キャロル・ダグラス Carol Douglas
ディスコ・アーティスト列伝<11>

 

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 70年代を代表するディスコ・ナンバー“Doctor's Orders”を大ヒットさせ、グロリア・ゲイナーと並ぶ史上初のディスコ・クィーンとして余りにも有名な女性シンガー。ディスコというだけで当時はキワモノ扱いされるアーティストが多かったが、キャロルはあくまでも上品でエレガントなイメージだった。キュートなベビー・ボイスも印象的で、とてもフェミニンな魅力を持ったシンガーだったと言えよう。“Midnight Love Affair”や“Fell In Love For The First Time Today”といった、中期のゴージャスでメロウなナンバーも素晴らしかった。その全盛期は比較的短かったが、70年代のアメリカン・ポップスを語る上でも欠かせない重要なアーティストだと思う。

 1948年4月7日、キャロルはニューヨークのブルックリンに生まれた。母親はゴスペル・シンガーのミニー・ニューサム。伝説的なR&B歌手サム・クックは母親の従兄弟に当たる。幼い頃から少女モデルとしてTVコマーシャルなどに出演し、さらに子役としてオフ・ブロードウェイの舞台にも立っていた。
 その後、再結成したガールズ・グループ、シャンテルズのボーカリストとして参加。そのステージを見た音楽関係者にスカウトされ、74年にシングル“Doctor's Orders”をリリース。これが全米チャートで11位、ディスコ・チャートでは2位という大ヒットを記録し、一躍トップ・スターとなったのだった。
 プロデュースを手がけたのはエド・オローリン。後にシャロン・ブラウンやシビルといった人気女性ボーカリストを手がけることになる名プロデューサーで、メロウ&ソウルフルなサウンドに定評のある人物だ。当時はディスコ・ミュージックを過小評価する傾向が強かったが、その一方でキャロルの作品は批評家からの評価が高かった。78年にはシングル“Burnin'”でグラミー賞にもノミネートされているが、そうした評価の高さに
はエド・オローリンの優れた感性が少なからず貢献していたと考えて間違いないだろう。また、大半の楽曲でアレンジを手がけたジョン・デイヴィスの職人技も忘れてはなるまい。
 ちなみに、デビュー当初マネージャーを務めたジェイ・エリスは、当時グロリア・ゲイナーのマネージャーでもあった。エリスは一足先にヒットを飛ばしたキャロルとパッケージでグロリアを売り出そうとしていたが、それを快く思わなかったキャロルはすぐにエリスをクビに。この一件がもとで、キャロルとグロリアは犬猿の仲になってしまった。

 その後、しばらく大ヒットに恵まれなかったキャロルだが、76年に“Midnight Love Affair”がディスコ・チャートで15位、クラブ・プレイ・チャートで1位を獲得するヒットに。さらに78年の“Burnin'”もクラブ・プレイ・チャートで11位まで駆け上がった。
 しかし、やがて80年代に入るとディスコ・ブームも過ぎ去り、その反動としてアンチ・ディスコの風潮が強くなる。ディスコ・クィーンの異名をとったキャロルにとっては、まさに逆風の吹き荒れる時代だ。スリー・ディグリーズをカバーした“My Simple Heart”なんかは、名曲として一部のファンの間で根強い人気を誇っているが、この時期にリリースしたシングルは殆どセールス的には惨敗だった。そうしたこともあり、83年のアルバム“Love Zone”を最後に、キャロルは半ば引退状態になってしまう。
 しかし、90年代半ばにディスコ・リバイバルが訪れると、元祖ディスコ・クィーンとしてキャロルにもスポットライトが当たるようになり、テレビ出演やコンサート出演などの活動を再開。現在もクラブのショー・タイムなどを中心にドサ廻りを続けているようだ。

 

THE_BEST.JPG ALBUM.JPG FULL_BLOOM.JPG BURNIN.JPG

The Best of Carol Douglas

The Carol Douglas Album (1975)

Full Bloom (1977)

Burnin' (1978)

(P)1994 Hot Classics (USA) (P)1995 Unidisc Music (Canada) (P)1995 Unidisc Music (Canada) (P)1995 Unidisc Music (Canada)
1,Midnight Love Affair 5:56 ビデオ
2,In The Morning 6:03
3,Lie To Me 3:35
4,Fell In Love For The First Time Today 6:05
5,Burnin' 4:25
6,Night Fever 5:30
7,Doctor's Orders 4:59
8,Baby Don't Let This Good Love Die 3:10
9,A Hurricane Is Coming Tonite 4:00
10,Dancing Queen 3:20
11,I Want To Stay With You 5:16
12,Full Bloom 1:34
13,Who, What, When, Where, Why 3:51
14,I Got The Answer 5:35
15,My Simple Heart 5:53 ビデオ
16,You're Not So Hot 6:28
1,Doctor's Orders 4:29
2,A Friend In Need 4:06
3,Baby Don't Let This Good Love Die 3:11
4,Take Me (Make Me Loose Control) 3:40
5,A Hurricane Is Coming Tonite 3:59
6,I Fell In Love With You 2:51
7,All Night Long 3:33
8,Will We Make It Tonight 3:31
9,Boy You Know Just What I'm After 2:36
10,My Simple Heart 6:23 *
11,Doctor's Orders (Extended Mix) 5:00 ビデオ

produced by Ed O'Loughlin
* produced by Eric Matthew, Darryl Payne & Robert Matichak.
1,I Want To Play With You 5:15
2,Full Bloom (Suite #1) 1:34
3,Who, What, When, Where, Why? 3:53
4,Full Bloom (Suite #2) 0:32
5,Light My Fire 4:30 ビデオ
6,Dancing Queen 3:20
7,We Do It 3:11
8,I Got You On My Mind 3:27
9,I'll Take A Chance On Love 3:22
10,We're Gonna Make It 2:54
11,Dancing Queen (Long Version) 7:32 ビデオ

produced by Eddie O'Loughlin

1,I Fell In Love For The First Time Today 7:09
2,Burnin' 5:13
3,Let's Get Down To Doin' It Tonight 4:54
4,Night Fever 6:29 *
5,Let You Come Into My Life 5:31 *
6,So You Win Again 3:31 * ビデオ
7,All My Love 3:33 *
8,Fell In Love For The First Time Today
  (Remix) 5:37

produced by Eddie O'Loughlin & John Davis
* produced by Eddie O'Loughlin

 全盛期の代表作をほぼ全て網羅した究極のベスト盤。他にもいろいろとベスト・アルバムは出ていますが、最も収録曲が多いのはこのホット・クラシックス盤でしょう。ただ、残念なことに大半の作品がエディットされてしまっています。CD1枚に収めるためには仕方なかったのかもしれませんが、贅沢を言えば2枚組にしてでもフル・バージョンで収録して欲しかったですね。ただ、なぜか代表作#7だけはエクステンデッド・バージョンで収録。また、カルト・ヒットとして名高い#15はオリジナル・ミックスのエディットが収録されています。  キャロルの記念すべきファースト・アルバム。ディスコ名盤の再発で定評の高いユニディスクからリリースされたCDです。当時はまだディスコ草創期。今の我々がイメージする煌びやかなディスコというよりも、フィリー・ソウルなどにも通じるポップなR&Bという印象が強い作品だと思います。代表曲#1のほか、#5もシングル・カットされマイナー・ヒットを記録しています。ドラマチックで都会的なミディアム・ナンバー#4、スピナーズを彷彿とさせるメロウ&ソフトなダンス・ナンバー#6もお気に入り。#10はリメイク・バージョンです。  こちらはサード・アルバム。まさに“フル・ブルーム(花の満開)”といった感じのジャケットが素敵ですよね。内容もエレガントでゴージャスそのもの。とても上品でロマンティックなディスコ・アルバムに仕上がっています。特に#1と#3は名曲ですね。その一方で、アバのカバー#6は決して悪い出来ではないものの、オリジナルの完成度が高すぎて損をしているように思います。また、エディ・フロイドのカバー#5も、2年後にエイミー・スチュアートが大ヒットさせたバージョンに比べると、どうしても地味に聞こえてしまうんですよね。  ジョン・デイヴィスが共同プロデューサーに昇格した4枚目のアルバム。とにかく#1が大傑作です。スウィート&メロウ、でもってエレガント&ゴージャス。当時マイナー・ヒットにしかならなかったのが不思議なくらい、完成度の高いクラッシーな名曲だと思います。#8では12インチ・バージョンも収められていて大満足。グラミー候補になった#2もファンキーでクールな作品です。#4はビージーズのカバーで、イギリスでは中ヒットを記録しました。また、#6はホット・チョコレートのカバー。どちらもマイケル・ゼーガーがアレンジを担当してます。

 

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