ベリー・リップマン Berry
Lipman
ジャーマン・グルーヴの帝王
パーシー・フェイスやポール・モーリアなどのイージー・リスニング楽団が世界的に人気を集めた60年代、中でも特にダンサンブルでエッジの効いたサウンドを生み出したのは西ドイツのバンド・リーダーたちだった。その代表格と言えば、『真夜中のブルース』や『ジャンガ・ジャンゴ』のヒットで日本でも有名なベルト・ケンプフェルトであろう。また、ノンストップ・ダンシング・シリーズで知られるジェームズ・ラストもヨーロッパでは非常に人気が高い。しかし、ジャーマン・イージー・リスニングのアーティストで最もクールかつカッコいいのは誰かと訊かれたら、個人的には迷わずベリー・リップマンの名前を挙げる。
1921年1月11日、ハノーファー近郊の小さな町ブルグドルフで生まれたリップマンは、本名をフリーデル・ベルリップという。7歳のころからバイオリンを習い始めた彼は、大学で作曲を学んだ後、1945年にオルデンブルグ劇場の楽団員としてキャリアをスタートさせた。さらに、ラジオ局専属楽団のアレンジャーとして活躍するようになり、その才能が認められて大手レコード会社のEMIやデッカからも声がかかるようになる。この頃からアレンジャーとしてのみならず作曲家としても活躍するようになり、61年にはアリオラ・レコードの制作主任として迎えられ、64年からはヴォーグ・レコードでペチュラ・クラークやダリダ、シャルル・アズナヴール、パット・ブーン、フランソワーズ・アルディなど世界的な大物アーティストのアレンジやオーケストラ指揮を手掛けるようになった。
そんな彼が自らの楽団ベリー・リップマン・オーケストラを結成したのは1967年のこと。当時の西ドイツではイージー・リスニング音楽の全盛期で、先述したベルト・ケンプフェルトやジェームズ・ラストの他にも、ペリー・ロンドンやロベルト・デルガードなどのバンド・リーダーが大活躍していた。ただ、フリーデル・ベルリップというドイツ名では格好がつかない。当時はドイツ人のバンド・リーダーが外国人名を名乗るというのが一般的だった。ジェームズ・ラストも本名はハンス・ラストというドイツ人。ペリー・ロンドンはエルウィン・レーン、ロベルト・デルガードはホルスト・ウェンデというのが本当の名前だ。そこで彼もベルリップという自らの名字からヒントを得て、ベリー・リップマンというアングロサクソン名を考え付いたというわけだ。
もともとジャズやラテン音楽の好きだった彼は、当時人気を集めていたハーブ・アルパートやバート・バカラックのサウンドをお手本にし、ラテン・フレーバー溢れるキャッチーでダンサンブルでグル―ヴィーな楽曲を次々と生み出していく。イージー・リスニングの王道であるヒット曲のインスト・カバーは勿論のこと、素晴らしいメロディ・センスを発揮したオリジナル作品も数多く発表した。中でも特に有名なのは、1972年にリリースされた“Die
Girls von
Paramaribo(パラマリボーの娘たち)”。軽やかなサンバのリズムにイージーで爽やかなメロディを乗せた、まさしく極上のラウンジ・グルーヴ・チューンだ。70年代半ばになるとディスコ・ミュージックの要素も積極的に取り入れ、とにかくポップで踊れるナンバーばかりを世に送り出し続けた。
そうしたバンド・リーダーとしての活躍の傍ら、映画やテレビの音楽スコアも数多く手掛けたリップマン。中でも、西ドイツとイギリスの合作として作られたSFドラマ“Star
Maidens”(76)のスコアは名作として知られている。しかし、80年代に入ると徐々に音楽制作の第一線から退き、その後はドイツの音楽著作権協会GEMAの代表理事として忙しい日々を送るようになったという。
さて、90年代末に盛り上がったラウンジ・ミュージックのリバイバル・ブームのおかげもあって、現役時代を知らない若い世代にも熱心なファンを持つようになったリップマン。だが、残念ながら未だにCDで手に入る作品は非常に限られている。僅かに、ベスト・アルバムが数枚リリースされている程度。一方でケンプフェルトやラストのオリジナル・アルバムはバンバン再発されているのだから、まさに不遇の扱いを受けていると言っても良かろう。是非とも、60〜70年代にかけて製作されたオリジナル・アルバムのCD復刻を実現させて欲しいものだ。
Easy Listening
Vol.1 Easy Listening
Vol.2 Easy Listening
Vol.3 Paramaribo
Classics
(P)1996 Sonia/Da Music
(Germany)
(P)1996 Sonia/Da Music
(Germany)
(P)2005 Sonia/Da Music
(Germany)
(P)2001 All Score Media
(Germany)
1,The Girls from Paramaribo
2,You
are the Sunshine of My Life ビデオ
3,Claire
4,Not
At All
5,Sing
6,Music for Lovers
7,She Loves You
8,Alone
Again
9,Pure Samba
10,Lovely Treeny
11,Caribbean
Sunset
12,Love
13,Swinging Trumpets ビデオ
14,Keep On
Smiling ビデオ1,La Parranda ビデオ
2,Beach Party
in Santa Cruz
3,The Men I Love
4,If You Could Read My Mind
5,The
Girl from Ipanema
6,Let's Talk About Music
7,Girl Talk
8,With a
Kick
9,Love Is Just Around The Cornerビデオ
10,A Touch of
Latin
11,Wives and Lovers
12,Berry's Joke
13,Saludos
Amigos
14,Dankeschon ビデオ1,Farmer's Walking
2,Fiesta
Marbella
3,Let's Dance Together
4,Hey Girl
5,Caribbean
Feelings
6,Knock Up "Trine"
7,Midnight in
L.A.
8,Tellania
9,Samba de Brasil
10,First Class
11,Blinky ビデオ
12,Islands
Over The Wind
13,Bonita Carmencita
14,Maxican Moonlight
15,Beach
Girl
16,La Sega1,Der Stern von
Afrika
2,Helicopter Power
3,Sex World ビデオ
4,Concerto
for Young Lovers
5,Let's Dance Together ビデオ
6,Die Girls
von Paramaribo ビデオ
7,Auf
Wiederseh'n Maledeine
8,Easy Drummin' ビデオ
9,Saludos
Amigos
10,I Like It
11,Beach Party in Santa Cruz
12,Bonita
Carmencita
13,It Never Rains in
Southern California ビデオ
14,Girl
Talk
15,The Girl from Ipanema ビデオ
16,Hol' Dir
den Sonnenschein
17,Hey Du
18,Kussenterricht
19,Wives and
Lovers
20,Night Fever
どうやら再レコーディングで構成されているらしいこのシリーズ、チープなジャケットとは裏腹に中身は最高にゴージャスでエレガントでグル―ヴィーなラウンジ・サウンドのオンパレードです。代表曲#1はオリジナルにあった男性ボーカルを一切排除し、スキャット・コーラスで統一したのが大正解。カーペンターズの名曲をスウィンギーにアレンジした#5やギルバート・オサリヴァンの定番曲をダンサンブルなイージーサウンドで甦らせた#8、煌びやかでメロウなサンバ・チューン#9などなど、カバーもオリジナルも共に素晴らしい出来栄えです。
こちらはカバー物よりもオリジナル作品に聴きどころが満載のボリューム2。特に陽気なサンバのリズムにほのぼのとしたメロディ、セクシーな女声スキャットの三つ巴で南国のリゾート・ムードを盛り上げる必殺のイージー・チューン#2は最高です。サルソウル・スタイルのゴージャスでメロウなアーバン・ラテン・ディスコ#10、エレガントでキャッチーなスウィート・サンバ#13も大好き。カバー曲ではジュリー・ロンドンの歌唱でも有名なニール・ヘフティの名曲を、シルクのように滑らかなメロウ・ボサとして甦らせた#7が秀逸です。
フレディー・スコットのカバー#3以外は全てオリジナル作品で構成されたボリューム3。2005年のレコーディングであるにも関わらず60〜70年代のサウンドにしか聴こえないのはある意味凄いと思います。しかも、いずれもラテン・ラウンジの醍醐味を思う存分に味わえる極上のナンバーばかり。中でも70年代ラウンジ系アーバン・ディスコの魅力を余すことなく伝える#3や#5は出色の出来栄えです。ドライブ感溢れるアダルトなジャズ・フュージョン#7、フィリーソウル・ミーツ・ラテンジャズな#13なんかもすこぶるカッコ良さ!
そして、こちらが全盛期のオリジナル音源で構成されたベスト盤となります。もう、これが文句なしに最高。#3なんて成人向け映画のテーマ曲ですけど、パンチの効いたファンキー・ビートに煌びやかなストリングス、超キャッチーなメロディと完璧な仕上がり。そう、リップマンの作品て他のイージーリスニング系バンドに比べるとリズムに心地良いグルーヴ感があるんですよね。それを最大限に生かしたのが#8。重量感のあるドラムをベースに、スウィートなイージー・ムードを漂わせた佳作です。もちろん、それ以外の楽曲も素晴らしいことこの上なし!
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