セリ・ビー Celi Bee
ディスコ・アーティスト列伝<14>

 

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 ディスコ・ブーム真っ只中の70年代後半にプエルトリコから登場した女性アーティスト、セリ・ビー。主に南米を中心として人気を集めた人だが、“Superman(スーパーマン)”や“Macho (A Real, Real One)(恋するマッチョ)”などのシングルは日本でも大ヒットした。ミュンヘン・サウンドをベースにした華麗なヨーロピアン・スタイルのサウンドが日本人の琴線にも触れたのだろう。
 “Superman”はアメリカでも77年にビルボードのディスコ・チャートでトップ10にランク・インし、ホット100でも41位をマークするヒットとなった。その翌年には有名なジャズ・ミュージシャンのハーヴィー・マンがカバー・バージョンをリリースし、折からの映画『スーパーマン』(78)の一大ブームもあって全米28位をマーク。セリのオリジナル・バージョンもリバイバル・ヒットした。
 そのマニッシュなルックスから一部では“実は男・・・”なんて噂も流れたようだが、もちろん正真正銘の女性。見た目の厳つさとは裏腹に、そのボーカルは意外にもセクシーでフェミニンだ。ただ、やはりそのルックスのせいで当時はB級のキワモノ扱いされ、あまり正当な評価を得ることは出来なかったようだ。
 80年代半ばにはヒットにも恵まれなくなり、第一線から消えていったセリ・ビー。現在はディスコの裏女王的存在として評価され、カルト的な人気を集めている。

 プエルトリコ系移民の娘としてニューヨークに生まれたセリ・ビーは、本名をセリーダ・イネス・カマチョという。幼い頃にプエルトリコへ移住し、60年代末頃に後の夫であるミュージシャン、ペペ・ルイス・ソートと出会う。
 ペペのバンドと共にラテン音楽のレコードをリリースした彼女は、70年代中頃に“Half A Love”という英語のディスコ・ナンバーを発表する。しかし、残念ながらこれは殆んど見向きもされなかった。その後、夫ペペが自らのディスコ・バンド、ライス&ビーンズ・オーケストラでヒットを飛ばすようになると、彼女も77年にセリ・ビー&ザ・バジー・バンチ名義で初のディスコ・アルバムをリリース。もちろん、プロデューサーは夫のペペ。ここからシングル・カットされた“Superman”が先述したようなヒットとなり、一躍注目されるようになった。
 矢継ぎ早に発売されたセカンド・アルバム“Alternating Currents”からはシングル“Macho (A Real, Real One)”が大ヒットし、“Hold Your Horses, Babe”は全英チャートにもランク・インする。続くサード・アルバム“Fly Me On The Wings Of Love”からはタイトル・トラックがディスコ・ヒット。しかし、次の“Blow My Mind”からは目立ったヒットも出ず、これを最後に所属していたT.K.レコードを去ってしまう。
 80年代半ばには“I'm Free”や“(I Need A) He Man”などのシングルをリリースし、87年のラテン・フリースタイル・ナンバー“I Can't Let Go”はビルボードのクラブ・チャートで19位をマークする中ヒットを記録。しかし、その後は第一線を退いてしまったようだ。

 

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Celi Bee & The Buzzy Bunch (1977)

Alternating Currents (1977)

Fly Me On The Wings Of Love (1978)

Blow My Mind (1979)

(P)2008 Getdisconnected (USA) (P)2008 Getdisconnected (USA) (P)2008 Getdisconnected (USA) (P)2007 Getdisconnected (USA)
1,Superman 5:06 ビデオ
2,Smile 3:59
3,It's Sad 3:59
4,Hurt Me, Hurt Me 3:09
5,One Love 8:01 ビデオ
6,Closer, Closer 4:09
7,One Love (Radio Version) 4:44
8,Superman (Radio Version) 3:38

produced by Pepe Luis Soto
1,Macho (A Real, Real One)7:04 ビデオ
2,Together 3:55 ビデオ
3,Hold Your Horses, Babe 4:40 ビデオ
4,Comin' Up Strong 4:55
5,Alternating Currents 4:24
6,Disposable Love 4:02
7,Lost In Love 3:41
8,Hold Your Horses, Babe
  12" Version) 6:02

produced by Pepe Luis Soto
1,Fly Me On The Wings Of Love 12:56
  Act T Higher, Higher
  Act U Love, Look What You've Done To 
             Me
  Act V Midnight Passion
2,Boomerang 4:23 ビデオ
3,Can't Let You Go 3:27
4,For The Love Of My Man 5:36
5,You're The Best Thing 4:40
6,Fly Me On The Wings Of Love
  (12" Version) 8:05 ビデオ

produced by Pepe Luis Soto
1,Blow My Mind 7:24
2,It's Love 3:38
3,Give It To Me 5:47
4,Dancin' Nuts 6:59
5,Love Drops 5:46
6,Donkey, Donkey 5:04

produced by Pepe Luis Soto
 腰にズンズン直撃するロウ・ビートとキャッチーなサビが強烈な印象を残す傑作ディスコ#1が大ヒットしたファースト・アルバム。全体的にラテン・スタイルの楽曲が多いのも特徴かもしれません。サンバ風のリズムに乗せてエレガントなメロディを聴かせるセカンド・シングル#5は、まるでフレンチ・ディスコのような華やかさ。アンドレア・トゥルー路線のセクシー・ディスコ#6も、程よいトロピカル・ムードが洒落ててカッコいいですね。  矢継ぎ早にリリースされたセカンド・アルバム。ゲイ・ディスコ受けを狙ったと思しきキャンピーな#1は
、さすがに今聴くと古さを感じさせられますが、ジャーマン・ディスコを彷彿とさせるファンキーでエロい#4はなかなかの佳作。ラテン・ジャズ・ファンク・スタイルのドラマチックなナンバー#5もかなりカッコいいですね〜。イギリスでヒットした#3もキャッチーな作品で、#8の12インチ・バージョンはヴィレッジ・ピープルみたいな仕上がり。
 セリにとっては最も野心的な作品とも言えるサード・アルバム。#1では組曲構成の壮大なディスコ・ナンバーを聴かせてくれます。ディスコ全盛期に流行ったスタイルですね。分厚いストリングスにパワフルなホーン・セクションなど、非常に豪華なサウンドは聴き応え十分。13分近い長さを全く感じさせません。よりタイトにエディットされた#6の12インチ・バージョンもカッコいいし、同じくシングル・カットされた#2もなかなかファンキーです。  #1ではシーケンサーを使ったミュンヘン風サウンドにチャレンジしつつ、全体的にコレッ!という決定打に欠けるような印象の4枚目。タイトル曲はちょっとエイミー・スチュワートを思わせる仕上がりが悪くはないんですけどね。#6なんかかなり憶え易いタイトルが面白いものの、そのインパクトに楽曲自体がついていけてないという感じ。結局、ここからは大きなヒット曲が生まれず、これが彼女にとって最後のフル・アルバムとなりました。

FOR_THE_LOVE.JPG

The Best Of Celi Bee

(P)1994 Hot Productions/APA (USA)
1,Superman 5:05 ビデオ
2,Hurt Mem Hurt Me 3:09
3,One Love 8:02
4,Closer, Closer 4:12
5,Macho (A Real, Real One) 7:04
6,Together 3:53
7,Comin' Up Strong 4:52
8,Lost In Love 3:39
9,Fly Me On The Wings Of Love 7:50
10,Can't Let Go 3:25
11,For The Love Of My Man 5:33
12,Blow My Mind 7:22
13,It's Love 3:37
14,Boomerang 4:23
 ダンス・ミュージックの再発専門レーベル、ホット・プロダクションからリリースされたベスト盤。かつてオリジナル・アルバムもここから一通りCD化されていましたが、上記のGetconnected盤の方が音質は遥かに良好です。ただ、このベスト盤は意外にもGetconnected盤に匹敵するくらい音が良いんですね
。しかも、重要なヒット・シングルは概ね収録されているので、アルバムを揃えるほどでは・・・という方にはオススメです。

 

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