バークにまかせろ!
Burke's Law
エピソード・ガイド2
(シーズン1 第9話〜第20話)
第9話 Who Killed Wade Walker ? (全米放送:1963年11月15日)
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大富豪ウェイド・ウォーカーが飛行機で爆死する |
ウォーカーには4人のガールフレンドがいた |
キャシーに疑いの目が向けられる |
<ストーリー>
船舶会社を経営する大富豪ウェイド・ウォーカーが自家用プロペラ機で爆死した。残骸を調べたところ、爆弾が仕掛けられていたと判明する。単なる事故ではなく殺人事件だ。ウォーカー氏には家族がなく、学生時代からの友人でもある顧問弁護士ケリー・ロジャース(フランキー・レイン)が代理人を務めている。彼によると、ウォーカー氏には4人のガールフレンドがおり、事件の当日はその中の誰と結婚するのか明らかになるはずだったという。また、秘書ステイシー(ナンシー・シナトラ)によれば、事件の直前に何者かがウォーカー氏の遺書を見ていたらしい。ただ、口紅のついた女性もののタバコが現場に残されていただけで、誰が遺書を見たのかは分からなかった。
バーク部長とティムは4人のガールフレンドたちの身辺を洗うことにする。まずは看護婦のアイリス(ダナ・ウィンター)。かつて入院したウォーカーに口説かれたアイリスだったが、忙しいこともあってデートは滅多に出来なかったという。タバコを吸うこともないようだ。次に、ミス・インターナショナルに輝いたモデルのスザンヌ(アン・フランシス)。あっけらかんとした明るい女性だが、ウォーカー以外にも愛人がいる様子。タバコを吸う習慣もあるようだ。さらに、社交界の花形で鼻っ柱の強い女性キャシー(ロンダ・フレミング)。彼女は無類のガンマニアで、大量の火薬を所有している。爆弾を作ろうと思えば可能だ。そして、クラブ歌手のジェリー(マーサ・ハイヤー)。なんと、彼女はウォーカー氏からプロポーズされていたという。だが、弁護士ロジャースは警察にそのことを一言も話していなかった。どうやらロジャースはジェリーの元恋人で、ウォーカー氏との結婚を快く思っていなかったようだ。
ロジャースに疑惑の目を向けるバーク部長。だが、プロペラ機爆破に使われた爆弾の材料がライフル銃用の火薬と判明。また、ウォーカー氏がキャシーに暴力を振るっていたことも分かった。だが、キャシーとウォーカー氏はSM的な恋愛関係で結ばれており、彼女にはウォーカー氏を殺害する動機がない。バーク部長はキャシーの火薬庫に残されていた煙草入れから、ロジャースの関与を疑う。しかし、警察から尋問を受けたことを苦にロジャースは自殺してしまった。さらに、ウォーカー氏が事故の3時間前に既に死亡していたことが判明。捜査は振り出しに戻ってしまう…。
<解説>
豪華女優陣の顔ぶれが目を引くエピソード。映画『腰抜け千両役者』(50)をはじめとするボブ・ホープ主演作やドラマ『ルーシー・ショー』などコメディ畑で知られるロバート・オブライエンが脚本を手掛けていることもあってか、推理サスペンスとしてはちょっと非現実的で荒唐無稽な内容。『わんぱくフリッパー』(64〜67)などのドラマを手掛けたスタンリー・Z・チェリー監督が演出を、チャールズ・バークが撮影を担当している。
まず、表向きは気が強いけど実はマゾという社交界の花形キャシー役には、『悪の対決』(55)や『OK牧場の決斗』(57)などの西部劇映画で鉄火肌の美女を演じたグラマー女優ロンダ・フレミング。看護婦のアイリス役には、『あの日あの時』(56)や『大戦争』(58)といった戦争映画のロマンティックなヒロイン役が忘れがたい女優ダナ・ウィンター。フランク・シナトラと共演した『走り来る人々』(58)でアカデミー助演女優賞にノミネートされた清純派女優マーサ・ハイヤー。そして、『禁断の惑星』(56)のミニスカ姿で熱狂的な男性ファンを生んだ女優アン・フランシスといった具合に、女優のキャスティングが実に華やか。フランシスは後にスピンオフ・シリーズ『ハニーにおまかせ』に主演することとなる。
その他、映画『真昼の決闘』(52)やドラマ『ローハイド』(55〜66)の主題歌で有名な大物歌手フランキー・レイン、フランク・シナトラの娘で自らも数多くの全米トップ10ヒットを持つ歌手ナンシー・シナトラが出演している。
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ロンダ・フレミング |
ダナ・ウィンター |
アン・フランシス |
マーサ・ハイヤー |
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フランキー・レイン |
ナンシー・シナトラ |
第10話 Who Killed The Kind Doctor ? (全米放送:1963年11月29日)
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精神科医テックマンが射殺される |
フォーサイス夫人の自宅から拳銃が盗まれた |
テックマンのふりをして患者の反応を見るバーク部長 |
<ストーリー>
バーク部長のもとへ精神科医テックマンから電話が入る。患者の1人が自分の命を狙っているというのだ。その直後に電話口の向こうで銃声が鳴り響いた。バーク部長はテックマン医師の診療所へ駆けつける。背後から拳銃で撃たれていた。秘書のジャネット(スーザン・オリヴァー)によると、直前に何者かから母親が危篤だという電話が入り、彼女は受付窓口の席を空けていたという。もちろん、彼女の母親は無事。犯人の罠だったことは容易に推測できたが、その囁くような声からは相手が男なのか女なのかすら分からなかった。そこで、バーク部長はテックマン医師の死亡を秘密にし、犯人の出方を伺うことにする。
すぐにバーク部長はテックマン医師の自宅へ赴き、妻ベティ(ジョーン・コールフィールド)に事件を伝える。夫婦仲は冷え切っていたらしく、ベティは夫の訃報にも悲しむ様子は全くなかった。そして、夫がまだ生きているように装うことを快く承知する。一方、ティムとハートの二人はテックマン医師の患者であるストリッパー、ジジ・ストリング(シェリー・ノース)のもとを訪れる。彼女はテックマン医師のセラピーに不満を持っていた。だが、既にセラピーを受けるのは止めたのだという。その頃、同じくテックマン医師の患者でバークの古い友人でもあるフォーサイス夫人(セレステ・ホルム)の自宅に強盗が入り、拳銃が盗まれていたことが発覚する。
さらに、今度はベティが何者かに拳銃で撃たれた。銃声を聞いた警官が駆けつけると、そこにはテックマン医師が最も気にかけていた患者である若者ドミニク・ファロー(デューイ・マーティン)がいた。だが、ドミニクからは硝煙反応が出なかったことから、犯人ではないことが分かる。彼は単にテックマン医師に面会したかっただけのようだ。すると、今度は同じくのテックマン医師の患者で人気の若手女優ドリー・マーシュ(アネット・ファニチェッロ)が空港で自殺未遂を図ったという連絡が入った。しかし、それは恋人と駆け落ちを図ったものの空港で身元がバレてしまったドリーが、苦肉の策で演じた茶番劇だった。その恋人とは、フォーサイス夫人の放蕩息子ラリー(ジェームズ・マッカーサー)。拳銃を盗んだのも彼かと思われたが、本人は真っ向から否定する。そして、いよいよテックマン医師の診察の時間が訪れた。バーク部長はテックマンのふりをして診察室で待機し、各患者の反応を見ることにするのだったが…。
<解説>
ケネディ大統領の暗殺事件があったことから、放送が1週間延期されてしまったというエピソード。『裸の町』(48)や『花嫁の父』(50)などで知られる俳優で、『ドクター・モローの島』(77)や『オーメン2/ダミアン』(78)、『ファイナル・カウントダウン』(80)などの話題作を手掛けたドン・テイラーが監督を務めている。脚本は第7話も手掛けた女流脚本家エディス・R・ソマー。撮影監督はジョージ・E・ディスカント。
エキセントリックでミステリアスなテックマン夫人ベティを演じているのは、映画『初恋時代』(45)や『恋文騒動』(47)などの清純派として人気を集めた女優ジョーン・コールフィールド。また、『紳士協定』(47)でアカデミー助演女優賞を獲得した名女優セレステ・ホルムが、これまた変わり者のセレブ・マダム、フォーサイス夫人役で存在感を発揮している。
一方、テックマン医師の不器用でちょっとトボけた秘書ジャネット役として、日本育ちの可憐なアイドル女優スーザン・オリヴァーが登場。また、当時フランキー・アヴァロンとのコンビでビーチ物映画に数多く主演した売れっ子女優アネット・ファニチェッロが、スポイルされたワガママなティーン女優役で顔を出しているのも面白い。その他、ドン・シーゲル監督作品の常連としても有名な姉御女優シェリー・ノース、ジョン・フランケンハイマー監督の『孤独の青春』(57)で絶賛されドラマ『ハワイ5−0』(68〜80)でも人気を集めたジェームズ・マッカーサー、ペギー・リーの元ダンナとしても有名なデューイ・マーティンらが出演している。
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ジョーン・コールフィールド |
セレステ・ホルム |
スーザン・オリヴァー |
シェリー・ノース |
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アネット・ファニチェッロ |
デューイ・マーティン |
ジェームズ・マッカーサー |
第11話 Who Killed Purity Mather ? (全米放送:1963年12月6日)
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魔女ピュリティー・マザーが焼死する |
レコードに同封されたリストから捜査を始めるバークら |
バークの自宅から何者かが出てきた |
<ストーリー>
ピュリティー・マザーと呼ばれる魔女が焼死した。不可解なことに、遺体の顔は硫酸で溶かされている。実は、事件の直前にバーク部長のもとへ、彼女が自らの死を予言するレコードが届けられていた。そのレコードには彼女の5人の敵の名前を挙げたリストが同封されていた。バーク部長とティムは、そのリストを手掛かりに捜査を開始する。
まずは、ファキール・ジョージ・オシェア(テリー・サヴァラス)というムスリムの教祖。科学者でもある彼は、化粧品会社のために新しい口紅の開発を行っていたが、その調合法をピュリティー・マザーに盗まれたことから恨みを抱いていた。次に、大富豪のI・A・バッグ氏(チャールズ・ラッグルズ)。彼は死んだ初恋の女性と話をすべくピュリティー・マザーに交霊会を依頼したものの、それが全くの詐欺だったことを知って深く傷ついていた。だが、彼の話し相手である女性ガール・ガール(ナンシー・コヴァック)は、彼が虫一匹殺すことのできない老人だと証言する。
さらに、バーク部長は自称ヴァンパイアのシペスティ伯爵(ウォリー・コックス)の霊柩車を訪問。彼はピュリティー・マザーから偽物扱いされたことに腹を立てていた。また、ヌーディスト・ビーチを経営するリナ・ジェイコブス(ジャネット・ブレア)はかつてピュリティー・マザーの親友だったが、彼女に夫を奪われたことからひどく恨んでいる様子だ。さらに、女神ビーナスの生まれ変わりを自称する魔女ヴィーナス・ヘカテ・ウォルシュ(グロリア・スワンソン)は、ピュリティー・マザーに若さと魅力を奪われてしまったと主張する。
あまりにも不可解な人間関係。頭を抱えたバーク部長が自宅へ戻ると、何者かが屋敷の窓から出てくるところを目撃する。その場で犯人を追いかけるものの、残念ながら取り逃がしてしまった。犯人は何が目的でバーク部長の屋敷へ潜り込んだのか?すると、部長のヘア・ブラシからアフリカの黒魔術に使用される猛毒が発見される。犯人はバークの命を狙ったのだ。それは、彼が確実に事件の核心へと迫っていることを裏付けていた…。
<解説>
まさに奇人変人のオンパレードとも言うべきオカルトチックなエピソード。全体的にコミカルな要素が濃厚で、当時流行っていたスピリチュアリズムやヌーディズムなどのサブカルチャーを面白おかしく皮肉った作風になっている。演出を担当したウォルター・グローマンは、『逃亡者』(63〜67)や『サンフランシスコ捜査網』(72〜77)などの人気ドラマや数えきれないほどのテレビ映画を手掛け、『633爆撃隊』(64)や『略奪戦線』(70)といった戦争映画の佳作を残している監督。SF小説の大家ハーラン・エリソンが脚本を、チャールズ・バークが撮影監督を手掛けている。
本エピソードのゲストで注目なのが、サイレント時代のトップ・スターにして、復帰作『サンセット大通り』(50)の名演でアカデミー主演女優賞にもノミネートされた伝説の大女優グロリア・スワンソン。まさに“魔女”そのものといった強烈な存在感で印象を残している。また、舞台版『南太平洋』の主演で有名な女優ジャネット・ブレアが、ミステリアスなヌーディスト・ビーチ経営者リナ・ジェイコブス役を好演。さらに、『刑事コジャック』(72〜78)でお馴染みの名優テリー・サヴァラスもオフビートな演技を披露している。
その他、第2話にもゲスト出演していた名喜劇俳優チャールズ・ラッグルズ、テレビ初期のシットコム“Mr.
Peepers”(52〜55)で人気を博した喜劇俳優ウォリー・コックス、映画『アルゴ探検隊の大冒険』(63)の女王メディア役やドラマ『奥さまは魔女』のダーリンの元恋人シーラ役などで今も根強い人気を誇る美人女優ナンシー・コヴァックが登場。また、『フロリダ万才』(64)と『ハレム万才』(65)でプレスリーと共演した元ミス・アメリカのアイドル女優メアリー・アン・モーブリーがバークのガールフレンド役で顔を出している。
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グロリア・スワンソン |
ジャネット・ブレア |
テリー・サヴァラス |
ナンシー・コヴァック |
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チャールズ・ラッグルズ |
ウォリー・コックス |
メアリー・アン・モーブリー |
第12話 Who Killed Cynthia Royal ? (全米放送:1963年12月13日)
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石油王の元夫人シンシア・ロイヤルが殺された |
その夫ロイヤル氏も死体で発見される |
ティムはロイヤル氏の妻エウドラに接近する |
<ストーリー>
引越しで移動中の家財道具の中から女性の死体が発見された。被害者は元クラブ歌手で石油王ロイヤル氏と離婚したばかりのシンシア・ロイヤル。クラブ・オーナーのジョーイ・カーソン(スタビー・ケイ)と、その弁護士でバーク部長の知人でもあるベン・ガードナー(マクドナルド・ケアリー)が呼び出される。カーソンによると、ロイヤル氏はシンシアの同僚だったクラブ歌手エウドラ(マリリン・マクスウェル)と再婚したらしい。
その頃、バーク部長とは長い付き合いの老女カルティエ婦人(ウナ・マーケル)が捜索願を出しに警察署へとやって来た。ペットの猫デボラが正体不明の男に奪い去られたというのだ。偶然にも、カルティエ婦人の住む高級アパートにはエウドラが住んでいた。夫人の案内でエウドラの部屋へ向かったバーク部長は、そこでロイヤル氏の遺体を発見する。自殺のように見せかけられていたが、現場の状況を詳しく調べると他殺であることは疑いようがなかった。しかも、凶器はシンシアを射殺したものと同じ銃だ。妻のエウドラはラスヴェガスへ行っている。どうやら、ロイヤル氏との離婚を考えているようだ。
カルティエ婦人によると、直前にエウドラとロイヤル氏が激しい口論をしていたらしい。よくよく話を聞いてみると、ペットの猫デボラはその時にエウドラの部屋へ迷い込んでいたようだ。もしかすると、デボラを連れ去った男はロイヤル氏を殺害した犯人だったのかもしれない。いずれにせよ、事情を知っているであろうエウドラと猫デボラの行方を探すことが急がれた。
その頃、路上生活を送るボヘミアンのミュージシャン、マックス(フランキー・アヴァロン)とマーラ(キャサリーン・ノーラン)の二人が、路地へ迷い込んだデボラを飼いならしていた。二人はデボラに多額の懸賞金がかかっていることを新聞で知って驚くが、警察へ届け出るのには躊躇した。一方、単独でラスヴェガスへ向かったティムはエウドラと接触。ロサンゼルスへ連れ戻すことに成功するが、犯人へ繋がるような証言は得られなかった。しかし、マックスとマーラがデボラを警察へ届けたことから事態は急変。というのも、デボラの体を調べたところ、意外な事実が浮かび上がったからだ…。
<解説>
猫の肉球から殺人事件のアリバイが崩れるというアイディアがユニークなエピソード。フランスの名匠クリスチャン・ジャックの作品も手掛けたことのあるジェームソン・ブリューワーと、ルネ・クレマン監督の『危険がいっぱい』(64)などの原作本を書いたミステリー作家デイ・キーンが脚本を担当。『悪い奴』(59)や『非情の青春』(59)などのB級映画で知られるチャールズ・ハースが監督を、シリーズ常連のチャールズ・バークが撮影監督を手掛けている。
今回のファム・ファタール役は、人気コメディ映画“底抜け”シリーズでボブ・ホープの相手役を演じたクール・ビューティ、マリリン・マクスウェル。また、『四十二番街』(33)や『メリイ・ウィドウ』(34)、『踊るブロードウェイ』(35)など数多くのミュージカル映画やコメディ映画でヒロインのユニークな親友役を演じ、『肉体のすきま風』(61)ではアカデミー助演女優賞候補にもなったハリウッド黄金期の名物女優ウナ・マーケルが、ちょっとトボケたチャーミングな老女カルティエ婦人役を生き生きと演じている。
また、全米1位を取った“ヴィーナス”などのヒット曲でティーン・アイドルとなり、数多くのビーチ物映画に主演したフランキー・アヴァロンと、人気ドラマ『マッコイじいさん』(57〜62)で孫息子(リチャード・クレンナ)の新妻ケイト役を演じてお茶の間のアイドルとなったキャサリーン・ノーランが、いわゆるヒッピーの走りみたいなボヘミアン・カップル役をオフビートに演じていて面白い。
そのほか、『野郎どもと女たち』(55)や『スウィート・チャリティ』(68)などのミュージカル映画で有名なブロードウェイ出身の喜劇俳優スタビー・ケイ、40〜50年代にハリウッドの“B級映画の帝王”と呼ばれたタフガイ俳優マクドナルド・ケアリーが出演している。
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ウナ・マーケル |
マリリン・マクスウェル |
マクドナルド・ケアリー |
スタビー・ケイ |
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フランキー・アヴァロン |
キャサリーン・ノーラン |
第13話 Who Killed Eleanore Davis ? (全米放送:1963年12月20日)
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見世物小屋で若い女性の死体が発見される |
女性はカレンダーのモデル、エレノア・デイヴィスだった |
エレノアの部屋からは大量のネガフィルムが発見される |
<ストーリー>
見世物小屋の展示物の中から若い女性の死体が発見された。身元は不明。どうやら、死ぬまで殴られたようだ。よく見ると、指にはリングの跡が残っている。死の直前か直後に指輪を持ち去られた可能性が高かった。発見者である見世物小屋のオーナー、キングストン(アーサー・ハニカット)によると、昨日は娘のサラ(テリー・ムーア)が営業を手伝ってくれたという。だが、サラは恋人の既婚男性とテニスの試合を見に出かけたまま帰ってきていなかった。敷地内を捜索していたバーク部長らは、壁に貼られたビキニ・カレンダーに目を留める。というのも、そのモデルが被害者と同一人物だったからだ。
カレンダーを製作したのは小さなモデル事務所だった。社長のスミス氏(エドワード・エヴェレット・ホートン)によると、女性の名はエレノア・デイヴィスといい、モデルの仕事はこれ一回きりだったという。彼女はカメラマン志望だったらしく、その後はナイトクラブのフォトグラファーになったとしか聞いていなかった。専属カメラマンのハロルド(ニック・アダムス)は極度のマザコンで、エレノアのように野心的な女性には強い嫌悪感を抱いている様子。また、その母親で事務所の秘書をしているオームスビー夫人(エルザ・ランチェスター)も若い女性を蔑視しており、中でもエレノアには特に悪い印象を持っているようだった。
ティムとハートはエレノアの夫ルディ(ディーン・ジョーンズ)のアパートへ向かったものの、彼は留守だった。大家のがめつい老婆マリガン夫人(ジェーン・ダーウェル)によると、ルディとエレノアは離婚寸前で別居しており、彼は若い恋人と共にテニスの試合を見るために出かけたまま帰らないという。どうやら、ルディはサラと付き合っているようだ。
一方、バーク部長はガールフレンドのモデル、ジュディ(デブラ・パジェット)からエレノアの現住所を教えてもらった。すると、エレノアの部屋からは大量のネガが発見される。いずれも、ビバリーヒルズ界隈の金持ち男性たちの浮気現場を撮った写真ばかり。どうやら、彼女は浮気写真をネタに脅迫を重ねていたようだ。警察はルディとサラの足取りを掴んだものの、彼らは事件と無関係だった。
だが、バーク部長は例のカレンダーを改めて見直し、ある重大なことに気が付く。浮気写真で美人局役をやっているのは、いずれもカレンダーのモデルだったのだ。さらに、死体発見現場近くから行方不明の指輪が発見され、それがスミス氏の亡くなった妻のものだったことが分かる。果たして、事件の背後にモデル事務所の組織的犯罪が絡んでいるのだろうか?
<解説>
胡散臭いモデル事務所を舞台に、金のなる木にたかる人々の野心と欲望の行き着く先を描いたエピソード。第10話で監督を担当したドン・テイラーが今回は脚本を手掛け、『禁断の惑星』の続編的SF映画『宇宙への冒険』(57)などのB級映画で知られるハーマン・ホフマンが監督として参加。チャールズ・バークが撮影監督を担当している。
モデル事務所の挙動不審な社長スミス氏役を演じているのは、『極楽特急』(32)や『生活の設計』(33)、『天使』(37)など巨匠エルンスト・ルビッチ作品の常連として活躍し、『トップ・ハット』(35)を筆頭にアステア&ロジャース映画の常連としてもお馴染みの俳優エドワード・エヴェレット・ホートン。ハリウッド黄金期を代表する名脇役の1人だ。
さらに、傑作『フランケンシュタインの花嫁』(35)の花嫁役で知られ、『家路』(43)や『剃刀の刃』(46)、『情婦』(57)、『名探偵登場』(64)など数多くの名作に出演した個性派エルザ・ランチェスター、ジョン・フォード監督の名作『怒りの葡萄』(35)でアカデミー助演女優賞を獲得したジェーン・ダーウェルという、ハリウッド映画を語る上で欠かせない名脇役女優が出演しているのも注目。2人は翌年に映画『メリー・ポピンズ』(64)でも共演している。
また、セシル・B・デミル監督の『十戒』(56)のリリア役や『ディミトリアスと闘士』(54)の美女ルチア役など、50年代の大作映画に欠かせなかったグラマー女優デブラ・パジェットがバーク部長の新しいガールフレンド、ジュリア役として登場。そのほか、ハワード・ホークス監督の『果てしなき蒼空』(52)でアカデミー助演男優賞候補になった西部劇の名脇役アーサー・ハニカット、『シャム猫FBI/ニャンタッチャブル』(65)や『黒ひげ大旋風』(67)、『ラブ・バッグ』(69)など数多くのディズニー映画でお茶目なヒーローを演じた俳優ディーン・ジョーンズ、『愛しのシバよ帰れ』(52)でアカデミー助演女優賞候補になった美人女優テリー・ムーア、そして第8話にもゲスト出演していた『怪獣大戦争』のニック・アダムスらが顔を出している。
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エルザ・ランチェスター |
エドワード・エヴェレット・ホートン |
ジェーン・ダーウェル |
デブラ・パジェット |
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アーサー・ハニカット |
ニック・アダムス |
ディーン・ジョーンズ |
テリー・ムーア(右) |
第14話 Who Killed Beau Sparrow ? (全米放送:1963年12月27日)
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若い画家ボー・スパロウがプールに転落して死んだ |
ジャンプ台には何の異常も見られなかった |
ボーのアトリエに謎を解くヒントが隠されていた |
<ストーリー>
バーク部長は長年の友人である大富豪ヴィクター・ハガティ(ジャック・ヘイリー)のホーム・パーティへ招かれた。招待客の中には、ゴシップの絶えないエロッツィ伯爵夫人(イヴォンヌ・デ・カーロ)や、その年の離れた若い恋人ボー・スパロウの姿も。ところが、プールに備え付けられた自動ジャンプ台が誤作動し、ボーが水中へ転落してしまう。すぐに酸素ボンベを使った救命措置が取られたものの、医師マクリーン(ダン・トビン)の努力もむなしくボーは亡くなってしまった。しかし、現場に居合わせたバーク部長は、若くて健康なボーがプールへ転落しただけで死んでしまったことに大きな疑問を抱く。ジャンプ台にも異常は見られなかった。果たして、これは本当に事故だったのか?
エロッツィ伯爵夫人と婚約していたボーだったが、その一方でヴィクターの秘書を務めるオールド・ミスのジーン(ジューン・アリソン)とも秘かに愛人関係にあった。売れない画家の彼は、金を持っている年上女性のヒモをして食っていたのである。ジャンプ台を設計した健康器具発明家チャールズ・P・バナー(ケン・マレー)から事情聴取をしたバーク部長だったが、特に怪しい点は見受けられない。
一方、重い病気に苦しむヴィクターは、長年連れ添った妻リズ(アグネス・ムーアヘッド)との不仲に悩んでいた。実は、リズも死んだボーに貢いでいた女性の1人だった。彼女はボーの死にショックを受け、自室にこもったまま堅く心を閉ざしてしまった。さらに、エロッツィ伯爵夫人が破産寸前だったことが発覚。バーク部長は伯爵夫人が若いボーをエサにしてリズへ接近し、妻に頭の上がらないヴィクターから大金をせしめていたのではないかと疑う。だが、伯爵夫人とヴィクターは気心の知れた友人で、彼は夫人に何の見返りも求めずに借金を肩代わりしていた。そして、リズとボーの関係を知った伯爵夫人は愛人関係を実質的に解消していたという。
さらに、リズの秘書アン・マーティン(ローズマリー・スタック)の証言から、リズがヴィクターと離婚するつもりだったことが分かる。妻の愛を取り戻そうとしたヴィクターが、何らかの仕掛けをしてボーを殺害したのか?改めてボーのアトリエを捜索していたバーク部長は、事件の謎を解く重大なヒントを発見する…。
<解説>
上流階級のご婦人方を食い物にする若い芸術家と、年下の魅力的な男に群がる中年女性たちの歪んだ関係を軸に展開するエピソード。とはいえ、バーク部長と仕事人間のオールド・ミス、ジーンとのユーモラスな恋愛関係が全編にフィーチャーされ、大人向けのロマンティック・コメディ的な要素を全面に押し出している。監督を務めたのは『ピーター・ガン』や『奥さまは魔女』などのドラマを演出したデヴィッド・オリック・マクディアモン。第4話にも参加していたジョン・メレディス・ルーカスが脚本を、ジョージ・E・ディスカントが撮影監督を担当している。
妖艶でグラマラスなエロッツィ伯爵夫人役を演じているのは、『キスメット』(44)や『君知るや南の国』(53)、『十戒』(56)など数多くのハリウッド映画で活躍したエキゾチック・ビューティ、イヴォンヌ・デ・カーロ。さらに、『若草物語』(49)や『グレン・ミラー物語』(54)で日本でも絶大な人気を誇った清純派女優ジューン・アリソンが、恋愛に不器用なオールド・ミスをコケティッシュに演じている。
また、『市民ケーン』(41)などのオーソン・ウェルズ作品や『奥さまは魔女』のエンドラ役でお馴染みの名女優アグネス・ムーアヘッドが情緒不安定で気難しいブルジョワ・マダム、リズ役でエキセントリックな演技を披露。そのほか、『オズの魔法使い』(39)のブリキ男役で有名なミュージカル俳優ジャック・ヘイリー、ラジオやテレビの司会者として有名なケン・マレー、『女性No.1』(42)や『大時計』(47)などの名作に数多く出演した性格俳優ダン・トビン、そして40年代のトップ・モデルにして名優ロバート・スタックの奥さんでもあったローズマリー・スタックが顔を出している。
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ジューン・アリソン |
イヴォンヌ・デ・カーロ |
アグネス・ムーアヘッド |
ジャック・ヘイリー |
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ケン・マレー |
ローズマリー・スタック |
ダン・トビン |
第15話 Who Killed Jason Shaw ? (全米放送:1964年1月3日)
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高級ホテルで実業家ジェイソン・ショウが殺害された |
どうやら違法カードゲームが行われたようだった |
ジェイソンが破産寸前だったことが発覚する |
<ストーリー>
ビバリーヒルズの高級ホテル、ベルエアーガーデンの一室で男性の死体が発見された。被害者は名うての実業家ジェイソン・ショウ。第一発見者はルーシー(ジョイス・ジェームソン)という若い女性だ。長旅で疲れた彼女のために、見知らぬ親切な中年男性が部屋を取ってくれたところ、シャワールームで死体を発見したという。しかし、リビングに置いてあった御馳走を無我夢中で食べたところ、すっかり眠くなってしまい、警察への通報が大幅に遅れてしまったのだった。
もともとホテルの部屋を予約していたのはバートン・リース(バージェス・メレディス)という大富豪だった。彼は肉食植物を育てるのが趣味という変わり者。当日は仕事の打ち合わせのためにベルエアーガーデンを使っただけだという。実は、彼の娘ジル(タミー・グライムス)の車もホテルの駐車場で目撃されていた。父親は事件に無関係だとバーク部長へ証言するジルだったが、彼女自身も何か隠しているような様子がある。
リース氏によると、中古車チェーンを経営するハミルトン・マーフィ(キーナン・ウィン)やバーク部長の古い友人で貿易会社を経営するジャネク・サイボフスキー(オスカー・ホモルカ)も、ベルエアーガーデンの同じ部屋にいたことが確認された。だが、いずれの人物も曖昧な証言を繰り返すばかり。ところが、ジルの目撃証言によると当日もう一人の男性が現場に居合わせたらしい。
さらに、現場からは1000ドル紙幣の燃えカスが見つかった。いったい誰が、それほど高額の紙幣を燃やしたのか?改めて現場の部屋を見回したバーク部長は、ここに集まった実業家たちが違法なカード・ゲームに興じていたのではないかと推測する。その後の調べで、第一発見者のルーシーに部屋の鍵を渡したのはマーフィだったことが判明。しかし、あくまでも善意からだったようだ。
さらに、謎だったもう一人の人物も割れた。ワイナリーを経営するジュリアン・クラリントン(リチャード・ヘイデン)である。違法カードゲームで大損をしたのはジュリアンだったが。残念ながら彼にはアリバイがあった。すると、殺されたジェイソンの会社が倒産寸前で、実は現金をほとんど持たないままゲームに参加していたこと。さらには、彼がゲームで勝った金を持って愛人の秘書マリアン(マーリン・メイソン)と行方をくらますつもりだったことが分かる。そして、6年前起業したばかりの彼が短期間で大物実業家となれたのは、大富豪リースの資金提供があった。果たして、犯人は裏切られたリースなのか、それとも…?
<解説>
金銭欲に取りつかれた人々の歪んだ人間関係を皮肉たっぷりに描いたエピソード。第9話を手掛けたスタンリーZ・チェリーが監督を、第2話を手掛けたルイス・リードが脚本を担当。撮影監督にはシリーズ常連のチャールズ・バークがクレジットされている。
バーク部長を翻弄するエキセントリックな女性ジルを演じるタミー・グライムスは、トニー賞に2度輝く舞台の大物女優。名優クリストファー・プラマーの奥さんであり、『パルプ・フィクション』(94)などでお馴染みの個性女優アマンダ・プラマーの母親でもある。なるほど、アクの強い個性や甲高いベビー・ボイスなどは娘のアマンダとソックリだ。
また、容疑者となる金持ちの実業家たちには、いずれ劣らぬハリウッドの名脇役が勢ぞろい。肉食植物を育てる変わり者リースには、第6話にもゲスト出演していた『ロッキー』シリーズのバージェス・メレディス。大声でわめき散らす中古車チェーンのワンマン社長マーフィには、これまた第5話で顔を出していたキーナン・ウィン。日本の骨董品に囲まれた貿易会社社長サイボフスキーには、ヒッチコックの『サボタージュ』(36)で有名なオーストリア出身の名優オスカー・ホモルカ。ワイナリーを経営する傲慢で高飛車なクラリントンには、『サウンド・オブ・ミュージック』(64)のトラップ大佐の親友マックス役でお馴染みのリチャード・ヘイデン。
そのほか、『トラブル・ウィズ・ガールズ』(69)でプレスリーの恋人役を演じたマーリン・メイソン、『アパートの鍵貸します』(60)や『おフロの女王さま』(66)などのコメディ映画でおつむの弱いブロンド娘を演じ続けたコメディエンヌのジョイス・ジェームソン、『呪いの沼』(66)や『地上最強の美女軍団』(73)などのB級カルト映画で有名なセクシー女優フランシーヌ・ヨークといった美女たちが華を添えている。
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タミー・グライムス |
バージェス・メレディス |
オスカー・ホモルカ |
キーナン・ウィン |
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マーリン・メイソン |
リチャード・ヘイデン |
フランシーヌ・ヨーク |
ジョイス・ジェームソン |
第16話 Who Killed Snookie Martinelli ? (全米放送:1964年1月10日)
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リッチな遊び人スヌーキー・マーティネリが射殺された |
スヌーキーのふりをして妻エヴァに接触するバーク |
何者かがバークを狙撃した |
<ストーリー>
大金持ちのプレイボーイ、スヌーキー・マーティネリ(ジーン・バリー)がパーティの最中に射殺された。通報を受けて現場へ駆けつけたバーク部長は、スヌーキーが自分と瓜二つであることに驚きを隠せない。パーティ会場では誰もがヘベレケに酔っており、役に立つような目撃証言は全く得られなかった。パーティが行われたホテルの部屋を借りていたのは、これまたリッチで暇を持て余した美女セラフィム・パークス(ジャニス・ルール)。だが、彼女自身はパーティに参加していなかったという。スヌーキーと親しかったビンキー・フォーセット(カール・ライナー)は、パーティの直前に彼と言い争いをしていた。だが、スヌーキーの太鼓持ちをする代わりに食わせてもらっているビンキーが、言うなれば飯のタネであるスヌーキーを殺害するとは考えにい。また、スヌーキーに妻を寝取られたフランス人の有名カーレーサー、ルイ・シモン(シーザー・ロメロ)も捜査線上にあがったものの、自らも名うてのプレイボーイである彼にとってはお互い様の出来事。いちいち妻を取られた程度のことで騒ぐのは、頭の堅い中流アメリカ人のすることだと一笑に付される。
セラフィムからディナーへ誘われたバーク部長は、そこで有名ピアニストのジャンゴ・ジョーダン(ホーギー・カーマイケル)と知り合う。ジャンゴもまた、スヌーキーやセラフィムらのジェットセット仲間の1人だった。彼によると、スヌーキーは大富豪カルロス・ヴァルガ(ブロデリク・クロフォード)と仲たがいをしていたらしい。カルロスはバーク部長と古くからの友人だ。彼によると、スヌーキーにはエヴァ(アーリン・ダール)という内縁の妻がいるという。
エヴァはメキシコへ旅行へ行って留守だった。彼女は過去に4度の離婚歴があり、金持ち男性の間を渡り歩くタイプの女性だ。実は、スヌーキーは彼女の莫大な財産で放蕩三昧を続けていた。港で出迎えたバーク部長を初めは夫だと勘違いしていたエヴァ。その様子から察するに、彼女はスヌーキーの死を知らない様子だ。だが、メキシコから船旅での帰り道の途中、彼女がヘリコプターをチャーターして2時間ほど船を離れていたことが発覚する。さらに、バーク部長が何者かによって狙撃されるという事件が起きた。果たして、犯人は財産を食いつぶしてばかりの夫に辟易した妻エヴァなのか…?
<解説>
50〜60年代に流行語ともなったジェット・セット・ピープルの堕落した実態を描いたエピソード。ジェット・セットとは、まだアメリカでも海外旅行が高嶺の花だった時代に、ジェット機に乗って世界中を渡り歩きながらパーティ三昧の生活を送るリッチな上流階級のライフスタイルを意味した言葉。当時は、そうした金と暇を持て余した人々の生活ぶりがゴシップ誌などを賑わせ、ちょっとした社会現象になっていた。また、捜査の過程で自分と瓜二つなスヌーキーのだらしない女遊びを知り、まるで自らのプレイボーイぶりを非難されているような気分になって機嫌を損ねるバーク部長の様子が面白おかしく描かれている。監督は『愛すれど心さびしく』(68)や『きんぽうげ』(70)などの小品佳作映画を残しているロバート・エリス・ミラー。『原子怪獣と裸女』(56)や『クリムゾン・キモノ』(59)などに出演していた元俳優のポール・デュボフと第3話にも参加していたグウェン・バーニが脚本を、チャールズ・バークが撮影監督を手掛けている。
金持ちのスポイルされた我がまま美女セラフィム役を演じるのは、ポール・ニューマンと共演した『逃亡地帯』(66)やロバート・アルトマン監督の『三人の女』(77)で知られる女優ジャニス・ルール。また、『スターダスト』や『わが心のジョージア』などの名曲で知られる作曲家兼ピアニストのホーギー・カーマイケルが、事件のカギを握る男ジャンゴ役を演じているのも注目だ。
そのほか、映画監督としても有名な喜劇俳優カール・ライナー(ロブ・ライナー監督の父)、第6話にもゲスト出演していた映画女優アーリン・ダール、同じく第8話にゲスト出演していたシーザー・ロメロ、『オール・ザ・キングスメン』(49)でアカデミー主演男優賞を獲得した名優ブロデリク・クロフォードが顔を出している。
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ジャニス・ルール |
アーリン・ダール |
ホーギー・カーマイケル |
ブロデリク・クロフォード |
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シーザー・ロメロ |
カール・ライナー |
第17話 Who Killed What's His Name ? (全米放送:1964年1月17日)
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3人組の強盗に銀行が襲われる |
強盗3人のうち2人の死体が発見された |
バローズ氏の愛人ポーレットは息子ピーターとも関係が |
<ストーリー>
銀行の窓口で順番待ちをしていた顧客ピゴット氏(レジナルド・がーディナー)が気を失って倒れた。近くにいたドクターが救急車を呼び、2人の救命士が銀行へ到着。しかし、彼らの正体は銀行強盗だった。ストッキングを頭から被ったドクターと2人の救命士はカバンに大量の現金を入れ、去り際に社長のバローズ氏を射殺して逃げて行った。全てはあっという間の出来事だった。
通報を受けて銀行へ駆けつけたバーク部長。現場に居合わせた目撃者に主犯と思われるドクターの特徴などを訊ねるものの、返って来るのは“あまりにも平凡で印象に残らないような人物”という答えばかり。誰一人として、犯人の特徴らしきものを覚えている人はいなかった。
最初に気を失ったピゴット氏は、知らない間に薬物を飲まされたようだった。というのも、たまたま現場に居合わせただけと思われたドクターだが、実はピゴット氏の連れだったのだ。彼は売れない画家として細々と生活しているが、その日の朝いきなり見知らぬ紳士が彼の作品を高額で買いたいと申し出てきたのだという。しかし、現金の手持ちがない。近くの銀行で現金をおろすから、良かったら一緒に来てくれないかと言われて同行したのだ。当然、相手の名前など知らない。
次に、バーク部長は美人の銀行員エリザベス(エリザベス・アレン)の自宅を訪れる。彼女はバローズ社長の秘書だった。だが、独身女性が住むには驚くぐらい高級なアパートを見て、バーク部長は彼女がバローズ社長の愛人であったことに気付く。事件に使われた救急車が盗難車であったと判明する。そして、その救急車が空き地で発見された。証拠となりそうなものは全て消されていたが、たった一か所だけ指紋のふき取り忘れている箇所が発見される。
指紋の主は前科者のフランクという男。救命士役の片割れだ。フランクの行方を探すバーク部長とティム。だがなかなか足取りが分からないことから、バーク部長はベテランの詐欺師エプソム侯爵(スパイク・ジョーンズ)から裏情報を得ようとする。だが、その筋の動きは全くないという。主犯格は恐らく犯罪歴のない素人だ。バーク部長は、銀行強盗はあくまでも目くらましで、犯人の目的はバローズ社長の殺害にあったのではと考える。
そんな折、フランクともう一人の男が死体で発見された。口封じのために殺されたのだろう。バーク部長はバローズ氏の豪邸を訪れる。妻エレイン(ヴァージニア・グレイ)は死んだ夫が他人に恨まれるようなことなどない人格者だったと言い張るが、その表情から本心ではないことが明らかに見て取れた。銀行の共同経営者であるコートランド氏(アンディ・ディヴァイン)は、バローズ氏が血も涙もない暴君だったと語る。その上、無数の愛人がいた。バーク部長は、その中の1人であるポーレット(ジーナ・ローランズ)というB級映画女優に目をつける。すると、ポーレットはバローズ氏の息子ピーター(ディック・クラーク)とも関係があったと判明。しかし、父親がいなければ何もできない軟弱なピーターに犯行は不可能かと思われた。すると、バーク部長はある人物の存在にふと気が付く。それは銀行の経理係スミス氏(エドガー・バーゲン)。地味で目立たないスミス氏は、まるで空気のような存在だった。もしかしたら…という直感に動かされてスミス氏の自宅へ向かったバーク部長とティム。その時、スミス氏の自宅から一発の銃声が響き渡る…。
<解説>
人間の印象や特徴といった主観のまやかしをトリックに使ったエピソード。謎解きとしての筋立てには若干無理があるものの、着眼点そのものはなかなか面白い。監督は第10話も手掛けた『オーメン2/ダミアン』のドン・テイラー。脚本は第8話に続いてトニー・バレット、撮影監督はチャールズ・バークが担当している。
ゲストで注目したいのは、B級映画女優ポーレット役のジーナ・ローランズ。夫ジョン・カサヴェテスとのコンビで知られる渋い名女優だが、当時は新進スターとして頭角を現しつつある時期だった。また、ロックンロールを全米に広めた伝説の音楽番組“American
Bandstand”の司会者として一時代を築き、アメリカを代表する音楽番組パーソナリティとなったディック・クラークが、俳優として金持ちのひ弱なダメ息子役を演じているのも面白い。
そのほか、女優キャンディス・バーゲンの父親でもある有名な腹話術師エドガー・バーゲン、40年代に低予算映画のヒロインとして活躍した女優ヴァージニア・グレイ、『駅馬車』(39)や『リバティ・バランスを射った男』(62)などジョン・ウェインの西部劇の脇役としてもお馴染みの巨漢俳優アンディ・ディヴァイン、コメディ・ミュージックの王様と呼ばれて日本のクレイジー・キャッツにも多大な影響を与えたスパイク・ジョーンズ、チャップリンの『独裁者』(40)のシュルツ中佐役で有名な名脇役レジナルド・ガーディナー、映画のみならずブロードウェイのミュージカルでも有名な女優エリザベス・アレンが顔を出している。
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ジーナ・ローランズ |
ディック・クラーク |
エドガー・バーゲン |
ヴァージニア・グレイ |
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スパイク・ジョーンズ |
アンディ・ディヴァイン |
レジナルド・ガーディナー |
エリザベス・アレン |
第18話 Who Killed Madison Cooper ? (全米放送:1964年1月24日)
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弁護士のマディソン・クーパーが刺殺された |
マディソンに恨みを持つ過去の依頼人を調べるバーク |
謎を解くカギは日本料亭に…? |
<ストーリー>
バーク部長のもとに知人の大物弁護士マディソン・クーパー(デヴィッド・ホワイト)から電話が入る。それは自らの死を通報する連絡だった。急きょ現場へ駆けつけたバーク部長。そこは人気の少ない裏町だった。状況から察するとマディソンは傷を負ったままの状態で車を運転してここへたどり着き、瀕死の体で公衆電話からバーク邸へ電話をかけたようだ。死因は腹部の刺し傷からの出血多量。それにしても、なぜわざわざこんな場所へ来たのか?すると、すぐ近くの新聞ボックスの中身を入れ替えようとした配達員が、中から大量の現金を発見する。札束にはマディソンのものと思われる血がついていた。どうやら、彼はここに大金を隠した上で電話をかけたようだった。
新聞配達員はバーク部長と旧知の仲の若者ウォーリー(マーティ・インゲルス)だった。実は、彼の父親が過去にマディソンに弁護を依頼したことがあり、結果として有罪判決を受けて刑務所送りになっていた。それを逆恨みしての犯行とも思われたが、ウォーリーはマディソンの死亡時点で配達の途中だったためアリバイがある。それでは、なぜマディソンは新聞ボックスに大金を隠したのか?ウォーリーが配達の担当であることを知っていたのか?謎は深まる。
マディソンの自宅へ家宅捜索に入ったところ、彼は自分の書斎で何者かに刺されたようだった。バーク部長はマディソンの秘書キャロル(キャロリン・ジョーンズ)に事情を訊こうとするが、警察嫌いのキャロルは非協力的。そこで、バーク部長は彼女を重要参考人として逮捕し、警察署に連行する。一方、マディソンに恨みを持っていそうな過去の顧客を調べていたティムは、往年の映画スター、エリオット・ダニング(ケヴィン・マッカーシー)に目をつける。かつてはハリウッド随一のプレイボーイだったエリオットだが、熱狂的ファンの女性から子供の認知を訴えられたために、スターとしてのキャリアを絶たれた。その時、彼を弁護したのがマディソン。裁判では女性の子供がエリオットの子供ではないことが証明され、結果として仕事を失ったものの満足しているようだ。というのも、今はかつて自分の召使だった男の家に居候しているエリオットだが、どうやらその男が彼の愛人だった様子。
一方、その裁判でエリオットからレイプされたと主張した女性エイミー(ジーン・クレイン)は、今も心に深い傷を負っていた。世間からウソつき呼ばわれされ、身を隠すようにして生きてきた彼女は、もう事件のことは思い出したくもないと語る。やがて、マディソンが深刻な病に侵され、余命いくばくもない体だったことが判明。犯人はその事実を知らなかったのだろうか?
次に、バーク部長はラヴィ―・ハリントン(ドロシー・ラムーア)という女性を訪ねる。彼女は5人の夫を次々と死に追いやって遺産を奪った悪女で、マディソンの弁護にも関わらず有罪判決を受け、つい最近仮釈放で刑務所から出てきたばかりだった。ラヴィ―と話をしたバーク部長は、彼女の変人ぶりにあきれ返る。一方、ティムとハートはアーサー・シェルビー(テリー=トーマス)という科学者を訪問。かつて彼は大手化粧品会社の開発部門に携わっていたが、ライバル会社に情報を売ったことで逮捕された。弁護を担当したマディソンのおかげで刑期が軽くなったのだが、そもそも有罪判決を受けたこと自体に彼は憤っていたようだ。
マディソンの秘書キャロルと親しくなったバーク部長は、彼が自分の病を知った直後から、かつてのクライアントの中から特定の人々の行方を捜し始めていたことを知る。どうやら、彼は自分が傷つけてしまったかもしれない人々に対して、死ぬ前に大金を持って謝罪して回ろうとしていたようだったのだ…。
<解説>
アメリカでは弁護士というと悪人のイメージも強いと言われるが、このエピソードを見ると昔からそうだったのかもしれないなと思わせるものがある。また、今回はクライマックスで大きな日本料亭が舞台として登場するのも興味深い。ジーン・クレインがこってりと白粉を顔に塗った和服姿で日本人のふりをしているという設定なのだが、どう見ても日本人には見えずに浮きまくっているのがビミョー…(笑)。何を言っているんだか分からないような片言の日本語も、さらに輪をかけてビミョーだ。監督は第3話を手掛けたジェフリー・ハイデン。脚本は第2話、第15話に続いてこれが3度目のルイス・リード。撮影はジョージ・E・ディスカントが担当している。
薄幸の女性エイミー役を演じているジーン・クレインは、肌の白い黒人女性を演じて話題を呼んだ名作“Pinky”(49)でアカデミー助演女優賞候補となり、ミュージカル『ステート・フェア』(45)や『一ダースなら安くなる』(50)などで活躍した20世紀フォックスの看板スター。また、バーク部長とお熱い仲になるマディソンの秘書キャロル役には、第7話でも一人四役を演じてバークを翻弄した女優キャロリン・ジョーンズが扮している。
そのほか、『シンガポール珍道中』(40)を始めとする“珍道中”シリーズでボブ・ホープ&ビング・クロスビーとトリオを組んで人気を博したエキゾチックな美人女優ドロシー・ラムーア、『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(56)や『ハウリング』(81)などSF/ホラーのジャンルで特に人気のある名優ケヴィン・マッカーシー、第5話にもゲスト出演していたイギリスの大物喜劇俳優テリー=トーマス、当時アメリカのテレビで人気者だったスタンダップ・コメディアンのマーティ・インゲルスが登場。また、『奥さまは魔女』のダーリンの親友ラリー役でお馴染みのデヴィッド・ホワイトが、殺された弁護士マディソン役として顔を出している。
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キャロリン・ジョーンズ |
ジーン・クレイン |
ケヴィン・マッカーシー |
ドロシー・ラムーア |
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テリー=トーマス |
マーティ・インゲルス |
デヴィッド・ホワイト |
第19話 Who Killed April ? (全米放送:1964年1月31日)
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自動車の廃棄場で女性の他殺体が発見される |
被害者はドライブ・イン・レストランのウェイトレス |
事件の背後には麻薬の密売が絡んでいた |
<ストーリー>
自動車の廃棄場で女性の死体が発見される。背後から銃殺されたようだった。しかし、残念ながら身元を特定できるようなものは何も残されていない。ちょうどその頃、ティムの母ティルソン夫人(アイリーン・ハーヴェイ)がロサンゼルスへとやって来ていた。ミステリー好きのティルソン夫人は、その被害者の写真を見て女性がウェイトレスであると推測する。事実、その被害者はドライブ・イン・レストランで働くウェイトレスだった。ヘンリーの友人が勤めている店の従業員だったのである。
彼女の名前はエイプリル。店のオーナー、ハットン氏(エディー・ブラッケン)によると、エイプリルは女性の友人数名とルーム・シェアをして暮らしていたらしい。だが、その家はウェイトレスに似つかわしくないくらいの豪邸で、しかも銀行には多額の預金が残されていた。店にはウェイトレスを口説きにくるような客も多いという。彼女が何か違法な商売をしていたであろうことは容易に想像が出来た。
エイプリルにはクラリッサ(マーサ・ハイヤー)という従姉妹がおり、同じ店でアルバイトをしていた。クラリッサの家に行ったバークは、メイド付きの豪勢な暮らしぶりに驚く。クラリッサの実家は裕福だったが、従姉妹であるエイプリルが悪い道に進んでしまったことを心配し、彼女を説得するために同じ店でアルバイトをしていたのだという。だが、犯行推定時刻にクラリッサは車でサンフランシスコへ行っており、完全なアリバイがあった。また、クラリッサのセラピストであるドクター・ビン(ハンス・コンリード)によると、エイプリルにはリチャードという兄がおり、彼もまたセラピーの患者だったという。
そこで、バーク部長はエイムス巡査をウェイトレスとして店に潜入させる。すると、エイプリルと頻繁に会っていた人気ホッケー選手レッド・デッカー(ジャック・カーター)の存在が浮上する。デッカーはチーム主治医のカバンからモルヒネを盗もうとして逮捕された。実は、デッカーの妻ヘレン(グロリア・グレアム)がドラッグ中毒だったのだ。そして、そのヘレンに薬の味を覚えさせ、金づるにしていたのがエイプリルだったのである。
バーク部長とティムはエイプリルの自宅へ改めて家宅捜査に入る。すると、部屋の中に隠されていたヘロインを探す謎の人物が。その正体はハットン氏だった。彼はエイプリルと組んでヘロインの密売に手を染めていたのだ。だが、ハットン氏はエイプリルの殺害について頑なに否認する。捜査が行き詰まる中、より詳しい話を聞こうとバーク部長はクラリッサを食事へ誘った。すると、その様子をたまたま目撃したティルソン夫人が、ロサンゼルスへ来る途中に見かけたある出来事を思い出す…。
<解説>
不特定多数の人間が出入りするドライブ・イン・レストランを舞台にした麻薬汚染の実態を描くエピソード。さらに、精神科医ドクター・ピンに深層心理を分析されたバーク部長が、権力誇示の表れだと指摘されたロールスロイスを手放そうとするという小ネタがサブ・プロットとして挿入される。監督はアカデミー賞2部門にノミネートされたゴシック・ホラーの名作『呪いの家』(44)やフランク・シナトラ主演の佳作スリラー『三人の狙撃者』(51)で知られるルイス・アレン。第3話と第5話に続いてロバート・ビーチが脚本を、チャールズ・バークが撮影監督を担当している。
第9話にもクラブ歌手役でゲスト出演していた清純派スター、マーサ・ハイヤーが、今回はミステリアスな富豪令嬢クラリッサ役として登場。ファム・ファタール的な一面を覗かせているのが興味深い。また、『悪人と美女』(52)でアカデミー助演女優賞を獲得した名女優グロリア・グレアムが、ドラッグ中毒の人妻役を大熱演。この種の自滅的な女性を演じさせたら天下一品の女優さんだった人だが、テレビ・ドラマといえども手を抜かない迫真の演技が印象的だ。
そのほか、『モーガンズ・クリークの奇跡』(44)と『凱旋の英雄万歳』(44)の大ヒットでアメリカでは国民的スターとなった喜劇俳優エディー・ブラッケン、アメリカではテレビのクイズ番組司会者として有名なジャック・カーター、ディズニー・アニメ『ピーター・パン』(53)のフック船長役など声優として有名なハンス・コンリード、『彼と人魚』(48)でウィリアム・パウエルの奥さん役を演じていたアイリーン・ハーヴェイが出演。ちなみにハーヴェイは、この翌年に本作のスピンオフ番組『ハニーにおまかせ』でレギュラーを務めることとなる。また、バーク部長のガールフレンド役として、有名なB級映画女優フランシーヌ・ヨークが第15話に続いて顔を出している。
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マーサ・ハイヤー |
グロリア・グレアム |
エディ・ブラッケン |
ジャック・カーター |
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ハンス・コンリード |
アイリーン・ハーヴェイ |
フランシーヌ・ヨーク |
第20話 Who Killed Carrie Cornell ? (全米放送:1964年2月14日)
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海岸で身元不明の女性の他殺体が発見される |
被害者は男性誌のグラビアモデルだった |
出張中の大富豪と愛人の死体が意外な場所に… |
<ストーリー>
海水浴客で賑わうビーチで、先生に引率された小学生たちが女性の水死体を発見する。女性は水着のままの状態で、身元を示すような所持品は見つからなかった。首の周りにはタイヤ・チェーンが巻きつけられており、犯人が遺体を海へ沈めようとしたものと思われる。ところが、すぐに被害者が男性誌“ガーリーキュー”のグラビアモデルであることが判明した。バーク部長が発行元に確認したところ、グラビア写真はスポンサーからの投稿だった。
そのスポンサーとは、石油王として知られる大富豪ヴァン・マーティン氏。早速、バーク部長はヴァン・マーティン宅を訪ねるものの、あいにく本人は出張中で留守。応対に出た妻のマリアン(ダイアナ・リン)は重度のアルコール中毒で、まともな証言を得ることは困難だった。やがて、被害者が右側から顔面を殴られていること、さらに同じグラビア写真を飾っている楽器店があることが判る。
楽器店のオーナーはエル・グレコ(フェルナンド・ラマス)というギター職人だった。彼によると、女性の名前はキャリー・コーネルといい、この店でギターを注文したことがあったという。キャリーはポークパイ・ハニガン(ジム・バッカス)という男の経営するレストランで歌っていた。ハニガンによれば、キャリーはナンシーという友人とルーム・シェアをしていたのだが、そのナンシーに愛人だったヴァン・マーティン氏を盗られたらしい。元来は音楽が好きな素朴な女性だったキャリーだが、大都会ロサンゼルスが彼女を別人のように欲深い人間へと変えてしまったのだという。
さらに、バーク部長は店で働くキャリーの同僚ピーウィー(ジョニー・ソマーズ)からも証言を得ることが出来た。彼女によると、マリアンが贔屓にしている彫刻家アーサー・レイノルズ(ウィリアム・シャトナー)と、彼女のダイビング・コーチであるビッグ・ブワナ・スミス(マイケル・アンサラ)が、キャリーとナンシーの事情を詳しく知っているという。彼らもまたルームメイト同士で、言うなればマリアンのヒモ仲間だった。
アーサーとビッグ・ブワナからキャリーとナンシー、ヴァン・マーティン氏の三角関係を詳しく聞いたバーク部長は、改めてマリアンに対する疑惑を深める。ところが、酒に酔ったマリアンが勢い余って作りかけの彫刻を倒したところ、その中からヴァン・マーティン氏とナンシーの遺体が発見された。彼らもまた、右側から顔面を殴られて殺されていた。それを知ったバーク部長は、ある人物が左利きであることに気が付く…。
<解説>
金を持て余した大富豪に群がるハイエナのような人々の、ドロドロとした人間関係を描いたエピソード。謎解きのトリックそのものは陳腐で安易だが、ショッキングなサスペンス演出は意外と悪くない。監督はディズニー映画『南海征服』(65)のバイロン・ポール。フィルムノワールの傑作『ローラ殺人事件』(44)でアカデミー賞にノミネートされたジェイ・ドラトラーが脚本を、チャールズ・バークが撮影監督を担当している。
愛のない結婚生活に疲れ果てて酒に溺れる富豪夫人マリアン役を演じるのは、プレストン・スタージェス監督の『モーガンズ・クリークの奇跡』(44)やケイリー・グラントの相手役を演じた『恋はかくの如く』(47)などの清純派スターとして人気を集めた女優ダイアナ・リン。また、若かりし頃のウィリアム・シャトナーが、胡散臭い芸術家役で軟派な二枚目ぶりを披露しているのも興味深い。
そのほか、第2話にもゲスト出演していた名脇役ジム・バッカス、50年代に『アマゾンの秘宝』(54)などのB級娯楽映画で活躍したアルゼンチン出身の二枚目俳優フェルナンド・ラマス(ロレンツォ・ラマスの父親でアーリン・ダールの元ダンナ)、西部劇のインディアン役やスペクタクル史劇のアラブ人役でお馴染みの名優マイケル・アンサラなどが出演。また、「ワン・ボーイ」や「ジョニー・ゲット・アングリー」などの全米ヒットで知られ、日本でもオールディーズ・ファンに大変人気のある女性歌手ジョニー・ソマーズが、謎めいた歌手ピーウィー役を演じている。
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ダイアナ・リン |
ウィリアム・シャトナー |
マイケル・アンサラ |
ジム・バッカス |
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フェルナンド・ラマス |
ジョニー・ソマーズ |
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