AIP ベスト・セレクション
PART 2

 

怪人女ドラキュラ
Blood of Dracula
日本では劇場未公開・TV放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(イギリスPAL盤)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕:オランダ語・ドイツ語/地域コード:ALL/71分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:ハーバート・L・ストロック
製作:ハーマン・コーエン
脚本:エイベン・カンデル
撮影:モンロー・P・アスキンス
音楽:ポール・ダンラップ
出演:サンドラ・ハリソン
   ルイーズ・ルイス
   ゲイル・ギャンレイ
   ジェリー・ブレイン
   ヘザー・エイムス
   マルコム・アッタービュリー
   メアリー・アダムス
   トーマス・ブラウン・ヘンリー
   ドン・デヴリン
   ジーン・ディーン

 1950年代というのは、アメリカの歴史で初めてティーンエージャーが経済的な影響力を持つようになった時代。ロックン・ロールにリーゼント、ポニーテール、革ジャンなどティーンの文化が花開き、巨大なビジネス・マーケットを形成した。
 AIPもその流行に後れまいといち早くロックン・ロール映画を製作し、さらにはティーンのデート・スポットであるドライブ・イン・シアター向けに『心霊移植人間』(57/原題は“I Was A Teenage Werewolve”)や『怪人フランケンシュタイン/生きかえった死体』(57/原題は“I Was A Teenage Frankenstein”)といったティーン・モンスター物を生み出したわけだが、本作などはさしずめティーン版女バンパイア物といったところだろうか。
 ただし、ここで登場するバンパイアは普通(?)のバンパイアとはちょっと訳が違う。主人公は反抗期真っ盛りの女学生ナンシー。人間の持つ潜在的な破壊能力を原子力のようにエネルギーとして活用すべく研究する科学教師ブランディングは、ナンシーの攻撃的な性格に着目。そこで、ブランディングはカルパチア山脈に古くから伝わる魔除けのペンダントを使ってナンシーに呪いの催眠術をかけたところ、彼女は夜な夜な月の光を浴びて恐るべき女バンパイアへと変身し、友人の女学生たちを襲う・・・というわけだ。
 設定がチンプンカンプンで辻褄が合わないのは、この時代のこの手の低予算ホラーでは当たり前。呪いという極めて非科学的な手段で自らの科学的(?)理論を実証しようとする科学教師というのも本末転倒だが、そもそも魔除けのペンダントを使って呪いをかけるってのはアリなんですか?とか、結局人間をバンパイアにすることとエネルギー活用と何の関係があるんですか?とか、あれこれと突っ込みどころ満載な脚本を笑って許せるかどうかが評価(?)の分かれ目だろう。
 そんなわけで、主人公は呪いをかけられてバンパイアになってしまっただけ。だからということなのだろうか、犠牲者たちがバンパイアとなって蘇るようなこともない。そればかりか、不良女学生たちがメンチ切りあったり、近所のツッパリ少年たちと不純異性交遊したり、教師に隠れてパーティでロックン・ロールを踊ったりといった能天気な青春ドラマの方に重点が置かれており、基本的に全く怖くない。
 とりあえず、当時のティーンに受けそうなものをあれこれと突っ込んでみましたといった感じの古き良きB級プログラム・ピクチャー。いちいち目くじらを立てる必要もなかろう。

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全寮制の女学校に入れられたナンシー(S・ハリソン)

気性の激しいナンシーに一目置くマイラ(G・ギャンレイ)

女教師ブランディング(L・ルイス)がナンシーに呪いを

 18歳の少女ナンシー(サンドラ・ハリソン)は、最愛の母親が病死してから6週間も経たないうちに、父親(トーマス・ブラウン・ヘンリー)が再婚してしまったことが我慢ならない。“私にだって再婚する権利はある”と憤慨する父親は、意地の悪い継母(ジーン・ディーン)の味方だ。ナンシーの猛烈な反抗ぶりに手を焼いた二人は、彼女を全寮制の女学校へと入れることにした。
 転入先のシャーウッド女学院は、良家の子女を受け入れている由緒正しい名門。しかし、女学生たちは優等生のふりをした不良娘ばかりで、ナンシーも転校早々に手荒い歓迎を受ける。だが、ナンシーの気性の激しさは並大抵のものではなく、たちまち周囲から一目を置かれる存在に。しかし、一匹狼気質の彼女は、あえて周囲に溶け込もうとはしなかった。
 そんな彼女に目をつけたのが、科学を教える女教師ブランディング(ルイーズ・ルイス)。彼女は人間が潜在的に持つ破壊能力を原子力のようなエネルギーとして活用する研究を長年続けているが、男性社会の科学界ではまともに受け入れられることがなかった。自らの理論を実証すべく様々な実験を行ってきたが、被験者として適当な人物がなかなか見つからない。というのも、相当な意志の強さと激しい気性を持った人間でないと結果を出せないからだ。
 助手を務める女学生マイラ(ゲイル・ギャンレイ)にナンシーの話を聞いたブランディングは、彼女こそ理想的な実験台だと確信。カルパチア地方で800年以上に渡って伝わるという魔除けのペンダントを使い、ナンシーに呪いの催眠術をかけるのだった。
 ある晩、女学生たちは教師に内緒でパーティを開いた。近隣に住むツッパリ少年タブ(ジェリー・ブレイン)らを招き、ロックン・ロールに興じる女学生たち。その最中に、ナンシーは体調不良を訴えて部屋に戻った。やがて、寮母に気付かれてパーティーはお開きに。翌日の授業の準備をするために地下室へ行った女学生ノラ(ヘザー・エイムス)は、暗闇から現われた何者かによって殺害されてしまう。
 警察の検死結果によると、ノラの首筋には2つの傷跡があり、そこから全身の血液が抜き取られていた。まるで吸血鬼のような殺害方法に、捜査を担当するダンラップ刑事(マルコム・アッタービューリー)は首を傾げる。
 やがてハロウィンの日がやって来た。女学生たちは近所の墓地で肝試し大会を開催する。女学生テリー(シャーリー・デランシー)の目の前で、みるみるうちに恐ろしい形相に変貌するナンシー。彼女はブランディングのかけた呪いで、月の光を浴びるとバンパイアになってしまうのだ。テリーは無残にも殺され、たまたま通りがかったタブまでもが犠牲になってしまった。
 警察の捜査はますます難航・混乱するばかりだったが、ナンシーは自らの体の異変に薄々気付いていた。それが、ブランディングによってかけられた催眠術に起因していることも。父親に無理やり引き離された恋人グレン(マイケル・ホール)と再会した彼女は、ブランディングと対決する決意を固めるのだったが・・・。

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自慢のノドを聞かせる不良少年タブ(J・ブレイン)

地下室でノラ(ヘザー・エイムス)が殺害される

呪いでバンパイアに変身したナンシー

 監督は『怪人フランケンシュタイン/生きかえった死体』や『怪物を作る男』(58)など、AIP製作のB級モンスター映画でお馴染みのハーバート・L・ストロック。製作はB級映画界の名物プロデューサー、ハーマン・コーエンが手掛け、そのコーエンの製作した『黒死館の恐怖』(59)や『巨大猿怪獣』(61)などで知られるエイベン・カンデルがラルフ・ソーントン名義で脚本に参加している。
 さらに、AIPの“Sorority Girl”(57)や“This Rebel Breed”(60)などの非行少年・少女ものを手掛けたモンロー・P・アスキンスが撮影を担当し、サミュエル・フラーの『ショック集団』(63)や『裸のキッス』(64)で知られるポール・ダンラップがロックン・ロールとジャズを織り交ぜたグルーヴィーな音楽スコアを書いている。

 主人公ナンシー役を演じているサンドラ・ハリソンは、これが唯一の映画主演作。グロテスクなドラキュラ・メイクは妙にハマっているが、あまり主役を張るようなタイプの女優とは言えないだろう。かえって、不良少女マイラ役を演じているゲイル・ギャンレイの方が、カメラ映えするフォトジェニックなブルネット美人。彼女は名作『明日泣く』(55)で大女優スーザン・ヘイワードの娘時代を演じていた女優さんだ。
 また、当時AIPは赤狩りの犠牲となったハリウッド俳優たちの重要な受け皿になっていたのだが、女教師ブランディング役を演じているルイーズ・ルイスやソーンダイク校長役を演じているメアリー・アダムスも、共産主義者の嫌疑をかけられてメジャー・スタジオを追われた人々。特にアダムスは巨匠ロバート・ワイズの名作『重役室』(54)で評価されたベテラン脇役女優なだけに、生活のためとはいえこんな映画に出なくてはいけないというのは苦痛だったに違いない。
 そのほか、パーティで自慢のノドを聞かせるツッパリ少年タブ役には、恐らく当時ジェリー・リー・ルイス路線のアイドル・シンガーとして売り出されていたのであろう無名の新人歌手ジェリー・ブレインが登場。B級SF映画の軍人や科学者役でお馴染みのトーマス・ブラウン・ヘンリー、メジャー映画から独立系の低予算映画まで数え切れないほどの映画に出演した脇役俳優マルコム・アッタービューリー、40年代に雑誌『エスクワイア』のファッション・モデルとして活躍したジーン・ディーンらが脇を固めている。

 

巨人獣
War of the Colossal Beast (1958)
日本では1960年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(イギリスPAL版)
モノクロ(一部カラー)/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕
:オランダ語・ドイツ語/地域コード:A
LL/68分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:バート・I・ゴードン
製作:バート・I・ゴードン
原案:バート・I・ゴードン
脚本:ジョージ・ワーシング・イェーツ
撮影:ジャック・マータ
音楽:アルバート・グラッサー
出演:サリー・フレイザー
   ロジャー・ペイス
   ディーン・パーキン
   チャールズ・スチュワート
   ラス・ベンダー
   リコ・アラニス
   ジョージ・ベクワー

 『生きていた人形』(58)や『巨大生物の島』(76)など、人間や動物を大きくしたり小さくしたりするのが大好きなバート・I・ゴードン監督。そんな彼の出世作(?)となった巨人映画『戦慄!プルトニウム人間』(57)の続編に当たるのが、この『巨人獣』という作品である。
 プルトニウム爆弾の放射能を浴びて巨大化したマニング大佐。前作のクライマックスでダムから落下して死んだものと思われたが、遠く離れたメキシコで生きていることが確認される。しかも、落下のショックで片目が潰れて顔面の骨が飛び出し、過去の記憶も完全に失い、凶暴な巨大モンスターと化していた。なんとかもとの姿に戻そうと彼を祖国に連れ帰る妹ジョイスとアメリカ軍だったが、マニング大佐は隙をみて脱走。ロサンゼルスの街を恐怖に陥れることとなる。
 とまあ、基本的なストーリーは『キングコング』のバリエーション。エンパイア・ステートビルのキングコングよろしく、脱走したマニング大佐がグリフィス天文台の上で暴れまくるクライマックスが最大の見せ場だ。前作は巨大化して次第に理性を失っていく大佐の不安や恐怖を軸にした人間ドラマで見せる部分も多かったが、今回は純粋な意味でのモンスター映画に仕上がっている。
 ただ、やはり極端な低予算で作られていることは明らかで、余計なサイドストーリーで時間稼ぎをしているという印象は否めない。特に、前作のハイライトを見せる中盤の回想シーンは必要なかった。一気にストーリーが中だるみしてしまうし、なによりもマニング大佐を演じている役者が別人であることがバレバレ。
 そうえいば、前作ではマニング大佐には身寄りがないという設定になっていたにも関わらず、本作では彼の妹が登場する。当時は『戦慄!プルトニウム人間』の続編であることを伏せて劇場公開されたというが、それにしても大雑把というか、いい加減な感覚で作られた映画だ。
 なので、ストーリーもディテールも極めてアバウト。最大の見どころは特撮なわけだが、こちらも巨大人間がノッシノッシと歩く姿を背景に合成しているだけという安易なシーンが多く、それなりのスペクタクルが堪能できるのは終盤以降のことだ。ただ、半分骸骨化したマニング大佐の特殊メイクは悪くない。
 ちなみに、ロサンゼルス空港から脱走したマニング大佐が、次に発見されたのはグリフィス・パーク。その間にダウンタウンやらハリウッドやらといった市街地を通っていかねばならないはずなのだが、あの巨体でどうやって誰にも気付かれずにたどり着くことが出来たのか?本作の最大の謎である(笑)

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ショック状態で発見されたメキシコ人の少年

巨大化した兄の行方を捜すジョイス(S・フレイザー)

凶暴化したマニング大佐(D・パーキン)

 メキシコのとある小さな町。トラックで食料を運んでいた少年ミゲル(ロベルト・エルナンデス)が、砂漠で倒れているところを発見された。彼はショック状態で人々の呼びかけにも応じず、現場には運転していたはずのトラックも残されていない。
 ロサンゼルスのホテルでそのニュースを知ったジョイス(サリー・フレイザー)は、行方不明の兄が事件に関わっているのではないかと考える。彼女の兄マニング大佐は放射能の影響で巨大化し、ラスベガス郊外のダムから落下して姿を消した。世間は既に死んだものと考えていたが、彼女だけは兄がまだ生きていると信じていた。
 早速メキシコへと向かったジョイスは、悪夢にうなされたミゲルが“巨大な男”と口走るのを聞く。するさま、兄の友人だったベアード少佐(ロジャー・ペイス)や科学者カーマイケル博士(ラス・ベンダー)を呼び寄せた彼女は、地元警察のムリロ巡査(リコ・アラニス)にミゲルが発見されたという場所へ案内してもらう。
 付近を探索すると、マニング大佐のものと思われる巨大な足跡が発見された。さらに、崖の下にはトラックの残骸が。調査はいったん打ち切られたが、諦めずに探索していたジョイスとベアード少佐の前に、凶暴化したマニング大佐(D・パーキン)が姿を現した。ダムから落下した衝撃のせいで、顔半分の骨がむき出しとなり、片目が潰れてしまっている。
 どうやらマニング大佐は食料を探しているようだった。カーマイケル博士のアイディアで睡眠薬を混ぜた巨大なパンを食べさせ、軍隊は彼を生け捕りにすることに成功した。
 かくして、祖国アメリカへと運ばれてきたマニング大佐。だが、どこにも彼を受け入れてくれる施設がなく、仕方なしに軍隊はマニング大佐を空港の敷地内にある倉庫で厳重な監視下に置く。どうやら彼は過去の記憶を全て失っているらしく、もはや動物的な本能しか残されていない様子だった。様々な実験を試みるものの、なかなか効果的な治療法は見つからなかった。
 一度は脱走を企てたマニング大佐を取り押えた軍隊だったが、監視の目を緩めた隙に行方をくらましてしまう。やがて、グリフィス・パークの付近で目撃情報が入り、武装した陸軍が急行する。マニング大佐は山頂のグリフィス天文台に現われ、見学に訪れていた小学生たちの乗ったスクール・バスを襲う。子供達を救うために天文台へと向かったジョイスは、決死の覚悟で兄に話しかけるのだったが・・・。

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軍隊はマニング大佐を厳重な監視下に置く

大佐脱走の知らせを受けるベアード少佐(R・ペイス)

グリフィス天文台に現われたマニング大佐

 例によって例のごとく、監督から製作、原案、特撮までバート・I・ゴードンが一手に引き受けた本作。特撮には愛妻フローラが協力。脚本にはゴードン映画の常連で、『水爆と深海の怪物』(55)などレイ・ハリーハウゼン作品でもお馴染みのジョージ・ワーシング・イェーツが参加している。
 さらに、撮影をスピルバーグの『激突!』(71)で知られるカメラマン、ジャック・A・マータが担当。彼は30年代から数多くのB級ウェスタンやフィルム・ノワールを手掛けてきた大ベテランだ。
 また、美術監督には『キャット・ピープル』(42)をはじめとするヴァル・リュートン製作のRKOホラーで有名なウォルター・E・ケリー、特殊メイクには『ベン』(72)や『死霊伝説』(79)などを手掛けたジャック・H・ヤングが参加。さらに、ゴードン作品の常連であるアルバート・グラッサーが音楽スコアを手掛けた。

 ヒロインのジョイス役を演じたサリー・フレイザーは、ロジャー・コーマンの『金星人地球を征服』(56)にも出演していた女優。続くゴードン監督の『吸血原子蜘蛛』(58)にもチラリと顔を出している。
 そのジョイスに想いを寄せるベアード少佐役を演じているロジャー・ペイスは、これが最初にして最後の大役だった無名俳優。マニング大佐役のディーン・パーキンは、同じくゴードン監督の巨人映画“Cyclopse”(47)でも巨人役を演じていた。

 

 

怪物を造る男
How To Make A Monster (1958)

日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(イギリスPAL版)
モノクロ(一部カラー)/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕
:オランダ語・ドイツ語/地域コード:A
LL/73分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:ハーバート・L・ストロック
製作:ハーマン・コーエン
脚本:ハーマン・コーエン
   エイベン・カンデル
撮影:モーリー・ガーツマン
音楽:ポール・ダンラップ
出演:ロバート・H・ハリス
   ポール・ブリネガー
   ゲイリー・コンウェイ
   ゲイリー・クラーク
   マルコム・アッタービューリー
   デニス・クロス
   モリス・アンクラム
   ポール・マクスウェル
   エディ・マー
   ヘザー・エイムス
特別出演:ジョン・アシュレイ

 映画会社専属の特殊メイク・アーティストが突然解雇されることとなり、自分に三行半を突きつけた新しい経営者を次々と殺害するというお話。で、そのやり口が凝っているというか、ややこしいというか、回りくどいというか(笑)
 彼は特殊な薬品を混ぜたファンデーションで若手俳優たちに狼男やフランケンシュタインの怪物の特殊メイクを施す。で、この薬品には催眠効果があり、特殊メイクをした若手俳優たちは自分が本物のモンスターだと思い込み、指示された通りに殺人を実行するというわけだ。
 なにもそんな手の込んだ真似をしなくても・・・と言いたいところだが、そこがこの映画の見せ場なだけに致し方あるまい(笑)最後は完全犯罪を目論む特殊メイク・アーティストが、過去に自分の手掛けたモンスター・スーツをところ狭しと飾った自宅に若者たちを招き、彼らをなき者にしようと『肉の蝋人形』さながらの大団円が繰り広げられることと相成る。
 これはもう殆んど内輪のジョーク的なノリで作られた作品と言っていいだろう。舞台となる映画会社はアメリカン・インターナショナル・スタジオということで、AIP(アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ)をモデルにしていることは明らか。AIPのロサンゼルス・スタジオがそのままロケ地として使用されている。で、撮影中の映画が『心霊移植人間』の狼男と『怪人フランケンシュタイン/生きかえった死体』のフランケンシュタインの怪物が共演するシリーズ3作目という設定で、それぞれの作品で使われたモンスター・スーツがそのまま再利用されている。
 さらに、スタジオを見学に来た観光客が案内されるのは、新作映画『黒死館の恐怖』の撮影現場。これは、製作者ハーマン・コーエンが翌年イギリスで撮ることになるホラー映画だ。クライマックスでは、『金星人地球を征服』のカニ金星人やら『怪物の女性/海獣の霊を呼ぶ女』のシー・クリーチャーといったAIPホラーお馴染みのモンスター・スーツが勢ぞろいする。
 そんなこんなで、コアなホラー映画ファンなら思わずニンマリしてしまうような内輪ネタが満載。ストーリーは呆れてしまうくらいにバカバカしいし、ハーバート・L・ストロック監督の演出もお粗末なことこの上ないが、なぜだか許せてしまうのはマニアの哀しい性か(笑)
 ちなみに、本作はラストの約20分だけテクニカラーで撮影されている。また、後にスティーヴン・カルプ主演のテレビ映画『魔界覇王』(01)としてリメイクもされた。

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ベテランの特殊メイク・マン、ピート(R・H・ハリス)

会社の経営方針転換でクビを言い渡されてしまう

自分を本物の狼男と信じて凶行に及ぶラリー

 アメリカン・インターナショナル・スタジオの特殊メイク・アーティストとして25年間もの間、ホラー映画のモンスター作りに情熱を注いできた中年男ピート・ドラモンド(ロバート・H・ハリス)。ところが、会社はニューヨークからやって来たビジネスマン・コンビに買収され、今後はミュージカル映画の製作に専念するということで、ピートの務める特殊メイク部門は廃止されることになってしまった。
 モンスター映画の時代は終ったとうそぶく新経営者クレイトン(ポール・マクスウェル)とニクソン(エディ・マー)に、怒りの収まらないピート。浮き沈みの激しい業界を生き抜いてきた彼にとって、よそからやって来た素人が偉そうに振舞うのは我慢ならない。そればかりか、自分が人生を賭けてきた仕事を奪おうとしている。復讐心に燃える彼は、助手のリヴェロ(ポール・ブリネガー)と共に、ある恐ろしい計画を実行に移すことにした。
 特殊メイク用の様々な薬品を独自に開発してきたピートは、過去に塗るだけで強い催眠効果のある薬品を偶然作ってしまったことがあった。しかも、薬品をふき取ってしまえば、催眠中の記憶は一切残らないという優れモノだった。
 彼はその薬品をファンデーションの中に混ぜ、撮影中の映画で狼男役を演じている若者ラリー(ゲイリー・クラーク)の特殊メイクで使用する。すると、自分が本物の狼男であると思い込んだラリーはピートに指示された通り、試写室の暗闇でニクソンを殺害する。
 殺害現場を検証した警察は大いに戸惑う。とても人間の仕業とは思えないような力で首がへし折られており、野獣かなにかに襲われたような傷が残されているからだ。一方のラリーは体に妙な倦怠感を感じるが、ニクソンを殺害したときの記憶は全くない。
 見事に完全犯罪が成功したと思ったピートだったが、警備員のモナハン(デニス・クロス)が事件当夜にスタジオへ出入りした人物のリストを手帳にメモしていた。それを警察に渡されては足がつくと慌てたピートは、自ら薬品を使った特殊メイクを施し、モナハンを血祭りに上げる。
 次に、ピートはフランケンシュタインの怪物役を演じている若手俳優トニー(ゲイリー・コンウェイ)にも、同じように薬品を使った特殊メイクを施した。自分が怪物だと思い込んだトニーは、クレイトンを自宅ガレージで殺害する。
 ところが、現場から走り去るトニーの姿をクレイトンのメイドが目撃していた。その証言から犯人が特殊メイクをしていると睨んだ警察のハンコック刑事(モリス・アンクラム)は、死体に残された異物とピートの特殊メイク・ラボに残された薬品の成分を比較。すると、見事に一致した。
 ピートが犯人であることを突き止めた警察は、早速スタジオへ逮捕に向かう。しかし、ラボは既にもぬけの殻だった。その頃、ピートは自らの引退を祝うためと称して、助手のリヴェロとラリー、トニーの3人を自宅へ招いていた。そこは、過去に彼の手掛けたモンスター・スーツがところ狭しと並んでおり、まるでお化け屋敷のような邸宅。秘密を知っているリヴェロを殺害したピートは、さらに万全を期すため、ラリーとトニーまで始末しようとしていた・・・。

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歌とダンスを披露するジョン・アシュレイ

ピートはトニー(G・コンウェイ)にも特殊メイクを

自分をフランケンシュタインの怪物と思い込んだトニー

 監督、製作、脚本、音楽は『怪人フランケンシュタイン/生きかえった死体』や『怪人女ドラキュラ』と同じトリオ。ただし、エイベン・カンデルは今回はケネス・ラングトリーという変名を使用している。
 さらに、撮影にはベイジル・ラズボーン主演のシャーロック・ホームズ・シリーズや『アリババの復讐』(52)を筆頭とするパイパー・ローリー主演の活劇映画で知られるカメラマン、モーリー・ガーツマンを起用。特殊メイクには当時AIP専属だったフィリップ・シーアが参加している。

 主人公ピート役には、50年代の人気ファミリー・ドラマ“The Goldbergs”(53〜56)のお父さん役で親しまれたロバート・H・ハリス。その助手リヴェロには、日本でも大ヒットした西部劇ドラマ『ローハイド』(59〜65)の料理係ウィッシュボーン役で有名なポール・ブリネガーが扮している。
 さらに、フランケンシュタインの怪物に扮する若手俳優トニー役には、その後刑事ドラマ『バークにまかせろ』(63〜65)の2枚目刑事ティルソン役で有名になるゲイリー・コンウェイ。一方の狼男に扮するラリー役のゲイリー・クラークも、後に西部劇ドラマ『バージニアン』(62〜64)で知られるようになった。
 そのほか、『惑星アドベンチャー/スペース・モンスター来襲!』(53)などSF映画やホラー映画の軍人役として有名なモリス・アンクラムがハンコック刑事を、『怪人女ドラキュラ』にも出ていたマルコム・アッタービューリーが年長の警備員リチャーズ役を、『宇宙船XL-5』(61)や『キャプテン・スカーレット』(67)などジェリー・アンダーソン製作の特撮人形劇の声優として有名なポール・マクスウェルがクレイトン役を演じている。
 また、『半獣要塞ドクター・ゴードン』(72)などエディ・ロメロ監督のフィリピーノ・ホラーで有名な俳優ジョン・アシュレイが、特別ゲストとして歌とダンスを披露。当時彼はAIPがイチオシで売り出そうとしていたアイドル・スターで、その後『ムキムキ・ビーチ』(64)や『ビキニ・ガール・ハント』(65)などのビーチ物で活躍したが、いつの間にかゲテモノ路線へと鞍替えしていった人だった。

 

 

脳を喰う怪物
The Brain Eaters (1958)

日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(イギリスPAL版)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕:オランダ語・ドイツ語/地域コード:ALL/60分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:ブルーノ・ヴェソタ
製作:エドウィン・ネルソン
製作総指揮:ロジャー・コーマン
脚本:ゴードン・アークハート
撮影:ローレンス・レイモンド
音楽:トム・ジョンソン
出演:エド・ネルソン
   アラン・フロスト
   ジャック・ヒル
   ジョアンナ・リー
   ジョディ・フェア
   デヴィッド・ヒューズ
   ロバート・ボール
   レナード・ニモイ

 そのタイトルの通り、人間の脳を喰って寄生するモンスターと人類の闘いを描いたSFホラー。とはいっても、そんな大そうなスケール感があるわけでもなく(笑)人影もまばらな田舎町を舞台にした地味でセコい侵略劇が繰り広げられていく。使い古しのスリッパみたいなクリーチャーが出てくることから、アメリカでは“Attack of the Bunny Slipper(ウサギ・スリッパの来襲)”なる別名で親しまれて(?)いるという激安ポンコツ映画だ。
 イリノイ州の田舎で宇宙船らしき未確認物体が発見されたところから物語は始まる。やがて、近隣に住む人々(といっても4〜5人だけ)が奇妙な行動を取るように。まるで何者かに操られているかのように、無表情・無感情の人間ロボットとなってしまったのだ。彼らの後頭部の首筋には奇妙な突起物が。しかも、そいつはモゴモゴと動いている。
 実は、彼らは脳髄に寄生して人間を操るというモンスターに体を乗っ取られていたのだ。未確認物体を調査すべく町を訪れたケタリング博士やパワーズ上院議員らだったが、いつの間にか町は侵略者たちによって支配され、外界との連絡手段も途絶えてしまった。果たして、この恐るべき怪物たちの正体とは?そして、その目的とは何なのか!?
 ということで、『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(56)に代表される侵略型SFホラーの系譜に分類されるべき作品であることは間違いないだろう。本作の最大の特徴はモンスターが宇宙からやって来たエイリアンなどではなく、実は何万年ものあいだ地中の奥深くに眠っていた太古の生物であるということ。ただし、映画としての出来ばえを考えれば、だからどうしたという程度のオチではあるのだけれど(笑)
 ちなみに、本作は基本プロットがSF小説の大家ロバート・A・ハインラインの名作『人形つかい』にソックリであることから、当時ハインライン本人から著作権侵害の疑いで提訴されている。製作総指揮のロジャー・コーマンは“そんな小説知りません”としらばくれようとしたらしいが、結局は5000ドルの和解金で片を付けたという。

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イリノイ州の田舎で発見された未確認物体

パワーズ上院議員(J・ヒル)が調査に訪れる

光る水槽を手に町を徘徊する男

 恋人エレイン(ジョディ・フェアー)と休暇を楽しんだ帰り道、町長の息子グレン・キャメロン(アラン・フロスト)は森の中にそびえ立つ奇妙な物体を発見する。それはまるで宇宙船のような金属の塊で、辺りには動物の死骸が散らばっていた。
 未確認物体発見の報告を受けたワシントンのパワーズ上院議員(ジャック・ヒル)は、早速イリノイ州の小さな町リヴァーデイルへと向かった。そこでは、既にケタリング博士(エド・ネルソン)とワイラー博士(デヴィッド・ヒューズ)、そしてケタリング博士の秘書アリス(ジョアンナ・リー)らが、未確認物体の調査を始めていた。ケタリング博士によると、その物体は未知の金属で出来ているという。パワーズ上院議員はエイリアンの地球侵略を疑った。
 異変はすぐに起きた。調査の中止を命じたグレンの父親キャメロン町長(オーヴィル・シャーマン)が、突然暴れ始めた挙句に射殺されたのだ。その首の後ろには不可解な傷跡が残されていた。ケタリング博士は、射殺される直前の町長の首に奇妙な突起があったこと、銃弾に倒れた町長の体から何かが飛び出していったことに気付いていた。
 その頃、不気味に光る水槽を持った男が町中を徘徊し、警官や電話オペレーターなどを次々と襲っていた。実は、その水槽には恐るべきモンスターが隠されていたのだ。怪物は人々の脳髄に寄生してその脳を喰らい、意のままに操っていたのである。
 調査を妨害しようとした警官を射殺したケタリング博士は、その死体から逃げ出そうとしたモンスターを捕獲。ようやく町で何が起きているのかを理解し始めた。ところが、秘書のアリスまでもがモンスターの餌食に。
 この緊急事態をワシントンへ知らせようとしたパワーズ上院議員だったが、回線を外部へ繋ぐ電話オペレーターたちは既にモンスターによって支配されていた。さらに、森の中でヘルシングマン教授(ソール・ブロンソン)という老人が発見される。
 ヘルシングマン教授は同僚のコール教授(レナード・ニモイ)と共に、5年前に行方不明になったままの人物だった。衰弱した状態のヘルシングマン教授の口から、モンスターの正体が語られる。それは、太古の昔から地球に棲息する未知の生物だというのだ。
 意を決して未確認物体の中へと入っていったケタリング博士は、そこでコール教授の姿を発見。教授はモンスターたちの恐るべき目的を語り始める・・・。

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調査を進めるケタリング博士(E・ネルソン)

死亡した人々の首には不可解な傷跡が

行方不明だったコール教授(L・ニモイ)

 本作の製作を担当したのは、主演も兼ねている俳優のエド・ネルソン。日本でも大ヒットしたテレビ・ドラマ『ペイトン・プレイス物語』(64〜69)の主人公マイケル役で有名な2枚目スターだ。もともとロジャー・コーマン作品の常連俳優として頭角を現した人で、本作ではその師匠を見習って自ら製作も手掛けている。例のスリッパみたいなモンスターも、彼自身が古着のコートから切り取った毛皮とパイプ・クリーナーを使って手作りしたものだったそうだ。
 監督のブルーノ・ヴェソタも本業は俳優で、ロジャー・コーマン作品の脇役としてお馴染みの顔。師匠の手ほどきのもと“Female Jungle”(55)で演出にも手を染め、これが2本目の監督作だった。
 そのほか、脚本のゴードン・アークハートも本来は無名俳優だったみたいだし、撮影のローレンス・レイモンドも元々は独立系の脚本家兼製作者で、これがカメラマンとしての初仕事。音楽のトム・ジョンソンや美術のバート・ションバーグに至っては、これが映画界での唯一の仕事だった。要は、映画製作に関してはほとんど素人に近いような面々が集まって撮った作品だったというわけだ。

 ということで、主演のエド・ネルソン以外のキャストも、ほとんどが映画界での経験の浅い無名俳優ばかり。唯一の例外が、パワーズ上院議員役のジャック・ヒルである。実は、このジャック・ヒルという名前は偽名。その正体は、『密告者』(35)や『駅馬車』(39)といったジョン・フォード作品などで端役を務めてきたベテラン俳優コーネリアス・キーフだ。彼は独立系の低予算B級映画に出演する際だけ、ジャック・ヒルという偽名を使っていたという。やはり生活のためとはいえ、この種の映画に出演するのはためらいがあったのかもしれない。なので、『残酷女刑務所』(71)などで有名なコーマン組のカルト映画監督ジャック・ヒルとは全くの別人なのでご注意を。
 また、後に『スター・トレック』のスポック役や『スパイ大作戦』のパリス役で有名になる名優レナード・ニモイが、行方不明だった老科学者コール教授役としてクライマックスに登場。ただし、カツラとヒゲで顔が覆われてしまっているため、ほとんど本人だとは分からない。
 そのほか、秘書アリス役のジョアンナ・リーはエド・ウッド監督の『プラン9フロム・アウター・スペース』(59)を経てテレビの女流脚本家として成功。町長役のオーヴィル・シャーマンも、後にメジャー・スタジオの作品で端役を演じるようになったようだ。

 

 

吸血原子蜘蛛
Earth vs. the Spider (1958)

日本では1962年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(イギリスPAL版)
モノクロ/スタンダード・サイズ/モノラル/音声:英語/字幕:オランダ語・ドイツ語/地域コード:ALL/72分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:バート・I・ゴードン
製作:バート・I・ゴードン
原案:バート・I・ゴードン
脚本:ラズロ・ゴログ
   ジョージ・ワーシング・イェーツ
撮影:ジャック・マータ
音楽:アルバート・グラッサー
出演:エド・ケンマー
   ジューン・ケネディ
   ユージン・パーソン
   ジーン・ロス
   ハル・トレイ
   ジューン・ジョセリン
   ミッキー・フィン
   サリー・フレイザー

 さてさて、人間でも動物でも大きくしちゃったり小さくしちゃったりするのが大好きなバート・I・ゴードン監督。こちらは、そんな彼の手掛けたジャイアント・スパイダーものパニック映画である。アメリカの片田舎の洞窟で発見された巨大な蜘蛛が大暴れし、閑静な地方都市を恐怖のどん底に突き落とすというお話だ。
 基本的なプロットは『巨人獣』と同じく、『キングコング』を下敷きにしたオーソドックスなもの。秘境で発見された巨大モンスターを都会へ持ち帰ったところ、街中へ飛び出して大パニックを引き起こしてしまう。本作ではさらに高校生を主人公に設定し、ロックン・ロールとダンスのミュージカル・シーンまで用意するなど、ちゃっかりとティーン・マーケットを意識したB級エンターテインメントに仕上がっている。
 この手のジャイアント・スパイダーものであれば、ユニヴァーサルの『タランチュラ』の方が遥かにスケールが大きくて完成度が高いし、巨大モンスターもの全般を見渡してみてもワーナーの『放射能X』(54)や『黒い蠍』(57)といった大作と比べると明らかに見劣りがする作品ではある。街中を暴れる巨大な蜘蛛にしたって、本物のタランチュラが動き回っている様子を背景に合成しただけのお粗末なものだ。
 とはいえ、当時のAIPのような弱小インディペンデント会社の作品としては、本作のパニック・シーンにおけるスケール感などは上出来な部類。巨大蜘蛛の潜んでいる洞窟シーンなどはしっかりと怖いし、ショッキングな見せ場もちゃんと用意されているし、ロックン・ロールあり、ダンスあり、アクションあり、パニックあり、お笑いありと、とにかく観客を飽きさせないような工夫が全編に渡って凝らされている。
 上映時間そのものが72分と短めではあるが、このテンポの良さでさらに短く感じることだろう。この時期、AIPは他にも巨大モンスター物を幾つも製作しているが、その中でも本作は抜群に面白い。低予算映画のお手本とも言うべき作品だ。

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父親を捜すキャロル(J・ケニー)と恋人マイク(E・パーソン)

洞窟の中で巨大な蜘蛛を発見する

二人は学校の科学教師キングマン(E・ケンマー)に相談する


 真夜中の田舎道を走る一台の車。ドライバーの中年男性ジャック・フリン氏(メリット・ストーン)は、娘の誕生日プレゼントにブレスレットを購入して自宅へ帰る途中だった。すると、いきなり車は何かにぶつかり、フリン氏は断末魔の叫び声をあげる。
 その翌日、父親が帰ってこないことを心配した女子高生キャロル(ジューン・ケニー)は、ボーイフレンドのマイク(ユージン・パーソン)を連れて父親の足取りを追った。すると、道端で巨大な縄のようなものを発見する。さらに、そこからちょっと外れた道路脇の崖下に、父親の乗っていた車が大破しているのを見つけた。父親の姿が見えないことから、怪我をして近くに倒れているのではないかと心配したキャロル。
 しばらく歩いていくと、二人は巨大な洞窟を発見する。この中に父親が隠れているのではないか。そう考えた二人は、恐る恐る中へと入っていく。すると、そこには人間の骨が散乱していた。さらに奥へと進んだ二人は、巨大な蜘蛛の巣に囚われてしまう。道端で見つけた大きな縄みたいなものは蜘蛛の糸だったのだ。そこへ現われた巨大な蜘蛛。二人は命からがら洞窟を逃げ出す。
 警察へ駆け込んだキャロルとマイクだったが、当然のごとく笑ってあしらわれてしまい、学校の科学教師キングマン(エド・ケンマー)に相談する。二人から巨大な蜘蛛の糸を見せられたキングマンは、彼らの話に信憑性があるように感じた。
 そこで、彼はケイグル保安官(ジーン・ロス)を説得し、フリン氏の捜索という名目で洞窟調査に乗り出す。洞窟へと入っていくキングマンとキャロル、マイク、そしてケイグル保安官と警官隊。そこで彼らは変わり果てたフリン氏の遺体を発見した。
 さらに奥へと進んでいった彼らの前に現れた巨大な蜘蛛。激しい銃撃の末、警官隊は万が一の場合に備えて用意していた大量の殺虫剤で巨大蜘蛛を倒すことに成功した。
 この巨大蜘蛛を研究材料として標本にしたいと考えたキングマンは、学校の体育館へと蜘蛛を運ばせた。他に保管場所として適した施設が町にはないからだ。マスコミの取材も殺到し、学校周辺は騒然とした雰囲気に包まれる。
 一方、学園祭を控えた高校生たちは、ロック・バンドのリハーサルで体育館が使えなくなったことに不満を持っていた。管理人をうまく説得した彼らは、こっそりと体育館に忍び込んでリハーサルを始める。その音につられて、多くの学生たちが集まってダンス・パーティが繰り広げられた。
 すると、その騒音に刺激されたのか、死んだと思われていた巨大蜘蛛が突如として動き始めた。悲鳴を上げて体育館から逃げ出す学生たち。巨大蜘蛛は街中へと飛び出し、狂ったように暴れまわる。人々は逃げまどい、町は大パニックへと陥る。
 蜘蛛が洞窟へと向かっていることに気付いたキングマンとケイグル保安官は、ダイナマイトで洞窟の入り口を塞ぐことを考える。ところが、その頃父親が買ってくれた誕生日プレゼントのブレスレットを探すため、キャロルとマイクの二人は洞窟の中にいたのだ・・・。

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変わり果てた父親の死体を発見する

学校の体育館へと運ばれた巨大蜘蛛の死骸

息を吹き返した巨大蜘蛛が街で大暴れする

 今回もゴードン監督自身が監督、製作、原案、特撮を手掛け、SF特撮映画でお馴染みのジョージ・ワーシング・イェーツが脚本を手掛けている。また、ジョーン・フォンテイン主演のラブ・コメディ『失恋四人男』(45)でオスカーにノミネートされたラズロ・ゴログが脚本に参加しているのも興味深い。
 撮影のジャック・マータや音楽のアルバート・グラッサー、セット・デザインのウォルター・E・ケリーも『巨人獣』と同じ顔ぶれ。もちろん、特撮には監督の愛妻フローラも参加している。

 高校の科学教師キングマンを演じているのは、50年代に生放送で人気を博したSFドラマ“Space Patrol”(51〜56)のヒーロー役で知られる俳優エド・ケンマー。女子高生キャロル役のジューン・ケニーは、同じくゴードン監督の特撮映画『生きていた人形』(58)でもヒロイン役を演じていた。
 そのほか、後にブロードウェイの舞台製作者として成功したユージン・パーソンがマイク役を、“スリー・ストゥージス(三ばか大将)”主演の映画シリーズで憎まれ役を演じ続けた名優ジーン・ロスがケイグル保安官役を、『巨人獣』のサリー・フレイザーがキングマンの妻役を演じている。

 

 

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