クラシック・カートゥーン大好き!
Merrie Melodies Pt.1

 

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 メリー・メロディーズとは、ワーナー・ブラザーズがルーニー・チューンズの姉妹シリーズとして1931年にスタートさせた劇場用短編アニメシリーズ。どちらも歌や音楽をフューチャーしたミュージカル仕立てというのが共通した特徴であったものの、かたやバッグス・バニーやダフィー・ダックといった動物キャラクターをメインにしたコメディ・スタイルのルーニー・チューンズに対し、メリー・メロディーズは題材となる楽曲をベースに自由な発想で映像を作り上げていくレビュー・ショー・スタイルというのが大きなセールス・ポイントであった。
 なので、一部ルーニー・チューンズの有名キャラクターが登場する作品が作られたり、同じくルーニー・チューンズの名物キャラであるエルマー・ファッドの元ネタとも言われるエッグヘッドというキャラがたびたび出てきたりという例外はあったものの、基本的にシリーズの看板となるような人気キャラが定着することはなかったのである。その代わりと言ってはなんだが、特定のキャラクターの個性などに縛られることなく、時にはかなり実験的な映像表現に挑戦することもあった。そうした自由奔放なチャレンジ精神こそメリー・メロディー・シリーズの面白さと言えるかもしれない。
 シリーズのプロデュースを担当したのはルーニー・チューンズの生みの親でもあるレオン・シュレシンガー。ワーナーが権利を持っているポピュラー・ソング、中でもミュージカル・ナンバーの数々を売り出すため、というのがそもそもの基本コンセプトであった。そういう意味でいうと、着想的には現在のミュージック・クリップのご先祖様的な存在だとも言えなくはないだろう。当初はヒュー・ハーマンとルドルフ・アイシングのコンビが演出に当たっていたが、'33年に両者がワーナーと袂を別ったことから、同社のアニメ部門として立ち上げられたレオン・シュレシンガー・プロダクション製作のもとでフリッツ・フレーリングやテックス・エイヴリー、フランク・タシュリンらが監督を手掛けるようになった。
 ただ、時代を下るにつれて次第にルーニー・チューンズと作風や方向性がほとんど変わらなくなってしまい、メリー・メロディーズならではの個性というものが失われてしまった。それでも、シリーズの商標を他社で勝手に使われないようワーナーはメリー・メロディーズの製作を続けていたが、1969年の“Injun Trouble”をもって38年の歴史に幕を閉じることとなったのである。
 ということで、ここでは総勢500タイトル以上に及ぶメリー・メロディーズ・シリーズの中から特に印象深いおススメ作品を順次紹介していきたいと思う。

 

 

Speaking of the Weather (1937)

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 ミュージカル『踊る三十七年』で使用された楽曲“Speaking of the Weather”を題材に、ボブ・ホープ主演の『腰抜け』シリーズやジェーン・マンスフィールド主演映画の監督としても知られるフランク・タシュリンが演出を手掛けた作品。ひとけのない真夜中のドラッグストアを舞台に、雑誌の表紙から抜け出してきた様々なキャラクターが大騒動を繰り広げるというファンタジックなミュージカル・アニメである。
 この作品が面白いのは、各雑誌のタイトルや内容ジャンルをダジャレ的なギャグのネタとして使い、シュールな笑いを生み出すことに成功している点であろう。例えば、“The Gang”という雑誌から抜け出したギャングが、テクノロジー雑誌“The Popular Mechanics”からガスバーナーを取り出し、経済誌“Magazine of Wall Street”の金庫をこじあけて金を盗む。しかし、推理小説誌“Detective”から抜け出した名探偵チャーリー・チャンに捕まってしまい、法律誌“Judge”から終身刑(Life Sentence)を言い渡されてグラフ誌“Life”に収監されるのだが、大衆紙“Liberty”の表紙を抜け出して自由(Liberty)の身となってしまう…。とまあ、万事が万事こんな調子で、当時実際にアメリカで発刊されていた雑誌を上手いことギャグのネタに活用しているのが楽しい。
 また、随所で当時の有名人をカリカチュアしているのも興味深いところだ。例えば、オープニングでは音楽誌から抜け出したキャラクターたちが賑やかに演奏を繰り広げるのだが、その中にはクラシック音楽誌“The Etude”の表紙を飾る名指揮者レオポルド・ストコフスキーの姿も。で、その様子を眺めながら独特の笑い声をあげて喜んでいるのが名脇役俳優ヒュー・ハーバートだったり、有名映画雑誌“Photoplay”の表紙を飾るグレタ・ガルボが両足をロッキング・チェア代わりにしてくつろいでいたり。なんだかよく分からないけど特徴だけは上手く捉えている、というハチャメチャなお遊びが満載だ。中でも、映画『影なき男(The Thin Man)』シリーズで当時ブレイクしていた俳優ウィリアム・パウエルが、横向きになると文字通りの極細体型だったりするのは爆笑もの。当時の観客にはバカ受けだったに違いない。戦前のアメリカの大衆文化を知る上でも、なかなか貴重な作品だと言えるだろう。

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人々の寝静まった真夜中のドラッグストア

音楽雑誌の表紙が演奏を始める

ガーデニング雑誌の表紙の花々も踊り出す

演奏大会を楽しむ名脇役俳優ヒュー・ハーバート

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ハードボイルド雑誌の表紙を抜け出したギャング

経済誌の金庫から金を盗もうとするが…

名探偵チャーリー・チャンに捕まってしまい

終身(Life)刑でライフ誌に収監される

 

 

Have You Got Any Castles? (1938)

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 上記の“Speaking of the Weather”の姉妹編とも言うべき作品。こちらは雑誌ではなく世界の名著が次々とキャラクター化して、歌ったり踊ったり騒いだりと賑やかな宴を繰り広げる。演出は同じくフランク・タシュリン。子供だけではなく大人も楽しめるような、ちょっと皮肉を利かせたシュールなギャグがあちらこちらに散りばめられており、今見てもほとんど古さを感じさせない。
 舞台は深夜の図書館。時計が12時を回ると本の国の世話役が姿を現し、合図と共に本の精霊たちが目を覚ます…というわけだ。最初に出てくるのは、『フランケンシュタイン』の怪物、『オペラ座の怪人』の怪人、『怪人フー・マンチュー』のフー・マンチュー、そして『ジキル博士とハイド氏』のハイド氏。このモンスター4人組がゴセックの名曲「ガヴォット」に合わせて可愛らしく踊り出す。で、それに引き続いて名作の主人公だったり、本のタイトルをもじったダジャレのようなキャラクターだったりが、次から次へとコミカルなパフォーマンスを繰り広げていくのである。
 “ハイディ、ハイディ、ハイディ…”とブルースをシャウトしまくる「アルプスの少女ハイジ」、小さい女の子たちが華麗なハーモニーを聴かせる「若草物語(Little Women)」、家の窓から7人のクラーク・ゲイブルがひょっこりと顔を出す「七破風の家(The House of the Seven Gables)」、ブルドッグがドラムを叩きまくる「怪傑ドラモンド(Bulldog Drummond)」、オリバー少年がひたすらクルクルと回っている…つまりツイストしている「オリバー・ツイスト」などなど、ネタの大半がまるっきりおやじギャグだったりするのがバカバカしくて楽しい。愛さずにはいられない作品だ。

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深夜の図書館で本の精霊たちが目を覚ます…

4人の恐ろしげなモンスターたちが…

ヤンヤヤンヤの拍手喝采

ハイディハイディハイディ…とブルースを歌うハイジ

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確かに「若草物語」の原題はLittle Womenなのだが…

7人のゲイブルが住む屋敷ってことですか…(笑)

こちらもタイトルそのまんまのダジャレ

クルクルとツイストしまくるオリバー少年

 

 

Cinderella Meets a Fella (1938)

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 バッグス・バニーやダフィー・ダックの生みの親として有名なギャグ・アニメの鬼才テックス・エイヴリー。そんな彼が『シンデレラ』を料理すると、こんなにもシュールでブラックな作品になっちゃいました…ということで、あの有名な『シンデレラ』のストーリーをジャズ・エイジならではのモダンなユーモア・センスで再現した異色の傑作。御伽噺の世界にナイトクラブやカジノやカクテルが紛れ込んでしまった、ちょっと大人向けのシンデレラ物語である。
 3人の姉がお城の舞踏会へ招かれ、一人寂しく家で掃除や洗濯をさせられるシンデレラ。そろそろ魔法使いのお婆さんが来るはずなのに…遅い!!どこで何してんのよ!舞踏会に間に合わないじゃない!ってことで、シンデレラは警察へ電話をして魔法使いのお婆さんの捜索願い。すぐにパトカーがサイレンを鳴らしながらやってきて、夜の街を飲み歩いていた魔法使いのお婆さんを放り投げていく。
 とりあえずカボチャはある。でも、ネズミが足りないわね。ってことで、お婆さんは壁のスロットマシンをガラガラ…見事に目が揃って大当たりしたもんだから、壁の穴からゾロゾロとネズミが出てくる。でも、お酒のまわっているお婆さんの魔法は頼りない。失敗を繰り返しながら、なんとか豪華な馬車が登場。ガレージを扉が開いて、シンデレラは無事にお城へと向かう。
 ネオンのきらめく不夜城へと到着したシンデレラ。その美しさに見とれた男たちは、思わず口笛を吹いてヒュー!ってなもんで、そこへ見るからに冴えない王子様(エッグヘッド)が到着する。すぐさまお互いを見初めて華麗(?)なダンスを舞うシンデレラと王子様。しかし、気が付くと時計はもうすぐ夜の12時だった。大急ぎで城を出ていくシンデレラ…おっと忘れていた!とばかりに、Uターンしてきてガラスの靴をポイっと置いていく。
 愛しのシンデレラよどこだーい!と夜の町を探し回る王子様。すると、でっかく“ここがシンデレラの家!”と丁寧に矢印まで付いたネオンが輝く一軒の家を発見。…ヘっ?こ…ここで間違いないんだよね?と目を点にする王子様。半信半疑で中へ入ったものの、シンデレラの姿はナシ。ふと見ると、“待ちくたびれたからワーナー・ブラザーズのスタジオ見学へ行ってくるわ”との置手紙が。ショックで泣きだす王子様だったが、するとこのアニメを上映している劇場の客席から人の声が…。スクリーンに近づく人影は、紛れもなくシンデレラその人だった…!?
 御伽噺の世界の住人であるシンデレラたちが予めストーリーの内容を熟知していて、しかも自分たちが御伽噺の登場人物であるということをちゃんと客観視している、というのが本作の重要なポイント。加えて、そこへ本来なら原作と全く関係がないはずの現代文明が紛れ込み、ある種のセルフ・パロディ的な世界を構築していくのである。「赤ずきん」を下敷きとした『リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ?』('06)と似たような趣旨の作品と言えなくもないだろう。テックス・エイヴリーらしいアダルトなユーモア・センスやクレイジーなギャグがとても楽しい小品佳作だ。
 なお、エイヴリーは本作ではフレッド・エイヴリーという別名を名乗っている。

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姉たちが舞踏会へ行って一人残されたシンデレラ

さっさと魔法使いのお婆さんを探せ!と警察へ連絡

魔法で使うネズミはスロットで調達!?

ガレージを開けていってらっしゃい!

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まるで流行のナイトクラブのようなお城

エッグヘッドが王子様として登場

ちゃっかりとガラスの靴を落としていくことも忘れず

誰が見ても一目で分かるシンデレラの家

 

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