Brotherhood Of Blood (2007)

 

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(P)2008 Lions Gate Films (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/88分/製作:アメリカ

映像特典
舞台裏ドキュメンタリー
主要キャスト インタビュー集
オリジナル予告編
ストーリーボード比較
監督コンビ&シド・ヘイグの音声解説
監督:ピーター・シェーラー
    マイケル・ローシュ
製作:マーク・バーマン
    ニコール・アッカーマン
脚本:ピーター・シェーラー
    マイケル・ローシュ
撮影:リヴァー・オマホニー・ハッグ
特殊効果:クリスチャン・ハース
音楽:ラルフ・リッカーマン
出演:ヴィクトリア・プラット
    ジェイソン・コネリー
    ケン・フォリー
    シド・ヘイグ
    ウィリアム・スノウ
    ウェス・ラムジー
    ジェレミー・ジェームス・キッスナー

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女性バンパイア・ハンター、キャリー(V・プラット)

バンパイアたちに捕らえられた写真家トーマス(W・スノウ)

 史上最低最悪の映画監督として悪名高いウーヴェ・ボル監督の『アローン・イン・ザ・ダーク』(05年)で脚本を手掛け、その続編『アローン・イン・ザ・ダークU』(08年)の監督も手掛けたコンビ、ピーター・シェーラーとマーケル・ローシュ。彼らの映画監督デビュー作に当たるのが、この“Brotherhood of Blood”である。
 やはりウーヴェ・ボル・ファミリーの一員であることはマイナス効果なのか、宣伝・広告にはボル監督のことはおろか、『アローン・イン・ザ・ダーク』シリーズのことすら一切言及されず。逆に、ホラー・ファンお馴染みのベテラン・カルト俳優シド・ヘイグやケン・フォリーのネームバリューをアピールする辺りは、配給会社の懸命な判断だったかもしれない。おかげで、妙な先入観を抱かずに見ることが出来る。
 とはいえ、結果的にはやはりボル・ファミリーの作品であることには違いないな、ということを実感するような出来栄え。脚本は決して悪くない。時間軸を自在に操るストーリー構成はユニークで、しかも破綻することなくちゃんと辻褄が合っているのは立派だろう。
 バンパイア集団に囚われた2人の男女の脱出劇を軸に、その前日や数週間前などのドラマをフラッシュバックとして次々と織り込むことにより、強大な力を持ったバンパイア、ヴラド・コッセルの復活を巡る様々なドラマが浮き彫りにされていく。
 しかも、対立するバンパイア軍団とバンパイア・ハンターたちの両方が、恐るべき魔王ヴラド・コッセルの復活を阻止しようと躍起になっているのだ。理屈的には共に手を取り合って闘うべき時なのに、お互いへの憎しみから冷静な判断を欠いてしまうバンパイアとハンターたち。
 そんな彼らの裏をかくかのように、やがて魔王ヴラド・コッセルが意外な正体を現すことになる。まあ、どうでもいいと言えばどうでもいい話ではあるものの、その語り口はなかなかユニークで面白い。優れたB級映画のお手本と言うべき脚本だ。
 ただ、いかんせん演出が致命的なくらいに下手っクソ。意味のないクロース・アップや無駄なスピード・カットは低予算をカバーするためのものだとしても、これっぽっちも計算されていない照明や構図の拙さは救いようがない。画の見せ方をまるっきり心得ていないのだ。しかも、ハイビジョンカメラで撮影されているため、ビデオ映像特有の安っぽさが漂ってしまい、そのうえ照明やセットの粗までもが丸分かりになってしまっている。
 ひとまず演出や撮影テクニック次第では、それなりに面白いホラー映画になっていただろう。役者の顔ぶれや演技も悪くない。残酷シーンがほとんどないというのも、最近のホラー映画としてはユニークな傾向だ。ただ、もうちょっとキャリアや経験のある監督に演出を任せるべきだったのかもしれない。

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キャリーはバンパイア軍団のアジトから脱出を図る

バンパイアたちのリーダーであるパシェック(S・ヘイグ)

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バンパイア・ハンターのアジトが次々と襲撃される

バンパイア・ハンターのリーダー、キートン(J・コネリー)

 現代のロサンゼルス。女性バンパイア・ハンター、キャリー・リーガー(ヴィクトリア・プラット)は、有名な写真家トーマス(ウィリアム・スノウ)と共にバンパイア軍団に囚われてしまった。バンパイアたちの目的は、トーマスの弟クリスの行方を探し出すこと。しかし、キャリーとトーマスも同じく、クリスの行方を探していたのだ。
 実は3週間ほど前、トランシルヴァニアを旅していたトーマスとクリスの兄弟は、古い地下墓地でバンパイアの亡骸を発見した。その牙に触れたクリスが手を傷つけてしまい、彼は徐々にバンパイアへと変貌していったのだ。しかも、その遺体は史上最強のバンパイアと呼ばれるヴラド・コッセルのものだった。
 バンパイア軍団のリーダー、パシェック(シド・ヘイグ)は、何としてでもクリスを見つけ出して殺さねばならなかった。ヴラド・コッセルはクリスの肉体を通じて、この世に復活を果たしたのだ。彼は1000年以上も前に誕生したバンパイアの始祖であり、パシェックの実の兄だった。しかし、あまりにも強大すぎるパワーからバンパイアたちの脅威と見なされ、同胞たちの手によって数百年前に殺されたのだ。
 この世に蘇ったヴラドは、仲間たちへの復讐を開始するだろう。しかも、かつて兄の殺害を命じたのはパシェックだった。間違いなくヴラドのパワーには敵わない。何としてでも、それを阻止せねばならなかった。
 一方、キャリーにもヴラドの息の根を止めるという重大な使命がある。彼女自身がバンパイア・ハンターゆえに当然のことなのだが、この数日間で幾つものバンパイア・ハンター組織が、ヴラドによって壊滅させられてしまった。僅かに生き延びたキャリーとリーダーのキートン(ジェイソン・コネリー)、バンパイア・ハンターに憧れる少年デレク(ジェレミー・ジェームス・キッスナー)の3人は、スタニス(ケン・フォリー)という古株のバンパイアを捕らえる。
 彼からヴラドの行方を捜すための鍵を聞き出そうとするが、やすやすとバンパイア・ハンターに協力するはずもない。巧みな話術でキャリーたちをはぐらかし、あまつさえ若いデレクをマインド・コントロールしようとする始末だ。
 数日前からトーマスとコンタクトを取っていたキャリーは、彼と共にバンパイアのアジトを捜索。しかし、敵の罠にかかって捕らえられてしまったのだった。パシェックの部下フォーク(ウェス・ラムジー)は、実はキャリーの元恋人だった。最愛の人をバンパイアにされてしまったことから、彼女はバパイア・ハンターとなったのだ。
 自らの縄を解くことに成功したキャリーは、トーマスを残して脱出経路を探しに出る。必ず救出に戻ることを約束して。一旦はフォークによって捕らえられたものの再び脱走し、トーマスを救出するキャリー。だが、そこへ復活したヴラドが現れ、パシェック以下のバンパイアたちを次々と血祭りにあげていった。
 その頃、バンパイア・ハンターのアジトに捕らえられていたスタニスが、キートンを殺害して脱走を図った。残されたデレクはキャリーのもとへと車を走らせる。一方、キャリーはトーマスの弟クリスの肉体を借りた魔王ヴラド・コッセルを殺害。さらに、そこへ現れたスタニスをも退治する。これで一件落着したかのように思われた。
 だが、駆けつけたデレクの口から思わぬ真実を聞かされる。果たして、彼女が倒したのは本当に魔王ヴラド・コッセルだったのか・・・?

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ヴラド退治の鍵を握るバンパイア、スタニス(K・フォリー)

スタニスを捕らえてヴラドの秘密を聞き出そうとするキャリー

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トーマスを救出しようとするキャリーだったが・・・

かつてキャリーの恋人だったバンパイア、フォーク(W・ラムジー)

 製作に携わっているマーク・バーマンは、『スライサー』(05年)や“Satanic”(06年)など、ここ数年低予算のインディペンデント系ホラー映画を数多く手掛けているプロデューサー。ウーヴェ・ボル監督作品のプロデューサーであるウォルフガング・ヘロルドも共同製作に名を連ねている。
 その他、撮影のリヴァー・オマホニー・ハッグや編集のアンドリュー・ベントラー、美術デザインのトーマス・ウィリアム・ハルバウアーなど、主に低予算のビデオ映画やテレビ・シリーズなどを中心に活動している若手スタッフが終結。やはり、彼らの技術面における経験不足がおのずと映像に表れてしまっているのかもしれない。
 また、音楽を担当しているラルフ・リッカーマンはドイツ出身のミュージシャンで、有名なロック・バンド、スコーピオンズの元メンバー。『バタリアン4』(05年)や『バタリアン5』(05年)、『デスバーガー』(07年)などの低予算映画のスコアを数多く手掛けているほか、『ハロウィン レザレクション』(02年)の製作総指揮を担当するなど、ここ数年ホラー&SF映画のジャンルで目覚しい活躍をしている。

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バンパイア・ハンター志望の若者デレク(J・J・キッスナー)

ヴラドに殺害されたトーマスの弁護士(J・ドナー)

 ヒロインのバンパイア・ハンター、キャリー役を演じているのは、日本でも話題になったSFドラマ『ミュータントX』のセクシーでパワフルな女性ミュータント、シャリマー役でブレイクした女優ヴィクトリア・プラット。相変わらずセクシーで美しいのは結構なのだが、いつ空を飛ぶんだろうかと思ってしまうくらい、シャリマーのイメージそのまんまというのは女優として良いのか悪いのか。
 魔王ヴラド・コッセルの弟であるバンパイア、パシェック役で登場するのはカルト俳優として有名なシド・ヘイグ。最近ではロブ・ゾンビ監督の『マーダー・ライド・ショー』(03年)や『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2』(05年)で演じた殺人鬼一家の大黒柱キャプテン・スポルディング役でおなじみだろう。ジャック・ヒル監督の名作『スパイダー・ベイビー』(68年)や『残酷女刑務所』(71年)、『コフィー』(73年)など数多くのカルト映画で怪演し、一部で熱狂的なファンを持つ人物。あのクェンティン・タランティーノも彼の大ファンで、『ジャッキー・ブラウン』(97年)と『キル・ビル Vol.2』(01年)に起用している。今回は、彼にとって初めてのバンパイア役だったそうだ。
 一方、キャリーたちに捕らえられるバンパイア、スタニス役を演じているのは、あのジョージ・A・ロメロ監督の大傑作『ゾンビ』(78年)の黒人兵役で永遠のホラー・アイコンとなったケン・フォリー。そういえば、彼も『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2』に出ていたっけ。
 さらに、名優ショーン・コネリーの長男であるジェイソン・コネリーがバンパイア・ハンターのリーダー、キートン役で登場。かつては、いかにもお坊ちゃま育ちという感じの美青年だったが、すっかり貧相な中年男になってしまった。写真家トーマス役を演じているのは、人気ドラマ『ロスト・ワールド/失われた世界』のダンディなロクストン卿役で人気を得たオーストラリア人俳優ウィリアム・スノウ。『宇宙大作戦』や『スパイ大作戦』など60年代から数多くのテレビ・ドラマで個性的な脇役を演じてきた俳優ジャック・ドナーが、トーマスの弁護士役として登場。また、実写版『フランダースの犬』(99年)で主人公ネロ役を演じた美少年俳優ジェレミー・ジェームス・キッスナーが、バンパイア・ハンター志望の若者デレク役で顔を出している。

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