Mario Bava on Blu-ray

 

 

血塗られた墓標
Black Sunday (1960)

BLACK_SUNDAY_US.JPG BLACK_SUNDAY_UK.JPG
(P)2012 Kino Lorber (USA) (P)2013 Arrow Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン/画面比: 1.66:1/HD規格:1080p/音声: 2.0ch リニアPCM MONO/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/87分/制作国:イタリア

<特典>
・オリジナル劇場予告編
・マリオ・バーヴァ予告編集
・批評家ティム・ルーカスの音声解説
ブルーレイ仕様(UK盤3枚組)
モノクロ/ワイドスクリーン/画面比: 1.66:1/HD規格:1080p/音声: 2.och リニアPCM MONO/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:B/87分(米国版84分)/制作国:イタリア

<パッケージ仕様>
ジャケット2種類(リバーシブル)
フルカラー・ブックレット(32p)

<特典>
・批評家アラン・ジョーンズによるイントロダクション
・女優バーバラ・スティールのインタビュー
・イタリア語削除シーン
・オリジナル劇場予告編集(国際版・イタリア版・米国版)
・テレビスポット
・批評家ティム・ルーカスの音声解説
・リカルド・フレーダ監督作品 「I Vampiri」本編
・「I Vampiri」オリジナル予告編
・マリオ・バーヴァ作品予告編集
監督:マリオ・バーヴァ
製作:マッシモ・デ・リータ
原作:ニコライ・ゴーゴリ
脚本:エンニオ・デ・コンチーニ
   マリオ・セランドレイ
撮影:マリオ・バーヴァ
   ウバルド・テルツァーノ
音楽:ロベルト・ニコロージ
出演:バーバラ・スティール
   ジョン・リチャードソン
   アンドレア・チェッキ
   イヴォ・ガラーニ
   アルトゥーロ・ドミニチ
   エンリコ・オリヴィエリ
監督:マリオ・バーヴァ
製作:マッシモ・デ・リータ
原作:ニコライ・ゴーゴリ
脚本:エンニオ・デ・コンチーニ
   マリオ・セランドレイ
撮影:マリオ・バーヴァ
   ウバルド・テルツァーノ
音楽:ロベルト・ニコロージ(欧州版)
   レス・バクスター(米国版)
出演:バーバラ・スティール
   ジョン・リチャードソン
   アンドレア・チェッキ
   イヴォ・ガラーニ
   アルトゥーロ・ドミニチ
   エンリコ・オリヴィエリ

 イタリアン・ホラーの父マリオ・バーヴァの本格的な初監督作品(それ以前にノー・クレジットの演出作はある)であり、まさにイタリアン・ホラー黄金期の幕開けを告げた歴史的な傑作。アメリカでも興行的な大成功を収め、主演女優バーバラ・スティールは世界的なスクリーム・クィーンとなった。作品に関する詳細はこちらを参照していただくとして、ここではブルーレイ・ソフトのレビューに専念することにしよう(以下の各タイトルも同様)
 筆者が購入したのはクラシック映画の再発を専門にしているKino Lorber社による米国盤と、カルト映画の殿堂として高く評価されているArrow Videoによる英国盤の2種類。先に結論から言ってしまうと、本編の画質にしても特典映像の充実度にしても、Arrow Videoの英国盤が圧倒的に優っていると言えよう。

 まず、「血塗られた墓標」には少なくとも3つのバージョンが存在する。本国で上映されたイタリア語バージョン(La Maschera del Demonio)、国外配給用のヨーロピアン・バージョン(The Mask of Satan)、そして全米公開用のアメリカン・バージョン(Black Sunday)。この中で完全版と呼べるのがイタリア語バージョンで、バーバラ・スティール扮するカーチャと父親が城の外で会話をするシーンが含まれているのだが、これはストーリーの流れ上で全く不必要だということもあってか、ヨーロピアン・バージョンとアメリカン・バージョンではカットされている。
 で、国外向けに英語の吹替トラックをイタリア国内で制作したのがヨーロピアン・バージョン。さらに、残酷シーンの一部を削除した上でオープニングに解説文を加え、当時の保守的なアメリカ人のテイストに合わせた新たな英語吹替トラックと音楽スコアを作成したのがアメリカン・バージョンとなる。

 上記の米国盤ブルーレイに収録されているのはヨーロピアン・バージョンのみ。35ミリの上映用プリントからフルハイビジョンでテレシネされているのだが、いわゆるレストア作業は一切施されておらず、フィルムのキズや汚れがそのままになっている。それ自体は許容範囲内に収まっているから良いのだが、どうにも解せないのはフルハイビジョンらしからぬ画像の粗さだ。全体的にモノクロのコントラストが弱く、特に黒の深みが足りていない。
 また、音声トラックのブチブチというノイズも頻繁に目立つ。かつて米アンカー・ベイ社からリリースされたDVDの方が、画質的にも音質的にも明らかにハイクオリティだ。特典映像もマリオ・バーヴァの研究者として有名な評論家ティム・ルーカスの音声解説(アンカー・ベイ版DVDにも収録)と予告編のみ。DVDから乗り換える意味のない中途半端な商品だ。

 それに比べて、Arrow Videoの英国盤ブルーレイは中身もパッケージも充実している。こちらはヨーロピアン・バージョンとアメリカン・バージョンの両方を収録。さらに、イタリア語版のみの削除シーンも特典映像に含まれているのだから嬉しい。ただ、本BDのアメリカン・バージョンはオープニングと音声トラックのみAIPのアーカイブ素材を使用し、あとはヨーロピアン・バージョンと同じ映像マスターを使っているという、いわばなんちゃってアメリカン・バージョンなのだそうだ。
 で、こちらのBD盤制作関係者からの情報によると、基本的に権利者から提供された映像マスターは米国盤と同一のもの。しかし、実際に再生されたビジュアルのクオリティは一目瞭然で差がある。確かにフィルムのキズや汚れの具合はほとんど一緒なのだが、画像イメージは全体的にシャープで、特に黒の深みは断然に英国盤の方がいい。音声のノイズも米国盤ほどは耳障りじゃない。米アンカー・ベイ版DVDと比較しても、こちらの方が品質的に一歩リードしている感じだ。
 さらに、特典映像にもボリュームがある。先述した削除シーンに加えてホラー映画ファンにはお馴染みの英国人批評家アラン・ジョーンズの解説を兼ねたイントロダクション、各種オリジナル予告編、さらにテレビスポットも収録。主演女優バーバラ・スティールのインタビューは'04年に発売されたイタリア版DVDからの移植だ。また、マリオ・バーヴァ作品の予告編集は、米国盤が基本的に発売予定に入っているタイトルのみに限定されていたのに対し、英国盤では文字通り監督作全ての予告編が網羅されている。
 そして、イタリアン・ホラー・ファンにとって嬉しいのが、戦後イタリア映画における本格的ホラー映画の第一号であり、バーヴァが撮影監督を務めたリカルド・フレーダ作品「I Vampiri」の本編が丸々収録されているということ。画質的にはDVDとほぼ変わらないくらいのレベルだが、それでも贅沢なオマケと言えるだろう。
 パッケージの仕様も英国盤の方が豪華。特に詳細な作品解説やバーバラ・スティールの最新インタビューを収録した32ページに及ぶフルカラー・ブックレットはファン必読。熱烈な支持者の多いカルト映画のブルーレイ・ソフトはこうあるべしといった感じの仕上がりで、お粗末な米国盤とはまさに雲泥の差だ。
 なお、米Kino Lorber社はアメリカン・バージョンのみを収録した新たなブルーレイをリリースしたばかりだが、英国盤で一度に手に入ってしまうので、何をいまさらといった感じ。ただ、英国盤はブルーレイがリージョンA、同一内容を2枚に分けた付属DVDがリージョン2とブロックされているので、日本で再生する際にはリージョン・フリーの再生機を購入する必要があるのでご注意を。

 

 

ブラック・サバス/恐怖!三つの顔
Black Sabbath (1963)

BLACK_SABBATH_US.JPG BLACK_SABBATH_UK.JPG
(P)2013 Kino Lorber (USA) (P)2013 Arrow Video (UK)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM MONO/言語:イタリア語/字幕:英語/地域コード:A/92分/制作国:イタリア

<特典>
・マリオ・バーヴァ監督予告編集
ブルーレイ仕様(UK盤3枚組)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.74:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM MONO/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:B/92分(米国版96分)/制作国:イタリア

<パッケージ仕様>
ジャケット2種類(リバーシブル)
フルカラー・ブックレット(40p)

<特典>
・「Twice the Fear」欧州版と米国版の比較
・批評家アラン・ジョーンズによるイントロダクション(DVDのみ)
・マーク・デイモンのインタビュー(DVDのみ)
・オリジナル予告編集(国際版・米国版・イタリア版)(DVDのみ)
・TV&ラジオ・スポット集(DVDのみ)
・批評家ティム・ルーカスの音声解説(欧州版のみ)
監督:マリオ・バーヴァ
製作:サルヴァトーレ・ビリッテリ
   パオロ・メルクーリ
原作:イワン・チェーホフ
   F・G・スナイダー
   アレクセイ・トルストイ
脚本:マリオ・バーヴァ
   アルベルト・ベヴィラクア
   マルチェロ・フォンダート
撮影:ウバルド・テルツァーノ
音楽:ロベルト・ニコロージ
出演:ボリス・カーロフ
   ミシェル・メルシエ
   マーク・デイモン
   ジャクリーヌ・ピエロー
   リディア・アルフォンシ
   スージー・アンダーソン
   ハリエット・メディン
監督:マリオ・バーヴァ
製作:サルヴァトーレ・ビリッテリ
   パオロ・メルクーリ
原作:イワン・チェーホフ
   F・G・スナイダー
   アレクセイ・トルストイ
脚本:マリオ・バーヴァ
   アルベルト・ベヴィラクア
   マルチェロ・フォンダート
撮影:ウバルド・テルツァーノ
音楽:ロベルト・ニコロージ(欧州版)
   レス・バクスター(米国版)
出演:ボリス・カーロフ
   ミシェル・メルシエ
   マーク・デイモン
   ジャクリーヌ・ピエロー
   リディア・アルフォンシ
   スージー・アンダーソン
   ハリエット・メディン

 「血塗られた墓標」と並ぶバーヴァの大傑作。あの有名なロックバンド、ブラック・サバスの名前も本作にインスパイアされているという。「血塗られた墓標」はモノクロだったが、こちらはテクニカラーの鮮烈な色彩をフル活用。ほとんどサイケデリック・アートと呼んでいいくらいの色彩の洪水が、まさに悪夢的な異空間を作り上げている。ゴーゴリやトルストイの短編を原作にした3部構成のオムニバス形式で、全くタイプの違うそれぞれのストーリーも皮肉が効いていて面白い。
 で、本作に関しても筆者は米国盤と英国盤の両方を入手。パッケージ仕様に関しては完全に英国盤に軍配が上がるものの、本編のクオリティに関しては一長一短といったところかもしれない。まずはイタリア語音声のヨーロピアン・バージョンのみ収録の米国盤。35ミリのマスター・フィルムがオリジナル・ネガなのかインター・ネガなのかは不明だが、画質は概ね良好だ。フィルムのキズや汚れはほとんど見られないし、なによりも輪郭がシャープだし映像の質感もスムースできめ細かい。フィルム・グレインも最小限に抑えられていて、とてもクリアな仕上がりだ。
 ただ問題なのが色調。全体的にカラーの強度がグッと抑えられており、全編に極彩色を使いまくったバーヴァ作品ならではのけばけばしさが全く感じられない。加えて画面全体が暗めなため、夜間シーンではよく見えない部分があったりする。カラコレの担当者が本来の持ち味を理解していなかったのか。これは本来あるべき色調では全くないし、作品の魅力そのものを半減させてしまっていると言えよう。

 一方、ヨーロピアン・バージョンとアメリカン・バージョンの両方を収録した英国盤。まず米国盤と同じヨーロピアン・バージョンを比較すると、決定的に違うのはやはり色調だ。35ミリのインターネガからローマ市内でフルハイビジョンのテレシネを行い、ロンドンで入念なレストア作業を施したというヨーロピアン・バージョン。バーヴァが本来意図した鮮烈なカラーが見事に再現されており、画面全体もちょうどいい按配で明るい。ただ、フィルム・グレインが米国盤よりも濃厚であるため、よりフィルムっぽい粗さが強調されており、その辺りは人によって好き嫌いが分かれることだろう。
 さらに、アメリカン・バージョンは現在AIPの版権を所有するMGMが保管していた35ミリのマスターネガを使用。カリフォルニアのバーバンクでフルハイビジョンのテレシネおよびレストア作業を行っている。実はヨーロピアン・バージョンがテクニカラーでプリントされたのに対し、アメリカン・バージョンは当時の配給元AIPの意向でパテカラーによるプリントが行われた。そのため、全般的に色彩がフラットになっており、テクニカラー同様にカラフルではあるものの、本来の異様なケバケバしさは失われてしまっている。また、ヨーロピアン・バージョンに比べると映像の輪郭も甘く、若干ではあるがボヤけて見えてしまうことは否めないだろう。
 ということで、本編のクオリティに関しては見る人の好みによって評価の分かれるところかもしれないが、それでも米国盤のカラコレは明らかに間違っている。それ以外は全く文句のないレベルなだけに惜しい。

 次に特典映像だが、バーヴァ作品の予告編集のみの米国盤は論外。いくらなんでも手を抜き過ぎじゃないですかといった感じだ。それに比べると、英国盤はブルーレイ用の新コンテンツこそ少ないものの、トータルのボリューム感はまずまずだ。俳優マーク・デイモンのインタビューや批評家ティム・ルーカスの音声解説、各予告編集などは、'07年に米アンカー・ベイからリリースされたDVDからの移植。プロデューサーとしても有名なデイモンのインタビューは、本作を含む彼のキャリア全般を追ったドキュメンタリー形式となっている。
 そして、英国盤ブルーレイのみの新コンテンツが、批評家アラン・ジョーンズの解説を兼ねたイントロダクション、そしてヨーロピアン・バージョンとアメリカン・バージョンの違いをシーンごとに比較しながら詳しく解説していく「Twice the Fear」。特に後者はファン必見の労作だ。ヨーロピアン・バージョンが雰囲気を重視してジワジワと恐怖を盛り上げ、文学的な香りすら漂う大人向けの怪奇譚として仕上げられているのに対し、アメリカン・バージョンは大仰な音楽や音響効果を駆使して恐怖を煽り、難しい解釈や想像の余地を極力排した大衆向けホラーとなっていることがよく分かるだろう。
 また、これ以上ないくらいに詳しい作品解説やアメリカン・バージョンの作成舞台裏秘話などを掲載した、40頁に及ぶフルカラー・ブックレットも読み応えあり。さすがはカルト映画の殿堂Arrow Video、コアなファンも満足させる入魂のソフト化だ。

 

 

白い肌に狂う鞭
Whip and the Body (1963)

WHIP_AND_BODY_US.JPG WHIP_ AND _BODY_UK.JPG
(P)2013 Kino Lorber (USA) (P)2014 Odeon Entertainment (UK)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM MONO/言語:イタリア語・英語・フランス語/字幕:英語/地域コード:A/87分/制作国:イタリア・フランス

<特典>
・オリジナル劇場予告編
・マリオ・バーヴァ作品予告編集
・批評家ティム・ルーカスの音声解説
ブルーレイ仕様(英国盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DOLBY DIGITAL MONO/言語:イタリア語・英語・フランス語/字幕:英語/地域コード:ALL/92分/制作国:イタリア・フランス

<パッケージ仕様>
フルカラー・ブックレット(16p)

<特典>
・映画研究者ジョナサン・リグビーのインタビュー
・ドキュメンタリー「Interview with Christopher Lee」
・オリジナル予告編集(ドイツ版・フランス版・イタリア版)
・批評家ティム・ルーカスの音声解説
・スチル・ギャラリー
監督:マリオ・バーヴァ
製作:フェデリコ・マナーギ
脚本:エルネスト・ガスタルディ
   ウーゴ・ゲッラ
   ルチアーナ・マルティーノ
撮影:ウバルド・テルツァーノ
音楽:カルロ・ルスティケッリ
出演:クリストファー・リー
   ダリア・ラヴィ
   トニー・ケンドール
   グスタヴォ・デ・ナルド
   イーダ・ガリ
   ハリエット・メディン
監督:マリオ・バーヴァ
製作:フェデリコ・マナーギ
脚本:エルネスト・ガスタルディ
   ウーゴ・ゲッラ
   ルチアーナ・マルティーノ
撮影:ウバルド・テルツァーノ
音楽:カルロ・ルスティケッリ
出演:クリストファー・リー
   ダリア・ラヴィ
   トニー・ケンドール
   グスタヴォ・デ・ナルド
   イーダ・ガリ
   ハリエット・メディン

 なんとも絶妙に素晴らしい邦題。バーヴァらしい原色を散りばめたビジュアルの美しさもさる事ながら、荘厳なゴシックムードの中にSMチックなエロティシズムを絡めた繊細なストーリーも見事。まるで文芸映画のような気品すら漂わせているのは、イタリアン・ホラーの父たるマリオ・バーヴァの面目躍如たるところだろう。
 で、作品内容に関してはこちらをご参照いただくとして、ここはブルーレイの中身について解説を。筆者はKino Lorber社による米国盤とOdeon Entertainment社による英国盤の両方を入手した。画質については、上記の「ブラック・サバス/恐怖!三つの顔」と同様に、米英それぞれ一長一短ある。

 まずは米国盤なのだが、オープニング・クレジットが古いVHSテープ並みにボヤけているため、これはもしやして…?と大きな不安が胸を過ぎったものの、本編に入ると画質は一変する。輪郭は十分にシャープだし、ディテールもきめ細やか。フィルム・グレインも自然な仕上がりだ。しかし…である。とにかく画面が暗い。ナイトシーンでも照明があればいいのだが、暗がりのシーンなんかは殆ど真っ黒になってしまうのだ。過去のVHSやDVDの画像を比べてみても、これが本来の正しい明るさだとは思えない。おかげで、テクニカラーの鮮明な色彩も十分に再現されているとは言えず。役者の肌の色合いも全体的に青みがかっている。
 一方の英国盤はというと、こちらもオープニングのクレジットがボケボケの画質で、米国盤と同じマスターを使っているのかなと思ったのだが、これが実は全くの別物だった。まず、本編の尺が米国盤よりも長い。実は本作の上映時間はイタリア公開版が約92分、ヨーロッパ公開版が約87分。この英国版はオープニング・クレジットこそフランス語だが、実際の本編はイタリア公開版と同一なのだ。ただし、イタリア公開版に残されたシーンというのは、いずれも尺を伸ばすためだけに加えられたような代物ばかりなので、長いから良いってわけでもないのだけれど。
 さらに、英国盤BDの方が若干ではあるが全体的に画面が明るく、色合いも米国版に比べて暖かい。暗すぎてよく見えない…という問題はナシだ。ただ、その代わりにフィルム・グレインが米国盤よりもキツく、パッと見の印象ではシャープネスに少しばかり欠けている。
 そんなわけで、本編の映像に関してだけ言うと、米国盤がシャープできめ細かいけれど暗すぎて見づらい、英国盤は本編が長くて多少明るめだけれど微妙に粗い…といった感じで、それぞれに長所と欠点が見受けられるのだ。

 音声については、米国盤も英国盤もイタリア語、英語、フランス語の3バージョンを収録しているが、米国盤が非圧縮のリニアPCMモノラルであるのに対して英国盤はドルビー・デジタル・モノラル。ただ、どちらも若干こもって聞こえるもののセリフの聞き取りには全く支障がないという点で、あまり大きな違いは感じられなかった。
 特典映像は英国盤の方が豊富。ティム・ルーカスによる音声解説は米国盤と全く同じだが、こちらはさらに俳優でありホラー映画の研究者でもあるジョナサン・リグビーの作品解説的なインタビューが収録されている。クリストファー・リーとも友人だという彼は、英国ホラーとイタリアン・ホラーの接点をキーワードに、ホラー映画史的な観点から本作の制作背景や見どころを紐解いており、なかなか面白くて参考になる内容だ。
 さらに、クリストファー・リーのキャリアを丁寧に振り返ったイギリスのテレビ特番「Interview with Christopher Lee」も収録。「白い肌に狂う鞭」とは直接関係のないドキュメンタリーだが、リー自身のコメントもたっぷりと取材されており、これはこれでファンならば是非とも見ておきたい番組だと言えよう。

 

 

モデル連続殺人
Blood and Black Lace (1964)

BLOOD_BLACK_LACE.JPG
(P)2015 Arrow Video (UK)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(英国盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.66:1/HD規格: 1080p/音声:1.0ch リニアPCM MONO/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:A・B/89分/制作国:イタリア・フランス・モナコ

<パッケージ仕様>
・リバーシブルジャケット(2種類)
・フルカラーブックレット(40p)

<特典>
・映画評論家ティム・ルーカスによる音声解説
・メイキング・ドキュメンタリー「Psycho Analysis」
・エレーヌ・キャテ&ブルーノ・フォルザーニ インタビュー
・短編映画「Yellow」
・ヴィジュアル・エッセイ「Gender and Giallo」
・ダリオ・アルジェント×ランベルト・バーヴァ×スティーヴ・デラ・カーサ対談
・テレビトークショー「The Sinister Image: Cameron Mitchell」
・アメリカ公開版オープニング
・オリジナル劇場予告編
監督:マリオ・バーヴァ
製作:マッシモ・パトリーツィ
   アルフレド・ミラビーレ
脚本:マルチェロ・フォンダート
   ジュゼッペ・バリーラ
   マリオ・バーヴァ
撮影:ウバルド・テルツァーノ
音楽:カルロ・ルスティケッリ
出演:エヴァ・バルトク
   キャメロン・ミッチェル
   トーマス・ライナー
   アリアナ・ゴリーニ
   メアリー・アーデン
   レア・クルーガー
   クロード・ダンテ
   ダンテ・ディ・パオロ
   マッシモ・リーギ
   フランコ・レッセル
   ルチアーノ・ピゴッツィ

 ジャロの原点とされるスリラー映画「知りすぎた少女」('63)をモノクロで撮影したバーヴァが、いよいよテクニカラーの総天然色で挑んだジャロの金字塔が「モデル連続殺人!」だ。ローマの高級ファッション・サロンを舞台に、若くて美しい専属モデルたちが一人また一人と殺されていく。複雑に入り組んだ人間関係、そして巧みに散りばめられた容疑者たち。殺人トリックには若干無理が感じられるものの、ストーリーは全体的に上手くまとめられている。
 しかし、なによりも本作で傑出しているのはビジュアルだ。完璧に計算され尽くしたスタイリッシュなカメラワーク、赤や青や緑など原色カラーの照明をフル稼働した鮮烈な色彩、そして様々な趣向を凝らしたバラエティ豊かな殺人シーン。それはまさに、幻想的な異空間で繰り広げられるマーダー・ファンタジーだ。エキゾチックで艶かしいカルロ・ルスティケッリの音楽スコアをバックに、出演者たちがマネキンのごとくポーズを取るオープニング・クレジットからして悩殺もののカッコ良さ。リアリズムは徹底的に排除され、妖しくも退廃的な人工美がスクリーンを支配する。バーヴァはその総てを司る神だ。

 イタリアン・ホラーを語る上で欠かすことのできない傑作。アメリカでは過去に2度DVD化されているが、いずれも満足できるようなクオリティではなかった。まずはVCIエンターテインメントから発売された2000年版。画質そのものは、全体的に暗めだがまずまずの仕上がり。しかし、残念ながら画面アスペクト比が間違っており、両サイドが微妙にカットされてしまっていた。'02年発売の日本盤DVDも同一マスターを使用している。そこで、VCIは'05年にフレームサイズを正しく直した2枚組のリマスター版を改めてリリース。ところが、今度は画面全体の解像度が非常に粗く、細部が潰れてしまうという体たらく。とても観賞に耐えるような代物ではなかった。
 で、満を持してUKのArrow Videoから発売されたブルーレイなのだが、遂にというかようやくというか、期待をはるかに上回るほどの超スーパー高画質と断言して良かろう。35ミリのカメラ・ネガから2K解像度でテレシネが行われ、世界的な大手ポスプロ会社デラックスの開発した画像修復システムで入念なレストア処理が施された。ディテールのきめ細かさはもちろんのこと、滑らかで程よいグレインがフィルムらしい質感を際立たせる。深みのあるテクニカラーの色彩もゴージャス!再び左右が微妙に削られたフレームサイズは惜しまれるが、それ以外は文句のつけようがない仕上がりだ。
 モノラル音声はオリジナルの光学ネガより移植され、こちらもデラックス社のオーディオ修復システムにてリマスター作業が施されている。非圧縮のリニアPCMでエンコードされた音声は極めてクリア。セリフの輪郭もクッキリとして聞きやすいし、音楽スコアも重量感たっぷりに響き渡る。
 特典の目玉は55分に及ぶメイキング・ドキュメンタリー。後輩のダリオ・アルジェントや息子ランベルト、ジャロ映画の名脚本家エルネスト・ガスタルディ、イタリアの有名な映画評論家ロベルト・クルチらが、本作の見どころからジャロの魅力、そしてマリオ・バーヴァの功績まで幅広く語る。特に、他人の映画のメイキングに登場することなど滅多にないアルジェントのインタビューは貴重だ。
 また、アルジェントとランベルト・バーヴァ、評論家スティーヴ・デラ・カーサによる対談音声も興味深い。内容は正味11分程度なのだが、その大半が「インフェルノ」で特殊効果を担当したマリオの仕事ぶりについて。これまで殆ど語られたことのない撮影秘話ばかりで、いかにアルジェントがバーヴァ親子と固い信頼関係で結ばれてきたのかがよく分かる。
 バーヴァ研究の第一人者ティム・ルーカスによる音声解説も情報量が豊富。過去のDVD版でもルーカスの音声解説は収録されていたが、こちらは今回のブルーレイ用に録音された最新バージョンだ。さらに、ジョー・ダンテ監督が個人所蔵するアメリカ公開版のオープニング・クレジットも収録。オシャレ度優先のイタリア版とは一転し、いかにもホラーチックなおどろおどろしい仕上がり。これはこれで悪くないのだけれど、個人的にはやっぱりイタリア公開版の方が好き。ちなみに、こちらは上映用フィルムから2K解像度でテレシネされている。
 そのほか、ジャロ映画にオマージュを捧げた「The Strange Colour of Your Body's Tears」などで知られるフランスの監督コンビ、エレーヌ・カテ&ブルーノ・フォルザーニのインタビュー、タイトルもズバリなジャロ愛溢れるドイツの短編映画「Yellow」、そして本作の主演俳優キャメロン・ミッチェルが自身のB級映画人生を振り返る'87年放送のテレビのトーク番組などなど、ボリューム感たっぷりの特典が嬉しい。

 

 

バンパイアの惑星
Planet of the Vampires (1965)

PLANET_OF_VAMPIRES.JPG
(P)2014 Scorpion Releasing (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA STEREO/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/88分/制作国:イタリア・スペイン

<特典>
・映画評論家ティム・ルーカスによる音声解説
・オリジナル劇場予告編
・「Trailers From Hell」ジョー・ダンテ監督インタビュー
・「Trailers From Hell」ジョシュ・オルソン監督インタビュー
・原作短編小説(テキスト)
・スチル・ギャラリー
・音楽スコア別バージョン
・イタリア語版オープニング・クレジット
監督:マリオ・バーヴァ
製作:フルヴィオ・ルチサーノ
原作:レナート・ペストリニエーロ
脚本:イブ・メルキオール
   ルイス・M・ヘイワード
撮影:アントニオ・リナルディ
音楽:ジーノ・マリウッツィ・Jr.
出演:バリー・サリヴァン
   ノーマ・ベンゲル
   アンヘル・アランダ
   エヴィ・マランディ
   フランコ・アンドレイ
   イワン・ラシモフ

 ご存知、「エイリアン」('79)にも影響を与えたとされるSFホラーの大傑作。職人監督の常として、ホラー以外にも様々なジャンルを手がけていたバーヴァだが、実はSFのジャンルにも造詣が深かったらしい。イタリアで最初の本格SF映画とされる「天空の燃え尽きる日」('58)も、クレジットではパオロ・ハーシュが監督、バーヴァは撮影監督だったが、実際にはバーヴァが演出から特殊効果まで手がけており、そもそも企画自体の発案者が彼だったとも言われている。
 そんな彼にとって、唯一監督としてクレジットされたSF作品なわけだが、まずはダークでスタイリッシュでフェティッシュなビジュアルに目が釘付けとなる。60年代半ばでこのセンスは斬新という以外にないだろう。SOSの信号をキャッチして未知の惑星に降り立った人類の飛行士たちが、彼の地のエイリアンたちを死滅させた謎の生命体に遭遇する…というストーリーを含め、「エイリアン」とのあまりの類似性に驚かされるはずだ。
 さらに感心するのは、全編を通してオプチカル合成を一切使用していないこと。つまり、ポストプロダクションでの映像加工を全く行っていないのだ。例えば、通信モニターに映し出される映像はガラスの向こう側に本物の人間や物体がいるだけだし、惑星のミニチュアセットも鏡を使ったシンプルなトリックで大きく見せているだけ。ポストプロダクションにかかる余計な時間と経費を浮かせることが最大の目的だったろうことは想像に難くないが、しかし同時に、当時の原始的な合成技術をあえて使わなかったおかげで、はるかに見栄えの良い作品になったと言えよう。

 残念ながら、日本では'80年代にVHSで発売されたのみで、その後は一度もソフト化されないままという不遇な作品。アメリカでは過去にMGMが、特典なしのDVDを“Midnight Movies"シリーズの一環としてリリース。そして、このところスタジオ各社のバックナンバーを積極的にブルーレイ化しているキノ・ローバー社が、カルト映画専門のレーベル、スコーピオン・リリーシングと共同で、MGMの版権を持つ20世紀フォックスとライセンス契約を交わし、特典満載のブルーレイを発売したというわけだ。
 まずは本編映像なのだが、MGM版DVDとは雲泥の差と言い切っても良いくらいの見事な高画質。通信モニターがただのガラス張りであることがひと目で分かるくらい、ディテールのきめ細かさや質感の再現力が優れており、なによりもテクニカラーの濃厚な色彩が驚くほど鮮やか。これは恐らく、高解像度のテレシネと適切なカラコレの賜物だろう。
 一方、どうやらデジタル修復作業にまでは手間暇をかけられなかったらしく、フィルムの細かい傷やノイズはそのまま残されている。とはいえ、これもほとんど気にならないレベルだ。音声は2.0chのステレオ・リミックスをDTS-HD MASTER AUDIOにエンコード。こちらはヒスノイズやクリック音などの経年劣化がほぼ皆無で、セリフは一点の曇もないくらいに明瞭だし、音響効果にも十分な迫力と重量感がある。
 特典はボリューム感こそあれど、メイキング・ドキュメンタリーがないのはちと残念。確か、息子ランベルトは本作から父親の助監督を始めたので、彼のインタビューくらいは欲しかったところだ。その代わり、バーヴァ研究の第一人者である評論家ティム・ルーカスの音声解説は、撮影の舞台裏などの情報が満載。原作小説をフルでテキスト収録しているのも嬉しい。
 また、著名な映画監督が影響を受けた映画の予告編をバックに作品解説をするウェブシリーズ“Trailers from Hell”から、本作を取り上げたジョー・ダンテ監督とジョシュ・オルソン監督のエピソードを採録。さらに、実は本作は'80年代にビデオソフト化される際、著作権の問題でジーノ・マリウッツィ・Jrの音楽を使用できず、代わりにチープなテクノ音楽を差し替えていたのだが、今回はその別バージョンも特典で聴くことができる。

 

 

クレイジー・キラー/悪魔の焼却炉
Hatchet for the Honeymoon (1969)

HATCHET.JPG
(P)2012 Kino Lorber/Redemption (USA)
画質★★★★★ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/ 88分/制作国:イタリア・スペイン

<特典>
・映画評論家ティム・ルーカスの音声解説
・オリジナル劇場予告編
・マリオ・バーヴァ予告編集
監督:マリオ・バーヴァ
製作:マヌエル・カーニョ
脚本:サンチャゴ・モンカーダ
撮影:マリオ・バーヴァ
音楽:サンテ・マリア・ロミテッリ
出演:スティーブン・フォーサイス
   ダグマー・ラッサンダー
   ラウラ・ベッティ
   ヘスス・プエンテ
   ジェラルド・ティシー
   フェミ・ベヌッシ
   アントニア・マス
   ルチアーノ・ピゴッツィ

 マリオ・バーヴァ作品の中では特に賛否両論分かれる…というより、ぶっちゃけ評価の低い映画なのだが、恐らく彼のフィルモグラフィーの中で最もパーソナルな作品であり、事実バーヴァ自身が最も気に入っている作品の一本だったと言われる。前半は花嫁連続殺人鬼を描くスラッシャー物、後半は鬼嫁の幽霊に祟られるゴースト・ストーリーというチグハグな構成も不評の要因だと思われる。
 しかし、これは結婚生活の地獄を皮肉たっぷりに描いたシュールなブラック・コメディであり、改めてそういう観点から見ると大きく印象が変わるはずだ。その辺の詳細や紆余曲折を辿った撮影舞台裏についてはこちらを参照していただくとして、ここでは上記の米国盤ブルーレイのレビューを簡単にまとめておこう。

 日本では'80年代にVHSで発売されたまま、ブルーレイはおろかDVDですらリリースされたことのない本作。アメリカではインディペンデントの配給網で流通したせいでパブリックドメイン扱いになってしまい、これまで数多くの廉価版専門レーベルから粗悪な画質のテレビ放送版がDVDとして出回ってきたが、'00年にイメージ・エンターテインメントから唯一のオフィシャル版DVDが登場。'12年には、UKベースのカルト系レーベル、レデンプションが、キノ・ローバー社のマリオ・バーヴァ・コレクションの一環として米国盤ブルーレイを発売した。
 35ミリのオリジナル・ネガフィルムからのHDテレシネということで、きめ細やかな画質は文句のつけようナシ。主演スティーヴン・フォーサイスの、肌に滲んだ汗の一つ一つまでハッキリと見て取れるのは少なからず感動的だ。全体的にセピアがかったくすんだ色彩も、DVDだと色褪せているようにも感じられたが、ここではそれが本再意図された色調なのだということがよく分かる。
 ただその一方で、非圧縮のリニアPCMで収録された2.0chのモノラル音声は、残念ながら全体的にヒスノイズが目立つ。とりあえず、セリフの聞き取りに支障は全くないし、ラウンジ・ムードたっぷりの音楽スコアにも広がりと重量感はあるのだけれど、所々で聞こえてくるブーンというノイズ音はどうしても気になってしまうだろう。
 さらに、これはキノ・ローバー社版の「血ぬられた墓標」や「ブラック・サバス」にも共通するのだが、とにかく特典が寂しすぎる。バーヴァ研究の第一人者であるティム・ルーカスの音声解説は情報量が多くて勉強になるものの、あとは劇場予告編だけ、というのでは正直なところ物足りないんだよなあ…。

 

 

血みどろの入江
A Bay of Blood (1971)

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(P)2010 Arrow Video (UK)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(英国盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:1.0ch リニアPCM MONO/言語:英語・イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/84分(85分)/制作国:イタリア

<パッケージ仕様>
・リバーシブルジャケット(2種類)
・フルカラーブックレット封入(8p)

<特典>
・イタリア公開バージョン
・映画評論家ティム・ルーカスの音声解説
・ダルダノ・サケッティ インタビュー
・ジョー・ダンテ インタビュー
・ジャンロレンツォ・バッタリア インタビュー
・オリジナル劇場予告編集(エドガー・ライトの音声解説付き)
・ラジオ・スポット集
監督:マリオ・バーヴァ
製作:ジュゼッペ・ザッカリエーロ
原案:ダルダノ・サケッティ
   フランコ・バルベリ
脚本:マリオ・バーヴァ
   ジュゼッペ・ザッカリエーロ
   フィリッポ・オットーニ
   セルジョ・カネヴァーリ
撮影:マリオ・バーヴァ
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:クロディーヌ・オージェ
   ルイジ・ピスティッリ
   クラウディオ・ヴォロンテ
   ラウラ・ベッティ
   レオポルド・トリエステ
   イーザ・ミランダ
   クリス・アヴラム
   ブリジット・スケイ
   ニコレッタ・エルミ
   レナート・チェスティエ

 後の「13日の金曜日」('80)に多大な影響を与えたとされ、いわゆるボディ・カウント映画の原点とも呼ばれるバーヴァ後期の代表作。秋も深まる季節はずれの湖畔リゾートを舞台に、土地の相続権を巡る骨肉の争いが殺人へと発展し、やがて無関係の訪問者を含めた登場人物たちがお互いに殺し合い、最後には全員が無残な死を遂げてしまう。大胆な性描写やスプラッター描写など'70年代らしい下世話さを強調しつつ、バーヴァ独特の幻想的でスタイリッシュな持ち味も十二分に活かされ、シニカルな大人向けの残酷ファンタジーとして仕上げられている。
 本作は「クレイジー・キラー/悪魔の焼却炉」ですっかり意気投合したバーヴァと女優ラウラ・ベッティが、もう一度一緒に仕事をしようということで立ち上がった企画だったらしく、こちらでもラウラはエキセントリックな占い師役を怪演。他にも、ボンドガールとして有名なフランスのトップ女優クロディーヌ・オージェやマカロニ西部劇の名悪役ルイジ・ピスティッリ、戦前・戦中のイタリア映画界を代表する大物美人女優イーザ・ミランダ、ピエトロ・ジェルミ監督作品の常連としても知られる名脇役レオポルド・トリエステなど、バーヴァ作品としては異例とも言えるほどの豪華キャストが揃う。ムーディでラウンジ色の濃厚なステルヴィオ・チプリアーニの音楽スコアも素晴らしい。

 こちらも「クレイジー・キラー/悪魔の焼却炉」と同じく、アメリカではパブリック・ドメイン扱いになってしまったため、これまで数多くの粗悪な海賊版DVDが市場に出回ってきた。'00年になってイメージ・エンターテインメントが高画質のリマスター版オフィシャルDVDを発売し、'04年にはメイキング・ドキュメンタリーを収録したイタリア版DVDも登場。さらに、'10年には特典満載のUK盤ブルーレイがリリースされ、その翌年には同一内容のUK盤DVDもリリースされた。
 '12年にはキノ・ローバーから北米盤ブルーレイも登場したものの、こちらは特典がコメンタリーと予告編のみという質素な仕様。ちなみに、日本では'03年にパブリックドメイン素材を使用した画質の悪いDVDがリリースされた後、'12年になってようやく特典満載のUK盤を移植したリマスター版が陽の目を見たものの、残念ながらDVDのみでの発売、しかもインターナショナル・バージョンのみでイタリア公開のオリジナル・バージョンは未収録という中途半端な仕様だった。
 で、上記のUK盤ブルーレイ。メインとなるインターナショナル・バージョンは、全体的に色味こそ弱く感じられるものの、輪郭はしっかりとしているしディテールも非常にきめ細かい。'12年の日本盤DVDも同じマスター素材を使用しているわけだが、解像度の高いブルーレイの方が遥かになめらかだし、なによりもフィルムらしさが感じられる。1.0chのモノラル音声は広がりに欠ける分だけ平坦な印象は免れないが、ノイズや歪みなどの経年劣化は一切なし。セリフもクリアだ。
 一方、インターナショナル版よりも1分長いイタリア公開バージョンは、残念ながら古いイタリア盤DVDのマスターをそのまま移植したらしく、画質はあまりよろしくない。全体的に解像度が粗い上、画面のアスペクト比が横に引き伸ばされている。音声もブチブチと磁気ノイズが目立つ。ただ、こちらは2.0chのモノラル・ミックスなので、音楽スコアのレンジや重量感はインターナショナル版よりも優れている。
 特典映像の目玉は、原案を書いたイタリア産B級娯楽映画の名物脚本家ダルダノ・サケッティのインタビュー(約33分)、バーヴァの熱狂的ファンであるジョー・ダンテ監督のインタビュー(約12分)、そして当時バーヴァのカメラ助手だった撮影監督ジャンロレンツォ・バッタリアのインタビュー(約21分)の3本。中でも、バーヴァ、アルジェント、フルチのイタリアン・ホラー三大マエストロと仕事をしたサケッティのインタビューは、巨匠たちそれぞれの個性の違いや作風の特徴を鋭く分析していて興味深い。
 さらに、本作の熱烈なファンを自認するエドガー・ライト監督が、インターナショナル版およびアメリカ公開版のオリジナル劇場予告編を解説。こちらは、ウェブ・シリーズ“Trailers from Hell”からの採録だ。

 

 

処刑男爵
Baron Blood (1972)

BARON_BLOOD.JPG
(P)2012 Kino Lorber (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM MONO/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/98分/制作国:イタリア・西ドイツ

<特典>
・映画評論家ティム・ルーカスによる音声解説
・アメリカ公開版クレジットシーン
・オリジナル劇場予告編
・ラジオスポット集
・バーヴァ映画予告編集
監督:マリオ・バーヴァ
製作:アルフレド・レオーネ
脚本:ヴィンセント・フォートル
撮影:マリオ・バーヴァ
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:エルケ・ソマー
   ジョセフ・コットン
   マッシモ・ジロッティ
   アントニオ・カンタフォーラ
   ラダ・ラシモフ
   ウンベルト・ラホー
   ルチアーノ・ピゴッツィ
   ニコレッタ・エルミ

 ジャロやマカロニ・ウエスタン、アクションなど幅広く手を広げていたバーヴァが、「血ぬられた墓標」や「白い肌に狂う鞭」の頃のゴシック・ホラーに原点回帰した作品。秋の深まる美しい街ウィーンの古城を舞台に、呪文によって甦った中世の暴君クライスト男爵が人々を血祭りにあげていく。
 カラフルな照明やスモークを多用した、スタイリッシュで幻想的な画面構成はさすがバーヴァといった感じ。とはいえ、やはり映像の質感や空気感は'70年代のものであるため、どこか微妙なアンバランスさは否めない。これは当時のハマー・ホラーやAIPホラーにも共通する違和感だ。既に正統派ゴシック・ホラーが時代にそぐわなくなっていたのかもしれない。カルロ・ランバルディによる特殊メイクのグロさも全体的な雰囲気の中で浮いており、そこはかとない安っぽさを醸し出してしまう。そういう意味で、一抹の寂しさを感じさせる作品でもあると言えよう。
 また、主演女優エルケ・ソマーのオーバーアクトもマイナスポイント。やたらと悲鳴をあげてばかりでイラっとさせられる。グラマラスな肉体とコケティッシュなベビーフェイスのミスマッチで、'60年代にはハリウッドでも大人気を博した女優だが、どうしても演技が過剰気味になってしまうのがこの人の悪い癖。相当に気が強いんだろうなあとは思うのだが…。

 プロデューサーのイタリア系アメリカ人製作者アルフレッド・レオーネが自社ライブラリーのソフト化に積極的なこともあって、これまで何度もソフト化されてきた本作。なにを隠そう、筆者も最初にLDで買ったマリオ・バーヴァ作品は本作だった。DVDも'00年のイメージ・エンターテインメント版、'07年にリマスター版ボックスセットの一部として発売されたアンカー・ベイ版を所有。なんだかんだいって、お金をつぎ込んでいるなあ…(笑)。
 で、キノ・ローバー社よりリリースされたアメリカ盤ブルーレイ。35ミリのオリジナル・ネガフィルムからのHDリマスターだ。全体的にイメージはソフトなので、シャープ&クリアな高画質…とは言えないものの、それでもディテールのきめ細かさはひと目で分かる。肌のトーンも明るくてリアルだし、色彩も豊かで深みがある。部分的にフィルム・グレインは強めだが、過去のソフト化で最も高画質だった'07年のアンカー・ベイ版DVDと比べても格段に向上していると言えよう。
 一方、2.0chのモノラル音声は磁気ノイズなどの経年劣化が若干目立つ。セリフの聴きとりには全く支障ないものの、音響効果などはやや古ぼけて聴こえてしまうことは否めない。なお、音声はインターナショナル・バージョンの英語版のみで、イタリア語版および米国版は収録されていない。
 次に特典について。マリオ・バーヴァ専門家のティム・ルーカスによる音声解説は、旧アンカー・ベイ版DVDよりの移植。ロケ地の情報から息子ランベルトのカメオ出演シーンまで、詳細な解説はさすがといった感じだ。さらに、AIPが編集したアメリカ公開版のオープニングとエンディングのクレジットシーンも収録。こちらは音楽もレス・バクスターのものに差し替えられている。どうやらAIPの社長サミュエル・Z・アーコフはメロディアスなイタリアの映画音楽が趣味に合わなかったらしく、AIP配給のバーヴァ作品のアメリカ公開版は、本作を含めて全てオリジナルの音楽スコアは却下され、いかにもホラー映画!という感じのおどろおどろしくて分かりやすい、しかし聞き分けのつかないレス・バクスターの凡庸な音楽に替えられてしまった。ステルヴィオ・チプリアーニのイージーでスウィンギンなスコアは最高にお洒落なのだが、まあ、無粋なアメリカ人には理解できないのだろう。
 そのほか、オリジナル劇場予告編に3種類のラジオ・スポット、そしてバーヴァ作品の予告編集といった按配。キノ・ローバー社のブルーレイとしては毎度のことなのだが、いまひとつお得感に欠けるのだよね。

 

 

リサと悪魔(未公開)/新エクソシスト 死肉のダンス
Lisa and the Devil (1973)/The House of Exorcism (1974)

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(P)2012 Kino Lorber (USA)

リサと悪魔(未公開)
Lisa and the Devil (1973)

新エクソシスト/死肉のダンス
The House of Exorcism (1974)

画質★★★★☆ 音質★★★★☆ 画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM MONO/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/95分/制作国:イタリア・スペイン・西ドイツ

<特典>
・映画評論家ティム・ルーカスによる音声解説
・ランベルト・バーヴァ インタビュー
・オリジナル劇場予告編
・バーヴァ作品予告編集

ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM MONO/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/91分/制作国:イタリア・スペイン・西ドイツ

<特典>
・製作者アルフレド・レオーネと女優エルケ・ソマーによる音声解説
・オリジナル劇場予告編集
・ラジオ・スポット

監督:マリオ・バーヴァ
製作:アルフレド・レオーネ
脚本:マリオ・バーヴァ
   アルフレド・レオーネ
撮影:チェチリオ・パニアグア
音楽:カルロ・サヴィーナ
出演:エルケ・ソマー
   テリー・サヴァラス
   シルヴァ・コシナ
   アレッシオ・オラーノ
   ガブリエル・ティンティ
   エドゥアルド・ファヤルド
   エスパルタコ・サントーニ
   アリダ・ヴァリ
監督:ミッキー・ライオン
   (マリオ・バーヴァ
   アルフレド・レオーネ)
製作:アルフレド・レオーネ
脚本:アルベルト・チッティーニ
   アルフレド・レオーネ
撮影:チェチリオ・パニアグア
   マリオ・バーヴァ(追加撮影)
音楽:カルロ・サヴィーナ
出演:エルケ・ソマー
   テリー・サヴァラス
   ロバート・アルダ
   シルヴァ・コシナ
   アレッシオ・オラーノ
   ガブリエル・ティンティ
   エドゥアルド・ファヤルド
   カルメン・シルヴァ
   エスパルタコ・サントーニ
   アリダ・ヴァリ

 後期のバーヴァを代表する傑作でありながら、不幸な運命を辿ってしまった作品。もともと「Lisa and the Devil」というタイトルで製作され、カンヌ国際映画祭の試写でも高い評価を得たものの、なぜか配給会社の買い手がつかず。僅かにスペインで劇場公開されただけで、ほぼお蔵入り状態となってしまったのだ。製作費を回収できずに困り果てたプロデューサーのアルフレド・レオーネは、当時アメリカやイギリスで公開されたばかりの話題作「エクソシスト」に便乗し、追加撮影を行った改訂版「新エクソシスト/死肉のダンス」を制作したというわけだ。
 当初は猛反対していたバーヴァも、レオーネの必死の説得で追加撮影のカメラマンとして参加。しかし演出には一切タッチせず、「Lisa and the Devil」の映像の再編集にも関わることを拒んだという。そもそも、本作はバーヴァにとって、いろいろと波乱含みの映画だったと言われている。
 例えば、「Lisa and the Devil」ではシルヴァ・コシナとガブリエル・ティンティの全裸セックス・シーンがフューチャーされているが、これは製作者レオーネの強い意向で用意されたシーンだった。しかし、性描写に関して非常に保守的なバーヴァは断固として撮影を拒否。そのため、レオーネが自ら演出を担当した。また、「新エクソシスト/死肉のダンス」用の追加撮影では基本的にカメラマンとして現場にいたバーヴァだが、エルケ・ソマーが悪魔に取り憑かれるシーンと服をはだけるシーンは、不愉快だとして撮影に立ち会わなかったという。実は敬虔なカトリック信者だったバーヴァにとって、宗教とセックスは最大の鬼門だったようだ。
 ひとまず、両作品の違いを簡単に説明しておこう。スペインを訪れたアメリカ人女性リサが街を散策しているうちにパラレル・ワールドへ迷い込み、ひと晩の宿を求めた豪邸で摩訶不思議な体験をするというのが「Lisa and the Devil」。まるで日本の怪談のような、美しくも切ないシュールな怪奇譚だ。
 一方の「新エクソシスト/死肉のダンス」では、リサが悪魔に取り憑かれて悪魔祓いの儀式を受けるという大枠の設定が新たに追加され、全ては悪魔に憑依されたリサの見た夢だったというオチが付けられてしまった。そのせいで「Lisa and the Devil」の映像美は大幅にカットされ、その代わりに即席で撮られたチープな追加シーンが幻想ムードまでをもぶち壊すことに。カルロ・サヴィーナの音楽スコアも、前者ではメロウで艶かしいラウンジ・ミュージックでいい雰囲気を盛り上げていたのだが、後者ではいかにもホラーチックな別バージョンへ差し替えられてしまった。なんだか、アルフレド・レオーネの商売人としても悪い面が出てしまったように思える。

 で、本作も「処刑男爵」同様に幾度となくソフト化されてきたわけだが、とりあえず米アンカー・ベイから'07年にリリースされたボックスセットに収録のリマスター版DVDが、画質・音質共にこれまでで最高の仕上がりだった。上記の北米盤ブルーレイは、両作品とも35ミリのオリジナルネガから新たにHDリマスターを施したとのことだが、しかし見たところの印象はアンカー・ベイ版DVDと殆ど変わらない。つまり、ブルーレイだから更にアップグレードしているに違いないと期待すると、ちょっとガッカリさせられてしまうことになる。
 全体的にソフトフォーカスがキツく、部分的にだけれどフィルム・グレインも濃いめ。アンカー・ベイ版DVDよりも色彩は明るめだが、そのせいで輪郭がより一層甘くなってしまったように思える。一方、音声は若干の経年劣化が見受けられるものの概ね良好だ。
 特典の音声解説は、どちらもアンカー・ベイ版DVDからの移植。紆余曲折した撮影の舞台裏を語るアルフレド・レオーネとエルケ・ソマーの音声解説はファン必聴だ。さらに、'04年に撮影されたランベルト・バーヴァ監督のインタビュー映像も収録。正味18分程度の短いものだが、祖父の代から始まる映画ファミリーの歴史を雄弁に語って興味深い。

 

 

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