Black Christmas

※注意:怖くて気持ち悪い映画が苦手な方は急いで引き返してください♪ → 戻る

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(P)2007 Genius Products (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録
)/5.1chサラウンド/音声:英語/字幕:英語・スペイン語/地域コード:1/95分/
製作:カナダ・アメリカ

映像特典
メイキング映像(2種類)
未公開シーン集
未公開エンディング(3種類)
監督:グレン・モーガン
製作:ジェームズ・ウォン
    グレン・モーガン
製作総指揮:ボブ・クラーク
脚本:グレン・モーガン
撮影:ロバート・マクラクラン
特殊メイク:デイヴ・ジョーダン
        ジョジョ・ヴィラヌエーヴァ
音楽:シャーリー・ウォーカー
出演:ケイティ・キャシディ
    ミシェル・トラクテンバーグ
    メアリー・エリザベス・ウィンステッド
    オリヴァー・ハドソン
    レイシー・シャベール
    クリステン・クローク
    アンドレア・マーティン

 

 昨年辺りから70年代ホラー映画のリメイクがちょっとしたブームだが、そうした中で昨年のクリスマスに全米公開されたのがこの“Black Christmas”。スラッシャー映画の原点と呼ばれるボブ・クラーク監督の名作「暗闇にベルが鳴る」('74)のリメイク作品である。しかも、昨今のリメイク作品としては珍しく、オリジナルのボブ・クラーク監督が製作総指揮に名を連ねており、いわばオフィシャルなリメイクと言っていいだろう。
 ところがグレン・モーガン監督は、残酷シーンが殆んどなかったオリジナル版を大胆にアレンジし、血飛沫や脳みそが飛び散る一大スプラッター・カーニバルに仕上げてしまった。それもハンパじゃないくらいにグロテスクなヤツを。
 こちらもリメイクだった前作「ウィラード」('03)が、“残酷シーンが足りない”ことを理由に散々酷評されてしまったモーガン監督は、そんなに残酷シーンが見たいんだったらたっぷり見せてやろうじゃねえか、と半ばキレ気味で本作の撮影に臨んだらしい。もともとホラー映画には残酷シーンなんてあまり必要ないと考えていたモーガン監督にとって、本作はある種の挑戦状みたいなものだったのだろう。その情け容赦ないグロ描写のつるべ打ちには、普段ホラー映画を見慣れている人でも不快感を感じるかもしれない。
 さらに、本作で特筆すべきなのが、オリジナルでは最後まで謎のままだった犯人像を、その生い立ちに至るまで克明に描いている点だろう。もともとオリジナルのボブ・クラーク監督自身は、犯人像についてある程度のストーリーを頭の中で思い描いていたものの、映画の中ではあえてその事に触れなかった。その方が、クライマックスに不気味な後味の悪さを与えるからだ。それを今回は全て明かしてしまったわけだが、そこに観客の予想を裏切るようなひと手間を加えたのはなかなか賢かった。

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クリスマス・イヴを迎えた女子寮

和やかな団欒を過ごす学生たち

不気味な電話に不安を覚える

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ケリー役のケイティ・キャシディ

ヘザー役のメアリー・エリザベス・ウィンステッド

オリジナル版にも出演したアンドレア・マーティン

 クリスマス・イヴを迎えた大学の女子寮。部屋でプレゼントを用意していた女子大生クレア(リーラ・サヴァスタ)が、ベッドの下から現れた何者かによって、頭にビニールを被せられた上で惨殺される。さらに、物音に気付いて屋根裏部屋に上ったミーガン(ジェシカ・ハーモン)も、何者かに目玉をくり抜かれて殺された。
 その頃、精神病院ではサンタクロースが患者にプレゼントを配っていた。間違って隔離病棟に足を踏み入れたサンタは、そこにビリー・レンツ(ロバート・マン)という患者が収容されている事を聞かされる。ビリーは15年前のクリスマス・イヴに家族を殺害したのだが、毎年この時期になると脱走を図ろうとするという。これまで失敗に終わったビリーの脱走だったが、今年は違ったようだ。夕食に出されたチキンの骨でスタッフを殺害して病室を抜け出したビリーは、さらにサンタをも殺害して衣装を奪って逃げる。
 一方、クリスマス・イヴを女子寮で過ごすことになった数人の学生たちは、寮母マクヘンリー夫人(アンドレア・マーティン)を囲んで団欒のひと時を過ごしていた。そんな中、メリッサ(ミシェル・トラクステンバーグ)がこの建物にまつわる忌まわしい出来事を語り始める。

 かつて、この屋敷にはビリーという少年とその家族が住んでいた。父親はビリーを溺愛したが、夫を憎む母親(カリン・コノヴァル)は息子のことにも無関心だった。そしてビリーが6歳の時、クリスマス・イヴに母親は愛人と共謀して父親を殺害する。それも、ビリーの目の前で。自分も殺されると思ったビリーは屋根裏へ逃げ込み、母親はそのまま彼を監禁してしまった。さらに、ビリーが思春期にさしかかると、愛人とのセックスに飽きてしまった母親は息子の肉体に溺れる。そうして生まれたのが妹アグネスだった。母親はビリーの時とは打って変わって、娘のアグネスを溺愛して育てた。
 そんなアグネスが8歳になった年のクリスマス・イヴ。遂にビリーの憎しみが爆発する。アグネスの片目を引き抜いて口の中に入れたビリーは、襲い掛かった母親の愛人の脳天を串刺しにして殺害。さらに母親を撲殺し、その体をクッキーの型でくり抜き、オーブンで焼き始めた。通報を受けた警官が到着すると、そこには“母親”の手作りクッキーを食べるビリーの姿があった・・・。

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ビリーの母親を演じるカリン・コノヴァル

ビリーの目の前で父親が殺される

父親を地下に埋める母親の姿を目撃したビリー

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ビリーの歪んだ妹アグネス

アグネスの目玉を口に入れるビリー

母親をクッキーにしようとするビリー

 そんな話はデタラメよ、と一笑に付す学生たち。そこへ、奇妙な電話がかかってくる。“俺の家から出て行け!”と罵るその電話に不安を覚える学生たち。しかも、その発信元はクレアの携帯電話だった。クレアとミーガンの姿が見えない事に気付いた一同は、2階の部屋を探してみるが誰もいない。
 その代わり、ケリー(ケイティ・キャシディ)の恋人カイル(オリヴァー・ハドソン)がミーガンの部屋から出てきた。ケリーを探していたというカイルだったが、実はミーガンと浮気をしていて、彼女のパソコンに残されているセックス・ビデオをこっそり消去しようとしていたのだ。その事に気付いたケリーはカイルを寮から追い出す。
 一方、階下ではクレアの異父姉妹であるリー(クリステン・クローク)という女性が待っていた。妹クレアを迎えに来たのだという。学生たちはリーと共に、クレアとミーガンの行方を探すことにする。そんな彼女たちを、家のあちらこちらに開けられた穴から覗き見る不気味な目。
 友達が家の中を捜索している間、デイナ(レイシー・シャベール)は玄関の外でタバコを吸っていた。すると、足元で物音がする。軒下を覗いたデイナは何者かによって引きずりこまれ、無残にも殺害されしまう。
 デイナまでいなくなった事に気付いた学生たちは、外に停めてある車の中から、帰省したはずの学生イヴ(キャサリン・コール)の生首を発見。ようやく殺人鬼の存在に気付いた一同はパニックに陥る。警察に通報するものの、大雪のためにパトカーが到着するまでに何時間もかかるという。一刻も早く車で脱出しようと主張するマクヘンリー夫人とヘザー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)だったが、ケリーたちは“クレアとミーガンの無事を確認するまで一歩も動かない”と頑なに言い張る。
 仕方なく、自分たちだけで寮を後にしようとするマクヘンリー夫人とヘザーだったが、車のエンジンを温めている間にヘザーが殺害され、驚いたマクヘンリー夫人の頭部に落ちてきたツララが直撃する。
 果たしてケリーたちは生きて寮を脱出することが出来るのか!?そして犯人は一体誰なのか?精神病院を脱走したビリー?それともカイル?リーも本当にクレアの姉なのか?それとも、誰も知らない何者かが屋敷を徘徊しているのか・・・?

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カイル役のオリヴァー・ハドソン

リー役を演じるのは監督夫人のクリステン・クローク

シャワー・ルームの床下から覗く目が・・・

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生首を発見してパニックに陥る学生たち

スケート靴の刃で後頭部をえぐられるメリッサ

追い詰められたケリーとリーの二人

 とりあえず、オープニングからバンバンと人が殺されまくる。それも、かなり残酷な方法で。殺人鬼が眼球に執着を持っているということもあって、とにかく目玉を引っこ抜いて引っこ抜きまくる。それがまたリアルなこと。口に含んだ眼球を歯で噛み潰すと、ブチョッって血の混じった液体が飛び散る辺りなんか、まさに究極の変態プレイだ。特殊メイクの技術力のおかげもあって、とにもかくにも凄惨な殺戮がこれでもかと繰り広げられる。
 しかし、一番の見所はフラッシュバックで描かれるビリーの物語だろう。そのあまりにも極端に悲惨で残酷な生い立ちは、ほとんどコメディの域に達していると言ってもいい。中でも、母親役を演じている女優カリン・コノヴァルの凄まじい怪演ぶりは出色で、まるでお伽噺に出てくる魔女そのものである。ビリーが生まれて初めて食べる手作りのクリスマス・クッキーが、母親の作ったクッキーではなく、母親で作ったクッキーというオチなんかも爆笑もの。こういう極悪なセンスに付いて来れない人には、かなり厳しい内容の映画かもしれない。
 人体破壊にドメスティック・バイオレンス、近親相姦、セックス・ビデオなど、不謹慎な題材を詰め込みまくった作品にゆえに、アメリカでは観客にも批評家にも相当な反感を呼んだようだ。特に、クリスマス・シーズンの劇場公開だったこともあって、全米各地の宗教団体からは抗議が殺到したという。しかし、それもこれもグレン・モーガン監督にとっては、ある意味で目論見通りだったと言えるかもしれない。
 冒頭でも述べたように、監督は前作「ウィラード」が地味で大人しすぎるという理由で酷評されたことが相当頭に来ていたらしく、それなら次は徹底的にえげつない映画を撮ってやろうと心に決めていたという。その結果として、再び酷評された上に興行成績も惨敗と来れば元も子もないだろうとも思うのだが、その不器用なまでの正直さが個人的にはとても好きだ。ほれどうだ、やっぱり気持ち悪いのはイヤなんじゃないか、って監督の声が聞こえてきそうで微笑ましい。ほとんど個人的な恨みだけで映画を一本撮ってしまって、しかもディメンション・フィルムという大手の映画会社に配給をさせてしまうなんて、なんとも素敵な根性の持ち主ではないか。

 そんなグレン・モーガン監督は、もともと脚本家兼プロデューサーとして名を成した人物。テレビ「Xファイル」シリーズの脚本・製作で一躍有名になり、さらに本作の製作を務めている親友ジェームズ・ウォンと共に映画「ファイナル・デスティネーション」シリーズの脚本・製作を務めた。ここで、おや?と思う人もいるかもしれない。そう、「ファイナル・デスティネーション」シリーズは、メジャー映画としては掟破りなくらいのスプラッター描写で有名な作品。インタビューの中では“残酷シーンは好きじゃない”と断言していたモーガン監督だが、自分がメガホンを取らなければ関係ないのかもしれない。まあ、都合が良いといえば都合が良いのだが・・・(笑)
 いずれにせよ、本作は興行的に失敗してしまったものの、現在は往年の人気ドラマ「バイオニック・ジェミー」のリメイク版TVシリーズのプロデューサーとして活躍しており、来年公開予定のジェームズ・ウォン監督による話題作「ドラゴンボールZ」の実写映画化にも携わっている。
 また、本作の音楽を担当しているシャーリー・ウォーカーは、ハリウッドでも数少ない女流作曲家として知られる人物。ダニー・エルフマンの片腕として、「三人のゴースト」や「バットマン」シリーズなどのオーケストラ指揮も務めてきたが、残念ながらこれが遺作となってしまった。

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クリスマス・ツリーのてっぺんには生首が

ツリーの飾りはガラス球ではなくて人間の目玉

果たして二人の運命やいかに・・・!?

 そして、この作品のもう一つの面白さは、主要キャストの中で唯一無名の女優がヒロインを務めている点だろう。普通は無名の女優が殺され役を演じるものだが、本作は全くその逆の手法を取っている。それだけに、誰が次に殺されるのか全く見当がつかないというスリルを生むことに成功している。
 そのヒロイン役を務めるのがケイティ・キャシディ。70年代の人気ポップ・アイドル、デヴィッド・キャシディの愛娘だが、本作が初の大役となった。スケート靴で頭を真っ二つにされるメリッサ役を演じているミシェル・トラクテンバーグは、大ヒットしたTVシリーズ「バフィー〜恋する十字架」でバフィーの妹ドーン役を演じてブレイクしたアイドル女優。寮を脱出しようとして殺されるヘザー役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドは、「ファイナル・デスティネーション」シリーズの第3弾「ファイナル・デッドコースター」('05)でヒロインを務め、「ダイ・ハード4.0」('07)ではマクレーン刑事の娘ルーシー役を演じた注目の人気スター。床下で惨殺されるデイナ役のレイシー・シャベールは、90年代に全米で「フレンズ」と並ぶ人気を誇った青春ドラマ「サンフランシスコの空の下」で人気を集めた女優。とまあ、いずれもアメリカでは名前も顔も知られた有名若手スター女優が、見事なくらいにバンバンと殺されていくのだ。
 また、オリジナルのファンに嬉しいのは、マクヘンリー夫人役でアンドレア・マーティンが登場すること。74年版ではヒロイン、オリヴィア・ハッセイの親友役を演じていた女優さんで、その後テレビ「セカンド・シティ」でコメディエンヌとして大ブレイクした人。本作のオファーを受けるまで、オリジナル版のことはすっかり忘れていたという。

 なお、当初は日本公開も期待されていたものの、その興行的な失敗を受けてなのか、いまだに日本ではDVD発売すらされる気配はなし。確かに不謹慎でえげつない映画ではあるが、同じくらいえげつない「ホステル」シリーズや「SAW」シリーズだって堂々と劇場公開されているのだから、せめてDVD発売くらいされてもいいように思うのだが・・・?
 いずれにせよ、ボクは別にクリスチャンではないので、クリスマスに特別な思い入れなどはないし、クリスマスを祝うようなつもりもないのだが、こんな悪趣味で素敵な映画を見れるのであれば、クリスマスも捨てたもんじゃないな♪なんて秘かに思ったりするのである。

 

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