Boynton Beach Club (2006)

 

 

BOYNTON_BEACH_CLUB_DVD.JPG
(P)2007 Sony Pictures (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン/5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:英語/地域コード:1/95分/製作:アメリカ

映像特典
シーデルマン監督の音声解説
オリジナル劇場予告編
監督:スーザン・シーデルマン
製作:フローレンス・シーデルマン
脚本:スーザン・シーデルマン
    シェリー・ジトロウ
原案:フローレンス・シーデルマン
    デヴィッド・クレイマー
撮影:エリック・モイニエール
音楽:マルセロ・ザルヴォス
出演:ジョセフ・ボローニャ
    ダイアン・キャノン
    レン・キャリオウ
    サリー・ケラーマン
    マイケル・ヌーリ
    ブレンダ・ヴァッカロ
    ルネ・テイラー
    マル・Z・ローレンス

 「マドンナのスーザンを探して」('85)や「私のパパはマフィアの首領(ドン)」('89)、「シー・デビル」('89)など、パワフルな女性キャラクターを全面に押し出したポップなコメディ映画で80年代に一世を風靡した女流監督スーザン・シーデルマン。90年代はヒット作に恵まれず、「Sex and the City」などテレビに活動の場を移していた。その後、スペインを舞台に女性の同性愛をユーモラスに描いた「ガウディ・アフタヌーン」('01)で久々に映画界に復帰。そんなシーデルマン監督の最新作が、この“Boynton Bach Club”だ。
 今回のテーマはズバリ、“老人の愛とセックス”。定年退職をした人々が暮らすカリフォルニアの高級リゾート地を舞台に、老いて伴侶を失った人々の悲喜こもごもの恋愛模様を赤裸々に描いていくセックス・コメディだ。

BOYNTON_BEACH_CLUB-1.JPG BOYNTON_BEACH_CLUB-2.JPG

夫と平凡な毎日を過ごすマリリン(B・ヴァッカロ)

ド派手な近所の未亡人(R・テイラー)

BOYNTON_BEACH_CLUB-3.JPG BOYNTON_BEACH_CLUB-4.JPG

不器用で生真面目なジャック(L・キャリオウ)

いつまでも若々しいロイス(D・キャノン)

 舞台はカリフォルニアのリゾート地ボイントン・ビーチ。穏やかな気候と青い空、美しいビーチにカラフルな町の風景。定年退職をした人々が、老後をのんびりと過ごす地上の楽園だ。平穏で豊かな毎日を過ごしていたマリリン(ブレンダ・ヴァッカロ)は、近所に住む派手好きの未亡人(ルネ・テイラー)の不注意運転がもとで、長年連れ添った夫マーティ(マル・Z・ローレンス)を失ってしまう。心配した娘夫婦が孫を連れて訪ねてきてくれるものの、突然夫を亡くしてしまった喪失感と加害者への憎しみで何も手が付かないマリリン。
 そんな彼女のもとに現れたのが、近所に住むインテリア・コーディネイターのロイス(ダイアン・キャノン)。事件を知ったロイスは、自分の所属する地元の遺族会“ボイントン・ビーチ・クラブ”への参加を誘う。そこには、様々な理由で愛する家族を失った人々が集まり、孤独や悩みを語り合うことで交流を深めていた。しかし、マリリンはその手の集会への参加には乗り気になれなかった。
 一方、敬虔なユダヤ教信者ジャック(レン・キャリオウ)は愛する妻を病で失い、“ボイントン・ビーチ・クラブ”を訪れていた。そこで彼はサンディ(サリー・ケラーマン)という未亡人と出会う。積極的にアプローチをしてくるサンディに戸惑いながらも、デートを重ねるようになるジャック。一方で、亡き妻を慕っていた孫娘が発見した妻の日記帳から、ジャックは自分の全く知らなかった妻の意外な一面を知って戸惑う。そして、いよいよサンディと一夜を迎えることになったジャック。だが、妻以外の女性と寝るのは数十年ぶりという彼は、いざという時になって尻込みをしてしまう。
 そんなジャックと仲良くなったのが不良老人ハリー(ジョセフ・ボローニャ)。妻に先立たれた彼は、インターネットの出会い系サイトで知り合った女性とのアバンチュールを楽しむのが趣味。生真面目なジャックに女の口説き方や、女の心を掴む究極のディナーの作り方などを伝授する一方、ネットで知り合った夢のような美女が実は変態M女と分かって逃げ出してきたりと、意外に冴えない遊び人生活を送っている。
 さて、募るばかりの苛立ちに限界を感じたマリリンは、意を決して“ボイントン・ビーチ・クラブ”に参加。夫と息子を失ったというロイスと急速に親しくなった彼女は、次第に生きる活力を取り戻していく。運転免許を取得し、積極的に外の世界へ出て行こうとするマリリン。しかし、何事もなかったように人生をエンジョイしている加害者女性と出くわすたびに、複雑な思いに駆られるのだった。
 ロイスはロイスで、レストランで知り合ったハンサムな独身男性ドナルド(マイケル・ヌーリ)と急接近。ゴージャスなディナーを楽しんだり、ティーンのようにビーチを駆け回ったりと、夢のようなロマンスを満喫している。だが、彼の職業が昆虫駆除サービスである事を知って、何故かショックを受けてしまうロイス。分別のある大人の女性だったつもりなのに、いつまでも夢見る少女から抜け出せないでいる自分に気付いてしまう。

BOYNTON_BEACH_CLUB-5.JPG BOYNTON_BEACH_CLUB-6.JPG

ジャックに声をかけるサンディ(S・ケラーマン)

立ち直ろうと努力するマリリン(B・ヴァッカロ)

BOYNTON_BEACH_CLUB-7.JPG BOYNTON_BEACH_CLUB-8.JPG

急速に仲良くなるロイスとマリリン

ジャックとサンディの不器用なロマンス

 原案とプロデュースを手掛けているのが、スーザン・シーデルマン監督の実の母親フローレンス。実際にボイントン・ビーチで暮らしている彼女が、自分の友人や周囲の人々のエピソードをもとに物語のアイディアを考え付いたという。最近では、日本でも老人ホームでの恋愛や性が注目されるようになり、それが原因でのトラブルも日常的に起きていると聞く。
 ただ、この作品で描かれている老人たちの恋愛模様は、日本の老人ホームのそれとは全く違って、なんとも大らかで開けっぴろげだ。高級レストランでの豪華なディナー、自宅のプール・サイドでの優雅なランチ、ビーチでは若者に混じってローラー・スケートに興じ、オバサンたちは皆で集まってアダルト・ビデオの鑑賞会。アメリカ西海岸と日本では、あまりにも文化や生活レベルが違いすぎて、絵空事のように感じられてしまうのは仕方ないのかもしれない。
 ただ、ポジティブで元気な老人たちを演じる役者の顔ぶれは、なかなか魅力的。それも、日本ではすっかりご無沙汰になってしまった懐かしい名優が揃っていて、古い映画ファンなら彼らの顔を見ているだけでも嬉しくなってしまうだろう。
 中でも、夫を事故で亡くした喪失感や加害者に対する憎しみ、そして人生を楽しむことへの罪悪感に苛まれるマリリン役を演じるブレンダ・ヴァッカロが素敵だ。「真夜中のカーボーイ」('69)で注目され、70年代には売れっ子として活躍したヴァッカロだが、「スーパー・ガール」('84)以降はB級映画ばかりが続き、いつの間にか忘れ去られてしまった。そんな彼女にとっては、まさに久々の当たり役。ダイアン・キャノンやサリー・ケラーマンが年齢の割に若く見えすぎてしまうのに対し、すっかり太って貫禄がついてしまったヴァッカロは逆に説得力がある。繊細でありながらも意外にタフで豪快な面のあるマリリンというキャラクターを、等身大の普通のオバサンとして演じているのは非常に好感が持てるところだ。
 そしてロイス役のダイアン・キャノン。撮影当時67歳のはずだが、とにかく若い。確かに顔は皺が目立つものの、そのバツグン過ぎるスタイルは若い女の子も顔負けだ。よくよく考えれば彼女、あのケイリー・グラントの奥さんだった人。ほとんど歴史上の人物だ(笑)。とてもじゃないが、日本にはこんなに若い67歳はいないはず。凄いな〜と感心はするものの、彼女とマイケル・ヌーリ(「フラッシュ・ダンス」)のロマンスは、とても老いらくの恋には見えない。
 若いといえば、サリー・ケラーマンも68歳にはとても見えないだろう。ロバート・アルトマン監督の「M*A*S*H」('70)で一世を風靡して人気スターになった女優さんだが、もともと老け顔だっただけに、下手すると40年前よりも若く見えるかもしれない。それでも、レン・キャリオウ扮するジャックとの不器用な大人の恋はとても微笑ましく、昔のようなアクの強さがなくなった分、とても味のある素敵な女優さんになった。
 で、そのレン・キャリオウ。最近でも「シークレット・ウィンドウ」('04)や「父親たちの星条旗」('06)など、温和でインテリな雰囲気の名脇役としてお馴染みだが、ここでも実直で心優しい老人役を好演している。慣れない手料理にあたふたし、いざベッドインしようとするも緊張して役に立たない。その朴訥とした不器用さがなんとも愛らしい。
 それとは全く逆に、幾つになっても女遊びのやめられないハリーを演じるジョセフ・ボローニャの、どこか間の抜けたちょいワル爺さんぶりもなかなか憎めなかったりする。日本では知名度の低いボローニャだが、アメリカでは舞台やテレビで非常に人気の高いコメディアン。映画でも「弾丸特急ジェット・バス」('76)や「第2章」('79)が懐かしい。ちなみに、本作でマリリンのダンナをひき殺してしまうド派手なオバサン役を演じているルネ・テイラーは、彼の奥さんだ。

BOYNTON_BEACH_CLUB-9.JPG BOYNTON_BEACH_CLUB-10.JPG

デートを重ねるロイスとドナルド

出会い系サイトに夢中のハリー(J・ボローニャ)

BOYNTON_BEACH_CLUB-11.JPG BOYNTON_BEACH_CLUB-12.JPG

白馬の王子様を演じるドナルド(M・ヌーリ)

理想の熟女と思いきや・・・

BOYNTON_BEACH_CLUB-13.JPG BOYNTON_BEACH_CLUB-14.JPG

ジャックとハリーの奇妙な友情

マリリンの心の殻を破ろうとするロイス

 かつてはオフビートな現代女性を得意として描いたスーザ・シーデルマン監督。今回は老人たちが主人公だが、ポップでカラフルなテイストと、軽快なユーモア・センスは彼女ならではのもの。随所に人生のほろ苦さを漂わせながらも、その大らかで明朗快活な人間模様は、まさにカリフォルニアの青い空そのものと言えるだろう。
 ただ、幾つになっても恋をしたい、人生を楽しみたいという主人公たちのポジティブな姿勢に共感できる部分はあるものの、プール付きの豪邸やショッピング三昧の毎日なんかとは無縁の平凡な日本人には夢物語としか映らないかもしれない。かつて、「アイ・ラブ・ルーシー」や「奥様は魔女」をテレビで見た日本人がアメリカ人の豊かな生活に憧れたというが、半世紀近くを経た今でもその生活レベルの差はあまり変っていないのかもしれない。それとも、西海岸という場所がアメリカの中でも特殊な世界なのだろうか・・・?この作品を見た平均的アメリカ人の感想を訊いてみたいものではある。

戻る