バークにまかせろ!
Burke's Law
エピソード・ガイド3
(シーズン1 第21話〜第32話)

 

TITLE.JPG

 

第21話 Who Killed His Royal Highness? (全米放送:1964年2月21日)

ROYAL_HIGHNESS-1.JPG ROYAL_HIGHNESS-2.JPG ROYAL_HIGHNESS-3.JPG ROYAL_HIGHNESS-4.JPG

自称貴族のマクシミリアン大公が死亡する

ティルソンとハートは毒殺を疑った

大公の秘書スミッティ―とデートを楽しむバーク部長

なんと大公は本物の貴族だった…?

<ストーリー>
 ハリウッド界隈ではちょっとばかり名の知れた、自称東欧貴族の老人マクシミリアン大公がパーティの最中に死亡した。年齢が年齢だったこともあり、現場検証を行った警察は自然死と断定する。バーク部長の見解も概ね同じだったのだが、ティルソンとハートは真っ向から異論を唱える。というのも、死体の状況から見て毒草ベラドンナによる毒殺が疑われたからだ。
 ひとまず、バーク部長はマクシミリアン大公の自宅へと足を運ぶ。そこは王室ゆかりの品々を陳列した博物館を兼ねていたのだが、そもそも大公は貴族を自称する怪しげな人物として一躍有名になった人物。なので、陳列品が本物かどうかは眉唾ものだった。マネージャー兼秘書の美女スミッティ(エリザベス・モンゴメリー)に案内され、大公の書斎を訪れたバーク部長は、彼が日常的に服用していたという2種類の薬の瓶、そしてタイプライターに放置されたままの原稿を発見する。どうやら、大公は生前にゴーストライターを雇って自叙伝を書かせていたらしい。
 バーク部長は薬を鑑識へ回し、ゴーストライターのアーチ―・リドー(ミッキー・ルーニー)のもとへと向かう。アーチ―は金のためならどんな仕事でも引き受ける商売人の文筆家で、推理サスペンスと児童書を同時に書き進めることだってお手のもの。大公の自叙伝もその一つに過ぎず、裏事情などには全くの無関心だった。
 やがて、検視の結果マクシミリアン大公の死因はベラドンナによる毒殺と結論付けられたが、2種類の薬品からはいずれも毒の成分は発見されず。当然、パーティの関係者と来賓に疑いの目が向けられる。会場となったレストランのオーナー・シェフ、ガス・リープス(バート・パークス)は、大公が一文無しの頃からの付き合いではあったが、自分の妻ハニー・フェザー(ゲイル・ストーム)と大公が仲睦まじいことに嫉妬していたようだ。ただ、自己顕示欲の強いハニー・フェザーはなにかと男に対して色目を使うクセがあり、そのことから夫婦仲は普段から険悪だった。つまり、彼女と仲睦まじかったのは大公だけではないのだ。
 一方、バーク部長はスミッティをデートに誘い、甘いひと時を過ごす。とりあえず、現時点では大公に最も近い存在だった彼女が最有力候補の容疑者ではあったが、バークは天真爛漫で素直な彼女が犯人だとは到底思えない。さらに、高価なビンテージ人形などを扱う古美術商タッチストーン(シェルドン・レオナード)や、大公の前妻モニカ・クレンショー(リンダ・ダーネル)をマークする警察だったが、いずれも確かなアリバイがあった。
 そんな時、大公と対立関係にあったとされる謎の人物チャーリー・プリンス(テリー・サヴァラス)の所在が判明する。彼は浮浪者用の宿泊施設で寝泊まりしていた。薄汚れてはいながらも、身なりの良い格好をしているチャーリー。実は、彼はマクシミリアン大公の従兄弟だった。彼によると、世間の風評とは裏腹に、大公は東欧カダリアン王国の王位継承者、つまり正真正銘の貴族なのだという。もちろん、従兄弟であるチャーリー自身もそうだ。
 しかし、幼い頃に革命で祖国を追われたことから、亡命先のアメリカで貧しい暮らしをせねばならなくなったのである。そして、その貧困から抜け出すために、わざと“自称貴族”という怪しげなイメージを作って世間の注目を集め、テレビや映画などに出演して名を成したのだった。そうした売名行為に嫌悪感を抱いていたチャーリーは、あえて大公とは距離を置いて反発していたのだという。そんな彼が今も大切にしているという古い写真を手渡されたバーク部長。そこには、幼い頃のマクシミリアンとチャーリーらしき少年が写っている。だが、それだけでは十分な証拠にはならなかった。
 そこで、チャーリーは大公の書斎にある隠し金庫の場所を教え、その中に先祖代々の家宝である豪奢なネックレスが大切にしまわれていることを伝える。しかし、金庫の中は空っぽだった。恐らく、犯人の目的はこれだったのだろう。そこで、バーク部長は犯人の次の手を先読みし、ある罠を仕掛けるのだったが…。
<解説>
 歴史の波に翻弄された亡命貴族の哀しい末路を描くエピソード。弱肉強食のアメリカ社会で生き残るため、本物の貴族がニセモノを演じなければならないというのがなんとも切ない。そこには、真の価値をろくに理解しないままヨーロッパの伝統文化を有り難がるアメリカ人、そして話題性ばかりが取沙汰される現代社会の軽薄な風潮に対する大いなる皮肉が込められていると見ていいだろう。監督は第6話以来の登板となるドン・ウェイス。脚本には第16話でも組んだポール・デュボフとグウェン・バーニ、撮影監督としてチャールズ・バークが参加している。
 バーク部長といい雰囲気になるキュートな美女スミッティ―役は、第2話にも出演していた『奥さまは魔女』のエリザベス・モンゴメリー。ゴーストライターのアーチー・リード役には、戦前のトップ・アイドルにして91歳の今なお現役バリバリの大御所ミッキー・ルーニーが登場。また、マクシミリアン大公の前妻モニカ役として、『荒野の決闘』('46)のリンダ・ダーネルが顔を出しているのも、古い映画ファンには興味深いところだろう。
 さらに、第11話にも出ていた『刑事コジャック』のテリー・サヴァラスがチャーリー・プリンス役で再登板。ミス・アメリカの総合司会を25年間務めた有名な司会者バート・パークスがシェフのガス・リープス役を熱演し、さらに'50年代の人気ドラマ『可愛いマギー』('52〜55)で一世を風靡した女優ゲイル・ストームがその妻ハニー・フェザー役を演じている。また、古美術商タッチストーン役のシェルダン・レオナードは、『メイベリー110番』や『アイ・スパイ』など'60年代に幾つもの人気ドラマを製作した大物プロデューサーなのだが、もともとは映画俳優の出身だったのだそうだ。

ROYAL_HIGHNESS-5.JPG ROYAL_HIGHNESS-6.JPG ROYAL_HIGHNESS-7.JPG ROYAL_HIGHNESS-8.JPG

エリザベス・モンゴメリー

ミッキー・ルーニー

リンダ・ダーネル

テリー・サヴァラス

ROYAL_HIGHNESS-9.JPG ROYAL_HIGHNESS-10.JPG ROYAL_HIGHNESS-11.JPG

ゲイル・ストーム

バート・パークス

シェルダン・レオナード

 

第22話 Who Killed Marty Kelso? (全米放送:1964年2月28日)

MARTY_KESLO-1.JPG MARTY_KESLO-2.JPG MARTY_KESLO-3.JPG MARTY_KESLO-4.JPG

ハリウッドの大物エージェント、ケルソが転落死した

新妻ミアは夫の死にも顔色一つ変えない

ケルソの体内から大量の睡眠薬が検出された

映画監督ホーガスはケルソの裏の顔を暴露する

<ストーリー>
 ハリウッドの大物タレント・エージェント、マーティ・ケルソが自宅の階段で転落死した。忠実な召使で用心棒のキッド・マッコイ(ハーシェル・バーナーディ)によると、真夜中にケルソの自室から呼び出しブザーが鳴ったので驚いて飛び出したところ、苦悶の表情を浮かべたケルソが目の前で2階から転げ落ちたのだという。死体を検証したところ、ケルソの首にはペーパーナイフが突き刺さっていた。
 誰かに刺されたのだろうか?だが、事件当夜はケルソの新妻ミア(ルチア―ナ・パルッツィ)が外泊しており、屋敷にはケルソとマッコイの2人しかいなかったはずだった。マッコイは15年以上に渡ってケルソに仕えており、その忠誠心は中途半端ではない。彼の言うのには、昨晩はケルソとミアの結婚を祝うパーティが開かれ、離婚した3人の前妻たちが一堂に会したらしい。彼らには普通ではちょっと考えられない奇妙な信頼関係があったのだという。
 そこへ、その新妻ミアが帰宅した。夫の死を知らされても動揺するような様子すら見せず、落ち着き払った彼女を見て首を傾げるバーク部長やティルソンたち。ケルソの抜擢でイタリアからアメリカへ活動の場を移したばかりの彼女は、ハリウッド・デビューとなる新作映画のことで頭がいっぱいだったのだ。もちろん(?)、例によって例のごとく、バーク部長はそんな彼女のハートをたちまち射止めてしまう。
 ミアにはアリバイがあった。事件の夜、彼女は映画監督ジョージ・ホガース(ドン・テイラー)の自宅で脚本の読み合わせをしていたのだという。ホーガスもそのことを認め、実は僅かな期間ではあったものの2人が過去に夫婦だったことを告白する。また、彼は殺されたケルソとも付き合いの長い友人であり、浮き沈みの激しい映画界で幾度となく助けられたことがあるという。
 次に、バーク部長とティルソンはケルソの3番目の妻スーザン・ショー(ダイアン・マクベイン)のもとを訪れる。彼女は水泳選手として注目されたところをケルソにスカウトされ、ハリウッドのトップ女優として育てられた。離婚しても恩人としての関係は続いていたのだという。ただ、彼女の現在の夫フランク(ジョン・エリックソン)はとても嫉妬深い性格で、彼らの友情関係を快くは思っていなかったようだ。
 また、バーク部長はケルソの最初の妻チューチ・スミス(マリー・ウィルソン)からも話を聞く。彼女もまた、ケルソに見出された映画女優だった。しかし、演技力に乏しいばかりかオツムの方もかなり弱く、ケルソに助けられてなんとか仕事を得ているような状態。そんな彼女がケルソを殺害するとはとても考えられなかった。
 その頃、検視の結果から意外な事実が判明する。彼の体内から大量の睡眠薬が見つかったのだ。毒殺なのか、それとも刺殺なのか?しかも、睡眠薬と一緒になぜか炭酸水素ナトリウムが検出されていた。すっかりわけが分からなくなってしまったバーク部長。だが、マッコイの話によると、ケルソは日頃から胃薬として炭酸水素ナトリウムを服用していたという。しかも、その缶の蓋を開けるためにペーパーナイフを使っていた。つまり、いつものように炭酸水素ナトリウムを飲んだところ、そこに大量の睡眠薬が混ぜられていたことから気分が悪くなり、ペーパーナイフを手にしたまま階段を転げ落ちてしまったため、首にナイフが刺さって死んでしまったのだ。では、いったい誰が睡眠薬を混ぜたのか?
 さらに、ケルソ宅へ不法侵入した映画監督ホーガスの供述から、ケルソの裏の顔が見えてくる。窮地に陥った業界内の友人を助け、女優の卵たちを育て上げた人格者ケルソ。だが、その一方で彼は恩を売った相手から徹底的に搾取するという鬼のような顔も持っていたのだ。バーク部長はケルソの2番目の妻で女流脚本家のステフィー(グリニス・ジョンス)から、最初の妻チューチがパーティの最中に体調を悪くし、ケルソの寝室で横になっていたという事実を知らされる。
 果たして、炭酸水素ナトリウムに睡眠薬を混入したのはチューチだったのか?その後、ケルソの自宅からイアリングが発見され、事件の意外な真相が明らかとなる…。
<解説>
 常人には計り知れないハリウッド業界の不思議な人間関係にスポットを当てつつ、その裏でうごめく金と名声への欲望を浮き彫りにしていくユニークなエピソード。複雑に入り組んだストーリー展開はなかなか凝っている。ただ、ラストのどんでん返しは非常にご都合主義で安直。なんだか尻つぼみになってしまった感は否めない。第17話以来となる『オーメン2/ダミアン』のドン・テイラーが監督を務め、同じく第17話を手掛けたトニー・バレットが脚本を書いている。撮影監督はジョージ・E・ディスカント。
 ケルソの若き新妻にしてコケティッシュなイタリア人女優ミアを演じるのは、『007/サンダーボール作戦』('65)のボンドガールとしても有名なイタリアの国際派女優ルチア―ナ・パルッツィ。ネオレアリズモやロベルト・ロッセリーニなどをネタにした、イタリア映画絡みの洒落たジョークが散りばめられているのも面白い。
 そして、ケルソの別れた3人の前妻たちを演じる女優の顔ぶれも豪華。最初の妻チューチ役には、'30年代にワーナー専属のコメディエンヌとして活躍した女優マリー・ウィルソン。マリリン・モンローの原型とも言うべきプラチナ・ブロンド美女で、戦時中にはピンナップガールとしてもGIから絶大な人気を集めた人だ。2番目の妻ステフィー役には、『サンダウナーズ』('60)でアカデミー賞にもノミネートされたイギリス出身の名女優グリニス・ジョンス。さらに、3番目の妻スーザン役として、『北海の果て』('60)や『二十歳の火遊び』('61)で大人顔負けのクールな色気を披露したアイドル女優ダイアン・マクベインがミステリアスな魅力を放っている。
 さらに、映画監督ホーガス役を本エピソードの監督ドン・テイラー自身が演じているのにも注目。もともと『花嫁の父』('50)や『可愛い配当』('51)でエリザベス・テイラーの相手役を務めるほどの2枚目スターだった人だ。そのほか、第7話にも出ていた『ハニーにおまかせ』のジョン・エリックソン、ドラマ『ピーター・ガン』のジャコビー警部役で有名なハーシェル・バーナーディが登場。また、第11話にも出演していた元ミス・アメリカのアイドル女優メアリー・アン・モブリ―が、バーク部長のアバンチュール相手として、オープニングとエンディングで顔を出している。

MARTY_KESLO-5.JPG MARTY_KESLO-6.JPG MARTY_KESLO-7.JPG MARTY_KESLO-8.JPG

ルチア―ナ・パルッツィ

ダイアン・マクベイン

グリニス・ジョンス

ドン・テイラー

MARTY_KESLO-9.JPG MARTY_KESLO-10.JPG MARTY_KESLO-11.JPG MARTY_KESLO-12.JPG

ジョン・エリックソン

マリー・ウィルソン

ハーシェル・バーナーディ

メアリー・アン・モブリ―

 

第23話 Who Killed Avery Lord? (全米放送:1964年3月6日)

AVERY_LORD-1.JPG AVERY_LORD-2.JPG AVERY_LORD-3.JPG AVERY_LORD-4.JPG

著名なデザイナーのエイヴリー・ロードが刺殺される

現場には女性ものの化粧用コンパクトが

持ち主はホイットニーという富豪令嬢だった

森の中へと消えた謎の美少女を追うバークだが…

<ストーリー>
 インダストリアル・デザインの革命児と呼ばれた著名なデザイナー、エイヴリー・ロードが自宅で刺殺された。どうやら、書斎にいるところを何者かによって襲われ、背中にナイフが刺さったままの状態でリビングへたどり着き、電話で警察へ通報した直後に息絶えたようだった。その書斎からは床に落ちていた鍵が発見される。だが、ロードの自宅のあらゆる鍵と照らし合わせても合致するものは見つからなかった。
 さらに、リビングのテーブルからは女性ものの化粧用コンパクトが見つかる。すると、そこへそのコンパクトの持ち主である女性ホイットニー・ケリー(フェリシア・ファー)が現れた。彼女は大富豪の令嬢で、ロードに自家用ヨットのデザインを依頼していたらしい。美人で鼻っ柱の強い彼女のことを気に入ったバーク部長は、事情聴取を口実にデートへ誘ったものの断られてしまう。だが、狙った獲物は逃がさないバーク。花束を片手にオーケストラ付きの朝食サービスを伴って彼女の寝室へ押しかけるなど、あの手この手の女心をくすぐるような猛アタックを試みる。彼女によると、ロードにはアンという恋人がいるらしかった。
 一方、ティルソンとハートの2人は、ロードの自宅で秘密の部屋を発見。そこはどうやら彼の仕事場だったらしく、最新手掛けたらしいデザイン画が幾つも残されていた。そのうちの一つは、ホイットニーが依頼したという豪華な自家用ヨット。だが、それ以外の高層ビルやリムジン車、食料品パッケージなどは誰が依頼したものなのか分からない。この中に、犯人へと繋がるヒントがあるかもしれないとバーク部長は睨む。
 そこで、ベテランのハートが例の謎の鍵を作った鍵屋を探す一方、若手のティルソンが依頼人の手掛かりを探ることに。まず、高層ビルのデザイン画は実業家ザカリー・ベルデン(エド・ウィン)の依頼したものらしいことが判明する。ベルデンは幾つもの高層ビルを所有する大富豪だったが、その杜撰な手抜き工事がたびたび問題視されていた。もしかすると、建築工事を巡ってロードと争いになっていたのかもしれない。しかし、実際のベルデンはただ単にケチなだけのトボケた老人で、とても人を殺すような度胸があるようには見えなかった。
 その晩、ロードの自宅近くでデザイン画にそっくりなリムジン車が目撃され、何者かが屋敷に忍び込んでいるらしいとの通報が入る。急いで駆け付けるバーク部長。すると、一人の少女が屋敷から近隣の森へと逃げ出した。その後を追うバーク部長だったが、森の中で何者かに後頭部を強打され失神してしまう。だが、その直前に少女が口ずさんでいた歌のメロディだけはしっかりと憶えていた。
 翌日、警察署へスタントン・カスター(チル・ウィルス)という中年男が乗り込んでくる。彼は健康食品の製造販売をしている会社の社長で、新商品のパッケージデザインをロードに依頼していた。だが、前金を支払ったにも関わらず、いまだにデザインが上がってこない。怒ったカスターはロードを詐欺容疑で逮捕するよう警察へ訴えようとしていたのだ。つまり、彼はロードが殺されたことをまだ知らなかったのである。バーク部長から殺人事件の話を聞き、途方に暮れてしまうカスター。少なくとも、彼はロード殺しの容疑者ではなかった。
 その頃、ロードがデザインを手掛けたリムジン車の持ち主が判明。有名なカーディーラーのハミルトン・タルバート(ブロデリク・クロフォード)だった。しかし、タルバートはロードに車のデザインを依頼したことは認めたものの、事件当夜のアリバイがある。ここはバーク部長も引き下がらざるを得ない。
 そんな折、ハートがようやく鍵を作った鍵屋を見つけた。どうやら、ロードが自分名義で借りていたアパートの部屋の合鍵だったらしい。ただ、アパートの住所だけは特定できたものの、部屋番号までは分からなかった。そこで、アパートの部屋を片っ端から当たっていくバーク部長とティルソン、ハートの3人。すると、バーク部長はある部屋から漏れてくる歌声に耳を奪われる。そう、それは例の森の中で見失った少女の歌声に間違いなかった…。
<解説>
 ちょっとミステリアスで幻想的な演出を施しながら、社会的地位のある人物の邪悪な裏の顔と、その犠牲になった少女の哀れな末路を描いたエピソード。当時最先端だったインダストリアル・デザインという職業にスポットを当てたところが注目ポイントだろうか。中盤までは非常によく出来ていて面白いのだが、クライマックスの犯人探しはビックリするくらいに呆気ない。監督は『ペリー・メイソン』や『奥さまは魔女』などを手掛けたリチャード・キノン。第18話以来となるルイス・リードが脚本を手掛けている。撮影監督はチャールズ・バーク。
 今回バーク部長とお熱い関係になる美女ホイットニー役を演じているのは、故ジャック・レモン夫人として有名な女優フェリシア・ファー。デルマー・デイヴィス監督の傑作西部劇『決断の3時10分』('57)のヒロインとして記憶している映画ファンも少なくないかもしれない。
 さらに、第16話にも顔を出していたオスカー俳優ブロデリク・クロフォード、第3話にも出ていたチル・ウィルス、そしてアメリカの伝説的なコメディアン、エド・ウィンが登場。メインのゲスト・スターがたったの4人だけ、というのも結構珍しいと言えるだろう。

AVERY_LORD-5.JPG AVERY_LORD-6.JPG AVERY_LORD-7.JPG AVERY_LORD-8.JPG

フェリシア・ファー

ブロデリク・クロフォード

チル・ウィルス

エド・ウィン

 

第24話 Who Killed Andy Zygmunt ? (全米放送:1964年3月13日)

ANDY_ZYGMUNT-1.JPG ANDY_ZYGMUNT-2.JPG ANDY_ZYGMUNT-3.JPG ANDY_ZYGMUNT-4.JPG

ポップ・アートの芸術家ジグマントが殺害された

行方の分からない作品のあることが判明する

ジグマントは悪趣味な悪戯で友人の怒りを買っていた

ジグマント殺害を自供する人間が2人も現れるのだが…

<ストーリー>
 抽象的なモダンアートが世間の関心を集めつつある中、その中でも特に奇抜かつ斬新なアイディアで話題を呼んでいたアーティスト、アンディ・ジグマントが殺害された。ちょうどロサンゼルスで彼の展覧会が行われていたのだが、その会場で自らの作品のオブジェの一つとして串刺しにされていたのだ。ギャラリーのオーナー、メイソン(マクドナルド・ケリー)によると、その日は4枚の作品が売れたという。しかし、実際には5枚分の展示スペースが空になっていた。その5枚目の作品はいったいどこへ行ったのか?
 ひとまず、バーク部長はティルソン、ハートと手分けをして、ジグマント作品の購入
者4人から情報を集めることにする。まず、バークはロス市内でプードル専門の美容室を経営する空手の名人ミスター・ハロルド(アルド・レイ)の店を訪問。ハロルドはジグマントの友人であり熱烈なファンでもあったが、同時に愛憎半ばする感情も抱いていた。というのも、ジグマントは悪趣味な悪戯をするクセがあり、ハロルドもその犠牲者だったのだ。
 一方、ハートはテレビの子供向け番組で司会を務めるコメディアン、シリー・マックリー(ジャック・ウェストン)のもとを訪ねる。彼はちょうど番組の収録の最中だった。子供たちの前では陽気で面白いオジサンを演じるマックリーだったが、その素顔は短気なかんしゃく持ち。しかも大の子供嫌いだ。彼もまた、ジグマントからたちの悪い悪戯を受けていた。そのことで腹に据えかねていた彼は、ジグマントに毒を盛って殺したと告白する。
 さらに、ティルソンはジグマントのライバルでもある女流アーティスト、ディードリー・デマーラ(アン・ブライス)のもとを訪問。警察と聞いた途端に、彼女は女子トイレへ閉じこもってしまった。困ったティルソンはエイムス巡査に応援を要請し、女子トイレからディードリーを引きずり出してもらう。実は彼女はドラッグのジャンキーで、そのことをネタにジグマントから痛烈な悪戯をされていた。起こった彼女は、ギャラリーでジグマントを射殺したと自白する。
 かくして、ジグマントを殺害したと主張する人物が2人も現れ、困るやら呆れるやらのバーク部長。だが検視の結果、ジグマントの死因は槍で串刺しにされたことによるものであり、マックリーが盛ったとされる毒薬は致死量よりもはるかに少ない微量なものだったし、ディードリーが発砲したという銃弾も首をかすめただけだった。どちらも殺人未遂で逮捕されたものの、残念ながら真犯人ではなかったのである。
 残る1人は、ジグマントの助手であり恋人でもあった天才的な女性エンジニア、グウェニー・トレント(デボラ・ウォーリー)。彼女は大富豪の御曹司バーニー・ブリック(タブ・ハンター)こそが真犯人だと断言する。グウェニーに横恋慕していたバーニーは、ジグマントのことを強く逆恨みしていたというのだ。しかも、ジグマントは彼のクレジットカードを勝手に持ち出して使いまくっていたらしい。そのことでバーニーは実家から勘当されてしまったのだという。
 そこで、ティルソンはスカイダイビングを楽しむバーニーに接触し、詳しい事情を聞くことにした。すると、バーニーからは全く違った証言を得る。彼はグウェニーに横恋慕などしていないし、クレジットカードだって差し止めたので大した被害は出ていないという。それどころか、ジグマントに恨みを抱いていたのはグウェニーの方らしい。というのも、盗撮されたヌード写真を実家へ送りつけられるなどのひどい悪戯を受けていたというのだ。
 可愛らしい見た目と違って、グウェニーは怒ったら何をするか分からない気性の持ち主だと語るバーニー。果たして、どちらの証言が正しいのだろうか…?それとも…?
<解説>
 いわゆる時代のトレンドをキーワードとして取り上げた変化球的なエピソード。ちょうど当時はリキテンスタインやウォーホルが全米で脚光を浴びていた時期であり、ポップ・アートというのはタイムリーな話題だったのだろう。冒頭では興味半分でギャラリーを訪れた老人たちが、アフリカの民芸品などをキャンパスにコラージュした作品を見て目をパチクリとさせ、“私たちにはノーマン・ロックウェルの方が馴染みやすいわね”と呟くシーンなんかがあったりして、ポップ・アートというムーブメントへの当時のアメリカ一般大衆の驚きや困惑がそれとなく描かれているところは面白い。ただ、殺されたジグマントといい、そのライバルである女流アーティストのディードリーといい、ほとんど奇人変人的な扱いの描かれ方をしているのは、芸術家という職業に対する作り手側の偏見なのだろうか。その点も含めて、当時のアメリカ社会の芸術に対する一般的な価値観を垣間見れるエピソードだと言えるかもしれない。監督は第22話に引き続いてドン・テイラーが担当し、第6話と第11話を手掛けたSF小説の大家ハーラン・エリソンが脚本を執筆している。撮影監督はチャールズ・バーク。
 エキセントリックな女流アーティスト、ディードリーを演じているのは、ジョーン・クロフォードの娘役を演じた『ミルドレッド・ピアース』('45)でオスカー候補になった往年の美人スター、アン・ブライス。プードル専門の美容室を経営する空手の達人ミスター・ハロルド役には、リタ・ヘイワースと共演の『雨に濡れた欲情』('53)やボギーと組んだ『俺たちは天使じゃない』('55)で有名なタフガイ俳優アルド・レイが扮している。
 さらに、『男の魂』('55)や『くたばれヤンキース』('58)で知られる50年代のティーン・アイドル俳優タブ・ハンター、40年代にB級映画の2枚目スターとして活躍したマクドナルド・ケリー、マックイーンと共演した『シンシナティ・キッド』('65)や『華麗なる賭け』('68)で知られる巨漢俳優ジャック・ウェストン、『ヤング・ハワイ』('61)や『ビキニマシン』('64)などで活躍したアイドル女優デボラ・ウォーリーが出演。
 さらに、ロジャー・コーマン監督のカルト映画『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』('60)のヒロイン、オードリー役として知られ、『グレムリン』('84)シリーズや『スモール・ソルジャーズ』('98)といったジョー・ダンテ監督作品の常連だった女優ジャッキー・ジョセフが、ディードリーのアトリエでボディペイントをするビキニ・モデル役として顔を出している。

ANDY_ZYGMUNT-5.JPG ANDY_ZYGMUNT-6.JPG ANDY_ZYGMUNT-7.JPG ANDY_ZYGMUNT-8.JPG

アン・ブライス

アルド・レイ

マクドナルド・ケリー

ジャック・ウェストン

ANDY_ZYGMUNT-9.JPG ANDY_ZYGMUNT-10.JPG ANDY_ZYGMUNT-11.JPG

タブ・ハンター

デボラ・ウォーリー

ジャッキー・ジョセフ

 

第25話 Who Killed The Paper Dragon ? (全米放送:1964年3月20日)

PAPER_DRAGON-1.JPG PAPER_DRAGON-2.JPG PAPER_DRAGON-3.JPG PAPER_DRAGON-4.JPG

チャイナタウンで男性の死体が発見される

現場から逃げたのは中国人女性ロータスだった

殺された教授の妻シルヴィアは多額の保険金を手に入れる

ロータスの娘オスカーが事情を知っているようだった

<ストーリー>
 ロサンゼルスのチャイナタウンで不可解な事件が発生した。道路脇に突っ込んだ車から中国人の女性と幼い少女が逃げ出し、その車のトランクから中年白人男性の他殺体が発見されたのだ。男性の身元はすぐに割れた。大学で東洋思想を教えるハンソン教授だ。そして、たまたま現場に居合わせた観光客ポッター夫人(アン・タイレル)の証言から、逃げた中国人女性は高級中華料理店“ペーパー・ドラゴン”の踊り子ロータス・バッド(ミヨシ梅木)であることが判明する。
 早速“ペーパー・ドラゴン”を訪れたバーク部長。調子のいい貿易商シドニー・イン(ジェームズ繁田)を軽くあしらい、店長ホップ・シン(ダン・デュリエ)の案内でロータスの楽屋へと向かう。ロータスはショータイムの準備中だった。本人は事件のことはおろか、殺されたハンソン教授のことも、一緒に逃げ去ったという少女のことも全く知らないと言い張る。
 ティルソンの調べによると、ロータスの本名はメアリー・リンといい、昼間はハンソン教授の助手として大学で働いていた。しかも、住んでいるアパートメントまでハンソン教授と一緒。その上、同じ階の隣人であった。すぐさまロータスの部屋へと向かったバーク部長らは、そこでオスカー(ジニー・チュー)という少女を発見する。だが、彼女は自分がロータスの娘であることは認めたものの、それ以上のことは口を固く閉ざしたままだった。
 一方、バーク部長はハンソン教授の自宅にも訪問する。ハンソン夫人のシルヴィア(バーバラ・イーデン)は夫の死をなんとも思っていないらしく、逆に多額の生命保険金が手に入ると喜んでいる様子。東洋思想かぶれの彼女は夫の研究にこそ関心はあったが、残念ながら夫婦間の愛情は全くなかったようだ。
 その頃、店から行方をくらましたロータスは、古い知人である腹話術師チャーリー・ジャニュアリー(ハワード・ダフ)に助けを求めていた。チャーリーは戦時中に中国で若い女性たちの命を救った英雄であり、ロータスもその1人だった。今の彼女にとって、頼れる人物は彼しかいなかったのだ。ロータスは娘と2人で身を隠すことのできる場所を探して欲しいとチャーリーに頼む。娘オスカーは密入国者であるため、警察に存在が知れたら中国へ送り返されてしまう。チャーリーは母娘のために一肌脱ぐことを約束し、一緒にロータスのアパートへと向かった。ところが、アパートの玄関先で何者かがロータスを狙撃。慌てて逃げ去ったロータスだったが、チャーリーは待ち構えていた警察に身柄を拘束されてしまう。
 当然のことながら、チャーリーは事件の諸事情を全く知らない。唯一の手がかりは少女オスカーだけだった。そこで、バーク部長はロータス母娘から信頼の厚いチャーリーの協力を得て、オスカーから詳しい事情を聞き出そうとする。オスカーによると、殺されたハンソン教授はオスカーを中国からアメリカへ密入国させるための手助けをしてくれていたという。そのために、教授は多額の借金を抱えてしまったらしく、事件の直前に何者かが取り立てに来ていたらしい。その激しい口論をオスカーは耳にしていたのだが、相手が誰であるかまでは分からなかった。
 いずれにせよ、その密航船のブローカーと思われる人物が殺人犯である可能性は高い。そこで、バーク部長はロータスが狙撃事件で死亡したことにし、関係者の反応をつぶさに観察することにする…。
<解説>
 非常によく練られたミステリアスなストーリー展開が楽しめるエピソード。…なのだが、それをぶち壊しにしてくれたのが、ロータス役を演じる日本人初のオスカー女優ナンシー梅木ことミヨシ梅木。お世辞にも美人とは呼べないルックスがファム・ファタールとしての説得力を著しく欠いているのは勿論のこと、とにかく棒読み同然の大根演技は目も当てられない有り様。よくぞまあ、これでアカデミー賞助演女優賞を獲ることが出来たもんだといった印象だ。また、中国やインド、東南アジアなどの文化を混同しているようなディテール描写も多々見受けられる。監督は『アイ・ラブ・ルーシー』や『ベン・ケーシー』などの人気ドラマを数多く手掛けたマーク・ダニエルズ。第12話にも参加していたミステリー作家デイ・キーンとジェームソン・ブリューワーが脚本を、ジョージ・E・ディスカントが撮影監督を手掛けている。
 今回はミヨシ梅木のほかにもう一人、有名な日系人俳優が出演。貿易商シドニー役を演じているジェームズ繁田だ。『ダイ・ハード』('88)の日本企業社長役でも知られる彼は、ミュージカル映画『フラワー・ドラム・ソング』('61)で二枚目スターとして売り出された人。『ザ・ヤクザ』('74)のダンディでスマートなインテリ系ヤクザもすこぶるカッコ良さだった。
 ロータスの娘オスカーを演じているジニー・チューは、姉や妹らと共に当時『エド・サリヴァン・ショー』などへ出演して全米の話題をさらっていた香港出身のチャイルド・パフォーマー。本エピソードでも、得意のジャズ・ピアノを披露するシーンが用意されている。
 そのほか、人気ドラマ『かわいい魔女ジニー』('65〜70)で一世を風靡した女優バーバラ・イーデン、『恐怖省』('44)や『裏切りの街角』('49)などフィルム・ノワールの悪役として有名なダン・デュリエ、『クレイマー・クレイマー』('79)や『追いつめられて』('87)などが懐かしいハワード・ダフ、ドラマ『女秘書スージー』('53〜57)のとぼけた受付嬢ヴァイオレット役で親しまれたアン・ティレルが登場。また、カルト映画『ファスタープッシーキャット キル!キル!』('66)で有名な日系人女優トゥーラ・サターナが、なぜだか中華料理店で舞い踊るベリーダンサー役としてチラリと顔を出している。

PAPER_DRAGON-5.JPG PAPER_DRAGON-6.JPG PAPER_DRAGON-7.JPG PAPER_DRAGON-8.JPG

ミヨシ梅木(ナンシー梅木)

ジニー・チュー

ジェームズ繁田

バーバラ・イーデン

PAPER_DRAGON-9.JPG PAPER_DRAGON-10.JPG PAPER_DRAGON-11.JPG

ダン・デュリエ

ハワード・ダフ

アン・ティレル

 

第26話 Who Killed Molly ? (全米放送:1964年3月27日)

MOLLY-1.JPG MOLLY-2.JPG MOLLY-3.JPG MOLLY-4.JPG

平凡な主婦モリーが殺される

お節介焼きの隣人アマンダが警察の捜査を詮索する

モリーには誰も知らない裏の顔があった

グローガン警部から有力な情報を得たバーク部長

<ストーリー>
 郊外の閑静な住宅街で女性の死体が発見される。女性は平凡な若い主婦モリー・ベイカー。第一発見者は親子ほど年の離れた役人の夫カール(ホーギー・カーマイケル)だった。どうやら、シャワールームで足を滑らせて転倒し、頭部を強打して亡くなったらしい。だが検視の結果、モリーが絞殺されていたことが発覚する。
 詳しい現場検証を行うため、再びベイカー宅を訪れたバーク部長たち。すると、向かいに住む未亡人アマンダ・トリブル(ナネット・ファブリー)が留守番をしていた。人一倍好奇心が強く、おしゃべりで噂好きのアマンダは、本物の刑事を目の前にして大興奮。ペットのオウムを自慢しながら
機関銃のごとく喋り続ける彼女に、バーク部長らは辟易とさせられる。モリーとは必ずしも仲良くなかったというアマンダだが、夫のカールとは親しい様子。そこへ帰宅したカールは、妻が他殺だったと聞いて困惑する。
 中流家庭の平凡な主婦がなぜ自宅で殺されたのか?バーク部長らは首を傾げる。警察署を訪れたアマンダによると、事件の直前にモリーが若い男性と自宅で密会していたという。さらに、シャワールームからブロンドのカツラの毛が発見された。製造元を特定し、購入者を問い合わせたところ、クレオ・パトリック(ジェーン・マンスフィールド)というストリッパーの名前が浮上する。
 クレオに事情を尋ねると、彼女はアパートの隣に住むマイラ・ビーマスという女性にカツラを譲ったという。マイラの部屋を捜索したティルソンとハートは、そこで例のカツラを発見。さらに、アパートを訪ねてきた初老の医師アレクサンダー(アーサー・オコネル)から話を聞いた結果、マイラとモリーが同一人物であることを突き止める。彼女は偽名を使ってアパートを借り、そこで裕福な愛人たちと密会していたのだ。
 さらに、モリーが他にもメアリー・ブラックという偽名で別のアパートを借りていたことも発覚。バーク部長らが部屋を捜索してみると、銀行通帳や大量の宝石類、そして多額の偽装紙幣が見つかる。どうやら、モリーには周囲の全く知らない裏の顔があったようだ。調べてみると、彼女は偽札事件で捕まった大物マフィアのもとへ面会に訪れていたらしい。しかも、彼女の死後に銀行口座から大金が引き落とされていた。
 当然、疑惑の目は夫カールへと向けられる。政界進出を目論む彼は、近々選挙に出馬をする予定だった。妻が犯罪に関わっていることが世間に知れたらまずい。そのために、事故を装って殺してしまったのではないか。しかし、カールは妻の犯罪を全く知らなかった様子だし、彼が犯人であることを立証するための証拠もなかった。
 そんな折、バーク部長は同僚のグローガン警部(ジェイ・C・フリッペン)から捜査協力を依頼される。ロサンゼルス界隈の高級ホテルで多発する盗難事件を追っていたグローガンは、バーク部長の友人でもあるプロ・テニス選手バックをマークしていた。だが、その捜査の過程で1人の女性の存在が浮上する。バックが高級ホテルへ訪れるたびに同伴していた恋人だ。名前はマッジ・バックリー。明らかに偽名だったが、その名前を聞いたバーク部長は、すぐにそれがモリーであることを察する。イニシャルがM.B.だからだ。
 モリーがマッジ名義で借りていたアパートを捜索したところ、部屋に隠れていたバックを発見するバーク部長とグローガン警部。どうやら、モリーは様々な偽名を使い分けながら何人もの男性と愛人関係となり、彼らの立場を上手く利用して詐欺や盗みを働いていたようだった。だが、一介の主婦がなぜそのような犯罪に手を染めたのか?そして、いったい誰がなぜ彼女を殺したのか?
<解説>
 満ち足りた退屈な日常を持て余した中流階級の主婦が、映画やテレビの華やかな世界に憧れ、まるで危険な遊びを楽しむかのように犯罪へと走ってしまう。理想的なアメリカン・ライフの裏側と、その悲惨な
顛末をシニカルに描いた秀逸なエピソードだ。監督は第21話に引き続いてドン・ウェイスが担当。脚本は『スカートをはいた中尉さん』('56)や『誰が私を殺したか?』('64)のロバート・ビーチ。第1話では華やかなモデル業界のドロドロとした裏側を、第19話では市民生活に忍び寄る麻薬汚染の実態を描いていた人だが、こうした社会派的なテーマが得意だったのであろう。撮影はチャールズ・バークが手掛けている。
 いかにも近所によくいるタイプのお節介焼きでお喋りなオバサン、アマンダ役を演じているのは、トニー賞の主演女優賞にも輝いたブロードウェイの大物ミュージカル女優ナネット・ファブリー。映画にも子役時代から数多く出演しており、フレッド・アステア主演のミュージカル映画『バンド・ワゴン』('53)で演じた女流ミュージカル作家リリー役でも知られる。
 殺されたモリーの夫カールを演じているのは、「わが心のジョージア」や「スターダスト」などのスタンダード・ナンバーで余りにも有名な作曲家ホーギー・カーマイケル。本シリーズでは第16話に続いて2度目の出演となる。さらに、第2のモンローとして一世を風靡したセックス・シンボル、ジェーン・マンスフィールドがストリッパー役として登場。グラマラスと呼ぶには豊満すぎる肉体…つまり、デブ一歩手前の崩れかけたボディが妙な哀愁を誘う。
 そのほか、『怒りの河』('51)や『現金に体を張れ』('56)、『略奪者』('60)などで強烈な個性を発揮した名脇役ジェイ・C・フリッペン、『或る殺人』('59)でアカデミー賞助演男優賞候補となったアーサー・オコネルが出演。また、プレスリーの相手役を演じた『ハワイアン・パラダイス』('64)やカルト映画『メサイア・オブ・デッド』('73)などで根強いファンを誇る女優マリアンナ・ヒルが、バーク部長のデート相手である美人大学教授役でオープニングとエンディングに登場。さらに、エスペラント語で撮影されたオカルト映画“Incubus”('66)のヒロインを演じたカルト女優アリソン・エイムスが、最初に出てくるアパートの管理人役として顔を出している。

MOLLY-5.JPG MOLLY-6.JPG MOLLY-7.JPG MOLLY-8.JPG

ナネット・ファブリー

ホーギー・カーマイケル

ジェーン・マンスフィールド

ジェイ・C・フリッペン

MOLLY-9.JPG MOLLY-10.JPG MOLLY-11.JPG

アーサー・オコネル

マリアンナ・ヒル

アリソン・エイムス

 

第27話 Who Killed WHO W ? (全米放送:1964年4月3日)

WHO_FOUR-1.JPG WHO_FOUR-2.JPG WHO_FOUR-3.JPG WHO_FOUR-4.JPG

狩猟クラブで大富豪の他殺体が発見される

かつての恋人ジェニファーと再会したバーク部長

ジェニファーの夫カーティスに疑惑の目が向けられる

株の投資に絡んだ仲間同士の不和が背景にあるようだった

<ストーリー>
 狩猟クラブで殺人事件が起きた。殺されたのはクラブの所有者でもある老人ウィリアム・ヘンリー・オーティス、通称フー・フォーと呼ばれている大富豪だ。ちょうど、狩猟クラブには彼の友人が数名集まり、シーズンの始まったキツネ狩りを楽しんでいた。現場を訪れたバーク部長は、その招待客の中にかつての恋人ジェニファー(ロラ・オールブライト)がいることを知ってひどく動揺する。
 名うてのプレイボーイであるバーク部長だが、そんな彼にとってジェニファーは本気で結婚まで考えたことのある唯一の女性。しかも、女性からモテてモテて仕方のない彼を、あっさりと振って去ってしまったという相手だ。その時に受けた心の傷は未だに癒えていない様子。個人的な感情が捜査の妨げになるのではないかと、ティルソンとハートは心配するのだった。
 ジェニファーにはカーライル(スティーヴ・コクラン)という夫がいた。フー・フォーの死を知った彼女が、自宅にいる夫へ急いで電話をかけようとする姿を見かけたバークは、念のために当日のカーライルのアリバイを確認。すると、犯行時間にカーライルが自宅を不在にしていたことが判明する。バーク部長は自らカーライルのもとを訪れた。
 カーライルは明らかにバーク部長へ対して敵意を持っている様子。というのも、妻ジェニファーが本当に愛した男性はバークであるということを、彼は直感で気付いていたのだ。乗馬も射撃もチェスも全国大会で優勝するほどの腕前であるカーライルは、唯一の欠点である平凡な容姿に強いコンプレックスを抱いていた。それに引き替え、バークは女性なら誰もが一目惚れしてしまうほどの男前。それだけでも憎らしいのに、最高の美人と結婚したと思ったら、その妻は未だにバークのことを想っている。一方、バークにとっても最愛の女性の夫と対峙するのは複雑な心境だった。お互いに相手への嫉妬心を抑えきれず険悪なムードが流れる。その時、バークはカーライルの所有している乗馬用の蹄鉄が、殺人現場に残されていたものと同じものであることに気付く。しかも、4つあるうちの一つが欠けていた。しかし、カーライルによると数日前に盗まれたのだという。
 夫に容疑がかけられていることを知ったジェニファーは、彼が無実であることをバーク部長に強く訴えた。より一層のこと心をかき乱されるバーク。なぜ、彼女は自分のもとを去ってしまったのか。ジェニファーは、警察官の妻になる自信がなかったことを告白する。警察官というのは昼夜関係なく事件の捜査に当たらねばならない。しかし、自分のことだけを見て欲しい彼女にとって、それは耐え難いほど辛いことだったというのだ。
 その頃、殺されたフー・フォーと古い付き合いのボーレガード夫人(パッツィ・ケリー)から事情を聞いていたティルソンとハートは、フー・フォーが彼女から預かった大金を株に投資したものの失敗していたことを知る。よくよく調べてみると、彼は狩猟仲間の友人たちから多額の投資を募っておきながら、その全てを失っていたことが判明。しかし、なぜか出資者には全額が返金されていた。
 その後、フー・フォーの所有する不動産の全てが、彼の忠実な執事トゥウィル(レジナルド・ガーディナー)の名義になっていることが分かる。実は、トゥウィルは執事の仕事の傍らで個人投資に手を出して大儲けしており、なんと主であるフー・フォーを上回るほどの資産家になっていたのだ。つまり、株投資に失敗したフー・フォーは使用人であるトゥウィルに不動産を売り払い、損失分の補てんに当てていたのである。そうすれば、裁判所から家を追い出されるような心配もない。
 トゥウィルによれば、フー・フォーの投資コンサルタントを務めたのは他でもないカーライルだったらしい。カーライルへの疑惑がより深まったものの、犯行に至るまでの動機がいまひとつ判らない。そこで、バークたちは出資者の1人である狩猟コーチのハーマン・シットウェル(フェス・パーカー)から事情を聞くものの、カーライルの犯行を裏付けるような情報は得られなかった。さらに、事件当時のカーライルの所在が判明。彼は愛人プルーデンス(ナンシー・コヴァック)のアパートを訪れていたのだった。これでカーライルのアリバイが成立してしまった。行き詰まる捜査。その時、バーク部長は個人的な感情からある重要な点を見逃していたことに気付くのだった…。
<解説>
 いつもはダンディでセクシーで自信に満ち溢れたエイモス・バークの、わりとセンチメンタルで女々しいところのある意外な一面にスポットを当てたエピソード。バークとジェニファー、カーライルの三角関係に焦点が絞られていることもあり、謎解きとしては比較的シンプルな内容となっている。ただ、バークが夢の中でシャーロック・ホームズになって事件解決の糸口を見出すという展開はちょっとユニーク。ハートがワトソンに、ティルソンがモリアーティの子供バージョンになって登場し、「ロンドン橋落ちた」の替え歌を大合唱するというシュールな展開も楽しい。監督は前ピソードに続いてドン・ウェイスが担当し、脚本を第21話以来のポール・デュボフとグウェン・バーニのコンビが執筆。撮影はジョージ・E・ディスカントが手掛けている。
 バーク部長の元恋人ジェニファー役で登場するのは、第4話にもゲスト出演していた'50年代の美人女優ロラ・オールブライト。前回はちょっと地味な扱われ方だったものの、ここではバークが最も愛した女性としてロマンティックな魅力を存分に発揮している。
 そんなジェニファーの夫であり、バーク部長に対して嫉妬と敵対心をむき出しにするエリート証券マン、カーライルを演じているのは、ギャング映画の傑作『白熱』('49)でキャグニーの血気盛んな子分役を演じて脚光を浴びたタフガイ俳優スティーヴ・コクラン。また、第19話にも出ていた『チャップリンの独裁者』('40)の名優レジナルド・ガーディナーが、抜け目のないビジネスマンとしての顔を併せ持った執事トゥウィル役として登場し、圧倒的な存在感と絶妙なコミカル演技を披露している。
 そのほか、セルマ・トッドとのコンビで'30年代に一世を風靡した名喜劇女優パッツィ・ケリー、西部劇ドラマ『西部の男ダニエル・ブーン』('64〜70)で日本でも人気を博した俳優フェス・パーカー、『アルゴ探検隊の大冒険』('63)などでカルトな人気を誇る美人女優ナンシー・コヴァックが登場する。

WHO_FOUR-5.JPG WHO_FOUR-6.JPG WHO_FOUR-7.JPG WHO_FOUR-8.JPG

ロラ・オールブライト

スティーヴ・コクラン

レジナルド・ガーディナー

パッツィ・ケリー

WHO_FOUR-9.JPG WHO_FOUR-10.JPG

フェス・パーカー

ナンシー・コヴァック

第28話 Who Killed Annie Foran ? (全米放送:1964年4月10日)

ANNIE_FORAN-1.JPG ANNIE_FORAN-2.JPG ANNIE_FORAN-3.JPG ANNIE_FORAN-4.JPG

若い女性の死体が発見される

独り暮らしの若い女性には似つかわしくない部屋

人気絶頂のプロ野球選手エディが捜査線上に浮かぶ

エディの背後には大物コラムニスト、スターリングが…

<ストーリー>
 高級ナイトクラブの駐車場で、車の中から若い女性の他殺体が発見された。被害者の名前はアニー・フォラン。車はベルドン氏という中年紳士の所有だった。しかし、本人はアニーとの面識は全くない様子だったし、クラブの駐車係アーティ(シーモア・カッセル)によると、ベルトン氏から車を預かった時点では何の異常もなかったという。つまり、何者かが後からアニーの死体を車の中へ運び込んだのだ。
 アニーのアパートを家宅捜索するバーク部長たち。部屋の中は高級家具や宝石類、美術品などで埋め尽くされており、若い女性の独り暮らしとしては不自然だった。誰かリッチなパトロンがいたことは明らかだった。すると、アニーの寝室から意外なものが発見される。それは人気絶頂のプロ野球選手エディ・ディニーン(ジョン・カサヴェテス)のポートレート。添えられたメッセージから察するに、アニーはエディと付き合っていたようだった。
 当然、エディはアニーとの関係を否定する。そもそもアニーという女性とは面識もないし、メッセージ付きのポートレートだってファン・サービスのために数えきれないほど書いている。ひとまずバーク部長たちは引き下がったものの、コラムニストのサウンダース(ドン・アメチー)は彼が嘘をついていることを見抜いていた。サウンダースはエディの個人スポンサーであり、全米で最も影響力のあるコラムニストの1人だ。冷酷で計算高い彼はエディの人気を自らの名声のために利用し、その代わりコラムを通じてエディの神格化された情報を発信することで、彼の人気を保つことに一役買っていた。
 一方、ティルソンの調査によると、アニーはロサンゼルス界隈では名の知れたプレイガールだったことが判明。その美貌とセックスを武器に、有名人や金持ちたちから貢がせていたのだ。そこで、バーク部長は大富豪の未亡人ミッツィ(ジーナ・ローランズ)から情報を得ようとする。ミッツィもまたかつては名うてのプレイガールだったが、親子ほど年の離れた大富豪カーライル氏と結婚し、夫の死後は莫大な遺産を手に入れて悠々自適の豪奢な生活を送っていた。彼女によると、確かにエディとアニーは付き合っていたらしい。だが、ほんの数か月で別れてしまったのだという。
 バーク部長は改めてエディから事情聴取することにした。彼はアニーとの関係は認めたものの、それを隠していたのはあくまでも自分の地位を守るためだと説明。賞味期限の短いプロ野球選手にとっては、大衆イメージこそが命の綱だという。貧しい家庭に生まれ育ったエディは、金と名声に対する執着心が人一倍強かった。だからこそ、サウンダースのような冷血漢とも付き合っている。世の中はきれいごとじゃ済まされない、というのが彼の言い分だった。
 しかし、その直後にエディは失踪。すぐにマスコミが騒ぎはじめ、サウンダースも手のひらを返したようにエディを糾弾。まるで自分も被害者であるかのような論調でコラムを展開する。さらには、アニーの住んでいたアパートの管理人フィスク(スターリング・ホロウェイ)までもが、逃亡中のエディから大金を脅し取ろうとした。
 その頃、エディの行方を探すバーク部長は、未亡人ミッツィの行動を監視していた。案の定、彼女がエディを匿っていたことが判明する。実は、エディが本当に愛している女性というのは、他でもないミッツィだったのである。改めてエディに事件当日のことを訊ねたバーク部長は、サウンダースの担当編集者マイロ(ウェンデル・コリー)が待ち合わせに30分遅れてきたことを知る。だが、マイロとアニーには何の接点も見いだせない。果たして、事件の真相とは…?
<解説>
 かつてのアメリカでは、新聞の有名コラムニストが世論を左右するほどの影響力を持っていた時代があった。本エピソードではその絶大な権力を笠に着て他人の人生を弄ぶ卑劣なコラムニスト、国民的ヒーローという仮面の裏で選手生命という厳しい現実に直面しなくてはならないプロ野球選手、愛よりも財産に目が眩んだ野心的な美女を絡ませることで、金と名声に振り回される亡者たちの哀れな素顔を浮き彫りにしていく。監督は第19話も手掛けていたハリウッド黄金期の名職人ルイス・アレン。第22話に続いてトニー・バレットが脚本を執筆し、ジョージ・E・ディスカントが撮影監督を担当している。
 冷酷非情な大物コラムニスト、サウンダース役を演じているのは、『シカゴ』('38)や『世紀の楽団』('38)で一世を風靡した往年のトップ俳優ドン・アメチ―。晩年も『大逆転』('83)や『ハリーとヘンダーソン一家』('87)などで活躍し、『コクーン』('85)ではアカデミー助演男優賞にも輝いたことは改めて説明するまでもないだろう。
 そして、そんなサウンダースの食い物にされるプロ野球選手エディ役を演じているのが、『アメリカの影』('59)や『こわれゆく女』('74)、『グロリア』('80)などの映画監督としても有名な名優ジョン・カサヴェテス。その愛妻でもある名女優ジーナ・ローランズが、秘かにエディと愛し合う大富豪の未亡人ミッツィ役を演じているのも映画ファンには嬉しいキャスティングだ。
 さらに、ヒッチコックの『裏窓』('54)の刑事役などでも知られる名脇役ウェンデル・コリーが、寡黙な編集者マイロ役として登場。そのほか、チャップリンの名作『キッド』('21)で世界中の観客の涙を誘った往年の名子役ジャッキー・クーガンが野球チームのコーチ役を、『クマのプーさん』などディズニー映画の声優としても有名な'30年代のミュージカル俳優スターリング・ホロウェイがエディを脅迫するアパートの管理人役を、そしてカサヴェテス映画の常連としても知られるインディペンデント映画界の名優シーモア・カッセルがナイトクラブの駐車係役を演じている。

ANNIE_FORAN-5.JPG ANNIE_FORAN-6.JPG ANNIE_FORAN-7.JPG ANNIE_FORAN-8.JPG

ドン・アメチ―

ジョン・カサヴェテス

ジーナ・ローランズ

ウェンデル・コリー

ANNIE_FORAN-9.JPG ANNIE_FORAN-10.JPG ANNIE_FORAN-11.JPG

スターリング・ホロウェイ

ジャッキー・クーガン

シーモア・カッセル

 

第29話 Who Killed My Girl ? (全米放送:1964年4月17日)

MY_GIRL-1.JPG MY_GIRL-2.JPG MY_GIRL-3.JPG MY_GIRL-4.JPG

大富豪の令嬢ダイアナが自宅で射殺される

ダイアナはバーク部長のかつての恋人だった

何者かがダイアナのアドレス帳を狙ってバークを襲う

天文学者スミス博士が逮捕されるのだが…

<ストーリー>
 ビバリーヒルズの豪邸で女性が射殺された。被害者はダイアナ・マーサー。東海岸の名門一族に生まれた大富豪の令嬢であり、バーク部長のかつての恋人だった。実は事件の直前、バークはダイアナと数年ぶりに再会を果たし、一緒にディナーを楽しんでいた。彼女は何か悩み事があったらしく、バークに助けを求めようとしていたようなのだが、結局その話はうやむやのままに終わってしまった。その後、バークは自宅まで彼女を送り届け、玄関先で口づけを交わして別れた後に、ダイアナは何者かに殺されてしまったのである。バーク部長には悔やんでも悔やみきれない思いが残った。
 凶器は35口径のリボルバー。現場から現金や貴重品が持ち去られた形跡はなく、強盗目的の犯行でないことは明らかだった。ダイアナのハンドバックに残されたアドレス帳を手掛かりに捜査が始まる。まず、バークはジャズトランぺッターのスクービー(ドン・テイラー)を訪ねた。軽薄で品の悪いスクービーに眉をひそめるバーク。彼によると、ダイアナには何人もの愛人男性がおり、その全員に自宅の合鍵を渡していたという。自分の知っている真面目で明るいお嬢様のダイアナとはあまりにもかけ離れた人物像に、バークは戸惑いを隠せなかった。
 一方、ティルソンとハートはダイアナのライバルだった遊び人の女性ローラ・ジーン(ルタ・リー)から事情を聞く。彼女もまたダイアナの自宅の合鍵を持っており、事件当日の昼間に彼女を訪ね、借りていた200ドルを返したという。どうやら、ダイアナは誰彼かまわず合鍵を渡していたようだった。
 その晩、バーク部長は自宅の居間で何者かに襲われる。犯人の目的はダイアナのアドレス帳のようだった。しかし、間一髪で運転手のヘンリーが駆けつけ、犯人は暗闇に紛れて逃げ去ってしまう。翌日、バーク部長は隣人でもある大富豪アーサー・ウェイド(ジーン・レイモンド)の屋敷を訪れた。ウェイドはダイアナがバークと知り合う前の恋人だった。彼によると、バークは彼女の父親と瓜二つといっていいくらいに似ているという。ダイアナはハンサムでチャーミングで頼りがいのある父親のことを心の底から崇拝していたらしい。だが、まず母親がプールで溺死し、さらに父親が交通事故で死んでしまったことから、にわかに生活が荒れ始めたのだという。
 次に、バーク部長は天文学者キャロル・スミス博士(リチャード・カールソン)を訪ねる。博士はダイアナと愛人関係にあった。彼には妻ロニー(ジェーン・グリア)と2人の子供がいたが、すっかりダイアナの虜になってしまい、今では自宅に寄り付きすらしなくなっていた。ロニーはそんな夫とダイアナの関係を知っており、事件の当日にはダイアナの自宅を訪れていた。夫を返してくれと直談判するために。だが、結局会えずじまいだったという。
 さらに、バークはダイアナの父親の運転手だった男性フランク・ウォルシュ(スティーブン・マクナリー)のアパートを訪問する。ダイアナの父親の事故死は、彼の運転ミスが原因だった。その罪悪感に今も苛まれているという。しかし、ダイアナは彼のことをすでに許し、父親の想い出話をするためにしばしば彼を自宅へ招いていたらしい。
 その後、スミス博士が犯行に使われたものと同じ35口径のリボルバーを所持していることが判明。警察は博士の身柄を拘束するが、残念ながら彼の銃は使用された形跡がなかった。ちょうど同じ頃、ダイアナの叔母アドリアナ(メイベル・アルバートソン)がヨーロッパから帰国する。アドリアナはバークと別れた後のダイアナに何があったのかを語り始めた。
 実は、ダイアナの父親は表向きこそ人格者だったが、その素顔は酒と女に溺れる自堕落な遊び人に過ぎなかったという。メイドから人妻まで女という女には片っ端から手を出し、他人には言えないような悪行にも手を染めていた。ダイアナの母親の溺死も、実はそんな夫に失望しての自殺だったのだという。父親を崇拝していたダイアナも、父親の死後にその事実を知って大変なショックを受け、まるで復讐を果たそうとするかのように堕落した生活を送るようになったのだ。
 そんな折、ウォルシュが大変な資産家であり、自宅アパートメントも彼自身の所有であることが判明。果たして、ウォルシュはどうやってそれほどの資産を手にしたのか?そして、ダイアナ殺害との関連とは…?
<解説>
 上記の第28話と同じく、バーク部長の知られざる過去の恋愛にスポットを当てたエピソード。崇拝していた父親の汚れた素顔を知ったショックから道を踏み外してしまったダイアナだが、その父親に生き写しであるバークもまた大変なプレイボーイであり、それゆえにバークが彼女の死に対して間接的ながらも責任を感じてしまうという点が見どころ。もしかすると、そうした自分の罪深さを十分に分かっているからこそ、彼は結婚を避けているのかもしれない。そんな深読みすら出来るようなストーリーに仕上がっている。監督は第24話以来となる俳優ドン・テイラー。脚本は前ピソードに引き続いてトニー・バレットが手掛け、撮影監督はチャールズ・バークが担当している。
 ダイアナの愛人だった天文学者スミス役を演じているのは、『大アマゾンの半魚人』('54)や『イット・ケイム・フロム・アウター・スペース』('53)などのSFカルト映画で有名な俳優リチャード・カールソン。その妻ロニー役には、フィルム・ノワールの名作『過去を逃れて』('47)でロバート・ミッチャムの相手役を演じた女優ジェーン・グリアが扮している。
 さらに、監督を兼ねるドン・テイラーが軽薄そのものの胡散臭いジャズ・トランぺッター、スクービー役でオフビートな演技を披露。その他、『空中レヴュー時代』('33)や『世界の歌姫』('36)などのRKOミュージカルで活躍したブロンドの好青年俳優ジーン・レイモンド、『裏切りの街角』('49)の刑事役などフィルム・ノワールの渋い脇役として活躍したスティーブン・マクナリー、ミュージカル映画『略奪された七人の花嫁』('54)で知られる女優ルタ・リー、ドラマ『奥さまは魔女』('64〜72)のダーリンの母親役でお馴染みの老女優メイベル・アルバートソンが出演している。

MY_GIRL-5.JPG MY_GIRL-6.JPG MY_GIRL-7.JPG MY_GIRL-8.JPG

リチャード・カールソン

ジェーン・グリア―

ドン・テイラー

スティーブン・マクナリー

MY_GIRL-9.JPG MY_GIRL-10.JPG MY_GIRL-11.JPG

ルタ・リー

メイベル・アルバートソン

ジーン・レイモンド

第30話 Who Killed The Eleventh Best Dressed Woman In The World ? (全米放送:1964年4月24日)

BEST_DRESSED-1.JPG BEST_DRESSED-2.JPG BEST_DRESSED-3.JPG BEST_DRESSED-4.JPG

社交界の名物女性セリアが泥風呂で殺される

セリアは“ダンナ泥棒”として鼻つまみ者だった

マーティン夫人の車から凶器が発見される

そのマーティン夫人が毒殺されそうになり…

<ストーリー>
 ロサンゼルス郊外の高級スパリゾート、ニルヴァーナで、社交界の名物女性セリア・バナーマンの他殺体が発見される。鋭利な刃物によって背中を一突きにされ、遺体は泥風呂の中に沈められていた。ニルヴァーナのオーナーは有名な美人実業家ソランジェ・ケリー(ジョーン・ドリュ)。顧客も従業員も女性ばかりで、5つのコッテージに常時30人のゲストが寝泊まりできるようになっていたが、当日は4つのコッテージが埋まっていた。
 そもそも、セリアは社交界で敵の多い女性だった。というのも、彼女は裕福な既婚男性ばかりを狙って寝取ってしまうのが得意で、これまでに夫を奪われたご婦人方は数知れず。その悪名はバーク部長の耳にも届いていた。とりあえず、バークとティルソン、ハートの3人で手分けをして、宿泊客から事情聴取をすることとなった。
 その矢先に、事情聴取を拒否したポーリー・マーティン(ジーン・クレイン)が警察の制止を振り切って自宅へ帰ろうとする。車のトランクを調べたところ、中からセリア殺しの凶器とみられるペーパーナイフが発見された。どうやら、マーティン夫人の夫は彼女を捨ててセリアのもとへ走っていたらしい。バーク部長はとりあえずマーティン夫人の身柄を拘束する。
 一方、セリア殺しをほのめかす女性も現れた。バーク部長とは旧知の仲でもある、ニューヨーク社交界の大御所コンスタンス・デクスター(ヘイゼル・コート)だ。彼女もまた、前の夫をセリアに寝取られていた。ここへ来る前に、セリアを殺すための計画を練っていたという。ただ、実行に移す前に先を越されてしまったのだという。バーク部長は、まだ一般には公表されていない殺害方法をデクスター夫人が知っていることに疑問を抱く。
 その頃、ティルソンはハリウッドの人気映画女優タウニー・ヘイスティングス(スーザン・ストラスバーグ)から事情を聞いていた。彼女も最初の夫をセリアに奪われている。ただ、自分よりも社会的地位の高い女性のダンナを奪うことでしか自己顕示欲を満たせないセリアを気の毒に思いこそすれ、恨みを抱いているような様子は全くないようだった。
 さらに、バークは世界で3番目に裕福な女性グロリア・ヴィッカーズ(マーサ・ハイヤー)と、付添いの叔母マデリーン(ジョセフィーヌ・ハッチンソン)の部屋を訪ねる。マデリーンによると、事件の前夜にセリアは自室で誰かと口論をしていたらしい。また、グロリアによれば、セリアは長いこと社交界では嘲笑の的だったという。あだ名は“世界で11番目のベスト・ドレッサー”。つまり、永遠にトップ10へ入れない負け組ということだ。そんなグロリアもまた、セリアの被害者だった。夫を誘惑された上に、自殺へと追い込まれたのである。
 その時、身柄を拘束されていたマーティン夫人が毒を盛られて倒れたという連絡が入る。どうやら、睡眠薬に毒薬が混ぜられていたらしい。バーク部長は、何者かが自殺に見せかけてマーティン夫人を毒殺し、セリア殺しの罪を彼女になすりつけようとしたものと考える。そもそも、事情聴取を受けた女性の全員が、セリアの殺害方法を知っていたというのが腑に落ちない。さらに、セリアと同じコッテージに宿泊した女性全員が、差出人不明の招待状を貰ってニルヴァーナを訪れていたという事実も引っかかる。オーナーのソランジェもその事実は知っていたが、社交界でのサプライズ・プレゼントというのは珍しくないことから、大して気にも留めていなかったらしい。
 果たして、誰が裕福な人妻たちにスパリゾートの招待券を送ったのか?その晩、バーク部長が何者かに襲われて意識を失ってしまう…。
<解説>
 華やかな社交界の裏側で繰り広げられる人妻たちのドロドロとしたパワーゲームをテーマにしたエピソード。ゴージャスなグラマー女優たちの競演と、情け容赦のない女同士の争いというのが見どころだ。アガサ・クリスティ作品を彷彿とさせるストーリー設定がなかなか面白い。監督は第27話に続いてのドン・ウェイス。『大都会の女たち』('59)や『すてきなジェシカ』('62)などの女性映画で知られる女流脚本家エディス・R・ソマーが脚本を手掛け、ジョージ・E・ディスカントが撮影監督を担当している。
 リゾートスパの女性オーナー、ソランジェ役を演じているのは、ジョン・ウェインと共演した名作
『黄色いリボン』('49)や『幌馬車』('50)で巨匠ジョン・フォード監督に起用された美人女優ジョーン・ドリュ。ハワード・ホークス監督の『赤い河』('48)でもジョン・ウェインと共演し、オスカーを独占した傑作『オール・ザ・キングスメン』('49)でもヒロインを演じたトップ・スターだ。
 何者かに毒を盛られるマーティン夫人役のジーン・クレインは、『ピンキー』('49)でアカデミー主演女優賞候補にもなった20世紀フォックスの看板スター。『フランケンシュタインの逆襲』('57)や『赤死病の仮面』('64)などホラー映画のヒロインとして有名な英国女優ヘイゼル・コートがシニカルなデクスター夫人を演じ、『走り来る人々』('58)でアカデミー助演女優賞候補になったマーサ・ハイヤーが世界有数の大富豪グロリア役で登場。
 さらに、初主演作『女優志願』('58)で一世を風靡した演技派アイドル女優スーザン・ストラスバーグが、役柄に入り込み過ぎてしまう“メソッド派”の映画女優タウニー役をコミカルに演じている。スーザンと言えば、メソッド演技法の神様とも言うべき大物演技コーチ、リー・ストラスバーグの愛娘。そんな彼女がメソッド演技をおちょくったような女優役を演じているのは面白い。しかも、のめり込む役柄というのが色情狂の女だっていうのだから…(笑)。
 また、サイレント時代のハリウッドを騒がせたレズビアン・スキャンダルでも有名な往年の美人女優ジョセフィーヌ・ハッチンソンがグロリアの独身の叔母マデリーン役で出演。そのほか、バーク部長を演じるジーン・バリーの奥方ベティ・バリーと、『奥さまは魔女』の2代目クラヴィッツさん役で有名なサンドラ・グールドが、リソートスパの宿泊客として顔を出している。

BEST_DRESSED-5.JPG BEST_DRESSED-6.JPG BEST_DRESSED-7.JPG BEST_DRESSED-8.JPG

ジョーン・ドリュ

ジーン・クレイン

ヘイゼル・コート

スーザン・ストラスバーグ

BEST_DRESSED-9.JPG BEST_DRESSED-10.JPG BEST_DRESSED-11.JPG BEST_DRESSED-12.JPG

マーサ・ハイヤー

ジョセフィーヌ・ハッチンソン

ベティ・バリー

サンドラ・グールド

 

第31話 Who Killed Don Pablo ? (全米放送:1964年5月1日)

DON_PABLO-1.JPG DON_PABLO-2.JPG DON_PABLO-3.JPG DON_PABLO-4.JPG

博物館の経営者ドン・パブロが殺害される

母親ドンナ・イネズは息子が殺されて当然だと言い放つ

バーク部長は教会の古い書物から意外な事実を知る

博物館には秘密の通路が張り巡らされていた

<ストーリー>
 スペイン植民地時代のカリフォルニアを今に伝える博物館で、共同経営者の1人であるドン・パブロ・オルテガの死体が発見された。凶器は展示物であるスペイン国王の剣。第一発見者は博物館の研究員兼ガイド役のカルロス・デ・ヴェガ(ジョン・カサヴェテス)だったが、彼は見物客を案内中で確固たるアリバイがあった。
 バーク部長はドン・パブロと最後に会った女性闘牛コーチ、セレーナ・ディアブロ(パトリシア・メディーナ)から事情を聞く。彼女は博物館の仕事を辞めたいと考えていたが、ドン・パブロから半ば強引に引き止められたという。どうやら、彼女とドン・パブロとの間には深い因縁があったようだ。
 しかし、ドン・パブロと因縁があったのは彼女だけではない。土産物コーナーの販売員をしている男性アントニオ・カルドーザ(シーザー・ロメロ)である。彼はスペインの由緒正しい貴族の出身で、先祖はカリフォルニア一帯を支配する大地主だった。一方、ドン・パブロの先祖もまたスペインの有力貴族だったが、アメリカ大陸へやって来たのは後発組。ところが、アントニオの先祖が賭け事でドン・パブロの先祖に負けてしまい、借金のかたとして土地を奪い取られてしまったのである。この博物館が建っている場所も、もともとはカルドーザ一族の所有地だった。当然、アントニオがドン・パブロに恨みを持っていても不思議ではない。
 さらに、バーク部長は博物館の共同経営者サイラス・スマッツ(フォレスト・タッカー)を訪ねる。スマッツは現実的かつ合理主義的な実業家で、博物館の建設に込められた伝統への畏敬の念など全く持ち合わせていなかった。もともと経営難に陥っていた博物館へ出資したのも、結局は土地が目的。つまり、彼は博物館を取り壊して巨大な商業用ビルを建設するつもりだったのだ。しかも、ドン・パブロが死んだおかげで巨額の保険金が手に入る。彼にもまた十分な動機があった。
 その頃、ハートはドン・パブロの母親ドンナ・イネズ・オルテガ(アグネス・ムーアヘッド)のもとを訪問していた。息子の喪に服す彼女だったが、その口からは意外な言葉が飛び出す。息子は死んで当然の罪人だというのだ。というのも、ドン・パブロは週明けの月曜日に博物館の解体と高層ビルの建設を発表する予定だった。先祖の残してくれた伝統を蔑ろにするような行為は死に値するというのである。
 事件の背景には、オルテガ家及びカルドーザ家の歴史が深く関わっているに違いない。そう考えたバーク部長は、スペイン植民地時代から存在する古いイエズス会の教会を訪れる。そこには、各名門一家の歴史を記した書物が保管されていたからだ。老修道士フラハティ(セシル・ケラウェイ)に頼んで書物を調べてもらったバーク部長は、そこで驚くべき事実を知ることになる。ドンナ・イネズの一人息子ドン・パブロは、3歳の時に病で死亡していたのだ。つまり、殺されたドン・パブロは偽者だったのである。しかも、博物館研究員のカルロスは、なんとスペイン国王直系の末裔だった。
 果たして、オルテガ家、カルドーザ家、デ・ヴェガ家の3者の間に何があったのか?真実を探るべく、博物館の建物に張り巡らされた秘密の通路へ足を踏み入れるバーク部長だったが…。
<解説>
 スペインの植民地だったカリフォルニアの複雑な歴史にスポットを当てたエピソード。謎解きそのものは非常に他愛ないのだが、ロサンゼルスを頻繁に訪れる機会の多い筆者としては、たとえフィクションであるとはいえ、その歴史と伝統の一端を垣間見ることが出来るのは興味深い。監督は第23話も手掛けたリチャード・キノン。脚本はポール・デュボフとグウェン・バーニが担当し、撮影監督をチャールズ・バークが手掛けている。
 博物館の研究員でスペイン国王の末裔であるカルロス役を演じているのは、第28話に続いて2度目の登板となるジョン・カサヴェテス。今回は顔中にドウランを塗って肌の浅黒いスパニッシュに扮しているのだが、さすがにちょっと不自然…というか無理があり過ぎる。そもそも彼ってスペイン系だったっけ…?と思って調べてみたところ、ギリシャ系移民の息子だった。まあ、当たらずも遠からずかなってところだろうか。
 で、誇り高き名門の老貴婦人ドンナ・イネズ役を貫録たっぷりに演じているのが、『奥さまは魔女』のエンドラ役で余りにも有名な名女優アグネス・ムーアヘッド。彼女もまたスペイン系ではなく、アイルランドとスコットランド、ウェールズの血が混じっているのだそうだ。ただ、女闘牛士セレーナ役のパトリシア・メディーナはイギリス人であるものの、とりあえず父親がスペイン人ということでなんとかセーフ(笑)。実際、映画でも幾度となくスペイン人役を演じている女優さんだ。
 また、第8話と第16話にも出ていたシーザー・ロメロがアントニオ・カルドーザ役で登場。もともとラテン系の伊達男俳優として鳴らした人だけに、まあ、納得のいくキャスティングではある。とはいえ、彼もまた父親はイタリア人、母親はキューバ人ということで、生粋のスペイン系というわけではないのだが。
 そのほか、『硫黄島の砂』('49)を筆頭にリパブリックの戦争映画や西部劇で活躍したタフガイ俳優フォレスト・タッカー、『幸福の森』('48)と『招かれざる客』('67)でアカデミー助演男優賞候補になった名脇役セシル・ケラウェイが登場。ちなみに、シーザー・ロメロとパトリシア・メディーナは、後に日本の東宝が製作したSF特撮映画『緯度0作戦』('69)で夫婦役を演じている。

DON_PABLO-5.JPG DON_PABLO-6.JPG DON_PABLO-7.JPG DON_PABLO-8.JPG

ジョン・カサヴェテス

アグネス・ムーアヘッド

シーザー・ロメロ

パトリシア・メディーナ

DON_PABLO-9.JPG DON_PABLO-10.JPG

フォレスト・タッカー

セシル・ケラウェイ

第32話 Who Killed Half of Glory Lee ? (全米放送:1964年5月8日)

GLORY_LEE-1.JPG GLORY_LEE-2.JPG GLORY_LEE-3.JPG GLORY_LEE-4.JPG

ビルの6階からエレベーターが落下する

高級ファッションブランドは熾烈な女の戦場

死亡したグローリーの妻は離婚を決意していた

潜入捜査中のバーク部長が逮捕されてしまう

<ストーリー>
 朝の出勤時間に、ビルのエレベーターが6階から落下した。中には無数のマネキン人形と中年男性の死体が。男性の名前はベンジャミン・グローリーといい、事故のあったビルに入居している
女性向け高級ファッション・ブランド“グローリー・リー”の共同経営者であった。一見するとエレベーターの落下事故で死んだかのように思われたが、それにしては状況が出来過ぎている。なぜ通勤時間の直前にエレベーターは落下したのか?そもそも、なぜグローリー氏はマネキンと一緒に乗っていたのか?事故に見せかけた他殺の線が濃かった。
 “グローリー・リー”のもう一人の経営者は、やり手のビジネス・ウーマン、キーキー・リー(ジゼル・マッケンジー)。彼女とグローリーは仲が悪かったらしく、キーキーは彼のことをたちの悪い守銭奴呼ばわりする。一方、主任デザイナーのスイス人女性アンジャネット・デラクロワ(ニナ・フォッシュ)はグローリーと親しかったようで、彼は他人に恨みを買うような人物ではなかったと証言する。そもそも、キーキーとアンジャネットは犬猿の仲で、バーク部長たちの目の前でも激しい喧嘩を繰り広げるのだった。
 ひとまず、グローリー夫人のカーリーン(ベティ・ハットン)に事情を聞くバーク部長。どうやらグローリーは若いモデルと浮気をしていたらしく、カーリーンは夫に離縁状を突きつけるつもりだった。その夫が呆気なく死んでしまったことを知って、逆にカーリーンは地団太を踏んで悔しがる。彼女によると、夫は早朝に会社から呼び出されたのだそうだ。どうも、会社に産業スパイが紛れ込んでおり、新作コレクションのデザインが外部に流出していたらしい。
 一方、ティルソンはアンジャネットの娘でモデルのセイブル(アン・ヘルム)のアパートを訪ねる。甘やかされて育った彼女は自らの美貌を鼻にかけており、18歳の小娘には似つかわしくないほど贅沢な生活を送っているようだった。クローゼットをチェックしていたティルソンは、男物のナイトガウンや軍服を発見する。確か、グローリーは元軍人で第二次世界大戦の英雄だった。そう、浮気相手のモデルというのはセイブルのことだったのだ。
 その頃、警察では検視の結果、グローリーがエレベーターに乗せられた時点で既に殺されていたという結論に達する。先の尖った金属製の鈍器で繰り返し頭部を殴られたようだった。さらに、その傷口からはデンプンが発見される。改めて“グローリー・リー”のオフィスを調査したバーク部長らは、仕立て用のアイロンが凶器として使われたことに気付く。デンプンはアイロンがけ用のノリだったのだ。
 さらに、オフィスに出入りしている廃棄物処理業者が産業スパイであることが発覚。その証言から、モーティマー・ラヴリー(バスター・キートン)という大富豪がデザイン画を受け取っていたことが分かった。ところが、そのラヴリー氏によると、彼に“グローリー・リー”の新作デザインを盗ませていたのは、他でもないデザイナーのアンジャネット自身なのだという。実は彼女は多額の借金を抱えており、その返済のためにデザインを横流ししていたらしい。
 そこで、バーク部長はアンジャネットが金を借りたという正体不明の人物キャンディ・スターデヴァント(ジョーン・ブロンデル)という人物に接触を試みる。キャンディは違法賭博を取り仕切っている元締めなのだが、足がつかないようトラックで移動しながら賭博場を経営していた。バーク部長はマフィアに扮装し、裏情報をもとに移動式賭博場へと潜入する。
 キャンディによると、アンジャネットが借金をしたのは娘セイブルが理由なのだという。詳しい事情は分からないが、どうも娘が何らかのトラブルを起こしたか巻き込まれたかしたらしい。その時、移動賭博場に警官隊が乱入し、身分証を持たないバーク部長まで逮捕されてしまった。なんとか殺人課へ電話し、エイムス巡査に釈放の手続きをしてもらうバーク部長。
 その後、ティルソンの調べで、アンジャネットがスイス人ではなくパリ出身のフランス人であることが判明。そのことを知ったバーク部長は、ある可能性を見出すのだった…。
<解説>
 ファッション業界の裏側を暴くバック・ストーリー物かと思いきや、戦中世代と戦後世代の人生観における著しいギャップを軸としながら、第二次世界大戦の残した傷跡の深さを描いていくユニークなエピソード。また、過去には日本人扱いされていた運転手兼執事のヘンリーが、実際はフィリピン人であることに初めて言及したエピソードでもある。監督はシリーズでもお馴染みになったドン・ウェイス。大物SF作家ハーラン・エリソンが脚本を執筆し、チャールズ・バークが撮影監督を担当している。
 フランス人のファッション・デザイナー、アンジャネット役を演じているのは、『重役室』('54)でアカデミー助演女優賞にノミネートされた名女優ニナ・フォッシュ。日本ではニナ・フォックと表記されることが多いが、フォッシュと発音するのが正しい。『巴里のアメリカ人』('51)や『スパルタカス』('60)などの名作にも出演し、洗練された大人の色香で高い人気を誇った人だ。晩年もドラマ『NCIS〜ネイビー犯罪捜査班』でデヴィッド・マッカラムの母親役を演じて健在ぶりを示していた。
 その娘でモデルのセイブルを演じているのは、『夢の渚』('61)でプレスリーの恋人役を演じたアン・ヘルム。カルト映画として人気の高いファンタジー映画『魔法の剣』('61)のお姫様役でも知られる女優だ。また、“グローリー・リー”の性格の悪い女社長キーキー・リー役を、“Hard To Get”や“Seven Lonely Days”などのヒット曲で知られる'50年代の人気女性歌手ジゼル・マッケンジーが演じている。
 さらに、『アニーよ銃をとれ』('50)で一世を風靡したミュージカル女優ベティ・ハットンがグローリー夫人役でオフビートなコメディエンヌぶりを発揮。そのほか、チャップリンと並ぶサイレント時代の喜劇王バスター・キートン、'30年代のワーナー・ミュージカルやギャング映画で姉御肌のヒロイン役を数多く演じたトップ女優ジョーン・ブロンデルが達者な演技を披露している。また、'60年代の人気ドラマ『ギリガン君SOS』('64〜67)で全米のアイドルになった女優ドーン・ウェルズが、バーク部長のアバンチュール相手としてチラリと顔を出す。

GLORY_LEE-5.JPG GLORY_LEE-6.JPG GLORY_LEE-7.JPG GLORY_LEE-8.JPG

ニナ・フォッシュ

アン・ヘルム

ジゼル・マッケンジー

ベティ・ハットン

GLORY_LEE-9.JPG GLORY_LEE-10.JPG GLORY_LEE-11.JPG

バスター・キートン

ジョーン・ブロンデル

ドーン・ウェルズ

 

 

DVD-BOX-1.JPG DVD-BOX-2.JPG
(P)2008 VCI Entertainment (USA) (P)2008 VCI Entertainment (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆ 画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤4枚組ボックス)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/800分/製作:アメリカ
※第1話〜第16話まで収録

特典映像
放送当時のスポンサーCM集
修復映像の前後比較
DVD仕様(北米盤4枚組ボックス)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/800分/製作:アメリカ
※第17話〜第32話まで収録

特典映像
放送当時のスポンサーCM集
修復映像の前後比較
 シーズン1前半を収録した4枚組ボックス。フィルムの傷やホコリ、フレームのズレなどは全て修復されていますが、全体的に映像のきめが若干粗いのは気になるところです。ただ、放送当時よりもキレイな状態で収録されているであろうことは確かなので、贅沢は言いますまい。  こちらはシーズン1後半を収録した4枚組。前回がトールケース4箱分を紙製ボックスに収録した豪華装丁であったのに対し、今回はディスク4枚分を収納できるマルチトレイ仕様のトールケースでコンパクトにまとめられています。画質は前半分とほぼ変わりません。

 

戻る