アラブの歌姫 SPECIAL

 

Shahenaz

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 サウジ・アラビアの大富豪アル・ワリード王子の経営するロターナ・レコードから2005年にデビューした女性アーティスト。出身はレバノン。ファースト・アルバム“Aheb Ashalak”からはシングル“Kaman Kaman”がヒットして一躍注目を集めた。とてもソフトでフェミニンな歌声の持ち主。貫禄のあるこぶし回しがなんとも耳に心地よい。
 楽曲的には打ち込みをベースにした典型的な“アル・ジール”路線で、哀愁系のキャッチーなメロディラインとエキゾチックなオリエンタルビートのコンビネーションが魅力。とてもポップでエレガントだ。2006年にはセカンド・アルバム“Jowa Albi”をリリースしたが、それ以来新譜のリリースがないのはちょっと寂しい。

 

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Aheb Ashalak (2005)

Jowa Albi (2006)

(P)2005 Stallions/Rotana (Lebanon) (P)2006 Rotana (Lebanon)
1,Kaman Kaman ビデオ
2,Habibi Bashtak Eleik
3,Bayen Fe Eneik
4,Ezz Elforaak
5,Malnash Makan
6,Lazem Tegi
7,Aheb Ashlak ビデオ
8,Men Gheir Matehelf
9,Kaman Kaman (Remix)
1,Jawa Albi
2,Alamal Fi Rejounak
3,Wadan'na
4,Meen Kan Yeqoul
5,Najem We Alee
6,Ensany ビデオ
7,Ahla Seneni
8,Weda Maqoul
 記念すべきデビューアルバム。シングルとしてヒットした#1は素晴らしい名曲です。程よくトライバルなオリエンタル・ビートに、超ドラマチックでスケールの大きな哀愁系メロディ。これはアガりますね〜。#9ではリミックスも収録されていますが、こちらはいまひとつ。その他、#1に負けず劣らず哀愁系炸裂の叙情的な佳曲#2、かなりクラブ寄りの派手な音作りがカッコいい#4、サンバ風に仕上がったエレガントで官能的なダンス・ナンバー#6など、これでもかと充実した内容。猛烈にオススメです。  前作があまりにも傑作過ぎたおかげで、どうしても地味な印象が拭えないセカンド・アルバム。路線的にはほとんど変わりないんですけどね。楽曲の完成度は、やはり前作の方が数段上だったと思います。それでも、#3は素晴らしい名曲。サビのメロディの甘く切ない高揚感といったら!凄いですよ、これは。この1曲のためだけにでも買って損はない1枚です。その他の楽曲も、決して悪くはないのですが、いまひとつインパクトに欠けるかと思います。

 

 

Katia Harb

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 こちらもレバノン出身の歌姫。見ての通り、かなりの美形。もちろん、歌も非常に巧い。特にソプラノの伸びの良さとパワフルなこぶし回しは、なかなか圧巻で聴き応えがある。もっとも、アラブ音楽界では歌が巧いのは当たり前。中途半端な歌手はあっという間に消えてしまう。
 カーチャは1973年の生まれで、96年にレコード・デビューを果たしている。レバノンでは中堅クラスの女性シンガーだ。もともとは正統派のアラブ歌謡路線で売っていたが、西欧音楽に影響を受けた“アル・ジール”の台頭と共に音楽スタイルをガラリと変えた。これまでに4枚のアルバムをリリースしており、今のところ最新作に当たるアルバム“Katia”では世界進出を図ったが、残念ながらあまり上手くはいかなかったようだ。

 

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Mandallah (2002)

Katia (2004)

(P)2002 Music Box/EMI Arabia (P)2004 EMI Music Arabia (Lebanon)
1,Mandallah
2,Leebet A'asab
3,Nari Nari
4,Salamak
5,Baghdada
6,Dawer Dawer
1,Addil Hob ビデオ
2,Abadan
3,Ittaliah
4,Sa'ban Alay
5,Dillouni
6,Ta'ebt
7,Ya Trikni Fil
8,Sahra Oyouni
9,Min Eini
10,Mafina (Guy Manoukian Remix) ビデオ
11,Ajmal Ghinniyyih (Hadi Shararah Remix)
12,Abadan (Beirut Biloma Dance Remix)

produced by Katia
 随所に打ち込みを導入しつつも、あくまでも正統派アラブ歌謡路線を踏襲したサード・アルバム。ケイト・ブッシュを彷彿とさせるエキセントリックなソプラノ・ボーカルと、コテコテに泥臭いこぶし回しは圧巻です。古臭いサウンド・プロダクションのせいで、ちょっとチープに聞こえてしまいますが、カーチャのボーカルは文句なしに素晴らしい。比較的コアなアラブ歌謡ファンにオススメしたい1枚だと思います。  前作の泥臭さがまるでウソのように、素晴らしく洗練された美しいアラビアン・ポップスを聴かせてくれるアルバム。カーチャのボーカルも落ち着きを増し、包み込むような優しさをたたえています。アクの強さが抜けたといった感じでしょうか。もちろん、絶妙なこぶし回しは健在。音的にはクラブ系のアプローチが濃厚。重厚で厚みのあるエレクトロ・サウンドと、オリエンタル楽器の組み合わせが絶妙です。

 

Janine D.

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 昨年ファースト・アルバムをリリースしたばかりの新人ジャニーヌ・D。ボーカリストとしては正直なところ発展途上といわざるを得ないが、往年のダリダを彷彿とさせるゴージャスな美貌は注目に値するだろう。アラブ音楽をベースに、ラテンやハウス、ヒップ・ホップなどのエッセンスを盛り込んだ楽曲もクオリティが高い。このところアラビアン・ポップス界は新人アーティストのデビューが相次いでいるが、その中でも特に注目されている一人だ。
 出身はレバノンのベイルート。両親はエジプトのカイロで高級ホテルを経営しており、フリオ・イグレシアスやオマー・シャリフなどの大スターも常連客だったらしい。10代の頃にニューヨークへ移った彼女は、ハーバート・バーグホフの演劇学校で演技を学んだ。2003年にレバノンへ帰国。数多くのライブ・ステージをこなした後、2007年に満を持してデビューを果たしたというわけだ。デビュー・アルバムはヒット・チャートでもトップ10に入り、とりあえずは幸先の良いスタートを切っている。将来的には世界デビューも視野に入れているようだが、まだまだルックス先行という印象は否めないだろう。

 

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Salam (2007)

(P)2007 Rockworld (Lebanon)
1,Salam ビデオ
2,Baatm el Leyl (Dance Mix)
3,Inta Ya (Dance Mix) ビデオ
4,Ittalaa Bighayri
5,Ma Thonsh Aalaya
6,Ya Sarek Omri
7,Aboss Leinyek
8,Agmal Hekaya
9,Iyamak Aala Bali (Lounge Mix)
10,Inta Ya (Lounge Mix)

produced by Rockworld
 伝統的なアラブ歌謡の世界を踏襲しつつ、ラテンやロック、ハウスなどのエッセンスを盛り込んだ、バラエティ豊かなファースト・アルバム。楽曲のクオリティは非常に高く、特にラテン・ハウス風の哀愁ナンバー#1や、幻想的で叙情感溢れるオリエンタル・バラード#6は名曲だと思います。ただ、ジャニーヌのボーカル自体はかなり荒削りですね。とても優しい声の持ち主ではありますが、テクニックはまだまだ未熟。これからに期待したいところです。

 

Diana Karazon

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 ここ数年、アメリカではオーディション番組『アメリカン・アイドル』が凄まじい視聴率を上げているが、この手のスター発掘番組は世界各地でも高い人気を集めている。もちろん、アラビア語圏も例外ではなく、“スター・アカデミー・アラビア”に“ポップスター”という二つのオーディション番組の人気が高い。その“ポップスター”でグランプリに輝き、見事にプロ・デビューを果たしたのが、このディアナ・カラゾンだ。
 1983年クウェートの生まれ。両親はパレスチナ人で、ヨルダンのアンマンに育った。父親がアマチュアのミュージシャンだったこともあり、幼い頃から人前で歌うのが好きだったという。両親の強いサポートを得て、2003年テレビ番組“ポップスター”に出場。見事に優勝し、翌年アルバム“Super Star El Arab”でデビューを飾った。
 まだ20代半ばという若さだが、そのどっしりと落ち着いた歌声は既にベテランの貫禄。アラブ歌謡の女王ファイルーズに多大な影響を受けたというが、それも大いに納得の本格派と言えるだろう。欧米ではオーディション番組出身のスターは長続きしないというのが定説だが、果たしてアラブ音楽界のシンデレラ・ガールは、どのようなキャリアを歩むことになるのだろうか。

 

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El Omr Mashi (2005)

(P)2005 Music Master (Lebanon)
1,El Omr Mashi
2,Meen Blekrak
3,Enta Mashi Bgad ビデオ
4,Khalina Netmarmar
5,Hebni Dom
6,Lama Tab'a Habibi ビデオ
7,Mahala
8,Tes'alni
9,W Bada't Aaish ビデオ

produced by Samir Sfeir
 レバノンでは3週間に渡ってナンバー・ワンを独占し、その他のアラブ語圏諸国でも大ヒットを記録したセカンド・アルバム。ディアナの本格的な歌唱力を前面に押し出した作品で、若手らしからぬ風格の漂うアルバムに仕上がっています。ただ、随所に欧米ポップス風のアレンジを施しており、若いリスナー層へのアピールも忘れていません。トータルの完成度は高いのですが、その一方で抜きんでた楽曲に乏しいという印象です。

 

Arwa

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 こちらはエジプトの女性ボーカリスト。アラブ語圏最大のメジャー・レーベル、EMIミュージック・アラビアからデビューし、地元では中堅スターとして活躍しているようだ。もともとはイェメンの生まれで、エジプトのカイロに移り住んでいる。2000年頃から歌手として活動をスタートし、大手音楽制作会社フヌーン・アル・ジャジーラにスカウトされた。2003年にファースト・アルバム“Ahlayyami”をEMIからリリース。
 伝統的なアラブ歌謡をベースにしながら、ヒップ・ホップやロックの要素を盛り込んだ楽曲はなかなかの充実度。フヌーン・アル・ジャジーラというのは主に古典的なアラブ歌謡系のアーティストを擁している会社なので、彼女はかなり異色の存在なのではないだろうか。エジプト以外では活躍の話題をあまり聞かないが、容姿・実力共に優れた女性アーティストの一人だと思う。

 

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Ahlayyami (2003)

(P)2003 EMI Music Arabia (Egypt)
1,Ya Maleehah
2,Hanoun Il Galb
3,Akhirha
4,Khalas
5,Touboulel Moukalla
6,Fahhimouh
7,Ahlayyami
8,Bayyath Allahi Wajhik
9,As'ad Allah Misakoum
10,Reeshah Ala Rasik

produced by Funoon Al Jazeera
 一応、路線的には“アル・ジール”の部類に入るとは思うのですが、アルワのボーカル・スタイルも含めて、基本はコテコテのアラブ歌謡です。ただ、アレンジそのものはとても洗練されていて、欧米音楽の影響もかなり濃厚。ヒップ・ホップ風の打ち込みや、クラブ系のアプローチなども随所に施されております。コアなアラブ歌謡ファンも納得できる仕上がりでしょう。

 

Aline Khalaf

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 レバノンで活躍する中堅女性歌手アリーネ・ハラフ。2002年にリリースしたシングル“La Lei Leih”は爆発的なヒットとなった。キャッチーでダンサンブルな今風のアラビアン・ポップスを得意とする人で、ゴージャスなルックスと親しみやすい楽曲で人気が高い。ボーカリストとしては、どちらかというと線の細いタイプの人。しかし、アラブ歌謡独特のコブシ回しは実に巧みで絶妙だ。
 ベイルートの裕福な家庭に育ったアリーネは、テレビのオーディション番組“Layali Lebanon”に優勝して注目された。ナイトクラブやレストランのステージに立った後、音楽制作会社リラックス・インにスカウトされる。2000年にアルバム“Khayfa Minnak”でデビュー。矢継ぎ早にアルバムをリリースし、2002年のアルバム“La Lei Leih”のタイトル・ソングが大ヒット。しかし、2005年のアルバム“Sodfa”以降の活動は地味で、時折シングルを発表する程度の様子。

 

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Best of Aline Khalaf (2003)

(P)2003 EMI Music Arabia (Lebanon)
1,Aloulak Eih ビデオ
2,A'zza A'laya ビデオ
3,Va Tara Wehshak
4,Dala'el Habayib ビデオ
5,Wala Wala Kan
6,Bageeb Seertak
7,Wayed...Wayed ビデオ
8,La Li Leih ビデオ

produced by Relax-In/Megastar
 アリーネの代表作を集めたベスト盤。3年間で5枚のアルバムをリリースしていたということで、アラブ語圏のアーティストとしては異例の量産体制だったわけですね。爆発的なヒットとなった#8はもとより、6分以上にわたる大作#7、ラテン・ディスコ風の#5など、まるでお祭り騒ぎのようなダンス・ナンバーが目白押し。広くアラビアン・ポップス・ファンにオススメしたい1枚です。

 

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