ブラジルの歌姫をいろいろと・・・
クラウヂア Claudia
日本ではトヨタのCMソング『恋のカローラ』で知られる女性歌手クラウヂア。ボサノヴァをベースにしたソフト・ロック的アプローチが特徴的な人で、そのサウンドは今聴いても十分にお洒落でグルーヴィー。71年のアルバム“Voce
Claudia
Voce”はブラジル音楽ファンの間だけでなく、クラブDJの間でも名盤として人気の高い傑作だ。
1948年5月10日、ブラジルはミナスジェライス州ジュイスジフォーラに生まれたクラウヂアは、9歳の頃からラジオで歌を披露していたという。13歳でステージに立つようになり、その後サン・パウロに活動の場を移した。67年にファースト・アルバム“Claudia”をリリース。71年に発表したロベルト・カルロス作曲のシングル“Jesus
Cristo”が爆発的な大ヒットとなった。さらに、先述したように『恋のカローラ』が日本のCMに使われてヒットし、68年には来日コンサートも開いている。本国では90年代まで活動を続けていた様子で、これまでに20枚のアルバムをリリースしているという。
Claudia (1967) Voce, Claudia Voce
(1971) Jesus Cristo
(1971)
(P)2006 Som Livre (Brazil)
(P)2003 EMI (Brazil)
(P)2007 EMI/Odeon
(Brazil)
1,Vento de maio
2,Silencio para
um rancho passar
3,Estorinha
4,Ninguem da q que nao
tem
5,Acalanto
6,Chora, ceu
7,Amanha ninguem sabe
8,Cancao de
nao cantar
9,Cnacao de fim de tarde
10,Nao se aprende na
escola
11,Tempo de espera
12,Mensagem
produced by Manoel
Barenbein1,Menina
fulo
2,Desacato
3,Panema leblon
4,No Proprio Chao
5,Sinto
muito
6,Amiga, amada
7,Garra
8,Intervalo
9,Mundo
maravilhoso
10,Saber de amor
11,Pra voce que vai chegar
12,Vai e
vem
produced by Milton Miranda1,Jesus
Cristo
2,Amigo
3,Ossain
4,Frente fria
5,Seresta no
castelinho
6,Mudei de ideia
7,Mais que perfeito
8,Moeda, reza e
cor
9,Baoba
10,A voz do violao
11,Com mais de 30
Produced
by Milton Miranda
当時19歳のクラウヂアがリリースしたファースト・アルバム。初々しいルックスとは裏腹に、パワフルでスケールの大きなボーカルを聴かせてくれます。サウンド的には、60年代末という時代の空気を存分に吸収したお洒落でグルーヴィーなボサノヴァ。程よくジャジーでファンキーな感触が秀逸で、メロウで美しいメロディも最高。また、クラウヂアの卓越したリズム感にも脱帽です。ブラジル音楽初心者にもオススメ!
エルサ・ソアレスやミルトン・ナシメント、シモーヌなど数多くのアーティストを手がけた名プロデューサー、ミルトン・ミランダが手がけた名盤。ボサやサンバを基調にしつつも、ロックやR&Bのテイストを前面に押し出した作品で、軽やかなグルーヴ感が心地よい一枚。全体的にしっとりとフェミニンな印象です。ダンサンブルなナンバーとソフトなバラードのバランスも絶妙で、程よい哀愁感が何とも心に染み渡りますね。
こちらは一転して、サイケでファンキーなグルーヴ感を前面に押し出したクールなアルバム。ロベルト・カルロス作曲の超フラワーでダンサンブルな#1とマルコス・ヴァリ作曲のキュートで軽やかな#11がシングルとして大ヒットしました。手元にある彼女のアルバム3枚の中でも、個人的に一番好きなのがこれです。とにかくカッコいい!クラウヂアのボーカルも時にソフトで、時にソウルフル。ダントツにオススメです!
エヴィーニャ Evinha
独特のキュートなベビー・ボイスとソフト&グルーヴィーなサウンドで、世界中で根強いファンを持つ女性ヴォーカリスト。ブラジルの有名なボサ・グループ、トリオ・エスペランサのオリジナル・メンバーとしても知られ、ソロ歌手としても60年代末から70年代にかけて“Casaco Marron”、“Teletema”、“Que Bandeira”などのヒット曲を放った。まるで少年のような声の持ち主で、その天才的なリズム感にも舌を巻く。ジャンプ・ナンバーで聴かせるシャウトなんかは、ジャクソン5時代のマイケル・ジャクソンみたい。一度聴いたら心を奪われてしまう不思議な魅力を持った歌手だ。
1951年ブラジルはリオ・デジャネイロで生まれたエヴィーニャは、本名をEva Correira Jose
Mariaという。幼い頃から兄弟のマリオ、レジーナと共に歌い続け、1958年に3人でトリオ・エスペランサを結成した。68年にソロとして独立。彼女が脱退した後のグループには、妹のマリーサが加入した。
69年にはリオで開催された国際音楽祭でグランプリを受賞。76年には世界歌謡祭に出場するために来日も果たしている。さらに、77年にはポール・モーリアのアルバム“Brasil
Exclusivamente”にゲスト・ボーカリストとして参加。これはシリーズ化されており、その後のアルバムにも参加している。どういう経緯でポール・モーリアと組むようになったのかは分からないが、当時は結婚してフランスに移住していたようなので、何らかの接触があったのだろう。
90年代には古巣トリオ・エスペランサのメンバーとして復帰し、4枚のアルバムをリリース。さらに、99年には久々にソロ・アルバムを発表している。
Eva 2001
(1969) Evinha (1970) Eva (1974)
(P)2005 EMI/Odeon (Brazil)
(P)2005 EMI/Odeon (Brazil)
(P) EMI (Brazil)
1,Casao Marron
2,Tigre da esso
que sucesso
3,Tracos de amor
4,Meu mundo
5,Psiu
6,Vou
seguindo
7,Estorinha
8,Os dentes brancos do
mundo
9,Sozinha
10,O vale dos sonhos
11,De polo a
polo
12,Samba negro
nobus tracks
13,Teletema ビデオ
produced
by Milton Miranda1,Tema de
Eva
2,Something
3,Agora
4,Ate Outro dia
5,Cavaleiro de papel
crepon
6,Pense duas vezes
7,Abrace Paul McCartney por
min
8,Setembro
9,Em transito
10,Pela cidade
11,Meu rumo
so
bonus tracks
12,Pigmaliao
13,Alguem falou teu nome
14,Ondas
medias
produced by Milton Miranda1,Teto de louca
2,Moon
river
3,Seus olhos falam por voce
4,Sonho
lindo
5,Talisma
6,Virou lagrimas
7,Olha eu aqui ビデオ
8,Na baxia do
sapateiro
9,Vinte leguas
10,Menino de bracana
11,O homem do
tempo
12,Karina
produced by Milton Miranda
サイケなジャンプ・ナンバーからメロウなソフト・ロックまで、絶妙なブラジリアン・グルーヴが堪能できる一枚。さすがはミルトン・ミランダ、素晴らしいセンスです。もちろん、エヴィーニャの軽やかでリズミカルなボーカルも最高。ファンキーでクールな名曲#1は勿論のこと、ポップで爽やかな#4、メランコリックで乙女チックな#5、メロウで寂しげな#8など名曲揃い。A&Mサウンド辺りが好きな人にも超オススメです。
イヴァン・リンスのカバー#3の胸キュン・パンチに完全ノック・アウト。これだけでも聴く価値十分な、そりゃもう素晴らしいアルバムです。あのロリータ・ボイスでメランコリックに歌われちゃ敵いませんがな〜(笑)前作よりもメロウ度は低めですが、クォリティの高さはこれっぽっちも劣っておりません。ボーナス・トラックも充実。まるっきりバカラック路線の#13は雨の日に聴きたい(?)名曲。
『ムーン・リヴァー』のカバー#2は全音楽ファン必聴の大傑作です。まさにフリー・ソウル!といった感じのジャジーでグルーヴィーでファンキーな仕上がり。こんなにカッコいいバージョン、他では聴いたことないですね。アルバム全体的でも、同時期のエルトン・ジョンやメリッサ・マンチェスターなどを彷彿とさせる、都会的で洗練された内容。そこはかとないメロウ感とソウルフルなグルーヴ感のバランスが絶妙です。
アメリーニャ Amelinha
いわゆるノルデスチと呼ばれているジャンルの女性アーティスト。ブラジル北東部の伝統音楽をベースに、ロックやポップスの要素を盛り込んだサウンドが特徴だ。どこか民謡的なところのある泥臭さが持ち味。日本人好みのお洒落なブラジリアン・サウンドとはちょっと程遠いものの、70年代の歌謡ロックに通じる親しみやすさはなかなか魅力的だ。
1950年7月21日、ブラジルはセアラー州フォルタレザの生まれ。20歳の時にサン・パウロに移り、旧知の仲だったシンガー・ソングライター、ファギネルのバック・ボーカリストとなった。さらに、ヴィシニウス・デ・モライスとトッキーニョのアルゼンチン・コンサートにも参加し、徐々に実力を認められるようになった。
77年にアルバム“Flor
da paisagem”でレコード・デビュー。これが評判となり、79年のセカンド・アルバム“Frevo
Mulher”はゴールド・ディスクを受賞する大ヒットを記録した。さらに、80年にはシングル“Foi deus que fez
voce”がヒット・チャートで1位をマーク。80年代を通じて数多くのヒット曲を放っている。
Flor da paisagem
(1977) Frevo Mulher
(1979)
(P)2002 Sony Music
(Brazil)
(P)2002 Sony Music
(Brazil)
1,Santo e demonio
2,Ponta de
espinho
3,Acalmar-se
4,Aprender a voar
5,Depende
6,Cintura
fina
7,Senhora dona
8,Flor da paisagem
9,Pobre bichinho
10,Mal
doloroso
11,Agonia
Musical Direction : Fagner1,Frevo Mulher ビデオ
2,Santa
Teresa
3,Dia Branco
4,Galope Razante
5,Divindade
6,Que me
venha esse homem
7,Coito das araras
8,Dez mil dias
9,Noites de
cetim
10,Pedaco de cancao
Musical Direction : Geraldo Azevedo
& Ze Ramalho
恩人でもあるファギネルが全面的にバックアップしたファースト・アルバム。全体的に荒削りな作品ながら、土着的な民族性を漂わせた素朴で暖かなポップ・ロック・サウンドを聴かせてくれます。ファギネルのペンによる#9や#10の叙情的で美しいメロディとシンプルでアコースティックなアレンジは秀逸。聴くたびに味の出る1枚です。
前作よりも更にフォルクローレ色を前面に押し出したセカンド・アルバム。ゼ・ハマーリョが音楽監修として参加している事からも分かるように、かなりロック色の強いパワフルなノルデスチ・サウンドに仕上がっています。特にハマーリョが書いた#4は圧巻のカッコ良さ。哀愁感溢れるサウダーヂなバラード#6の美しさも絶品です。
フェルナンダ・ポルト Fernanda Porto
伝統的なブラジル・サウンドとエレクトロニカを融合させたクラブ系サウンドと、日本人好みのサウダーヂな哀愁メロディで一躍国際的な知名度を高めた女性シンガー・ソングライター。本国ブラジルはもとより、ヨーロッパや日本でもクラブ・シーンを中心に人気を集めた。当時はベベウ・ジルベルトやSubaなどが持て囃された時期。彼女の作品は洗練されたクラブ系ラウンジ・サウンドとして受け入れられたわけだ。ソングライターとしても、プロデューサーとしても才能のある人だが、ボーカリストとしての実力もバツグン。知的で聡明、情熱的で力強いその歌声は、エレクトリックなサウンドの中にオーガニックな安らぎを感じさせてくれる。
1965年12月31日、ブラジルはサンパウロ州セラネグラの生まれ。サンパウロ大学で音楽を学び、卒業後はライブを中心に活動していた。しかし音楽ビジネスの世界に嫌気がさした彼女は、作曲家として映画やテレビの音楽を手がけるようになる。その後、90年代末に知人のDJの影響でドラムン・ベースに魅せられる。だが、当時のブラジルではその種のクラブ・サウンドが一般的ではなかったため、彼女はイギリスへと向った。
ロンドンのクラブ・シーンの空気を肌で吸収した彼女は、自主制作でデモCDをレコーディング。その楽曲“Sambassim”がアナログ・コンピレーション“Brasil
EP”('01)に収録され、ロンドンを中心にヨーロッパ各国のクラブ・シーンで大評判となった。それを受けて、フェルナンダはブラジルの音楽レーベルTramaと契約。2002年にファースト・アルバム“Fernanda
Porto”がリリースされ、ブラジル国内でも大ヒットを記録した。これは批評家にも絶賛され、アメリカや日本、ヨーロッパでもリリースされる。“Sambassim”はMTVアワードの最優秀エレクトロニック・ミュージック・ビデオを受賞し、ラテン・グラミーにもノミネートされた。
2004年にセカンド・アルバム“Giramundo”を発表。翌年にはベスト盤とライブ盤もリリースされている。その後はライブ中心の活動を行ってきたが、今年は4年振りのオリジナル・アルバムをリリースする予定だという。
Fernanda Porto
(2002) Giramundo
(2004)
(P)2002 Trama (Brasil)
(P)2006 Trama (USA)
1,De costas pro
mundo
2,Electricidade
3,Baque Virado
4,Amor errado ビデオ
5,Tudo de
bom
6,Vilarejo intimo
7,Sambassim ビデオ
8,Outro lugar
do mundo
9,Tanta besteira
10,O amor nao cala
11,So tinha de ser
com voce ビデオ
12,Jeito novo
(Not the Same)
13,Tempo pra tudo
14,1999
produced by Fernanda
Porto1,Giramundo
2,Roda viva
3,De
graca
4,Bola
5,Bicho do mato
6,Outra margem do
Rio
7,Assalto
8,Pensamento 4
9,Mundo cane
10,Solida
pedra
11,Estrella Pop
12,Ninguem manda
13,O tempo pifa
14,Seu
lugar
produced by Fernanda Porto
洗練されたボサノヴァやサンバ、ジャズを基調にしながら、エレクトリックなドラムン・ベースに仕上げたフェルナンダのファースト・アルバム。#11はジョビンのカヴァーですが、それ以外は全てフェルナンダ自身のペンによる作品。メロディ・ラインは、あくまでも古典をきっちりと押さえたサウダーヂな正統派。だからこそ、エレクトリックでモダンなクラブ・サウンドに映えるのかもしれません。
前作よりもさらに洗練度を高めたセカンド・アルバム。既にドラムン・ベースにはこだわっておらず、打ち込みと生音のバランスを絶妙に保った、素晴らしいブラジリアン・エレクトリック・サウンドを聴かせてくれます。今回の目玉は、何と言ってもシコ・ブアルキのカバー#2ですね。シコ自身がデュエットにも参加しており、とてもアダルトお洒落な仕上がりです。
その他
セレスチ Celeste マリリア・メダーリャ Cinco e Triste da Manha
(1975) Boias De Luz
(1978)
Marilia Medalha
(P)2002 Amazon Records
(Brazil)
(P)2002 Warner Music
(Brazil)
1,Serrado
2,Po
3,Cinco e
triste da manha
4,Dupla traicao
5,Sonhos
6,Ronda
triesteza
7,Amo a tres
8,Foi assim
9,Como posso
saber
10,Vergonha e nao lutar
11,Sinal de solidao
12,Teia de
aranha1,Nos, os grandes artistas
2,Pela
rua
3,Natalino Jose do Nascimento
4,Duas Caras
5,Depois que foi
embora
6,Boias de luz
7,Motorista de
praca
8,Iceberg
9,Aldeia
10,Vai meu povo
produced by
Wilson Miranda
セレスチという女性シンガーの詳細はいまひとつ不明なのですが、ブラジル音楽ファンの間では絶大な支持を集めてきた名盤です。時にしっとりと、時に軽やかに、しなやかで暖かいセレスチのボーカルが最高。叙情的で美しいメロディ・ラインも素晴らしいですね。キュートでキャッチーなスキャットを聴かせてくれる#7も人気の高い1曲です。
ヴィニシウス&トッキーニョとのコラボ・アルバムでも有名なマリリア・メダーリャ。60年代から70年代にかけて人気を得た彼女の、これは後期のアルバムに当たります。見かけに似合わないディープで野太いマリリアのボーカルがとても渋い。叙情的でサウダーヂなサウンドも洗練されていて、最後まで心地良く聴ける美しい作品です。
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