Bone Dry (2007)
※『ボーン・ドライ』として2008年6月に日本盤DVDが発売されました
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(P)2007 Allumination Filmworks (USA) |
画質★★★★★ 音質★★★★☆ |
DVD仕様(北米盤) カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録 )/5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:スペイン語/地域コード:ALL/100分/製作:アメリカ 映像特典 メイキング・ドキュメンタリー B・A・ハート監督&L・ヘンリクセン音声解説 未公開シーン集 オリジナル劇場予告編 |
監督:ブレット・A・ハート 製作:グレッグ・S・ヒューズ ジョン・ノーラン 脚本:ジェフ・オブライエン ブレット・A・ハート 撮影:ケヴィン・G・エリス ジョン・ダーボーン 音楽:スコット・グラスゴー 出演:ルーク・ゴス ランス・ヘンリクセン ディー・ウォーレス=ストーン トミー・リスター カール・バフィントン ジェニファー・シーベル チャド・スティーブンス |
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車で一人旅を続ける男エディ(L・ゴス) |
エディを追い詰める謎の男ジミー(L・ヘンリクセン) |
広大なモハーヴェ砂漠を舞台に、二人の男の命を賭けたハンティング・ゲームを描くサスペンス映画。名匠リチャード・フランクリンの愛弟子だったブレット・A・ハート監督の処女作に当たる。
一人の謎めいた男が、荒野に車を走らせている。ふと立ち寄った砂漠の一角で彼は何者かに拉致され、気がつくと砂漠のど真ん中に一人残されていた。ゲームが開始されたのだ。死にたくなければ砂漠を脱出しなくてはいけない。姿の見えないハンターが仕組んだ数々の罠に翻弄されながら、男は決死のサバイバルを試みる。
誰が何のためにこんなことをするのか?という謎が本作の大きな焦点と言えるだろう。主人公たちの素性が一切明かされないまま物語はスタートし、過酷なサバイバル・ゲームが繰り広げられる。その過程で、徐々に追う者と追われる者の意外な接点が明らかになっていくというわけだ。テレビ・シリーズ『ロスト』に似たような語り口と言えるかもしれない。ただ、勘の良い人ならば、早い段階で謎解きの察しもついてしまうだろう。
蓋を開けてみれば、典型的なリベンジ・ストーリー。ただ、追われる者の視点で描かれているというのが目新しいだけだ。ブレット・A・ハート監督の演出は非常に凝っていてスタイリッシュ。モハーヴェ砂漠の神秘的な大自然を美しく捉えている。ただ、見方を変えればまるで観光フィルムのようで個性がない。ストーリー・テリングよりも映像テクニックに比重が置かれているのも鼻につく感じだ。見栄えは非常にいいが、中身が希薄という印象。
そんな演出や脚本の未熟さを補っているのが、ハンター役のランス・ヘンリクセン。そこに立っているだけで様になる俳優だが、本作でもそのカッコ良さは尋常じゃない。表向きは獲物を狙う冷徹なハンターだが、そのポーカー・フェイスの裏には燃えるような復讐心を秘めている。その静と動の極端な二面性を圧倒的な迫力で演じきっているのだ。特に後半のキレ具合は、まさにノリノリといった感じ。獲物役のルーク・ゴスもなかなかの熱演だが、ヘンリクセンの鬼気迫る存在感には敵わない。『ニア・ダーク』や『ペンデュラム/悪魔のふりこ』、『クィック&デッド』と並ぶ怪演と言えるだろう。残念ながら映画としては及第点の作品だが、少なくともランス・ヘンリクセンの演技は一見の価値アリである。
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砂漠に置き去りにされたエディ |
遠くからエディを監視するジミー |
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目覚めるとサボテンに縛り付けられていたエディ |
さらに首から下を土に埋められてしまう |
アリゾナからカリフォルニアに向けて、一人の男が車の旅を続けている。彼の名前はエディ(ルーク・ゴス)。立ち寄ったダイナーのウェイトレス、ジョー・アン(ディー・ウォーレス=ストーン)は、エディのはにかんだ笑顔に惹かれる。
ダイナーを出て車を走らせたエディは、モハーヴェ砂漠を眺めながら小用を足していた。その背後から静かに近寄るカウボーイハットの男の影。後頭部に拳銃を突きつけられたエディは強盗と勘違いして車のキーを渡そうとするが、頭を強打されて気絶してしまった。
エディは砂漠のど真ん中で目を覚ました。辺りは見渡す限り荒野が広がっている。近くに放置されていたトランシーバーから声が聞こえた。話しかけてきたのは、先ほどのカウボーイ・ハットの男だ。彼はジミー(ランス・ヘンリクセン)と名乗った。死にたくなければ北へ向えと言う。ハイウェイに出れば車が通るからだ。自分の置かれた状況をいまひとつ理解できないエディだったが、他に選択肢はない。彼はうろたえながらも歩き始める。
灼熱の太陽が照りつける砂漠で、暑さと疲労から苛立ちを隠せないエディ。ジミーは砂漠のどこかからか、彼のことを監視しているようだった。エディは歩き疲れて倒れこんでしまった。そして、再び目覚めて愕然とする。いつの間にか全裸にされ、巨大なサボテンに手錠で縛り付けられていたのだ。少しでも動けばサボテンの棘が体に刺さる。だが、この状況をなんとしても脱しなくてはならない。エディは血まみれになりながらも力を振り絞り、手錠の鎖でサボテンを切り倒した。
苦痛に表情をゆがませるエディ。ふとみると、近くの岩場に水の入ったペットボトルが三つ置いてある。喉の渇きを癒そうと手を伸ばそうとした瞬間、ペットボトルが破裂した。どこかからかジミーがライフル銃で狙っているのだ。ジミーはエディを弄んでいた。残された最後のペットボトルをようやく手にしたエディ。だが、ジミーの用意した仕掛けはこれだけではない。ペットボトルの底には鋭い針が沈んでいた。それを取り出したエディは、水の上に針を乗せてコンパス代わりにする。これで目指す方向がハッキリとした。
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北を目指して砂漠を歩き続けるエディ |
遂にジミーに捕らえられてしまった |
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助けてくれた男マーティ(C・バフィントン)を殺してしまう |
ミッチ(T・リスター)とプライス(C・スティーブンス) |
焚き火をして一夜を過ごしたエディ。だが、気づくと今度は首から下を土の中に埋められてしまった。照りつける太陽のもと、飢えと渇きで意識がもうろうとするエディ。遠くから車が近づいてきた。ジミーだ。エディを轢き殺そうとしながらも、寸でのところで止めて去っていく。やがて幻覚を見るようになったエディは、意識が遠のいていくのを感じていた。そんな彼に近づいて来る人影が・・・・。
エディはキャンプファイアの傍で目が覚めた。助かった、と思った。彼を救ったのはマーティ(カール・バフィントン)と名乗る男だった。だが、エディは次第に彼がジミーではないかと勘ぐるようになる。疑心暗鬼となって、マーティに殴りかかるエディ。そこへ一台の車が突っ込んできた。本物のジミーだった。マーティは轢き殺され、エディは深く後悔した。
ジミーの追跡を逃れたエディは、再び荒涼とした砂漠を放浪する。そこへ車に乗った二人組ミッチ(トミー・リスター)とプライス(チャド・スティーヴンス)が現れた。彼らは麻薬組織のメンバーで、マーティとドラッグの取引をするはずだったのだ。エディがマーティを殺したのだと勘違いした二人は、麻薬の在り処を吐かせようとしてエディをリンチする。絶体絶命の危機を救ったのはジミーの放った銃弾だった。傷ついて疲れ果てたエディは、人影が近づくのを感じながら意識を失う。
目覚めたエディは、車のボンネットに縛り付けられていた。傍にはジミーがいる。遂にジミーはその姿を現した。果たしてジミーの正体とは何者なのか?何の目的があってエディをこのような目に遭わせるのか?やがて、エディが過去に犯した恐るべき罪が明らかになっていく・・・。
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反撃に出ようとするエディ |
ジミーはライフルで応戦する |
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砂漠に埋められた人骨の意味するものとは・・・? |
エディに惹かれるウェイトレス、ジョー・アン(D・ウォーレス・ストーン) |
ブレット・A・ハート監督は、もともとカラオケ・ビデオや企業PV等の演出を手がけてきた人物。その傍らで短編映画を何本か発表し、本作で初の長編劇映画デビューを飾る。冒頭でも述べたように映像の見せ方は非常に凝っているのだが、どうもカラオケ・ビデオみたいな印象は拭えない。余りにもきれい過ぎて不自然なのだ。
また、クレジットにはないものの、恐らく撮影にはハイ・ビジョン・カメラを使用している。フィルムっぽい加工を施してはいるものの、やはり所々でバレてしまう。それがまたカラオケ・ビデオのような印象を与える原因のひとつになっているのかもしれない。
なお、主人公エディを演じているルーク・ゴスは、80年代に一世を風靡したイギリスの双子アイドル・デュオ、ブロスの元メンバー。グループ解散後は泣かず飛ばずだったが、『ブレイド2』('02)辺りから俳優として注目を集めるようになった。今年の夏に全米で公開される『ヘルボーイ』の続編では、ヘルボーイの宿敵プリンス・ヌアダを演じている。若い頃はサイボーグのように冷たい美形ぶりで人気だったが、年齢を重ねて人間的な味わいを醸し出すようになった。頭髪の後退具合も含めて、『ダイ・ハード』の頃のブルース・ウィリスを彷彿させる魅力がある。
また、オープニングとエンディングでさりげない存在感を見せるダイナーのウェイトレス、ジョー・アン役を、『ハウリング』や『E.T.』、『クジョー』でお馴染みの女優ディー・ウォーレス=ストーンが演じているのにも注目したい。『E.T.』のママ役から既に25年以上経っているわけだが、全く変わらない若々しさに驚かされる。