ビキニ・アクションの帝王
アンディ・シダリス Andy Sidaris

 

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 どこのニュースでも全く報じられなかったが、ある映画人が今年の3月ひっそりと亡くなっていた。アンディ・シダリス監督。ビキニ・アクションの帝王である。80年代から90年代にかけて、ハワイやマイアミ、マリブなどを舞台にビキニ姿の美男美女が拳銃や機関砲を片手に大活躍するスパイ・アクション映画を数多く世に送り出した人物だった。最大のセールス・ポイントは、「プレイボーイ」誌のプレイメイトや「ペントハウス」誌のペントハウス・ペットの大量出演。画面せましとビキニ姿のブロンド巨乳美女が暴れまくるのは、まさに世の男性のフェチ心をくすぐったもんだった。しかも、シダリスが抜け目なかったのは、そこにマッチョなイケメン男優たちの裸もたっぷりと盛り込み、あらゆるジェンダー層に対応していた点だろう。また、彼自身非常に自由奔放な道徳観の持ち主で、男女の裸を別に“いやらしいもの”とは見ていなかった。ゆえに、彼の作品ではみんな当たり前のように脱ぐ・脱ぐ・脱ぐ!そんな、あっけらかんとした男女の健康美というのも、シダリス作品の大きな特徴だったと言えるだろう。

 映画監督としてのアンディ・シダリスをどう評価するかというと、正直“ビキニ・アクションの帝王”以上でも以下でもない、としか言いようがないと思う。芸術家ではなく、あくまでもエンターテイナーであり徹底したショーマンだった。どの作品も似たり寄ったりで、練られたストーリーや凝った演出は二の次。観客の見たいものを見せるというのが彼の信条だった。本人も“自分が作っているのは芸術映画ではない”と語っていたが、その辺りの潔さは評価してもいいかもしれない。
 そんなアンディ・シダリスだが、実は彼はテレビ界では伝説的な人物でもある。もともと、テレビのスポーツ中継ディレクターの草分け的存在で、何とエミー賞を7回も受賞しているのだ。それゆえに、派手なアクションの演出はお手のもの。ただ、彼の作品のアクション・シーンは血なまぐさいバイオレンスが希薄で、スポーツの試合を見ているかのように健康的なのは好き嫌いの分かれるところかもしれない。

 1931年2月20日、シカゴに生まれたシダリスは、ダラスのサザン・メソジスト大学を卒業。ネットワーク・テレビ局ABCに入社したシダリスは、スポーツ番組のディレクターとして頭角を現す。NFLの中継ではチアガールや観客の美女にスポットを当てる“ハニー・ショット”と呼ばれる演出を発案するなど、ただ試合の様子を見せるだけだったスポーツ番組にエンターテイメント性を盛り込む彼のアイディアは、当時としては非常に画期的なものだった。さらに、1964年のインスブルック冬季オリンピック以降、1988年のカルガリー・オリンピックに至るまで全てのオリンピック中継を手掛けており、1968年のメキシコ・オリンピック中継ではエミー賞を受賞している。
 1970年代に入ると「刑事コジャック」などのドラマの演出も手掛けるようになり、1973年には初の劇場用映画「ステイシーにぶち込め!」を発表。プレイメイトのアン・ランドールがセクシーな女私立探偵を演じるサスペンス・アクションで、後のシダリス映画の原型とも言える作品。派手なカー・チェイス、激しいガン・アクション、そしてプレイメイトのヌードが盛りだくさんで、当時パム・グリアーが主演していたブラクスプロイテーション物の白人版といった趣き。ただ、残念ながら興行的にはコケてしまった。さらに、1979年にはハワイを舞台にセクシーな美男美女スパイが活躍する“Seven”という作品を発表。こちらも、同様にコケている。
 なお、シダリスはロバート・アルトマン監督の「マッシュ」('70)でフットボール・シーンの演出を担当。さらに、アメフトのスタジアムを舞台にしたパニック映画「パニック・イン・スタジアム」('76)ではTVディレクター役で顔を出している。

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元人気子役スターのダービー・ヒントン
「マリブ・エクスプレス」

コディ愛用の豪華クルーザー
「マリブ・エクスプレス」

コディの周りは水着の美女だらけ
「マリブ・エクスプレス」

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悪女役ならお任せのシビル・ダニング
「マリブ・エクスプレス」

敵の目を欺くオッパイ作戦!?
「マリブ・エクスプレス」

この人、実はハゲたオッサン
「マリブ・エクスプレス」

 さて、TVドラマを手掛けるようになったシダリスは、その助手として雇われた女性アーリーンと結婚。1985年に手掛けた映画「マリブ・エクスプレス」が、映画監督アンディ・シダリスの転機となった。風光明媚なカリフォルニアのマリブ・ビーチを舞台に、ハンサムでセクシーな大富豪の私立探偵が活躍する作品なのだが、当時人気だったTVドラマ「私立探偵マグナム」の影響もあって大ヒットしてしまったのだ。
 主人公は“マリブ・エクスプレス”という豪華クルーザーに暮らす大富豪コディ・アビレーン(ダービー・ヒントン)。真っ赤なスポーツ・カーを乗り回し、ビキニ美女に囲まれて優雅な独身生活を過ごすコディだが、実は腕利きの私立探偵でもある。とあるコンピューター会社社長の殺人事件の捜査を依頼されたコディは、その会社が国家機密をソビエトに売り渡しているらしい事を知る。そこで彼は社長夫人であるルチアーナ伯爵夫人(シビル・ダニング)に接近。ルチアーナの肉体をメロメロにさせた彼は、愛憎渦巻く複雑な社長一族の内部に潜入することになる・・・。というわけで、ストーリーが進むにつれてほとんど昼メロ・ドラマみたいになっていく。スパイ映画としては安直にもほどがある内容ながら、美女のヌードやビキニ姿、派手なガン・アクションやカー・チェイスは満載で、シダリス映画のトレード・マークはこの作品で完成されたと見ていいだろう。コディの捜査に協力するカー・レーサーやエンジニアなど、全員巨乳のブロンド美女というのも下らなくて楽しい。バーバラ・エドワーズやキンバリー・マッカーサー、ロレイン・マイケルズといった、当時のプレイメイトが大挙して出演している。

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麻薬捜査官ドナ、エディ、タリンの三人
「グラマー・エンジェル危機一発」

意味もなく頻発するジャグジー・シーン
「グラマー・エンジェル危機一発」

昼メロスター、ロン・モスも登場
「グラマー・エンジェル危機一発」

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武器は結構本格的だったりする
「グラマー・エンジェル危機一発」

何故か登場するスモウ・レスラーたち!
「グラマー・エンジェル危機一発」

シダリス映画ではおなじみのセスナ機
「グラマー・エンジェル危機一発」

 そして、シダリスの名を日本の映画ファンの間にも広めた(とはいってもごく一部のマニアの間だけだが・・・)のが「グラマー・エンジェル危機一発」('87)。当時ジョイパック・アクション・シリーズと銘打って、新宿歌舞伎町の映画館でB級映画の2本立て興行が行われていたのだが、その中の1本として劇場公開されたのだった。主人公はハワイの麻薬密輸捜査官ドナ(ドナ・スピアー)とタリン(ホープ・マリー・カールトン)。麻薬王の密輸ルートを追っていた二人は、麻薬と共にダイヤの密輸が行われている事を知り、組織と全面対決することとなる。しかも、密輸品の中には核廃棄物で巨大化したヘビまでもが混じっていたのだ!!ストーリーの辻褄よりもネタを詰め込みまくることに終始したハチャメチャな脚本、意味もなくポロポロとオッパイをさらけ出すセクシー捜査官たち、そしてバズーカ砲で木っ端微塵にされるダッチワイフ(!)と、とにかく下らない。下らないのだが、全く飽きることなく楽しめるというのがシダリス映画の醍醐味だ。ヒロインの二人以外にも、後にシダリス映画の重要なメンバーとなるシンシア・ブリムホールやパティ・デュフェックなど、ゴージャスなプレイメイトたちが勢ぞろい。男優も昼メロ“Bold and the Beautiful”で有名なロン・モス、キック・ボクシングのパイオニアとしても有名なハロルド・ダイアモンドなど、ハーレクイン・ロマンスの表紙に出てくるようなマッチョなイケメン揃い。で、みんなバンバンと裸になる。それも楽しそうに。

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お馴染みの麻薬捜査官コンビ、ドナとタリン
「ピカソ・トリガー」

今回が初登場のロバータ・ヴァスケス
「ピカソ・トリガー」

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ちょっとお間抜けなメカ・オタク・コンビ
「ピカソ・トリガー」

今回はドナが一番活躍する
「ピカソ・トリガー」

 続いて登場するのが、シダリスにとって最大のヒット作となった「ピカソ・トリガー」('88)。ピカソ・トリガーと呼ばれる二重スパイがパリで何者かに射殺された。これを皮切りに、FBIのスパイが次々と何者かに襲われる。特別捜査官トラヴィス・アビレーン(スティーブ・ボンド)は、事件の黒幕が犯罪組織のボス、ミゲル・オーティス(ロドリゴ・オブレゴン)であると睨む。何故なら、犠牲者が全てミゲルの弟の暗殺に関わっていた人物だったからだ。分かりやすい!で、パリからテキサス、ラスベガス、ハワイと飛び回るトラヴィスの捜査に協力するのが、FBIの腕利きセクシー美女捜査官ドナ(ドナ・スピアー)、タリン(ホープ・マリー・カールトン)、パンテラ(ロバータ・ヴァスケス)、エディ(シンシア・ブリムホール)ら。スキューバ・スーツ姿で悪人相手に暴れまくるドナの活躍ぶりが爽快だ。

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ドナとタリンのコンビは健在!
「ピカソ・トリガー2/サベージ・ビーチ」

やっぱり意味もなくジャグジー・シーン
「ピカソ・トリガー2/サベージ・ビーチ」

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シダリス映画初登場のマイケル・シェーン
「ピカソ・トリガー2/サベージ・ビーチ」

何とも微妙な日本軍が登場
「ピカソ・トリガー2/サベージ・ビーチ」

 さらに翌年には「ピカソ・トリガー2/サベージ・ビーチ」('89)を発表。日本では“ピカソ・トリガー”シリーズとして紹介されたが、実際には“サベージ・ビーチ”シリーズの第1弾に当たる作品。とはいえ、主人公は「グラマー・エンジェル危機一発」以来全てドナ(ドナ・スピアー)とタリン(ホープ・マリー・カールトン)なので、シダリス作品そのものがまとまったシリーズと見るべきなのかもしれない。ハワイの麻薬捜査官ドナとタリンは、離島の病院にワクチンを届けるためにセスナに乗り込むものの、台風に巻き込まれてしまう。ただ、単純に台風に巻き込まれるだけなので、ストーリーにはあまり関係してこない。この辺りもシダリス映画らしいところ。で、この島には第2次大戦中に山下将軍の財宝が隠されており、日本刀をあやつる日本兵が一人で宝を守るために今も野宿しながら監視しているのだった!!そして、財宝の在り処を知った犯罪組織が島に押し寄せ、ドナとタリンは日本兵と共に悪に立ち向かう事になる。シダリス映画の中でも最大級の荒唐無稽さで、特に日本人には大爆笑できること必至。いつもよりプレイメイト指数は低めだが、そんな事気にならないくらいに楽しめる。

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だんだんリプリー化してきたドナ・スピアー
「スパイ・エンジェルス」

ドナの新しい相棒ロバータ・ヴェラスケス
「スパイ・エンジェルス」

悪役を演じるエリック・エストラーダ
「スパイ・エンジェルス」

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今回はローション・レスリングも登場
「スパイ・エンジェルス」

シンシア・ブリムホールの悩殺ステージ
「スパイ・エンジェルス」

今回はシンシアがなかなかカッコいい
「スパイ・エンジェルス」

 プレイメイトに昼メロ男優と、日本人にはあまり馴染みのない顔ぶれが多いシダリス作品で、初めて有名スターを起用したのが「スパイ・エンジェルス」('90)。とはいっても、「白バイ野郎ジョン&パンチ」のエリック・エストラーダなのだけど。この微妙な時代錯誤感もまたシダリス流。まあ、ギャラが安かったんだろうけどね。エストラーダが演じるのは南米の武器商人フアン・デガス。彼がハワイを拠点に一大武器密輸シンジケートを築こうとしている事を知った連邦捜査官ドナ(ドナ・スピアー)、ニコル(ロバータ・ヴァスケス)、エディ(シンシア・ブリムホール)、そしてブルース(ブルース・ペンホール)らが、その計画を阻止するために立ち上がる、というわけだ。女捜査官たちの潜入先がナイト・クラブというのもシダリス流。セクシーなランジェリー姿で歌うエディなんかまだいい方で、中にはカウボーイ姿でストリップに励む女捜査官コンビも。で、彼女らが客席の悪人どもに機関銃をぶっ放すシーンなんかは、バカバカしいけど痛快この上ない。タランティーノやロドリゲス作品でもお馴染みの強面悪役俳優ダニー・トレホが顔を出しているのにも注目したい。

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息も合ってきたドナとロバータ
「ボディ・エンジェルス」

ヤクザのボスを演じるパット・モリタ
「ボディ・エンジェルス」

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今回もシンシアのパフォーマンスが登場
「ボディ・エンジェルス」

連邦捜査官が勢揃い・・・には見えないか
「ボディ・エンジェルス」

 「ピカソ・トリガー2/サベージ・ビーチ」でけったいな日本人を描いたシダリスが、性懲りもなく日本文化にお門違いなリスペクトを捧げてしまったのが「ボディ・エンジェルス」('91)。「ベスト・キッド」でもお馴染みのノリユキ・パット・モリタ演じるヤクザのボス金城に拉致られたセクシー連邦捜査官ドナ(ドナ・スピアー)とニコル(ロバータ・ヴァスケス)。拉致られたといっても、普通にレストランから出てきたところに声をかけられ、連れて行かれたのが金城のもとだったというだけ。そんな油断しまくりで捜査官がつとまるのか!と突っ込みたいところだが我慢・我慢。で、金城から言い渡されたのが、島中に仕掛けられた暗殺チームを倒して果たして君たちは生き残ることができるかな〜?という「猟奇島」的殺人ゲームへの招待状。捜査チームのリーダー、リチャード(エリック・エストラーダ)、仲間のエディ(シンシア・ブリムホール)らの助けを得ながら、ドナとニコルはカンフー軍団や忍者軍団と死闘を繰り広げるのだった。まさに全編突っ込みどころ満載のアホらしさ。それを大真面目かつ能天気にやってしまうのがシダリスの偉大なところ(?)かもしれない。

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今回はドナが誘拐される!
「グラマラス・ハンターズ」

なかなかカッコいい殺人ヘリコプター
「グラマラス・ハンターズ」

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シンシア・ブリムホール
「グラマラス・ハンターズ」

ロジャー・ムーアの息子ジェフリーが悪役
「グラマラス・ハンターズ」

 次にシダリスが手掛けたのが「グラマラス・ハンターズ」('92)。今回は中東への核兵器密輸が題材になっている。ハンサムでセクシーな武器商人ケイン(ジェフリー・ムーア)が、核兵器を中東に密輸しようとしている事を察知した女性潜入捜査官ミカ(ミカ・クィンタード)が惨殺された。世界的なパワー・バランスの危機に救うために立ち上がったのが、我らが連邦捜査官ドナ(ドナ・スピアー)とニコル(ロバータ・ヴァスケス)、そしてエディ(シンシア・ブリムホール)のセクシー・トリオ。今回は最新鋭の殺人ヘリコプターも登場し、スケール感はまずまず。主人公たちの能天気さは相変わらずで、捜査の合間とはいえ青空の下でビキニ姿の川遊びとは。そんな油断しまくっていてどうする!?という突っ込みは今回も我慢・我慢。敵のケインにしたって、ほとんど豪華ヨットの中で愛人のシルク(キャロリン・リュー)とイチャイチャしてるだけだし。最初に殺される捜査官ミカにしたって、ケインとシルクに混じって3Pですから。捜査官てそこまでするもんなのですか!?って突っ込みも我慢しておこう。そういうバカバカしさを受け入れなければ、シダリス作品を楽しむ事は出来まい。

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シダリス映画初登場のジュリー・ストレイン
「グラマラス・キラーズ」

ジュリーのこの超人的な肉体を見よ!
「グラマラス・キラーズ」

泥棒がそんな目立ってどうすんでしょ
「グラマラス・キラーズ」

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やっぱりカッコ良すぎだよ、ジュリー・ストレイン
「グラマラス・キラーズ」

ジャグジーで作戦会議・・・ってどうよ
「グラマラス・キラーズ」

再び登場のロジャー・ムーア・ジュニア
「グラマラス・キラーズ」

 で、「グラマラス・ハンターズ」の宿敵ケインとシルクが復活するのが「グラマラス・キラーズ」('93)。第2次世界大戦中にロシアからナチに奪われたダイヤモンドを巡る攻防戦が展開する。中国人の大富豪が所有するそのダイヤモンドは正式にロシアに返還される事になるのだが、その式典の最中にまんまとケインの一味によって盗み出されてしまう。実行犯はウルトラ・ボディの凄腕女泥棒ブルー・スティール(ジュリー・ストレイン)。これまでにない強敵の出現に、ドナ(ドナ・スピアー)、ニコル(ロバータ・ヴァスケス)、エディ(シンシア・ブリムホール)のセクシー捜査官トリオは悪戦苦闘を強いられる。本作の最大の目玉は何といってもジュリー・ストレインだろう。185センチの元ボディビル女性チャンピオンにして、「ペントハウス」誌のペット・オブ・ジ・イヤーに選ばれた伝説のセックス・シンボル。そのマンガとしか思えない驚異のキャラクターで、全ての共演者を食いまくっている。また、サイド・ストーリーとして女性捜査官の一人エヴァ(エヴァ・カデル)とロシアの使節ミハエル・ペトロフ(ロドリゴ・オブレゴン)との淡いロマンスも描かれ、冷戦終結の時代を印象付けている。

 さて、ドナ・スピアー、ロバータ・ヴァスケス、シンシア・ブリムホールと、さすがにマンネリ化してきたシダリス映画のヒロインたちを一新したのが次作「ピカソ・トリガー/デイ・オブ・ザ・ウォリアー」('96)。新たにヒロインとなったのは、政府直属の秘密女性部隊L.E.T.H.A.Lのメンバー、タイガー(シェア・マークス)、コブラ(ジュリー・K・スミス)、そしてウィロウ・ブラック(ジュリー・ストレイン)の3人。プレイメイトのシェア・マークスとペントハウス・ペットのジュリー・K・スミスは、シリコン系の爆乳モデルとしてアメリカでは人気があったようだが、やはりジュリー・ストレインのサイボーグ・パワーには押され気味。男優も含めたどの出演者よりもデカいジュリーのカッコよさはダントツだ。で、彼女らが犯罪組織のボス、ウォリアー(プロレスラーのマーカス・バグウェル)の築いた宝石・絵画強盗及びポルノ犯罪シンジケートを叩き潰すというわけだ。ウィロウ・ブラックの武道の師匠としてフー(ジェラルド・オカムラ)なる珍妙な中国人もコミック・リリーフとして登場。シダリスもそれなりに試行錯誤していたということが分かる1本だ。

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暇さえあればプールで日焼けの捜査官
「ピカソ・トリガー/リーサル・エンジェルス」

っていうか、どこでも裸が基本なのね
「ピカソ・トリガー/リーサル・エンジェルス」

ジュリー姐さんはフリフリもイカしてる
「ピカソ・トリガー/リーサル・エンジェルス」

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っていうか、デカイよジュリー姐さん!
「ピカソ・トリガー/リーサル・エンジェルス」

アンディお気に入りのロケーションらしいです
「ピカソ・トリガー/リーサル・エンジェルス」

忍者軍団と対決!
「ピカソ・トリガー/リーサル・エンジェルス」

 そして、アンディ・シダリス最後の作品となったのが「ピカソ・トリガー/リーサル・エンジェルス」('98)。再びタイガー(シェア・マークス)、コブラ(ジュリー・K・スミス)、ウィロウ・ブラック(ジュリー・ストレイン)のトリオが終結。今度は、前回悪役だったウォリアー(マーカス・バグウェル)が心を入れ替えてウィロウ・ブラックに協力。幻の財宝の在り処を記録したコンピューター・ディスクを悪の手から奪うために大活躍をする。いくらなんでもそんなにデカくちゃ動きずらいだろう、というタイガーとコブラのマンモス級爆乳が気になるものの、意味もなくそこらじゅうで着替えまくって裸になるという出血サービスで難なく帳消し(笑)。でもやっぱり、ジュリー・ストレインの巨大セクシー・サイボーグぶりには敵いませんでした。

 こうして、映画界におけるある種の役割を終えたシダリスは、ビバリー・ヒルズに豪邸を購入して優雅な隠居生活を送るようになったのだった。さて、彼の作品が一部のマニアに熱狂的に受け入れられながらも、一般的にはほとんど嘲笑の的となってしまった理由として、その垢抜けない演出センスが挙げられる。脚本の荒唐無稽さが揶揄される事もあるが、それは007シリーズも同じだろう。スケールこそ異なれど、その精神においてはジェームズ・ボンドとシダリス映画はよく似ていた。しかし最大の違いは、テレンス・ヤングやガイ・ハミルトンのような粋なユーモア・センスを、アンディ・シダリスは持ち合わせていなかったという点に尽きると思う。もちろん、バジェットの違いも大きい。しかし、シダリス映画の最大の欠点は、彼のユーモア・センスの体育会系的な野暮ったさだ。文系的なシニカルなヒネリが全く効いていないため、ただ滑稽なだけのジョークに終始してしまう。その無邪気な単細胞さが、シダリス映画の愛すべき点でもあるのだが。
 また、日本でも一部の金髪ものマニアには受けたものの、一般的な映画ファンには殆ど認知されなかった。そもそもプレイメイトやペントハウス・ペットのようなセックス・シンボルは、一般的な日本人にとっては大味すぎる。普通の日本人には理解できない美的センスとも言えるだろう。もともと日本人はロリコン的嗜好が強い民族。今でこそ巨乳グラビア・タレントが持て囃されているが、当時の日本人にとってシダリス映画の美男美女は暑苦しすぎたのかもしれない。
 しかし、シダリス映画は意外なところで爆発的なブームを呼んだ。ドイツを中心としたヨーロッパである。シダリス映画と同じように、ビーチを舞台に裸の美男美女が活躍する「ベイウォッチ」(1989〜2001)という人気TVドラマがあったが、もともとアメリカでは人気が低迷して第1シーズンで打ち切られる予定だった。ところが、ドイツやイギリスなどヨーロッパ各国では大ヒットを記録。そのため、イギリスの制作会社が出資してシリーズ続行が決定した。この「ベイウォッチ」の例からも分かるとおり、ヨーロッパ人は真っ赤な太陽・ビーチ・ビキニ美女のセットにとても弱い。もともと南への憧れの強い人々なだけに、シダリス映画なんかは格好のエンターテインメントだったのだろう。ドイツではテレビで特集が組まれるほど、シダリスの作品は圧倒的な支持を得ていた。

 ところで、実はアンディ・シダリス作品以外にもシダリス映画が存在する。それが、アンディの息子クリスチャン・ドリュー・シダリスの監督作品だ。もともと、アンディ・シダリスにとって映画はファミリー・ビジネス。妻のアーリーンは、シダリス作品の殆どで共同プロデュースを務めている。大勢出演するヌード・モデルたちのキャスティングやアンディの苦手なラブ・シーンの演出なんかも、妻アーリーンの仕事だったという。息子クリスチャンも父親の作品で助監督及び第2班監督を務め、「ピカソ・トリガー/エネミー・ゴールド指令」('93)で監督に進出した。
 その「ピカソ・トリガー/エネミー・ゴールド指令」。父アンディの作品との差別化を図ってか、ヒロインにはシダリス映画初出演のプレイメイト、スージー・シンプソンを起用。さらに元ミス・バージニアのタイ・コリンズやプレイメイトのキム・マリンを出演させているものの、実質的にヒロインをサポートするのはブルース・ペンホールとマーク・バリエールのイケメン二人。ということで、主人公たちのキャラクターが弱くなってしまい、しかも悪役がセックス・サイボーグ、ジュリー・ストレインという決定的にバランスを欠くキャスティングも災いして、何ともインパクトの足りない凡作になってしまった。
 さらに、続く「ピカソ・トリガー/ダラス・コネクション」('94)では、破壊兵器の開発を巡る女暗殺組織対男性連邦捜査官コンビという図式を新たに展開。ジュリー・ストレイン扮するブラック・ウィドー率いる凄腕の女アサシンども(ジュリー・K・スミス、ウェンディ・ハミルトン、サム・フィリップスなどなど)にイケメン捜査官たちが翻弄される。クリスチャンとしては、父アンディの作品とは全く違ったアプローチを試みようとしたのだろうが、残念ながら全くの不発に終わってしまっている。
 こうして、アンディ・シダリス不肖の息子クリスチャンの監督業進出は、たったの2本で終わってしまった。

 さて、最後にシダリス作品の名物美女(&美男)たちをザッと紹介してみたい。

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ドナ・スピアー

ホープ・マリー・カールトン

ロバータ・ヴァスケス

シンシア・ブリムホール

 まずはメイン・ヒロインたち。シダリス映画最多出演を誇るのがドナ・スピアーだ。1964年2月7日カリフォルニアの生まれ。1984年の3月に「プレイボーイ」誌のプレイメイト・オブ・ジ・マンスに選ばれて有名になった。いかにもヤンキーな感じのするアメリカ人好みのモデルで、映画「ドラグネット」('87)やテレビ「刑事コロンボ」にも端役出演しているらしい。
 次に初期シダリス作品のヒロインだったホープ・マリー・カールトン。あどけない顔立ちの清純タイプで、元プレイメイトとは思えない感じのモデル。1966年3月3日の生まれ。1985年7月のプレイメイト・オブ・ジ・マンスに選ばれている。現在は夫と共にユタ州で牧場を経営しているとのこと。
 そのホープ・マリー・カールトンに代わって、ドナの相棒となったのがロバータ・ヴァスケス。1963年2月13日の生まれで、1984年11月にプレイメイト・オブ・ジ・マンスに選ばれている。実は彼女、もともとカリフォルニア州警察の女性警察官だったという経歴の持ち主で、クリント・イーストウッド主演の「ルーキー」('90)などで警察官役を演じている。
 そして忘れちゃならない、シンシア・ブリムホール。一連のシダリス映画で唯一、歌って踊れる女捜査官として活躍した女性だ。1964年5月10日生まれで、1985年10月プレイメイト・オブ・ジ・マンスに選ばれている。決して歌が上手い人ではなかったものの、ヨーロッパの女優さんみたいな品の良さが他のプレイメイトとは一味違っていた。現在もCMやラスベガスのショーなどで活躍しているらしい。

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ジュリー・ストレイン

エヴァ・カデル

 次に、シダリス映画の異色のヒロインたちをご紹介。まずはジュリー・ストレイン。彼女をモデルにしたアメコミが作られるなど、今やアメリカでは泣く子も黙るカルト・スターだ。もともとボディビルのチャンピオンで、1993年には「ペントハウス」誌の最高の栄誉であるペット・オブ・ジ・イヤーに選ばれた無敵のセックス・シンボル。185センチという長身とボディビルで鍛えた肉体は向かうところ敵なしで、まるでサイボーグのような女性である。
 そして、シダリス映画で毎回ラジオDJエヴァとして登場するエヴァ・カデル。もちろんDJというのは仮の姿で、実は捜査官の一人なわけだが。そのエヴァ・カデル、実はアメリカではとても有名なセックス・カウンセラーで、ドクターの資格も持つ女性なのだ。ドクター・エヴァの名前でテレビやラジオに幾つも番組を持ち、医学に基づいたラブオイルやバイブレーターなどの開発・販売も行っている。本名をイディコ・エヴァ・ツァスというハンガリー人で、1956年6月15日ブダペストの生まれ。どういう経緯でシダリス作品の常連となったのかは不明だが、プレイメイトばりのセクシーなラブ・シーンも演じている。

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ブルース・ペンホール

マイケル・シェーン

 最後にシダリス映画常連のイケメン俳優を紹介しよう。まずはブルース・ペンホール。「白バイ野郎ジョン&パンチ」の最終シーズンで、パンチの新しい相棒キャデット役を演じた俳優。ただし、当時既に番組は視聴率急降下中で、たったの11エピソードの出演で打ち切りになってしまった。シダリス映画では当初「ピカソ・トリガー」のメカ・キチのチンピラ役で登場。「ピカソ・トリガー2/サベージ・ビーチ」で捜査官に昇格した。シダリス作品以外にはこれといった代表作もなく、「帰って来た!!白バイ野郎ジョン&パンチ」('98)を最後に引退している。
 もう一人、シダリス映画に数多く出演しているのがマイケル・シェーン。「ピカソ・トリガー2/サベージ・ビーチ」で、捜査官シェーン・アビレーン役として登場。以降、たびたび同役で顔を出している。ヌード・モデル出身らしく、「プレイボーイ」のハウ・トゥ・セックスものビデオにも出演している。

 ということで、80年代〜90年代に映画界のごく一部を席巻したシダリス印のビキニ・アクション映画。最近では、この手の低予算アクションが映画館で上映されることも滅多になくなってしまったが、改めて振り返ってみると娯楽映画としてはそれなりに面白かったのではないかとも思う。下らないけどやめられない、そんなジャクフード的な楽しさがなかなか捨てがたい。

レアな映像特典満載のアメリカ盤DVD-BOXシリーズ

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カラー作品/スタンダード・サイズ/ステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/298分(本編)/製作:アメリカ

映像特典
シダリス夫妻による音声解説
撮影風景ドキュメンタリー
出演者インタビュー
J・ストレインとシダリス監督による解説
未公開シーン集
フォト・ギャラリー
予告編  その他盛り沢山
DVD仕様(北米盤3枚組ボックス)
カラー作品/スタンダード・サイズ/ステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/289分(本編)/製作:アメリカ

映像特典
シダリス夫妻による音声解説
撮影風景ドキュメンタリー
出演者インタビュー
J・ストレインとシダリス監督による解説
未公開シーン集
フォト・ギャラリー
予告編  その他盛り沢山
DVD仕様(北米盤3枚組ボックス)
カラー作品/スタンダード・サイズ/ステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/298分(本編)/製作:アメリカ

映像特典
シダリス夫妻による音声解説
撮影風景ドキュメンタリー
出演者インタビュー
J・ストレインとシダリス監督による解説
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予告編  その他盛り沢山
DVD仕様(北米盤3枚組ボックス)
カラー作品/スタンダード・サイズ/ステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/289分(本編)/製作:アメリカ

映像特典
シダリス夫妻による音声解説
撮影風景ドキュメンタリー
出演者インタビュー
J・ストレインとシダリス監督による解説
未公開シーン集
フォト・ギャラリー
予告編  その他盛り沢山
収録作品
「マリブ・エクスプレス」
「グラマー・エンジェル危機一発」
「グラマラス・キラーズ」

収録作品
「ピカソ・トリガー」
「スパイ・エンジェルス」
「ピカソ・トリガー/ダラス・コネクション」

収録作品
「ピカソ・トリガー2/サベージ・ビーチ」
「ピカソ・トリガー/エネミー・ゴールド指令」
「ピカソ・トリガー/リーサル・エンジェルス」
収録作品
「ボディ・エンジェルス」
「グラマラス・ハンターズ」
「ピカソ・トリガー/デイ・オブ・ザ・ウォリアー」

 

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