The Burrowers (2008)

 

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(P)2008 Lions Gate Films (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/5.1chサラウンド・2.0
chステレオ/音声:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/124分/製作:アメリカ

映像特典
メキング・ドキュメンタリー
特殊効果舞台裏ドキュメンタリー
監督JTペティと俳優K・ギアリーによる音声解説
監督:J・T・ペティ
製作:ウィリアム・シェラク
   ジェイソン・シューマン
脚本:J・T・ペティ
撮影:フィル・パーメット
クリーチャー効果:ロバート・ホール
音楽:ジョセフ・ロドゥカ
出演:ウィリアム・メイポーザー
   ショーン・パトリック・トーマス
   ダグ・ハッチソン
   カール・ギアリー
   クランシー・ブラウン
   ローラ・リートン
   ゲイレン・ハッチンソン
   アレクサンドラ・エドモ
   ジョセリン・ドナヒュー

 

 これまでに、ホラー映画は様々なジャンルと融合することによって独自の進化を遂げてきた。もちろん、異種混合というのは様々な映画ジャンルにおいて当たり前のように繰り返されてきているわけで、なにもホラー映画に限った話ではないのだけれど。だが、よくよく考えれば、その中でもアメリカのお家芸である西部劇とホラー映画のコラボレーションというのは、意外にも例が少ない。
 実は、パルプ・フィクションやコミックの世界では、このホラー×西部劇というジャンル・ミックスは決して珍しいものではない。作家のジョー・R・ランスデールやシェーン・レイシー・ヘンズリーは開拓時代のアメリカを舞台にしたホラー小説を幾つも発表しているし、マーヴェル・コミックやDCコミックも西部のガンマンがヒーローとして活躍するホラー・コミックを数多く出版している。
 ただ、こうしたパルプ小説やコミックが登場するようになったのも70年代以降のことなので、“西部劇×ホラー”という概念そのものはまだまだ歴史が浅いと考えていいかもしれない。
 一方の映画界に目を移してみると、ホラー的な要素を持った西部劇というのは30年代から低予算のB級連続活劇として少なからず作られていた。ただ、これらの作品は盗賊団などのリーダーが妖怪的な覆面をしている神出鬼没の存在というだけで、決して本物の妖怪や幽霊が出てくるわけではない。要は、怪奇的なムードを拝借したというだけの純然たる西部劇だったわけだ。
 50年代にドライブ・イン・シアターがブームになると、隕石の光を浴びた少年が怪物化してしまう『十代の陰獣』(57)や伝説のガンマンが吸血鬼と対峙する『ビリー・ザ・キッド対ドラキュラ』(66)、同じく実在する伝説のガンマンが人造人間と対峙する『ジェシー・ジェームスとフランケンシュタインの娘』(66)といった超低予算のZ級西部劇ホラーがポツポツと作られてはいるものの、ジャンルとして確立することはなかった。
 その後も、バンパイア映画に西部劇的な要素を持たせたホラー・コメディ『サンダウン』(91)や、食人鬼と西部劇を合わせてミュージカル・コメディに仕上げた『カンニバル!THE MUSICAL』(93)、開拓時代を舞台に戦場におけるカンニバリズムを描いた『ラビナス』(99)、ゾンビと西部劇をかけ合わせた『クイック&アンデッド』(06)などの西部劇ホラーが時おり作られている。しかし、いずれも興行的・批評的に成功しているとは言いがたく、試みとしては失敗に終っていると言わざるを得ない。
 どうやら、あまり相性が良いとは言えなさそうな西部劇とホラー映画。南北戦争の時代を背景に死んだ兵士たちが悪霊によって甦る『キリング・ボックス』(93)やアメリカン・ゴシック的な幽霊譚をエッセンスとして盛り込んだ『荒野のストレンジャー』(72)なんかはとても良く出来た作品だったと思うが、やはりそうした成功例は圧倒的に少ない。そんなホラー映画界のマイナー・サブジャンルである西部劇ホラーに一石を投じるのが、この“The Burrowers”という作品だ。

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スチュワート家の土地で響き渡る銃声と叫び声

地下室で息を潜める女性と子供たちだったが・・・

 舞台となるのは開拓時代のアメリカ西部。開拓民の一家が行方不明となり、インディアンの仕業だと考えた隣人たちと騎兵隊がその足取りを追う。しかし、彼らの行く先々には奇妙な現象が。荒野のあちこちに点在する不気味な穴、忽然と姿を消した開拓民の一団、そして生きたまま地中に埋められていた少女。
 やがてインディアンの口から語られる“バロワーズ(穴を掘る者たち)”の存在。それはコロンブスが新大陸を発見する遥か以前から西部の荒野に息を潜めてきた、恐るべき未確認生物だった。
 地下世界を棲家として夜になると地上で獲物を狙う彼らは、狙った獲物を全身麻痺状態に陥らせて生きたまま地中に埋める。獲物を新鮮な状態で保存し、少しづつその肉を食らっていくのだ。かつてはバッファローを主食としていたバロワーズ。しかし、西部の開拓によってバッファローの数が激減したため、人間を狙うようになったのである。
 闇夜に紛れてどこからともなく現われ、その鋭利な牙と爪で人間を襲うバロワーズの群。一体どれだけの数がいるのか?どうすれば退治することができるのか?何一つ分からないまま、主人公たちは絶体絶命の状況へと追い込まれていく。

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惨状を発見したファーガス(K・ギアリー)とクレイ(C・ブラウン)

パーチャー(W・メイポーザー)のもとにも事件の知らせが届く

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スチュワート家の近くで発見された奇妙な穴

ファーガスたちは騎兵隊と行動を共にすることとなる

 まず本作に驚かされるのは、西部劇として至極真っ当に出来上がっているということだろう。当時の騎兵隊の横暴な権威主義やインディアンに対する差別と偏見、同じ国からやって来た移民同士の固い絆といった時代や世相の背景を丁寧に織り込み、まるでサム・ペキンパーやセルジョ・レオーネのウェスタンを見ているかのような荒々しい男たちのドラマが繰り広げられていく。褪せたモノトーンで統一された色彩と象徴的でスタイリッシュなカメラワークなども、明らかにマカロニ・ウェスタンやアメリカン・ニューシネマ以降の西部劇を意識したものだろう。
 ペシミスティックで皮肉に満ちたクライマックスは、ラルフ・ネルソンの傑作西部劇『ソルジャー・ブルー』(70)をヒントにしているようにも思える。さらに、随所で挿入される回想シーンの夢見心地なスローモーションと登場する美少女の儚げな美しさが、この種の作品には珍しい詩情豊かな瑞々しさをアクセントとして与えている。とても独立系の低予算ホラーとは思えないような風格を漂わせた作品だ。
 ただ、その一方で低予算映画ゆえの弱点や欠点があることも否定できない。地底人をイメージした“バロワーズ”たちのクリーチャー・デザインそのものは決して悪くないのだが、いかんせんVFXの予算が少ないせいもあって中盤までほとんど姿を見せることがない。
 しかも、CGの出来栄えそのものがとても粗雑で、その上登場シーンの大半が暗闇ということもあり、せっかく出てきてもイマイチよく見えないという結果に。どうにもこうにも歯がゆくてイライラさせられるのだ。脚本はとても良く練られているし、西部劇としても立派な出来栄えなので、このホラー・パートの中途半端な完成度は残念で仕方ない。

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黒人の下働きキャラハン(S・P・トーマス)と親しくなるファーガス

騎兵隊はインディアンの青年を捕える

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騎兵隊長ヴィクター(D・ハッチソン)と対立するクレイ

スチュアート家のそばにあったのと同じような穴を発見

 監督と脚本を手掛けたのは、「スプリンターセル」シリーズや「バットマン・ビギンズ」などのゲームソフト・クリエイターとして知られるJ・T・ぺティ。映画監督としても、これまでに『mute ミュート』(01)や『ミミックV』(03)などの低予算ホラーを手掛けており、その独創的で実験的な作家性で一部のホラー・マニアからは高い評価を得ている人物だ。
 本作でも、題材に対して独自の視点と角度から真剣に取り組む彼の真面目な姿勢が表れており、過去の西部劇映画を徹底的に研究したことがとてもよく分かる。これは『ミミックV』にも言えることかもしれないが、予算の許す範囲内で出来る限りの最善を尽くしているという印象だ。つまり、もしメジャー・スタジオ並の潤沢な予算が与えられていたならば、恐らくこれまでの西部劇ホラーに対する先入観や既成概念を吹き飛ばすような傑作に仕上がっていたかもしれない。
 それでも、これまで不毛のジャンルだった西部劇ホラーに新たな可能性を示してくれた功績は正しく評価すべきだろう。やはり、どんなジャンルや題材でも、それを生かすか殺すかは作り手の才能とビジョン次第。まだまだ一般的に認知されているとは言いがたいJ・T・ぺティ監督だが、これからの活躍が大いに期待できる有望なホラー映画作家の一人として注目したいところだ。
 ちなみに、本作は全米でも劇場公開されることなく、トロント国際映画祭など一部の映画祭で限定上映されただけで、ひっそりとDVD発売されることとなった。不況の強い風が吹く昨今のアメリカ映画界だが、このような優れた作品が陽の目を見ないまま埋もれてしまうのは、やはり重ね重ね残念なことである。

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ファーガスたちは騎兵隊と袂を分かつことになる

地中に埋められた少女を発見する一行

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少女の首筋には不気味な傷跡が残されていた

森の中でインディアンに襲われるファーガスたち

 1879年のアメリカはダコタ準州。アイルランドからの移民であるスチュワート一家の暮らす土地で、真夜中に銃声と叫び声が響く。さてはインディアンの襲来か?地下室で息を潜める女子供たち。地上では激しい銃声が鳴り止まず、男たちの断末魔の悲鳴が耳をつんざく。すると次の瞬間、頭上の床を突き破って得体の知れない“何か”が彼らを襲う。逃げ場を失ってパニックに陥った子供や女性の悲鳴が暗闇に響き渡る。
 翌朝、移民仲間のファーガス(カール・ギアリー)とクレイ(クランシー・ブラウン)の二人は、荒れ果てたスチュワート家を発見して驚愕する。家の中には何人か使用人の死体が残されているものの、一家の姿は見当たらない。きっとインディアンに襲撃されて連れ去られたに違いない。そう考えた彼らはスチュワート家の人々を救出するために、その足取りを追うことにする。
 若者ファーガスは、その日スチュワート家の娘メリーアン(ジョセリン・ドナヒュー)にプロポーズをするつもりだった。美しくも繊細で心優しいメリーアンの笑顔が脳裏から離れないファーガス。彼はすぐさま、同じくアイルランド移民仲間のパーチャー(ウィリアム・メイポーザー)のもとへと馬を走らせた。
 インディアンに夫を殺された未亡人ガートルード(ローラ・リートン)のもとに居候しているパーチャーは、彼女の息子ドビー(ゲイレン・ハッチンソン)も連れて行くことにする。父親代わりとして、彼に西部の男の生き様を教えるのだ。
 スチュワート一家襲撃の知らせを聞いて、騎兵隊の一団も動き出した。ファーガスたちは騎兵隊と行動を共にしなくてはならなくなるが、横暴で傲慢な騎兵隊長ヴィクター(ダグ・ハッチソン)との折り合いは悪かった。また、ファーガスたちはスチュワート家の近くで発見した奇妙な穴のことや、残された死体の首に見つけた不気味な傷口のことも気がかりだった。果たして、一家を襲ったのは本当にインディアンなのだろうか?
 やがて、騎兵隊の一団は荒野を彷徨っていたインディアンの青年を捕獲する。彼が言うのには、一家を襲ったのは“バロワーズ”だという。それはインディアンの部族のことなのか?それ以上のことは硬く口を閉すインディアンの青年に、騎兵隊長ヴィクターは容赦ない拷問を加える。
 インディアンとて同じ人間。騎兵隊の暴力を見過ごすことが出来なかったファーガスは、友人となった下働きの黒人青年キャラハン(ショーン・パトリック・トーマス)と共に、秘かにインディアンに食事を与える。だが、それが騎兵隊長ヴィクターの怒りを買い、それに反発したクレイと一触即発の事態に。
 結局、ファーガス、クレイ、パーチャー、ドビーの4人は騎兵隊と袂を分かち、独自に“バロワーズ”の足取りを追うことにする。さらに、騎兵隊に嫌気のさしたキャラハンが後から彼らに合流した。
 ある日、一行は焼け焦げた幌馬車を発見する。恐らく、開拓民を乗せていたのだろう。インディアンかなにかに襲われたに違いない。だが、辺りには遺体の一つも残されていなかった。やはり何かがおかしい。周辺を捜索していた彼らは、土の中に埋められた少女を発見する。
 目をかっと見開いた状態の少女は、一見すると死んでいるかのようにも思えたが、よく見ると足の指を頻繁に動かしている。彼女は生きているのだ。しかも、首筋には不気味な傷が。いったい誰が何のためにこんなことを?
 さらに、彼らはスチュワート家のそばで見つけたものと同じような穴も発見した。状況から察して、これが“バロワーズ”の仕業であることは容易に想像できた。しかし、その正体については、ますます謎が深まるばかりだ。
 少女をこのままにしてはおけないと考えた一行は、ドビーを彼女のもとに残して先へ進むことにした。必ず戻ることを約束して。しかし、彼らは森の中でインディアンに襲撃され、あろうことかクレイが射殺されてしまう。さらに、野宿しているところを得体の知れない生き物に襲われ、パーチャーが首筋に傷を負ってしまった。“バロワーズ”がついに姿を現したのだ。その頃、ドビーと少女も同じように“バロワーズ”の襲撃を受け、無残にも餌食となってしまった。
 荒野を彷徨ったファーガスたちは、“フェイス(誠実)”という名のインディアン女性(アレクサンドラ・エドモ)と遭遇する。彼女は“バロワーズ”の正体について語ってくれた。
 彼らは太古の昔からこの地に生息する生き物で、バッファローを主食としていた。普段は地下に潜んでおり、夜になると地上へ出て獲物を狩る。彼らは麻酔効果のある特殊な体液を使い、獲物の首に付けた傷口からその体液を流し込むことによって、相手を生きたまま動けなくしてしまう。そして、獲物が腐らないように温度の低い地中へ埋め、少しづつその肉を食べるのだ。さらに、白人がやってきてからバッファローの数が減ってしまい、食料に困った彼らは人間を襲うようになったというのである。
 “フェイス”によれば、インディアンの中に“バロワーズ”退治に長けた部族がいるという。ファーガスたちはその部族のもとを訪れ、スチュワート一家の救出に協力してもらうことを考えた。もはや手遅れであろうことは分かっていても。
 ところが、その部族はパーチャーを連れ去ってしまう。首に傷をつけられたパーチャーは、いわばマーキングされていたのだ。“バロワーズ”たちはその匂いを嗅ぎつけてくるはず。つまり、パーチャーは彼らをおびき寄せる餌にされてしまったのだ。
 パーチャーを救い出すべく森の中へと入っていったファーガス。ところが、インディアンの仕掛けたトラバサミで足の自由を奪われてしまった。そこへ次々と現われる“バロワーズ”たち。無残にも目の前でパーチャーが彼らに食い殺されてしまう。さらに、“バロワーズ”たちはファーガスの存在にも気付いてしまった・・・!

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得体の知れない生き物の餌食となるドビー(G・ハッチンソン)

野宿していたファーガスたちの身にも危険が

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ついに姿を現した未確認生物“バロワーズ”

パーチャーが首筋を傷つけられてしまう

 撮影を手掛けたのは、『イン・ザ・スープ』(92)や『フォー・ルームス』(95)などアレクサンダー・ロックウェルとのコラボレーションで知られるカメラマン、フィル・パーメット。最近では『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2〜』(05)や『ハロウィン』(07)などで、ロブ・ゾンビ監督とコンビを組んでいる人物だ。前衛写真家としても国際的に活躍しており、その独特の乾いたビジュアル・タッチが特徴だ。
 さらに、音楽スコアには『死霊のはらわた』(83)シリーズや『ジェヴォーダンの獣』(01)、『ブギーマン』(05)などホラー映画ファンにはお馴染みの作曲家ジョセフ・ロドゥカが参加。今回はホラー映画というよりも正統派の西部劇に近い重厚で風格のあるスコアを聴かせてくれる。
 そして、肝心の“バロワーズ”たちのクリチャー・デザインを手掛けたのは、『バフィー〜恋する十字架〜』(97〜03)やそのスピン・オフである『エンジェル』(99〜04)、『ポイントプレザントの悪夢』(05)、『ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ』(08〜09)などのテレビ・シリーズで有名な特殊メイク・マン、ロバート・ホール。彼は『SF/ボディ・スナッチャー』(78)や『キャット・ピープル』(82)などで有名な大御所トム・バーマンの弟子で、ロジャー・コーマンのもとで数多くのB級ホラーやSFに関わってきた人物だ。自ら立ち上げた特殊メイク工房“オールモスト・ヒューマン”を主宰し、最近では『モーテル』(07)や『プロム・ナイト』(08)、『REC:レック/ザ・クアランティン』(08)などのメジャー・ヒット作を次々と手掛けている。
 ただ、本作は予算が十分に与えられなかったためか、デザインそのものはユニークだったものの、CGを主体にした最終的な仕上がりはイマイチ。十分に才能を発揮できなかったのは惜しまれるところだ。

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一行はインディアンの女性“フェイス”にバロワーズの正体を聞く

トラバサミに足を挟まれてしまったファーガス

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パーチャーを狙ってバロワーズたちが群がってくる

ファーガスの存在に気付いたバロワーズが迫る

 主人公たちを演じる役者の顔ぶれは比較的地味だが、いずれも玄人受けする個性的な演技派ばかり。あえてジャンル系の役者を起用せず、“西部劇らしさ”を体現できる面構えのいい俳優を揃えたのは大正解だった。
 まず、“バロワーズ”に首筋を傷つけられて徐々に精神的バランスを失っていくパーチャー役には、『イン・ザ・ベッドルーム』(01)のマリサ・トメイの暴力亭主役で注目されたウィリアム・メイポーザー。恋人の行方を捜す素朴な若者ファーガス役には、イーサン・ホーク主演の『ハムレット』(00)のホレーショ役が印象的だったアイルランド人俳優カール・ギアリー。そのファーガスと親友になる黒人青年キャラハンを演じるのは、『セイブ・ザ・ラストダンス』(01)のダンサーを夢見る若者デレク役で一躍知られるようになったショーン・パトリック・トーマス。そして、彼らのリーダー的存在であるクレイ役には、『バッド・ボーイズ』(83)や『ブルースチール』(90)、『ショーシャンクの空に』(94)などでお馴染みの名優クランシー・ブラウン。
 そのほか、『グリーン・マイル』(99)の看守ウェットモア役や人気ドラマ『LOST』のダーマ・イニシアチブのリーダー、ホレス役などで知られる悪役俳優ダグ・ハッチソン、90年代に全米で大ブームとなったドラマ『メルローズ・プレイス』(93〜97)の悪女シドニー・アンドリュース役で有名なローラ・リートン、現在全米で話題のホラー映画“The House of the Devil”(09)の主演で注目されているジョセリン・ドナヒューなどが脇を固めている。

 

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