャートにすらランク・インされませんでした。  アメリカではイッシュのプライベート・レーベルであるSummer Recordsからリリースされたシングルで、ドイツではユーロビートの名門ZYXからリミックスが発売されました。まさにドイツさまさまですね。基本的には“Fascinated”路線を踏襲した作品ですが、リミックスは微妙にハウス寄りの音に仕上がっています。まあ、可もなく不可もなく。  ダンス・クラシック専門レーベル、ホット・プロダクションからリリースされたサード・アルバム。マイアミらしいトロピカル・ムード溢れるラテン・ダンス・アルバムに仕上がっており、フリースタイル・ファンのみならずラテン音楽ファンも楽しめる内容だと思います。あえてフリースタイルという概念に囚われなかったのは大正解。マンボ風の陽気なラテン・ディスコ#2なんか最高です。

 

戻る