Dario Argento on Blu-ray

 

 

 思い返せば、ブルーレイ対HD-DVDの“次世代ビデオ戦争”が集結してそろそろ約5年。規格競争に勝ち残ったブルーレイではあるものの、今なお一般家庭に十分普及したとはちょっと言い難いだろう。日本でも欧米でも、リリースされるタイトルのメインは依然としてDVD。中小のメーカーにおいては、いまだブルーレイ発売に至っていないところや、新作タイトルのブルーレイ版を減らしてしまったところまである。
 そもそも、ユーザーの一人として言わせてもらえれば、フルハイビジョンの高画質で見る価値のある作品でなければDVDで十分。なので、個人的に思い入れの強い映画であればブルーレイで手に入れるものの、そうでなければ価格の安いDVDを迷うことなく選ぶ。DVDだってタイトルによるとはいえ、よっぽどの大型テレビで見ない限りは十分に高画質だし。それよりも、過去に何度も何度もソフト化してきたようなタイトルばかりをいちいちブルーレイ化する暇があるなら、まだまだオフィシャルでDVD化されていない隠れた名作が山のようにあるのだから、そっちをさっさと出してくれと思ったりするのだけどね、映画ファンとしては。
 そうした中で、筆者の敬愛するダリオ・アルジェント作品のブルーレイ版もポツポツとタイトルが揃ってきた。やはり天下のビジュアリストたるアルジェントの作品は、フルハイビジョンの高画質でこそ真価を発揮するもの。そこで、今回は筆者の所有するアルジェント作品のブルーレイを独断と偏見でレビューなんぞしてみたい。

 

歓びの毒牙
The Bird with the Crystal Plumage (1969)

BIRD WITH CRYSTAL.JPG
(P)2011 Arrow Films (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(UK盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2 : 1/HD規格:10
80p/音声:LPCM モノラル/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:ALL/96分/製作:イタリア・西ドイツ

<パッケージ仕様>
ジャケット4種類(リバーシブル)
フルカラー・ブックレット(16p)
復刻版特大ポスター(リバーシブル)封入
<特典映像>
ルイジ・コッツィ インタビュー
セルジョ・マルティーノ インタビュー
ダリオ・アルジェント インタビュー
評論家キム・ニューマン&アラン・ジョーンズによる音声解説
監督:ダリオ・アルジェント
製作:サルヴァトーレ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:トニー・ムサンテ
   スージー・ケンドール
   エンリコ・マリア・サレルノ
   エヴァ・レンツィ
   ウンベルト・ラホー
   マリオ・アドルフ

 記念すべきアルジェントの処女作。あっという間に廃盤となってしまった米Blue Underground版BDを買い逃したため、こちらの英Arrow Films版を入手。Arrow Filmsお得意の豪華仕様パッケージは大変魅力的なのだが、肝心の内容についてはいろいろと不満の残る仕上がりだ。
 もちろん、映画そのものに文句は一切ない。ジャーロ・ブームの到来を決定づけた金字塔的大ヒット作であり、当時29歳だったアルジェント監督のほとばしる才気を存分に感じさせてくれる猟奇スリラーの傑作である。ただ、本BDにおいて最大の問題点はその画質だ。ぶっちゃけ、過去のDVD版とほぼ大差がない。オリジナル・ネガから新たにレストアをし直しているらしいが、映像は全体的に霞がかった感じだし、暗いシーンでは輪郭がすっかり滲んでしまっている。DVD版の難点がそのまま引き継がれてしまったという印象だ。確かに明るいシーンにおける人間の肌や小道具などの質感はDVDよりもきめ細かくなっているものの、それでもよーく注意して見ていないと分からない。恐らく原版フィルムそのものが経年劣化しているのだろう。こればかりは仕方がないとはいえ、ブルーレイに期待するものが大きいだけに裏切られた感は否めない。
 さらに、音声がイタリア語版、英語版共に非圧縮のリニアPCMなのはいいのだけど、これまたソースとなるモノラル音声のクオリティがあまり良くない。そのため、原音の弱点がそのまま再現されてしまっている感じ。音声に関しては、DTS-ESおよびドルビー・デジタル・サラウンドEXにリミックス処理を施していたDVD版の方が断然良かった。米Blue Underground版BDはこのDVD版音声仕様を移植しているらしいので、改めて買い逃したことが悔やまれる。
 また、本Arrow Films版BDは画面比の仕様についても賛否が分かれることだろう。というのも、劇場公開時の画面比は2.35 : 1なのだが、それをこのBDでは2 : 1に縮めてしまっている。つまり、僅かではあるものの画面両サイドをカットしてしまったのだ。なぜそんなことをしたのかというと、どうもこれが撮影監督ヴィットリオ・ストラーロ本人の意向だったらしい。彼自身の命名したユニヴィジアムというこのサイズこそ、本作に最もふさわしい画面比なのだとか。それはそれで尊重すべきなのかもしれないが、やはり映画ファンとしてはオリジナル・サイズで鑑賞したいというのが正直な気持ち。せめて画面比を選べるようなオプションを付けて欲しかった。
 最後に特典映像についても触れておこう。まずは、アルジェントの盟友であるルイジ・コッツィのインタビュー。本作はまだ2人が出会う前に撮影された映画なのだが、当時雑誌記者だったコッツィは本作を見てアルジェントに強く惹かれ、取材を通して彼と親交を深めることになった。このインタビューでは、そんな第3者としてリアルタイムを知る彼ならではの視点から、本作のイタリア映画界へ与えた影響や当時の世相などが詳しく語られていく。なかなか興味深いインタビューではあるのだが、惜しむらくは画質の悪さだろうか。撮りおろしであるはずにも関わらず、まるで古いビデオテープを見ているかのような粗い画面は非常に見苦しい。
 次に、アルジェントと同世代の映画監督セルジョ・マルティーノのインタビュー。アルジェント作品に影響されたジャーロ映画の傑作を数多く撮ったマルティーノが、同業者としての視点からアルジェントの偉大さを語っている。とはいえ、しっかりと自作のアピールも忘れてはいないのだけれど(笑)。
 そして、やはり欠かせないのはアルジェント監督自身のインタビュー。しかしながら、これが内容的に一番物足りなかった。なにしろ正味10分程度という非常に短いインタビューで、話しの中身も通り一辺倒。これまで様々な文献で明かされてきたお馴染みの裏話を手短に語っているだけで、作品に対する監督ならではの深い考察や具体的な撮影の思い出話などは一切なし。聞き手側がどのような質問を用意していたのか定かではないが、これはちょっと頂けない。
 そんなこんなで、特典映像を含めて全体的に欠点の多いUK盤BD。お財布に余裕のある方ならば、米Blue Underground版をプレミア価格で購入したほうが良いのかもしれない。とかなんとか言いつつ、かつて本作の初DVD化を実現した実績のある米VCI Entertainmentが新しくリマスター版BDをリリースするとの情報もあるので、なるべく無駄遣いを避けたい筆者はそちらを待つつもりなのだけれど…。

 

私は目撃者
The Can O'Nine Tails (1970)

CAT O NINE TAILS.JPG
(P)2011 Arrow Films (UK)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
ブルーレイ仕様(UK盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35 : 1/HD規格:
1080p/音声:LPCM モノラル/言語
:英語・イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/111分/製作:イタリア・フランス・西ドイツ

<パッケージ仕様>
ジャケット4種類(リバーシブル)
フルカラーブックレット(12p)
復刻版特大ポスター(リバーシブル)

<特典映像>
ダリオ・アルジェント インタビュー
セルジョ・マルティーノ インタビュー
ルイジ・コッツィ インタビュー
イタリア版オリジナル劇場予告編
監督:ダリオ・アルジェント
製作:サルヴァトーレ・アルジェント
脚本:ダルダノ・サケッティ
   ダリオ・アルジェント
撮影:エンリコ・メンツェール
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジェームズ・フランシスカス
   カール・マルデン
   カトリーヌ・スパーク
   ピエル・パオロ・カッポーニ
   ホルスト・フランク
   ラダ・ラシモフ
   シンツィア・デ・カロリス

 処女作「歓びの毒牙」の全米興行収入1位という予想外の大ヒットを受け、アメリカの配給会社からの要請もあって矢継ぎ早に製作された2作目。そのような事情もあってなのか、はたまたジェームズ・フランシスカスにカール・マルデンというハリウッド・スターを主演に迎えたためなのか、アルジェント作品にしてはかなりアメリカ映画っぽい仕上がりだ。バラエティ豊かでユニークな殺人シーンの計算しつくされた演出にはアルジェントらしさを感じるものの、それでも全体的にはちょっとインパクトの弱い作品かもしれない。アルジェント本人も“これは自分らしくない映画だからあまり好きじゃない”と公言しているわけだし。
 で、とりあえず米Blue Underground盤BDと英Arrow Films盤BDは画質的にほぼ一緒という信頼できる筋の情報を得たことから、特典映像のより豊富なUK盤をチョイス。なのでUS盤は未見のため比較できないものの、少なくともこのUK盤の画質についてはまずまずの合格点といったところだろうか。そもそも、過去にリリースされた米Anchor Bay版DVDと米Blue Underground版DVDの画質そのものが非常に良好だった。なので、この英Arrow Films版BDがそれらと比較して飛躍的な画質の向上を遂げたとは必ずしも言えないし、原版フィルムに起因する粒子のムラも随所でチラホラと散見されるのだが、その一方で情報量において勝るブルーレイというフォーマットなだけに、少なくともディテールの細やかな再現力に関してはDVDの追随を許さない。同時代に作られたハリウッド・メジャー・スタジオ作品と同等のクオリティさえ求めなければ、十分に満足のいく見栄えの良さだ。
 ただ、残念ながら上記の「歓びの毒牙」と同様に、リニアPCMの音質はあまり良くない。特にイタリア語音声はヒスノイズや音割れが頻繁だ。US盤はDTS-HDとドルビー・サラウンドへのリミックス処理が施されているようだが、こちらのUK盤は原版のモノラル音声をそのまま非圧縮で収録している。なので、クリアな音質にこだわるのならばUS盤を選ぶほうが賢明かもしれない。
 そして特典映像。「歓びの毒牙」ではあまり多くを語らなかったアルジェント監督だが、本作のインタビューでは一転して、自己批判を含めた作品分析を雄弁に語っている。個人的には、アルジェントも大ファンだったというカール・マルデンについての想い出なども興味深かった。一方、セルジョ・マルティーノ監督のインタビューについては、内容的に「歓びの毒牙」の特典とさほど違いはない。あくまでも話している内容についてだけれど。ただ、アルジェントが自作の「影なき淫獣」の墓地シーンをコピーしたという下りは、確かになるほどとは思わせられるものの、次に紹介する「4匹の蝿」の特典映像でルイジ・コッツィが完全否定している。
 で、そのルイジ・コッツィのインタビューだが、当時アルジェントと親交を深め始めたばかりだった彼は本作の製作過程を間近で見ていたということもあり、客観的な立場から当時の詳細な想い出を豊富に語っている。若かりし頃の才気ほとばしるアルジェントの素顔を知る上で、とても参考になるインタビューだといえよう。

 

 

4匹の蝿
Four Flies on Grey Velvet (1971)

FOUR FLIES.JPG
(P)2011 Shameless (UK)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(UK盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35 : 1/HD規格:
1080p/音声:2.1DTS HD AUDIO, DOLBY 2.0/言語:英語・イタリア語
/字幕:英語/地域コード:ALL/103分
/製作:イタリア・フランス

<特典映像>
ルイジ・コッツィ インタビュー
英語版クレジットシーン
イタリア版オリジナル劇場予告編
英語版オリジナル劇場予告編
フォト・ギャラリー
監督:ダリオ・アルジェント
製作:サルヴァトーレ・アルジェント
脚本:ルイジ・コッツィ
   ダリオ・アルジェント
   マリオ・フォリエッティ
撮影:フランコ・ディジャコモ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:マイケル・ブランドン
   ミムジー・ファーマー
   バド・スペンサー
   ジャン=ピエール・マリエール
   フランシーヌ・ラセット

 アルジェント作品の中では、恐らく「ビッグ・ファイブ・デイ」に次いで最も知名度の低い映画であろう。著作権を持っているのが当時の配給元パラマウントなのかどうなのかハッキリとしなかったこともあり、長いことリバイバル上映はおろかビデオソフトの発売すらされていなかったのだから仕方あるまい。自分も15年ほど前にヨーロッパの海賊版ビデオでようやく見ることができた。もちろん画質は荒れ放題だったが、それでも監督3作目にして更なる進化を遂げたアルジェントの斬新な映像テクニックに感嘆したものだった。ホラー映画ファンの間では必ずしも評価の高い作品ではないし、確かに荒唐無稽なストーリー展開は賛否両論あって当然だろうとは思うが、実験性に富んだアルジェントの演出は冴え渡って刺激的だ。
 そんな“幻の作品”だった本作なのだが、2007年頃から
イタリアに本社を置くNo ShameというメーカーがDVDをリリースするらしいという噂が立ち上がった。しかも未公開シーンを含むノーカット版だということでファンの期待はいやがおうにも高まった…のだが、このNo Shameという会社が'08年に突然倒産。このまま「4匹の蠅」の初オフィシャル・ソフト化は立ち消えになってしまうのかと案じていたところ、Mya Communicationというアメリカのイタリア映画専門メーカーがNo Shameのカタログを引き継ぐということが判明し、2009年2月にようやくDVDリリースされたのだった。
 ところがこのMya Communication版DVD、実は厳密に言うとノーカット・バージョンではなかった。というのも、原版フィルムの傷みが激しい部分を取り除いたところ、合計で30秒ほど尺が短くなってしまったのだ。なので、本来は上映時間が103分+αあるべきところが102分強になってしまった。とはいえ、画質はDVDソフトとして十分なクオリティだったし、なによりもようやく真っ当な画質で「4匹の蠅」を見ることができるというのは非常に有難かったのだけれど。なお、その肝心の未公開シーンというのがどんなものなのかというと、要は犯人の動機説明が40秒ほど長くなったというだけ。この部分はイタリア語版しか存在しないため、英語の音声トラックを選択した場合は強制的にイタリア語音声&英語字幕に切り替わる。冷静になって考えれば、それほど重要なシーンではない。
 で、本作の劇場公開40周年を記念する形でリリースされたのが、上記のUK盤ブルーレイ。これはもう、全アルジェント・ファン必携の決定版と言って良かろう。なによりもまず画質が素晴らしい。Mya Communication版DVDの画質も十分に綺麗だったが、このBDではさらに一皮むけたような質感で輪郭も色彩も鮮明。暗闇のシーンで若干ボヤつきがあるものの、それ以外はまるで新作映画のようにクリアな映像だ。しかも、DVDでは修復できなかったフィルムの傷も完璧に取り除かれており、尺数も103分+αという正真正銘のノーカットを実現している。
 驚いたのは、クライマックスのスローモーション撮影されたカークラッシュ・シーンでガッツリと出てくる横線まで取り除いている点だ。実はこのシーン、当時の35mmカメラではアルジェントの意図する映像が撮れなかったため、科学実験用の超高速カメラを使って撮影されている。で、このカメラの仕様上どうしても画面のど真ん中に横線が入ってしまうのだ。ただ、これが極めてショッキングかつユニークなシーンに仕上がっているため、意外にも見ていて気になったりはしない。指摘されてみて初めて、そういえば横線入っていたっけ?と気付くくらいのものなのだが、このUK盤BDではこの横線を丁寧に取り除いた上でちゃんと画面比に収まるよう編集されているのだ。まあ、よーく見るとその部分がカットされていることは丸分かりなのだが、全体的な仕上がりとしては自然な印象を受ける。メーカー側の力の入れようが分かろうというものだ。
 さらに、2.1チャンネルのDTS HDにリミックス処理された英語音声、およびドルビーの2チャンネル・モノラルに圧縮処理されたイタリア語音声もすこぶる良好。DVDではセリフなどが若干こもって聞こえたが、このBDではモリコーネの音楽スコアも含めて音のメリハリがしっかりとしている。特に英語音声のモノラルでありながらも立体感と奥行きのあるサウンドは全く古さを感じさせない。
 特典映像では脚本にも参加した助監督ルイジ・コッツィのインタビューがとてもいい。アルジェント関連の文献でも言及されることが少ない本作について、企画の立ち上がりからキャスティング選考、撮影の裏話に至るまで、実に詳細な情報をコッツィが語ってくれる。当時のマカロニ西部劇スターだったバド・スペンサーがなせ本作に出演したのか、マイケル・ブランドンやミムジー・ファーマーの起用に関するちょっとユニークな経緯、コッツィが間近で見たアルジェントのストーリー構成の秘密など、ファンなら興味津々の話題が盛り沢山だ。特に、ディープ・パープルが本作のために実際にスコアのレコーディングまでしていたというのは驚きだし、そのトラックをボツにしてモリコーネを起用せざるを得なかった大人の事情についても具体的に言及されているのは目からウロコだった。
 さらに、画質的に劣る英語バージョンのクレジット部分のみが特典として収録されている。これはDVDにも入っていたのだが、本BDでは文字のない部分にイタリア語バージョンの綺麗な映像を挿入するなどの工夫が施されている。また、イタリア語と英語それぞれのオリジナル劇場予告編も画質はかなり良好。フォト・ギャラリーではスチル写真の他に世界各国の宣伝ポスターも見ることができる。

 

 

サスペリア PART 2
Deep Red (1975)

DEEP RED.JPG
(P)2011 Blue Underground (USA)
画質★★★★☆ 音声★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35 : 1/HD規格:
1080p/音声:7.1 DTS-HD, 5.1 Dolby Digital Surround EX, Mono
/言語:イタリア語・英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:
ALL/105分(英語版)・126分(イタリア語版)/製作:イタリア

<特典映像>
メイキング・ドキュメンタリー(アルジェント監督、ベルナルディーノ・ザッポーニ、ゴブリン出演)
アメリカ版オリジナル劇場予告編
イタリア版オリジナル劇場予告編
ゴブリン音楽ビデオ
デモニア音楽ビデオ
監督:ダリオ・アルジェント
製作:サルヴァトーレ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
   ベルナルディーノ・ザッポーニ
撮影:ルイジ・クヴェイレル
音楽:ゴブリン
   ジョルジョ・ガスリーニ
出演:デヴィッド・ヘミングス
   ダリア・ニコロディ
   ガブリエル・ラヴィア
   マーシャ・メリル
   クララ・カラマイ
   グラウコ・マウリ
   エロス・パーニ

 これぞアルジェントの最高傑作と見る人も多かろう。ビジュアル的にもストーリー的にも非の打ち所のない傑作ジャーロ。巨匠フェリーニのコラボレーターとして有名なベルナルディーノ・ザッポーニを脚本に迎えたことで、それまでビジュアリストとしては評価が高かったものの、ストーリーテラーとしてはいま一歩だったアルジェントの欠点が見事に補われたと言えよう。
 この米Blue Underground版BDは、アメリカ公開版の105分バージョンとイタリア公開版の126分バージョンの両方を収録。それぞれ微妙に画質のクオリティが異なる。まずはアメリカ公開版。これがほぼ完璧に近い高画質で、その質感といいシャープネスといい、まるで出来立てホヤホヤの新作映画みたいだ。ただし、これは原版フィルムに起因するものと思われるが、一部でかなり画像粒子の粗いシーンが存在する。恐らくフィルムそのものが部分的に経年劣化しており、修復しきれなかったのであろう。本当に僅かではあるのだが、これさえなければ完璧だったろうと思う。
 一方、イタリア公開版は全編を通して画質が非常に安定しているものの、これまた原版フィルムの状態が原因なのだろうが、全体的にうっすらとフィルムの粒子みたいなものが浮き出ている。これまた修復作業ではどうにもならない根本的な問題なのかもしれない。ブルーレイに比べて解像度の粗いDVDではあまり気にならなかったのだが、BDではフルハイビジョンゆえにかえって強調されてしまったのだろう。キズやホコリなどは一切取り除かれているし、映像そのものの質感も輪郭も発色も全く文句のないレベルであるだけに、ちょっと残念な印象は否めない。まあ、あくまでも個人的な感想であり、恐らく気にならない人は気にならないのだろうと思うのだが。
 音声は英語版、イタリア語版共に、7.1chチャンネルのDTS-HDおよび5.1チャンネルのドルビー・サラウンドEX、モノラルの3種類から選べる。DVDの時の5.1チャンネル・サラウンドはどうも線が細くて迫力に欠ける印象だったが、こちらは重量感も奥行もしっかりとあって貫禄充分。ゴブリンの不気味なスコアが効果テキメンだ。
 惜しむらくは特典映像の物足りなさ。メイキング・ドキュメンタリーは旧Anchor Bay版DVDからの流用で、尺も10分程度なもんだから情報量も少ない。せっかくのBDリリースなのだから、新たなメイキングを制作しても良かったのではないかと思う。で、今回の初お披露目映像は元ゴブリンのクラウディオ・シモネッティが結成したロック・バンド、デモニアによるテーマ曲のカバー・バージョン。セルジョ・スティヴァレッティが演出を手がけた音楽ビデオで、本編の殺人シーンをバンド・メンバーがほぼ忠実に再現している。これはこれで結構面白い。
 ちなみに、2010年に発売された英Arrow Films版BDはアルジェント監督やダリア・ニコロディ、クラウディオ・シモネッティらの最新インタビューなど特典映像盛りだくさんの2枚組なのだが、映像のクオリティに関してはブーイングの嵐だった。さすがに特典映像のためだけに買う気にはなれなかったのだが、懐に余裕のある方はぜひ…(^^;

 

 

サスペリア
Suspiria (1977)

SUSPIRIA.JPG
(P)2010 King Records (Japan)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35 : 1/HD規格:
1080i/音声:5.1ch True HD, Dol
by Digital Stereo, Dolby Digital M
ono/言語:英語・イタリア語・日本語/字幕:日本語/地域コード:A/99分/製作:イタリア

<特典映像>
オリジナル予告編
バタリアンズ(山口雄大監督、井口昇監督)による音声解説
監督:ダリオ・アルジェント
製作:クラウディオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
   ダリア・ニコロディ
撮影:ルチアーノ・トヴォリ
音楽:ゴブリン
出演:ジェシカ・ハーパー
   ステファニア・カッシーニ
   ジョーン・ベネット
   アリダ・ヴァリ
   フラヴィオ・ブッチ
   ウド・キアー
   ミゲール・ボセ

 アルジェント監督最大のヒット作であり、いわゆる“魔女3部作”の第1弾となった大傑作。ご都合主義だらけのストーリーには批判もあろうとは思うが、この色彩の洪水ともいうべき圧巻の映像美は、脚本の欠点を補って余りあるといえよう。まさにブルーレイで鑑賞するにはうってつけの傑作。本国イタリアやイギリスなど各国でBD発売されているものの、その中で最も画質的に評価の高い日本盤を購入した。
 そのハイクオリティな映像は期待以上。かつて米Anchor BayからリリースされたDVD(日本では紀伊国屋版が同一マスターを使用)も十分すぎるくらいにハイクオリティだったし、実際にBDと見比べても大きな差があるようには感じられないが、それでもこのBDはさらに解像度がきめ細かくなった分だけリアルな再現力を発揮している。DVDでは気づきにくかった細部のディテールもハッキリ。今から35年前に作られた映画とは思えないくらいの高画質だ。ただし、この日本盤BD、実はHDの表示方式が1080i、つまりインターレース方式を採用しているため、厳密に言うとプログレッシブ方式に比べて画質がワンランク下がる。とはいえ、人間の肉眼ではほとんど分からないのだけれど。
 一方、音声には若干の不満が残る。とりあえず英語音声は5.1チャンネルのTrue HD、イタリア語音声はドルビー・デジタル・ステレオ、日本語吹替音声はドルビー・デジタル・モノラル。決して音質的に悪いというわけではないのだが、なにしろ旧Anchor Bay版DVDの6.1チャンネルDTS-ESとドルビー・サラウンドEXの完成度が高すぎた。特に6.1チャンネルの包み込むようなサラウンド感とズッシリとした重量感は格別で、あれと比べてしまうとこの日本盤BDの5.1チャンネルは大人しすぎるというか、どうも迫力に欠けてしまうのだ。この点に関しては、旧盤DVDに軍配が上がるだろう。
 しかし、この日本盤BDにとっての最大の弱点は特典映像である。ぶっちゃけ、ほとんど無いに等しい。オリジナル予告編はアメリカ公開版だけ。DVDではインターナショナル版も入っていた。悪趣味なアメリカ公開版よりもスタイリッシュでカッコよかったのだが。それ以外にも、DVDでは52分に及ぶメイキング・ドキュメンタリーやラジオ・スポット集、フォト・ギャラリーなど特典映像が豊富だった。山口監督と井口監督のコメンタリーはそれなりに面白いものの、正直なところ一度聴けばそれで十分。当事者のコメントではないので資料的価値もない。ちなみに、英Nouveaux Pictures版BDには35分と40分のメイキング・ドキュメンタリーを、伊CDE版BDはアルジェント監督のインタビューを、仏Wild Side Video版BDはアルジェント監督に加えて撮影監督ルチアーノ・トヴォリや美術監督ダヴィデ・バッサンらのインタビューなど12種類の特典映像を収録しているようだ。ん〜、どうしよう(笑)。

 

 

インフェルノ
Inferno (1980)

INFERNO.JPG
(P)2011 Blue Underground (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85 : 1/HD規格:1
080p/音声:7.1 DTS-HD, 5.1 Dol
by Digital Surround EX, Dolby Su
rround 2.0, Mono/言語:英語・イタリア語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:ALL/製作:イタリア

<特典映像>
リー・マクロスキー インタビュー
アイリーン・ミラクル インタビュー
ダリオ・アルジェント&ランベルト・バーヴァ インタビュー
オリジナル劇場予告編
アルジェント監督によるイントロ
監督:ダリオ・アルジェント
製作:クラウディオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
撮影:ロマーノ・アルバーニ
音楽:キース・エマーソン
出演:エレオノラ・ジョルジ
   リー・マクロスキー
   ガブリエル・ラヴィア
   ヴェロニカ・ラザール
   アイリーン・ミラクル
   ダリア・ニコロディ
   サシャ・ピトフ
   アリダ・ヴァリ

 前作「サスペリア」で開花したアルジェントの色彩へのこだわりが、ある意味でさらにエスカレートした「魔女3部作」の第2弾。ほぼ非日常的というか非現実的なダークファンタジー的映像美をこれでもかと堪能できる作品だ。これまたブルーレイのフルハイビジョン映像で鑑賞するべき映画と言えるだろう。ストーリーは意味不明な点が多々見受けられるけれど(笑)。
 ということで、評判が最悪の日本盤BDは当然のことながら(?)回避し、なおかつ英Arrow Films版よりも画質のクオリティが良好だと言われている米Blue Underground版BDを入手。これは大正解。部分的に若干フィルムの粒子がチラつくところあれど、トータルではほぼ完璧に近い高画質だ。特に鮮烈な色彩の数々は強調しすぎることもなく、とても自然な仕上がり。深みのある黒との対比も美しい。役者の肌や小道具などの質感もリアルかつなめらかで、全体的に輪郭も程よくシャープ。やっぱりブルーレイはこうでなくちゃね、と大いに納得できるハイクオリティだ。
 ただし、音声はちょっと微妙なところ。英語トラックは7.1チャンネルDTS-HDおよび5.1チャンネル・ドルビー・デジタル・サラウンド、2.0チャンネルドルビー・サラウンドの3種類から選ぶことができ、イタリア語はオリジナル・モノラルのみ。7.1も5.1も思ったよりサウンド・レンジが狭いという印象で、正直なところ迫力があまり感じられない。UK盤の5.1チャンネルDTS-HDの方が迫力あるという評判も聞いているので、いつか金銭的に余裕が出来たらそちらも手に入れてみようかな…とは思うのだけど(^^; ん〜、悩むところだ。
 特典映像の内容はまずまず。これが初お披露目となるリー・マクロスキーとアイリーン・ミラクルのインタビューは結構貴重だ。なにしろ、この2人が本作についてインタビューを受けるというのは珍しいので。特にアイリーン・ミラクルは紙媒体も含めてこれが初めてなのではなかろうか。どちらのインタビューもハイビジョンカメラで撮影されている。特に、俳優から画家へと転向したマクロスキーがインタビュー後半に披露してくれる、ゴシック趣味炸裂なアート作品の数々はなかなかユニークで魅力的だ。また、ミケランジェロ・アントニオーニの助監督から映画界入りしたというアイリーン・ミラクルの話も面白かった。女優としては「ミッドナイト・エクスプレス」と本作くらいしか代表作のない人だが、ダンス教師からアントニオーニの助監督を経て女優になったというそのキャリアは、映画ファンとしてなかなか興味をそそられる。
 なお、アルジェント監督とランベルト・バーヴァのインタビューはAnchor Bay版DVDに収録されていたものと一緒で、正味10分程度という短さ。アルジェントによるイントロダクションも簡単なもので、もうちょっと監督自身の踏み込んだインタビューを聞きたかった。UK盤BDでは15以上に渡る監督インタビューが収録されているみたいなのだが…やっぱり買えってことなのかねえ(笑)。

 

 

フェノミナ
Phenomena (1985)

PHENOMENA.JPG
(P)2011 Arrow Films (UK)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(UK盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.66 : 1/HD規格:1
080p/音声:Dolby Stereo/言語:英語・イタリア語/字幕:英語/地域コード:ALL/116分/製作:イタリア

<パッケージ仕様>
ジャケット4種類(リバーシブル)
両面特大ポスター封入
カラーブックレット(8P)

<特典映像>
メイキング・ドキュメンタリー(アルジェント監督、ダリア・ニコロディ、ジャンロレンツォ・バッタリア、セルジョ・スティヴァレッティ、ルイジ・コッツィなど出演)
セルジョ・スティヴァレッティによるイントロダクション
クラウディオ・シモネッティ インタビュー
セルジョ・スティヴァレッティのQ&Aセッション(グラスゴーにて)
監督:ダリオ・アルジェント
製作:アンジェロ・ヤコノ
   ダリオ・アルジェント
脚本:ダリオ・アルジェント
   フランコ・フェリーニ
撮影:ロマーノ・アルバーニ
音楽:クラウディオ・シモネッティ他
出演:ジェニファー・コネリー
   ドナルド・プレザンス
   ダリア・ニコロディ
   ダリラ・ディ・ラザーロ
   パトリック・ボーショー
   フィオーレ・アルジェント

 '80年代のアルジェントを代表する作品と呼んでもいいかもしれない。スイスの女子寄宿学校を舞台に、昆虫と交信できる孤独な美少女が謎の殺人鬼に狙われるという、まるで日本の少女向けホラー・コミックのようなストーリーが最高。しかも、そのヒロイン役に当時絶世の美少女だったジェニファー・コネリーが扮し、死体だらけの蛆虫プールに放り込まれるなどの大熱演を繰り広げてくれるのだから面白くないわけがない。実の娘フィオーレを首チョンパしてしまうという問題シーンを含め、アルジェント監督のいろんな意味で歪んだ一面を堪能できる逸品である。
 とりあえずドイツ語バージョンしか収録されていない独Ascot Elite版BDはパスし、116分のインテグラルハード完全版を収録した英Arrow Films版BDを購入。音声仕様に関しては少々期待はずれな面もありつつ、とりあえず画質のクオリティに関してはまるっきり文句なしの仕上がりだ。白と黒をベースにしたダークな色調が印象的な本作だが、このUK盤BDは特に黒系の色彩に大変な深みがあり、なおかつシャープな印象を与えている。きめ細やかなディテールの再現力も見事で、過去のDVDでは全くわからなかったジェニファー・コネリーの顔の僅かなソバカスまでもが確認できるのは驚いた。
 で、その少々期待はずれだった音声なのだが、過去の米Anchor Bay版DVDでは5.1チャンネルのドルビー・サラウンドを採用していたものの、このUK盤BDではなぜか通常のドルビー・ステレオのみ。劇場公開時にサラウンド上映されたことを考えると、ちょっと拍子抜けしてしまうことは否めない。ただ、このドルビー・ステレオが意外に侮れないことも確か。サラウンドほどではないにせよ音の奥行は結構深く、なおかつ重量感があって、音楽スコアや効果音などもズッシリと響き渡る。パーフェクトとは言えないものの、これはこれで上出来なのではないかと思う。
 そして映像特典。なんといっても50分に及ぶ最新ドキュメンタリーはアルジェント・ファン必見だ。アルジェント監督は作品のテーマや描写についてかなり踏み込んだ解説をしてくれているし、昆虫の特殊効果を担当したルイジ・コッツィの創意工夫を凝らした撮影秘話や水中撮影を手がけたジャンロレンツォ・バッタリアの苦労話なども興味深い。なかでも、毒舌トーク炸裂なダリア・ニコロディの赤裸々コメントの数々はニンマリ。あの頃のダリオは私のことを本当に憎んでいたから撮影では酷い仕打ちを受けたとか、友達だからあまり言いたくないけどフランコ・フェリーニは才能のカケラもない退屈な人間よとか、とにかく言いたい放題(笑)。恐らく娘アーシアはこの反逆精神を受け継いだのだろう。また、セルジョ・レオーネ監督から「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のポストプロダクション作業中にジェニファーを紹介してもらったとか、まだ13歳だった彼女の両親を安心させるために娘を持つ母親であるダリア・ニコロディが出演交渉に当たったとか、ここでしか聞くことのできない裏話が盛りだくさん。このドキュメンタリーだけでもお腹いっぱいになること請け合いだ。

 

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