カルロ・ルスティケッリ Carlo Rustichelli

 

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 日本で最も愛されたイタリア映画音楽家と呼んでも過言ではないかもしれない。中でも『ブーベの恋人』('63)や『刑事』('59)、『鉄道員』('56)などのテーマ曲は、日本における外国映画音楽全盛期と言うべき'60年代から'70年代にかけて、数多の洋楽ヒット・ナンバーと肩を並べるほどの人気を集めたものだった。かくいう我が家にも、『刑事』の主題歌“死ぬほど愛して”と『ブーベの恋人』の“ブーベのブルース”をカップリングしたシングル・カセットがあったことを記憶している。ナポリ歌謡やイタリアン・オペラにも相通ずるような哀切溢れる彼のメロディは、日本人特有のセンチメンタリズムと相性が良かったのだろう。
 ただ、その垢抜けない泥臭さゆえなのか、後のイタリア映画音楽リバイバル・ブームにおいては殆ど無視された形となってしまい、お洒落でポップなモリコーネやチプリアーニ、トロヴァヨーリなどと比べれば、若いイタリア映画音楽ファンの間での知名度は必ずしも高いとは言えない。もちろん、ウミリアーニやフィデンコ、ミカリッツィなどのように、リアルタイムでは埋もれていた才能が正しい評価を受けるようになったことは喜ばしいことではあるものの、その一方で彼のように一時代を築いた巨匠が忘れ去られてしまっていいわけもあるまい。最近になって、ようやく彼の手掛けたマカロニ・ウェスタンや大衆コメディのサントラ盤がボチボチとCD復刻されるようになってきたようだが、それでも250本以上にも及ぶと呼ばれるフィルモグラフィーの大半が未だに手付かずであり、『刑事』や『禁じられた恋の島』('62)のような名作が単体で一度もCD化されたことがないというのは寂しい限りだ。

 1916年12月24日、北イタリアはボローニャ近郊の町カルピに生まれたルスティケッリは、ボローニャの交響楽アカデミーでピアノを、さらにローマでは作曲家チェザーレ・ドビチに作曲法を学んだという。その後、演劇用音楽の作曲家や指揮者として活動を始め、'39年には映画音楽に手を染めたこともあったものの、すぐに舞台の世界へと戻ってしまったようだ。
 そんな彼に転機が訪れたのは1947年。イタリア中部の町テルニの劇場で仕事をしている彼のもとへ、2人の映画関係者が訪れた。1人は製作者のルイジ・ローヴェレ。そして、もう1人は映画監督のピエトロ・ジェルミだった。ジェルミはルスティケッリの才能を非常に高く買い、映画界への転向を熱心に勧めたという。その熱意にほだされ、ルスティケッリは映画音楽の仕事を本格的に引き受けることを決意。ジェルミとはその年の“Gioventu perduta”('47)を筆頭に、『無法者の掟』('49)や『越境者』('50)、『鉄道員』、『わらの男』('58)、『刑事』、『イタリア式離婚狂想曲』('61)、『誘惑されて棄てられて』('64)、『蜜がいっぱい』('66)、『アルフレード・アルフレード』('71)など殆どの作品でコンビを組むこととなった。また、『ブーベの恋人』や『ミラノの恋人』('74)のルイジ・コメンチーニ、『白い肌に狂う鞭』('63)や『モデル連続殺人』('64)のマリオ・バーヴァのもとでも優れた仕事を残している。
 さらに、ポール・ニューマン主演の『脱走大作戦』('68)やビリー・ワイルダー監督の『お熱い夜をあなたに』('72)、チャールトン・ヘストン主演の『野生の叫び』('72)のようにイタリアで撮影されたアメリカ映画、『友よ静かに死ね』('76)や『プレステージ』('76)のようなイタリア資本の入ったフランス映画にも音楽を提供している。しかし、イタリア映画の衰退と共に仕事も激減していき、'80年代末にはほぼ引退状態に。一時期は、自らのオーケストラを率いてフランスやロシア、そして日本などでコンサート活動も行っていた。'04年11月13日、ローマ市内で死去。享年87歳であった。
 なお、『刑事』の主題歌“死ぬほど愛して”を歌ったカンツォーネ歌手アリダ・ケッリが彼の愛娘であることは有名な話。息子のパオロも作曲家として『ブラック・コブラ』('87)や『ギルダ/暗黒街の情婦』('89)といったB級映画を手掛けていたが、近年はジャズ・ミュージシャンとして成功を収めている。また、アリダの娘で孫に当たるシモーネ・アンニキアリコは、テレビの司会者として活躍しているそうだ。

 

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カルロ・ルスティケッリのすべて
Carlo Rustichelli: Music In Cinema

イタリア式離婚狂想曲
Divorzio, all'Italiana (1961)

誘惑されて棄てられて
Sedotta e abbandonata (1964)

ブーベの恋人
La ragazza di Bube (1963)

(P)1993 King Record (Japan) (P)2011 Kritzerland (USA) ※1000枚限定 (P)1992 CAM (Italy) (P)1991 CAM (Italy)
1, Il ferroviere
2, "La ragazza di Bube" Bube
3, "Divorzio all'Italiana" Canto d'amore
4, "Divorzio all'Italiana" Marcia funebre
5, "Un maledetto imbroglio"
    Sinno me' moro
6,"I cavalieri della vendetta"
    Landa deserta
7,"Signore e signori" Se e vero amore
8,"Bubu" Tema di Berta
9,Una amore a Roma
10,"Mare Matto" Unni si
11,"La castane sono buone"
    Fenesta vascia
12,"La castane sono buone"
13,"Alfredo Alfredo" Amori di Alfredo
14,"Alfredo Alfredo" Nella serra
15,"Io io io e gli altri"Il mio paradiso
16,"Uccidi o muori"
17,"L'uomo, L'orgoglio, La vendetta"
    Sui fiume
18,"L'uomo, L'orgoglio, La vendetta"
    Tema della solitudine
19,"Sedotta e avvandonata"
20,"Le 4 giornate di Napoli"
21,"Finche dura la tempesta"
22,"L'uomo di paglia"
23,"Voglio i colonnelli"
    Synthesizer rhythmic
24,"L'isola di Arturo"
1,Canto d'Amore
2,Traffico
3,Marcia funebre
4,Orazione avvocato
5,Trattoria
6,Innamoramento
7,Uccisione moglie e amante
8,Musica d'Amore
9,Divorzio
10,Furtivamente
11,Processo
12,Tradimento a pettegolezzo
13,Fefe
14,Serenata
bonus track
15,Suite of additional and alternate cues
1,L'onuri di l'Ascaluni *
2,Dicerie
3,Passegio barone
4,Ratto twist
5,Corrida rumba
6,Tre squillo, tre
7,Seduzione
8,Alla deguello
9,Vampata d'amuri *
10,Matilde novizia
11,Sposalizio
12,Vergogna
13,Morte di Ascalone
14,Processione
15,Serenata maliziosa
16,Gailine barone
17,Onore e famiglia

* canta Pino Ferrara
1,Bube
2,Stefano
3,Rievocazione
4,Liberazione
5,Bube, Addio!
6,...un rimpianto
7,Desiderio spento
8,Malinconia lontana
9,Passi
10,Viene la sera
11,Nebbia sul fiume
12,Mara...t'amo
13,Nascosti!
14,Ricordo tragico
15,Mercato paesano
16,Risveglio
17,Ansie
18,Citta lontana
19,Sei tu sola
20,La ragazza di Bube
 ルスティケッリを愛する日本だからこそ実現した究極のベスト・アルバム。『鉄道員』#1や『刑事』#
5、『禁じられた恋の島』#24など
、サントラ盤単体ではCD化されていない作品のテーマ曲も、ここでなら聴くことが出来ます。いずれもイタリア本国ですら、コンピレーション盤にも収録されたことがありませんので貴重です。特に『禁じられた恋の島』の甘く切ないメロディは絶品。1曲たりともはずれナシです。
 当時離婚の禁止されていたイタリアで、若い娘と結婚するために妻を殺害する男のドタバタを描いたピエトロ・ジェルミ監督の傑作風刺コメディ。シチリア民謡独特のもの悲しい旋律と、どことなくコミカルなオーケストラ・アレンジを絶妙なさじ加減でブレンドした、可笑しくも哀しいルスティケッリのスコアがなんといっても印象的。#15ではオリジナルサントラ盤未収録だったトラックをメドレー形式で聴けます。  こちらもピエトロ・ジェルミ監督とのコンビ作で、処女を失った娘を巡って繰り広げられる家族同士のメンツ合戦を描いた風刺コメディ。やはり舞台となるシチリアの民謡をベースにしたシンプルかつ分かりやすいメロディが特徴ですね。コミカルでありながら、どことなく哀しげな雰囲気を漂わせるところがルスティケッリ節といった感じでしょうか。思わず口ずさんでしまうくらいキャッチーな主題歌#1は名曲です。  ルイジ・コメンチーニ監督、クラウディア・カルディナ―レ&ジョージ・チャキリス主演による悲恋ドラマ。日本でも大ヒットした作品ですけど、これがもうメロウでセンチメンタルなルスティケッリ節炸裂です。これぞメロドラマ音楽の王道といったところでしょうか。ナポリ歌謡的なコテコテの哀愁メロディを土台にしつつ、程よくクールなジャズ風味をあしらっている辺りのモダンなセンスも良し。傑作です。

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白い肌に狂う鞭 La frusta e il corpo (1963)
モデル連続殺人 Sei donne per l'assassino (1964)

アルフレード・アルフレード
Alfredo Alfredo (1971)

限りなく愛に燃えて
Una donna alla finestra (1976)

(P)2005 Digitmovies (Italy) *Limited Edition (P)1993 CAM (Italy) (P)2008 Avanz Records (Japan)
La frusta e il corpo
1,Windsor Concerto (Titoli)
2,Il ritorno di Kurt
3,Windsor Concerto (Piano solo)
4,Un ospite sgradito
5,Windsor Concerto (Sulla spiaggia)
6,Nella notte e uccisione di Kurt
7,Il cadavere di Kurt e un antica vendetta
8,La tomba di Kurt e angoscia di Nevenka
9,Windsor Concerto (Ricordo di Kurt)
10,Apparizione di Kurt e incubo nella notte
11,Le impronte erano lii e nella capella
12,Diabolica presenza e Nevenka nella cripta
13,Windsor Concerto (Il fantasma di Kurt)
14,Il cadavere del conte Menliff
15,Terrore nella notte
16,Nevenka, sepolta viva e il fantasma di Kurt
17,Apertura della bara di Kurt e una lama nel buio
18,Windsor Concerto (L'ultimo incontro di Kurt e Nevenka)
19,Windsor Concerto (Finale)
bonus tracks
20,Windsor Concerto(version alternativa)
21,Windsor Concerto (Version singolo - Medley)
Sei donne per l'assassino
1,Atelier (Titoli)
2,Inseguimento e morte di Isabella
3,Nascondendo il cadavere
4,Atelier (Ripresa)
5,Brutale aggressione
6,L'indagine continua
7,Terrore nella casa di moda
8,Sospetti
9,Attesa ossessiva
10,Il killer colpisce ancora
11,Defile
12,Assassino
13,Nuovi sospetti
14,Attacco notturno
15,Verso la verita
16,Il volto dell'assassino (finale)
bonus tracks
17,Atelier (singolo side A-in mono)
18,Dofile (singolo side B-in mono)
19,Atelier (versione alternativa in stereo)
1,Sponsali *
2,Flagranza
3,Nella serra
4,Mancato suicidio
5,Verso il campanile
6,Moglie che va...
7,Flagranza
8,Nuovo nido
9,Verso il campanile
10,Miraggio di Alfredo
11,Vicolo a sera
12,Fiore tra i fiori
13,Ricetta amorosa
14,Miraggio di Alfredo
15,Amori di Alfredo
16,Vicolo a sera
17,Mormorio cittadino
18,Ti amo...Alfredo
19,Amorosa furtivo
20,Verso il campanile
21,Fiore tra i fiori
22,Un... bacio !
23,Vicolo a sera
24,Squardo furtivo
25,Fiore tra i fiori
26,Desolato Sconforto
27,Un bacio !
28,Si chimava Crocefissa
29,Sponsali *

* canta Pino Ferrara
1,Dolce Ricordi
2,Pedinamento
3,Piano Bar
4,...mio caro Tango
5,Esserti vicino
6,Infinita
7,Nostalgia
8,Blues
9,Danza ellenica
10,Rivederti
11,Irreale realta
12,Per sempre
 マリオ・バーヴァ監督、クリストファー・リー主演によるエロティックなゴシック・ホラー。全体的にいかにも古典的ホラーといった感じの、厳かで重々しいフルオーケストラ・スコアに仕上がっています。ただ、随所で頻繁に登場するテーマ曲Windsor Concertoは、まるでショパンのノクターンを思わせるような、もの悲しくもロマンティックなピアノの旋律が印象的。これはルスティケッリ自身も本人のベストワークの一つに挙げていたそうです。  マリオ・バーヴァ監督、エヴァ・バルトク主演の傑作猟奇ホラー。ファッション業界を舞台にした作品ということもあってか、ルスティケッリのスコアもジャジーでアダルトなムードが満載。しかも、映画とは違って全篇フルステレオでの収録!個人的には、マーティン・デニーやペレス・プラードを彷彿とさせる妖艶なラテン風ラウンジミュージックに仕上がったテーマ曲Atelierが大好きです。そこはかとなく漂うメロウな哀愁感がルスティケッリらしい。  当時人気爆発中のハリウッド俳優ダスティン・ホフマンを主演に迎えた、ピエトロ・ジェルミ監督とのコンビ作。持てない男が理想の美女と結婚したら、これがとんでもない悪妻だったというセックス・コメディ。どこまでもロマンティックに美しく、それでいてホンワカとした温かさを感じさせるルスティケッリのドリーミーなスコアは絶品です。どことなく、ハリウッド黄金期のロマンティック・コメディ的なムードが漂う作品かもしれませんね。  ピエール・グラニエ=ドフェール監督、ロミー・シュナイダー主演によるラブ・ロマンス映画。日本でのみCD復刻された貴重な作品です。これがもうエレガントでセンチメンタルでロマンティック(笑)!フランス映画ということもあって、いつものイタリア的な泥臭さが影をひそめており、ジョルジュ・ドルリューやフィリップ・サルドを彷彿とさせる上品で香しい大人のロマンスを存分に堪能できる1枚となっております。超おススメ!

 

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