AIP ベスト・セレクション
PART 1

 

 AIPとはアメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ(American International Pictures)の略。1950年代から70年代にかけて数多くの低予算映画を製作し、アメリカでも最大手の独立系スタジオとして一時代を築いた映画会社のことである。
 創設者はジェームズ・H・ニコルソンとサミュエル・Z・アーコフ。ニコルソンはサンフランシスコの映画館でアルバイトを始めたのをきっかけに業界入りし、映画館の経営を経てリアルアートという配給会社のセールス・マネージャーをしていた。一方のアーコフは弁護士をする傍らで友人とプロダクションを立ち上げ、映画やテレビ・ドラマの企画・製作を手掛けていた。
 タイトル盗用問題でアーコフがリアルアートへ抗議に訪れたことから2人は知り合い、なぜか意気投合してARC(アメリカン・リリーシング・コーポレーション)という映画会社を54年に設立する。これがAIPの前身だった。第1回配給作品はロジャー・コーマン製作の“The Fast and the Furious”(55)。そう、ヴィン・ディーゼル主演『ワイルド・スピード』(01)の元ネタとなった作品だ。これをきっかけに、ニコルソンとアーコフはロジャー・コーマンと密接な関係を築いていくこととなる。
 56年にAIPへと社名を変更したものの、B級映画の配給ビジネスはなかなか軌道には乗らなかった。そこで、ニコルソンとアーコフの2人は当時の映画関係者が考えもしなかったマーケットに目をつける。まず彼らが着目したのはティーンエイジャー層。取引先の映画興行主たちから映画観客の大半が10代の若者であることを聞いた彼らは、ティーンにターゲットを絞った映画製作に乗り出す。それがロックンロール映画であり、SFモンスター映画であり、非行少年・少女映画だった。
 さらに、彼らはティーンがデートコースやたまり場にしているドライブ・イン・シアターに目をつけ、ドライブ・イン・マーケット向けの二本立て興行に打って出た。当時のアメリカでは映画がテレビに押されて四苦八苦していた時代。ハリウッドのメジャー大作ならまだしも、無名俳優ばかりのB級映画で稼ぐためには質よりも量で勝負だったのである。
 こうした戦略が功を奏し、やがてAIPはアメリカでも有数の独立系映画会社へと成長していく。60年代に入るとロジャー・コーマンが製作・監督した『アッシャー家の崩壊』(60)が記録的な大ヒットとなり、それまでAIP映画を無視していた大手の映画館でも彼らの作品が上映されるようになった。これをきっかけにAIPは数多くのホラー映画を製作するようになる。
 もちろん、AIPの十八番はホラー映画ばかりではなかった。ビーチ・ボーイズやサーフィンのブームを背景にしたビーチ物青春映画、ヘルズ・エンジェルスに代表されるバイク・ブームに便乗したバイク映画、ヒッピーやフラワー・ムーブメントに便乗したドラッグ映画などなど。時代のトレンドをいち早く取り入れた映画製作はAIPの得意技だった。
 しかし、『レッド・バロン』(70)の公開を巡るイザコザからロジャー・コーマンが独立。さらに、69年には株式の公開に踏み切らざるを得なくなったことから外部の関係者が映画製作に口出しをするようになり、製作費も高騰の一途を辿った。こうした状況に不満を抱いたニコルソンは71年にAIPを離れて独立。残されたアーコフは『スクワーム』(76)や『ドクター・モローの島』(77)、『ナバロンの嵐』(78)などの話題作を次々と製作するが業績の悪化に歯止めをかけることができず、79年にAIPをフィルムウェイズに売却した。最後の作品『殺しのドレス』(80)は、フィルムウェイズによって配給されている。

 てな具合でAIPの歴史を駆け足で振り返ってみたわけだが、マーティン・スコセッシやブライアン・デ・パルマなどの才能を世に送り出した功績とか、優れた低予算映画の製作システムの確立であったりとか、AIPについて語り始めると尽きることがない。その辺はまた別の機会にということでご容赦頂くとして、ここでは歴代のAIP製作・配給作品をまとめて紹介していきたい。

 

原子怪獣と裸女
Day The World Ended (1955)

日本では1962年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(イギリスPAL盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:オランダ語・ドイツ語/地域コード:ALL/80分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:ロジャー・コーマン
製作:ロジャー・コーマン
製作総指揮:アレックス・ゴードン
脚本:ルー・ラソフ
撮影:ジョック・フィーンデル
音楽:ロナルド・スタイン
出演:リチャード・デニング
    ロリ・ネルソン
    アデル・ジャーゲンス
    ポール・バーチ
    ジョナサン・ヘイズ
    マイク・コナーズ
    レイモンド・ハットン

 ARC時代の配給作品。ロジャー・コーマンにとってはこれが監督4作目。核戦争後の地球を舞台に、僅かに生き残った人々が放射能から生まれたミュータントに襲われるというSF映画である。ご存知の通り、当時のアメリカは空前のSF映画ブームに沸きかえっていたわけで、本作もブームに便乗して大量に作られたバッタ映画のひとつだった。
 予算はほぼゼロに近いような状態。セットを組むだけの資金もないので、撮影はほとんどロケーション。キャストの人数も最小限に抑えられている。肝心のモンスターは等身大の着ぐるみで、しかもラスト20分でようやく登場。これが最大の見せ場なのだから最後まで引っ張るしかない、というのが低予算映画の哀しさだ。
 しかし、このモンスター・スーツの悪趣味なデザインといい、予算をかけないように工夫を凝らしたシュールなストーリーといい、低予算ゆえの苦肉の策が結果的に独特の奇妙な世界を作り上げてしまったのは、やはりB級映画ならではの面白さだろう。とことんチープではあるものの、ストーリーの骨格はなかなかしっかりしており、製作サイドの取り組みは至って真面目。女性の水浴びシーンなどのお色気ショットをちゃっかり盛り込む商魂の逞しさも含めて、低予算映画のお手本とも言うべき一本だろう。

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正義感溢れる地質学者リック(R・デニング)

山奥で暮らすジム(P・バーチ)と娘ルイーズ(L・ネルソン)

チンピラのトニー(M・コナーズ)と愛人ルビー(A・ジャーゲンス)

 舞台は核戦争後の地球。世界は放射能汚染により破滅してしまったが、山奥の一軒家に暮らすジム・アディソン(ポール・バーチ)と娘ルイーズ(ロリ・ネルソン)の2人は、周囲の大自然に守られて奇跡的に助かった。ジムは来る終末の時を予測して食料や医薬品などを大量に保存しており、娘と2人でなんとか生き延びていくつもりだった。
 しかし、核戦争で生き残ったのは彼ら親子だけではなかった。すれっからしのストリップ・ダンサー、ルビー(アデル・ジャーゲンス)とチンピラのトニー(マイク・コナーズ)、ロバを連れた砂金掘りの老人ピート(レイモンド・ハットン)、そして正義感溢れる真面目な地質学者リック(リチャード・デニング)。彼らは長い道のりをさまよった末に、山奥の一軒家へとたどり着いたのだった。当初は他人を助けることを拒んだジムだったが、ルイーズの説得で彼らを家に招き入れることにする。
 リックは来る途中で一人の男性を救助していた。ラデック(ポール・デュボフ)というその男性は放射能に体を冒されており、顔の一部がケロイド化している。瀕死の状態だったラデックだが、リックやルイーズの看護のおかげで徐々に体力を取り戻してきた。だが、真夜中にこっそり家を抜け出すなど奇妙な行動を取るようになる。
 こうして、生存者たちは放射能に影響されていない山奥で共同生活を送るようになるのだが、他人同士が集まれば多かれ少なかれイザコザは起きるもの。中でもチンピラのトニーはトラブル・メーカーで、ジムとリックの2人は手を焼かされる。そんなリックも、一方ではルイーズと急速に惹かれあっていた。
 ある日、近くの滝で水浴びをしていたルイーズとルビーは、物陰にうごめく怪しげな人影らしきものに気付いた。よく見ると奇妙な足跡が残されている。明らかに人間のものではなかった。リックとジムは付近をくまなく調べるが、これといった手がかりは見つからない。だが、その隙に恐ろしい姿をしたモンスターが現れ、ルイーズを誘拐してしまった。そのモンスターは放射能によって奇形化した人間、つまりミュータントだったのだ・・・!

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放射能に冒された男性ラデック(P・デュボフ)

付近の森を捜索するジムとリックだったが・・・

放射能から生まれたミュータントにルイーズが誘拐される

 撮影はたったの9日間で行われたという。最大の目玉であるモンスター・スーツをデザイン・製作したのはポール・ブレイズデル。本作をはじめとして、当時AIPが製作したSF映画のモンスターは全て彼の手によるもの。自ら着ぐるみを被って演技もしている。まるで小学生が描いた落書きのようなクリーチャーだが、そのハチャメチャなデザイン・センスが逆に強烈なインパクトを残す。代表作『金星人地球を征服』(56)や『暗闇の悪魔 大頭人の襲来』(57)に比べれば明らかに完成度は劣るものの、この素人臭い悪趣味さはなかなか捨てがたいものがある。
 原作と脚本を書いたルー・ラソフも、本作を皮切りにAIPのSFモンスター映画を幾つも手がけた脚本家。後にプロデューサーとしても活躍し、ビーチものの原点となった『やめないで!もっと』(63)や、本作と同じく核戦争後の世界を描いた『性本能と原爆戦』(62)といったカルト映画を世に送り出している。
 撮影のジョック・フィーンデルは、エドガー・G・ウルマー監督の“Bluebeard”(44)などの低予算映画で活躍したカメラマン。編集を担当したロナルド・シンクレアは戦前のハリウッドで子役として人気を集めた人物。そして、音楽のロナルド・スタインはレス・バクスターと共にAIP映画のスコアを一手に引き受けた作曲家だ。
 ちなみに、製作総指揮を手掛けているアレックス・ゴードンはイギリス出身のプロデューサーで、もともとはサミュエル・Z・アーコフが弁護士だった頃のクライアントの一人だった。ジェームズ・H・ニコルソンが在籍していたリアルアート社にアーコフがタイトル盗用問題で抗議したのも、実はゴードンからの依頼だったという。つまり、彼はAIP設立に関わる陰の功労者だったわけである。
 主人公リックを演じているのは、『大アマゾンの半魚人』(54)や『黒い蠍』(57)など50年代のSFモンスター映画には欠かせないスターだったリチャード・デニング。その相手役ルイーズには、ユニヴァーサル専属のB級映画女優だったロリ・ネルソンが扮している。
 その他、『百万の眼を持つ刺客』(55)に主演していたポール・バーチがルイーズの父親ジム役を、バーレスク・ダンサー出身のB級セクシー女優アデル・ジャーゲンスがルビー役を、ウォーレス・ビーリーと組んだ“弥次喜多”コンビとして日本でも人気を集めた戦前のコメディアン、レイモンド・ハットンが砂金掘りの老人ピートを演じている。
 また、日本でも大ヒットしたテレビドラマ『マニックス特捜網』(67〜75)の主人公ジョー・マニックス役でお馴染みのマイク・コナーズが、タッチ・コナーズという名前でチンピラのトニー役を演じている。当時彼はAIPのB級映画に数多く出演していた。
 なお、本作は後にクズ映画監督として悪名高いラリー・ブキャナンによって『原子怪人の復讐』(66)としてリメイクされ、さらにナスターシャ・キンスキー主演で『怪奇異星物体』(01)としてもリメイクされている。

 

怪物の女性/海獣の霊を呼ぶ女
The She-Creature (1956)

日本では1994年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(イギリスPAL盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:オランダ語・ドイツ語/地域コード:ALL/76分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:エドワード・L・カーン
製作:アレックス・ゴードン
製作総指揮:サミュエル・Z・アーコフ
原案:ジェリー・ジグモンド
脚本:ルー・ラソフ
撮影:フレデリック・E・ウェスト
音楽:ロナルド・ステイン
出演:チェスター・モリス
    マーラ・イングリッシュ
    トム・コンウェイ
    キャシー・ダウンズ
    ランス・フラー
    ロン・ランドール
    フリーダ・イネスコート

 AIPの社名変更直後に、『金星人地球を征服』と2本立てで公開されたモンスター・ホラー。催眠術師がセクシー美女に催眠をかけ、彼女の前世である太古の海洋モンスターを呼び寄せて殺人を重ねる。いかにも奇妙キテレツなストーリーのバカバカしさもさることながら、ポール・ブレイズデルによる生物学的根拠の一切ないクリーチャー・デザインがまた凄い。
 監督はカルトSF映画の怪作『恐怖の火星探検』(58)でも知られるエドワード・L・カーン。1年間に平気で7〜8本の映画を撮ってしまうようなスピード職人で、はっきり言って質よりも量というタイプの映画監督だ。本作も思わせぶりな演出ばかりでテンポはのろいし、スリルにもサスペンスにも著しく欠けるというのは否定できないところだろう。言うなれば、『ミステリー・ゾーン』や『アウター・スペース』の1エピソードを思いきり引き伸ばしてしまったという感じだ。
 だが、その一方で全編を包み込む怪しげな場末感はB級映画ならではの醍醐味だし、そこはかとなく漂う奇妙なゴシック・ムードもなかなか悪くない。面白いかどうかは別にしても、間違いなく50年代におけるAIP映画屈指の怪作と言えるだろう。

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精神科医エリックソン(L・フラー)と恋人ドロシー(C ・ダウンズ)

催眠術師ランバルディ(C ・モリス)

催眠をかけられた助手アンドレア(M・イングリッシュ)

 恋人ドロシー(キャシー・ダウンズ)と夜の海辺を散歩していた精神科医エリックソン(ランス・フラー)は、とあるロッジから怪しげな人物が出てくるところを目撃した。不審に思った彼がそのロッジへと足を踏み入れると、中では若い夫婦が無残にも殺されていた。現場は激しく荒らされており、ところどころに不気味な足跡が残されている。しかも、なぜか辺りには海藻が散乱していた。
 エリックソンが目撃した怪しげな人物とは、見世物小屋の催眠術師ロンバルディ(チェスター・モリス)だった。ロンバルディの催眠術ショーは近隣で大変な評判だったが、エリックソンは以前から胡散臭さを感じていた。
 警察はロンバルディが殺人事件に関与していると睨み、彼の身辺を捜査する。というのも、ロンバルディは自らのショーで今回の殺人事件を予言していたからだ。しかし、彼は事件の犯人は海から現れた太古のモンスターであり、これからも殺人事件は続くだろうと嘯いてみせる。もちろん、警察はそんな話を信じるわけがなく、予言を現実のものにするためロンバルディ自身が殺人を犯したものと考えていた。
 しかし、実はロンバルディは助手のアンドレア(マーラ・イングリッシュ)を媒介にして、本当にモンスターを呼び寄せていたのだ。彼はアンドレアに催眠術をかけて太古の昔へとタイムスリップさせ、原始の海洋モンスターを現代によみがえらせていたのである。
 一方、ロンバルディの予言と殺人事件を新聞で知ったドロシーの父親である実業家チャペル氏(トム・コンウェイ)は、これが素晴らしい商売になると考えてロンバルディを大々的に売り出すことにした。だが、アンドレアがエリックソンに惹かれていることを勘付いたロンバルディは、ある恐ろしい計画を立てる・・・。

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太古の世界からやって来た海洋モンスター

実業家チャペル氏(T・コンウェイ)はランバルディを売り出す

ランバルディはエリックソンをなきものにしようとするが・・・

 問題(?)の海洋モンスターは一応女性ということになっているので、しっかりと胸のふくらみと後頭部に長いブロンド・ヘアが付けられている。それが生物学的にアリなのかどうかは大いに疑問・・・というよりも、ぶっちゃけ大ボラも甚だしいといったところなのだが、この手の映画に学術的な詮索は禁物だろう(笑)それを言っちゃオシマイなのである。
 それは、本編で描かれている催眠術にしても同じこと。当時は催眠術が世間一般的に大変な注目を集めていたらしく、映画ポスターには“あなたも読んだことがある専門的な事実に基づいています!”と堂々と記載されており、ジェリー・ジグモンドなる専門家らしき人物まで原案作者としてクレジットされている。でも実はこれ、脚本家ルー・ラソフがでっち上げた架空の人物。所詮は低予算のゲテモノ映画。いちいち目くじらを立てていては楽しめないだろう。
 催眠術師ロンバルディ役を演じているチェスター・モリスは、ローランド・ウェスト監督の『アリバイ』(29)でアカデミー主演男優賞にノミネートされた往年の2枚目スター。当時はテレビに活動の場を移しており、本作が久々の映画出演作だった。
 対する精神科医エリックソン役のランス・フラーはSF映画の名作『宇宙水爆戦』(54)で宇宙人役を演じていた俳優。また、ロンバルディの助手アンドレアを演じているマーラ・イングリッシュは、当時エリザベス・テイラーのソックリさんとして注目されていたB級映画女優だった。
 その他、エリックソンの恋人ドロシー役には『荒野の決闘』(46)のヒロイン、クレメンタイン役で有名なキャシー・ダウンズ。その父親チャペル氏役には『キャット・ピープル』(42)などのRKO映画で知られる名優トム・コンウェイ、その妻チャペル夫人役には『高慢と偏見』(40)や『月光の女』(40)などの名作で知られるフリーダ・イネスコート。いずれも赤狩りでハリウッドの第一線を追われたベテラン俳優ばかりだ。
 なお、本作も『原子怪獣と裸女』と同じようにリメイクされている。まずはラリー・ブキャナンによる死ぬほどチープな『悪魔の呪い』(66)。さらにカーラ・グギーノ主演で『人喰い人魚伝説』(01)としてもリメイクされている。こちらは“メスの海洋モンスター”というコンセプトのみを踏襲し、人魚伝説とホラーを掛け合わせた、なかなかの佳作だった。

 

女黄金鬼
Voodoo Woman (1957)

日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(イギリスPAL盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:オランダ語・ドイツ語/地域コード:ALL/77分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:エドワード・L・カーン
製作:アレックス・ゴードン
脚本:ラス・ベンダー
    V・I・ヴォス
撮影:フレデリック・E・ウェスト
音楽:ダレル・カルカー
    ジョン・ブラックバーン
出演:マーラ・イングリッシュ
    トム・コンウェイ
    マイク・コナーズ
    ランス・フラー
    メアリー・エレン・ケイ
    ポール・デュボフ

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ジャングルの奥地で行われているブードゥーの儀式

ジェラルド博士はブードゥーの魔術を悪用しようとする

囚われの身となった博士の妻スーザン(M・E・ケイ)

 『怪物の女性/海獣の霊を呼ぶ女』に続いて、エドワード・L・カーン監督が手掛けたB級モンスター映画。ナンセンスなバカバカしさに関してはこちらも負けちゃいないが、ポール・ブレイズデルによるクリーチャー・デザインがいまひとつインパクトに欠けるのは大きなマイナス・ポイント。『怪物の女性〜』のモンスター・スーツを流用したらしいのだが、金髪のカツラを被せてしまったのは失敗だった。
 カーン監督の演出は相変わらず緊張感がないし、ブードゥー教のコンセプトがデタラメばかりなのも気になるところだが、単純明快で分かりやすいストーリーと賑やかな登場人物のおかげもあってか、ひとまず最後まで退屈しないで済む映画であることは確か。ノリとしては、戦前・戦中にモノグラムやPRCといった弱小スタジオが量産していたようなB級怪奇冒険映画。チープなスリルが満載のお手軽エンターテインメントだ。

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博士の最初の実験は失敗に終ってしまう

悪女マリリン(M・イングリッシュ)と相棒リック(L・フラー)

マリリンに雇われたガイドの青年テッド(M・コナーズ)

 舞台はカリブ海のとある島。ジェラルド博士(トム・コンウェイ)はジャングルの奥地で恐ろしい実験を行っていた。ブードゥー教の魔術を使って、自分の意のままに操ることの出来るモンスターを作り出そうというのだ。手始めに原住民の若い女性を怪物化させたものの失敗に終る。性格が善良であったがために、人を殺すことが出来ずに自害してしまったのだ。
 その頃、町に一組の男女がやって来る。己の野心のためには人殺しも厭わない悪女マリリン(マーラ・イングリッシュ)と、その相棒であるリック(ランス・フラー)の2人だ。彼らはジャングルに金塊が眠っているとの噂を知り、ガイドの青年テッド(マイク・コナーズ)を雇って奥地へと向う。
 しかし、彼らはジャングルで野宿しているところを原住民に捕まり、ジェラルド博士のもとへと連れてこられた。博士はマリリンの悪女ぶりを目の当たりにして、彼女こそ理想的な実験台であると確信する。言葉巧みにマリリンを騙した博士は、彼女をモンスターへと変身させることに成功した。
 一方、ジェラルド博士の家では妻スーザン(メアリー・エレン・ケイ)が囚われの身となっていた。彼女は夫の恐ろしい実験と計画を知り、テッドの協力を得て村からの脱出を図ろうとするのだったが・・・。

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ジャングルの奥地までやって来た3人だったが・・・

ジェラルド博士はマリリンを実験台にする

モンスターへと変貌したマリリン

 脚本を手掛けたのは、バート・I・ゴードン監督の『戦慄!プルトニウム人間』(57)や『巨人獣』(58)に出演していた俳優ラス・ベンダー。もう一人、V・I・ヴォスという人物も脚本にクレジットされているが、こちらは残念ながら全く詳細不明である。やたらと大袈裟なセリフが目立つのは俳優の書いた脚本ゆえかどうか定かではないが(笑)、まあ、ストーリーは至ってシンプル。当時の典型的なB級娯楽映画という感じだ。
 その他、スタッフはAIP映画でお馴染みの面々が揃っているものの、音楽にダレル・カルカーが参加しているのはちょっと興味深いかもしれない。カルカーといえば“ウッディ・ウッドペッカー”をはじめとするウォルター・ランツ製作の短編アニメーションを数多く手掛けた作曲家。その傍らで、『謎の空飛ぶ円盤』(50)や『あばずれ西部魂』(60)などのB級映画にも時折参加していたようだが、AIP絡みの仕事はこれ1本だけである。
 主演のマーラ・イングリッシュとトム・コンウェイ、ランス・フラーの3人は、前作『怪物の女性/海獣の霊を呼ぶ女』から引き続いての登板。前作では催眠術師に操られる薄幸の美女という役柄だったマーラ・イングリッシュだが、本作では拳銃片手に暴れまわる悪女マリリンを演じている。また、同じく前作では正義のヒーロー役だったランス・フラーも、今回はマリリンの相棒であるチンピラ、リック役で登場。『原子怪獣と裸女』で悪役を演じていたマイク・コナーズが、今回はヒーロー役で大活躍する。
 なお、ジェラルド博士の妻スーザン役を演じているメアリー・エレン・ケイは、40年代から50年代初頭にかけてリパブリック映画専属の美人スターとして数多くのB級西部劇やB級活劇に出演した女優。リパブリックとの契約が切れてからはすっかり落ち目になってしまい、当時はテレビ・ドラマのゲスト出演で食いつないでいるような感じだった。

 

Reform School Girls
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(イギリスPAL盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:オランダ語・ドイツ語/地域コード:ALL/71分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:エドワード・バーンズ
製作:ロバート・J・ガーニー
    サミュエル・Z・アーコフ
製作総指揮:ジェームズ・H・ニコルソン
脚本:エドワード・バーンズ
撮影:フロイド・クロスビー
音楽:ロナルド・ステイン
出演:グロリア・カスティッロ
    ロス・フォード
    エド・バーンズ
    ラルフ・リード
    ジャン・イングランド
    イヴェット・ヴィッカーズ
    ヘレン・ウォーレス
    ドナ・ジョー・グリブル
    ルアナ・アンダース
    サリー・ケラーマン

 『理由なき反抗』(55)や『暴力教室』(55)の大ヒットによって、50年代のアメリカ映画界では“非行少年”を題材にした青春映画がブームとなった。折りしもエルヴィス・プレスリーが全米ティーンのアイドルとなり、ロックン・ロールやリーゼント、革ジャンが若者のトレンドとして大流行した時代。中小の映画会社もこのブームに便乗し、数多くの非行少年映画がゾロゾロと作られた。
 当然のことながらAIPも例外ではなかったのだが、彼らが目をつけたのは“非行少年”ではなく“非行少女”。B級映画の観客は大半が男性なわけだから、これは理に適った選択だろう。若い女の子たちを大量に動員し、お色気シーンやキャットファイトなどの見せ場も盛りだくさん。しかも社会的メッセージを隠れ蓑にすれば、映画の性描写や暴力描写に口うるさい市民団体などの目もごまかせるときたら一石二鳥だ。
 かくして、AIPは“Girls in Prison”(56)を皮切りに、“Runaway Daughters”(56)や“Sorority Girl”(57)、“Daddy-O”(58)などの“非行少女”映画を量産。中でも特に興行的な成功を収めた作品が、この“Reform School Girls”だった。
 主人公は貧しい家庭に育った少女ドナ。身に覚えのない罪によって“非行少女”のレッテルを貼られ、矯正施設へと送り込まれてしまった彼女の過酷な運命を通じて、現代の若者を取り巻く様々な社会問題を浮き彫りにしていくという作品だ。もちろん、決して堅苦しい社会派映画などではなく、スリルとサスペンス、そしてささやかなお色気とチープなアクションが満載のB級娯楽映画である。

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貧しい家庭に育った少女ドナ(G・カスティッロ)

友達ジョジー(L・アンダース)らとドライブに出かける

ハンサムなヴィンス(E・バーンズ)は札付きのワルだった

 幼くして両親を失った17歳の少女ドナ(グロリア・カスティッロ)は、貧しい叔母夫婦のもとに身を寄せて暮らしていた。ぐうたらな叔父は昼間から家でゴロゴロしており、なにかにつけてドナに性的な嫌がらせをする。叔母はそんな夫の素行に見て見ぬふりを決め込み、日頃からドナのことを目の敵にして忌み嫌っていた。
 そんなある日、ドナは友達のジョジー(ルアナ・アンダース)、ゲイリー(ウェイン・テイラー)らと共にドライブへ出かける。車を運転するのはヴィンス(エド・バーンズ)という少年だった。彼は札付きのワルで、運転している車も実は彼が盗んだもの。そうと知ったゲイリーとジョージーは怖気づいてしまい、頭にきたヴィンスは彼らを車から降ろしてしまう。
 しかし、ドナはそんなことどうでも良かった。息苦しい日常から抜け出せるだけで十分。そんな彼女を誘惑しようとするヴィンスだったが、叔父の性的虐待から男性に強い不信感を抱いているドナは頑なに拒絶する。
 そこへパトカーが通りがかり、2人の乗っている車が盗難車両であることを気付かれてしまう。しかも、逃走しようとしたヴィンスが誤って通行人を轢き殺してしまった。慌てた彼は“警察にばらしたらお前も友達も皆殺しにする”と言い残して逃げ去っていく。警察の事情聴取や裁判でも口を閉したままのドナは共謀罪で有罪判決を受け、未成年ということで女子矯正施設へと送られることになった。
 施設は当然のことながら不良少女たちの巣窟。リーダー格のロキシー(イヴェット・ヴィッカーズ)は手の付けられないワルだったが、気丈なドナはすぐに仲間として受け入れられた。中でも、しっかり者で姐御肌のルース(ジャン・イングランド)はドナの良き相談相手となる。
 その頃、施設には精神科医のリンゼイ(ロス・フォード)が新人教師として赴任してきた。若い男性教師の登場に色めき立つ少女たち。真面目で温厚なリンゼイは頑ななドナの心を解きほぐそうと努力するが、責任者のトリンブル女史(ヘレン・ウォーレス)は生徒に感情移入するのは危険だと強く警告する。
 周囲に堅く心を閉し続けるドナだったが、やはり心の奥底では他人の愛情に飢えていた。施設の近隣に住む若者ジャッキー(ラリフ・リード)と知り合った彼女は、彼の優しさに強く惹かれていく。これまで不良少年や乱暴な大人の男しか知らなかった彼女にとって、素朴で実直なジャッキーは心の拠り所となっていく。
 そんな彼女の気持ちを察したリンゼイは、トリンブル女史の反対を押し切ってダンス・パーティを企画した。ジャッキーを含む近隣の若者たちを招いて、施設の少女たちとの交流を図るというのだ。リンゼイの心遣いに初めて大人の優しさを知ったドナは、少しづつ教師たちにも心を開いていく。
 一方、警察の目をかいくぐって逃亡していたヴィンスだが、施設に入ったドナがいつか自分を裏切って警察に密告するのではないかと不安な日々を過ごしていた。そこで、彼は知り合いの娼婦に頼み、ドナの名前を使って警察に偽の密告電話をかけさせる。共犯者はジョージーであると。
 かくして同じ施設に送り込まれたジョジーは、周りの少女たちを煽動してドナに復讐を始める。非行少女たちにとって“密告者”は最大の敵だ。身に覚えのないドナは密告を否定するが、憎しみに目の眩んだ少女たちは聞く耳など持たない。少女たちの嫌がらせは急速にエスカレートしていき、やがてドナは命の危険にさらされることとなる・・・。

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無実の罪で矯正施設へ入れられてしまったドナ

温厚な教師リンゼイ(R・フォード)にも心を閉すドナ

近隣の若者ジャッキー(R・リード)と知り合ったドナは・・・


 極端な低予算ゆえに見栄えの悪さはいかんともしがたいものの、全体的にはなかなか良く出来た作品だ。ストーリーはよく練られているし、暴徒と化した少女たちにドナが追い詰められる後半の展開もスリルとアクションが満載。社会的なメッセージも最後までぶれることがないし、無名俳優で固められた役者の演技も悪くない。もちろん、あくまでも当時の低予算映画としては、という但し書きが必要にはなるものの、単なるキワモノ映画に終っていないのは立派だろう。
 監督と脚本を務めたエドワード・バーンズは、コロムビア映画で“三バカ大将(The Three Stooges)”やアンディ・クライドなど人気コメディアン主演の短編映画を数多く手掛けた演出家。脚本家としてもオーディ・マーフィ主演の『連邦保安官』(59)やプレスリー主演の『いかすぜ!この恋』(65)などを手掛けている。
 また、『タブウ』(31)でアカデミー賞を受賞し、『真昼の決闘』(52)でゴールデン・グローブ賞を受賞した名カメラマン、フロイド・クロスビーが撮影監督として参加。当時メジャー映画からインディペンデントへと活動の場を移していた彼は、AIP映画の重要なスタッフとして『アッシャー家の惨劇』(60)や『恐怖の振子』(61)などの傑作を手掛けていくこととなる。
 ドナ役を演じているグロリア・カスティッロは、チャールズ・ロートン監督の傑作『狩人の夜』(55)で映画界入りした女優さん。AIP製作のSFモンスター映画『暗闇の悪魔 大頭人の襲来』(57)でもヒロイン役を演じていた。庶民的で親しみやすい“隣のお姉さん”タイプで、演技力もなかなかしっかりしている。
 そんな彼女を罠にはめる不良少年ヴィンスを演じているエド・バーンズは、本作の直後にテレビの大ヒット・ドラマ『サンセット77』(58〜61)のクーキー役でブレイクしたニヒルな2枚目スター。また、ヴィンスに利用されてドナを追い詰める不良少女ジョージーを演じているルアナ・アンダースは、後にロジャー・コーマン作品の常連としてカルト的な人気を博するようになる名女優だ。
 その他、ワーナー専属の脇役俳優だったロス・フォードが新任教師リンゼイ役を、『妖怪巨大女』(58)などのカルト映画で有名なB級セクシー女優イヴェット・ヴィッカーズが不良少女ロキシーを演じている。また、後に『M★A★S★H』(70)でオスカーにノミネートされて有名になる個性派女優サリー・ケラーマンが、不良少女の一人を演じて映画デビューを果たしているのも映画ファンには興味深いかもしれない。

 

女バイキングと大海獣
Viking Women and the Sea Serpent (1957)

日本では劇場未公開・TV放送のみ
VHSは日本未発売・DVDは見本発売済

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(P)2006 Lions Gate (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/
66分/製作:アメリカ
※『恐怖の獣人』とカップリング

映像特典
なし
監督:ロジャー・コーマン
製作:ロジャー・コーマン
製作総指揮:ジェームズ・H・ニコルソン
        サミュエル・Z・アーコフ
原作:アーヴィング・ブロック
脚本:ローレンス・L・ゴールドマン
撮影:モンロー・P・アスキンス
音楽:アルバート・グラッサー
出演:アビー・ダルトン
    スーザン・キャボット
    ブラッドフォード・ジャクソン
    ジューン・ケニー
    リチャード・ディーヴォン
    ベッツィ・ジョーンズ=モアランド
    ジョナサン・ヘイズ

 メジャー・スタジオの話題作を猛スピード&低予算でパクるというのは、古今東西における弱小スタジオの鉄則。この『女バイキングと大海獣』も、カーク・ダグラス主演のアドベンチャー大作『バイキング』(58)にあやかった作品だ。
 もちろん、ただ単にパクッただけじゃ面白くない。主人公を女バイキング軍団にすればお色気満載、ついでに巨大モンスターまで加えちまえば鬼に金棒ってもんでしょ。・・・ってな具合に、予算が少ない分をアイディアでカバーしたのが本作。しかも、本家の撮影が長期間に渡ったため、こちらの方が一足先に完成してしまった。
 それにしても、バイキング船はやけに小ぶりだし、女バイキング軍団といってもたかだか10人程度のもの。どんだけ小さい部族なんじゃい、と思わず突っ込みたくなること必至だ。その上、肝心の巨大モンスターも顔見せ程度にチラッと登場するだけ。しかも、リアプロジェクションのプロジェクター合成なので、これっぽっちも迫力がないのはいただけない。
 とかなんとか文句ばかり並べてはみたものの、この激安感覚こそが低予算B級映画の持ち味だろう。簡単に言ってしまえば、セクシーなバイキング美女たちのちっぽけな大冒険。気楽に楽しませていただこうじゃありませんか。

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男たちの帰りを待つバイキングの女たち

バイキング船に乗って男たちを捜すための航海に出る

一匹狼の悪女エンガー(S・キャボット)

 舞台は中世の北欧のどこか(笑)。狩りに出かけたまま3年も戻らない男たちを待ちあぐねたバイキングの女たちは、女戦士デジール(アビー・ダルトン)をリーダーに男たちを捜すための航海に出る。ところが、その途中で彼女たちは巨大な海蛇に襲われ、嵐の中で船が大破してしまった。
 気が付くと砂浜に打ち上げられていたデジールたち。そこは野蛮人の部族が支配する島だった。囚われの身となったバイキング美女たちだったが、野蛮人の王スターク(リチャード・ディーヴォン)はなぜか彼女たちを歓待する。もちろん、それには理由があった。
 実は、行方不明だったバイキングの男たちは、野蛮人たちの奴隷として働かされていたのだ。そして、今度はバイキングの女を自分たちのものにしようと企んでいた。そうと知ったデジールたちは、バイキングの王ヴェドリック(ブラッドフォード・ジャクソン)と協力して野蛮人らに立ち向かおうとするが、一匹狼の悪女エンガー(スーザン・キャボット)が仲間を裏切ってスターク王側についてしまう・・・。

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激しい嵐と巨大な海蛇に襲われる

野蛮人たちに囚われたバイキング美女たち

野蛮人の奴隷となった男たちを発見する

 野蛮人の城のセットや外観の書割りなどが、後のゴシック・ホラー作品を彷彿とさせるのは、ロジャー・コーマン・ファンにとって大いに興味深いところ。この時点で、既に彼の製作スタイルが確立されていたことの証だろう。
 原作を書いたアーヴィング・ブロックは、50年代に数多くのB級SF映画の特殊効果を手掛けたSFXマンで、本作でも特殊効果を兼任している。彼はカルト映画として有名なSF作品『クロノス』(57)の製作・原案・特殊効果も手掛けているが、そこで脚本を書いていたローレンス・L・ゴールドマンが本作でも脚本を執筆した。
 撮影監督のモンロー・P・アスキンスは、ロジャー・コーマンの非行少女映画“Sorority Girl”(57)にも参加していたカメラマン。音楽を手掛けたアルバート・グラッサーは、40年代から50年代にかけて数多くのB級西部劇やB級アクションのスコアを担当した作曲家だ。
 バイキングの女戦士デジールを演じるアビー・ダルトンは、80年代にアメリカで大ヒットしたTVドラマ“Falcon Crest”で主人公ランスの母ジュリアを演じていた女優。90年代にB級映画スターとして活躍したキャサリーン・キンモントは、彼女の実の娘である。
 しかし、本作の真の主役は悪女エンガー役を演じているスーザン・キャボットだろう。初期ロジャー・コーマン作品の常連スターとして知られ、中でも『蜂女の実験室』(59)の蜂女役で有名な女優だ。いかにも腹黒くてビッチな役柄が似合う性悪系セクシー美女で、本作でもその魅力を遺憾なく発揮。主演のアビー・ダルトンよりも遥かに強烈な印象を残している。
 その他、『吸血原子蜘蛛』(58)に主演していたジューン・ケニーや“Creature from the Haunted Sea”(61)のヒロインを演じたベッツィ・ジョーンズ=モアランド、“Frankenstein's Daughter”(58)のサリー・トッドなど、当時のB級セクシー女優たちがバイキング美女役として登場。とりあえず、彼女たちが本作の最大の見どころと言えるかもしれない。

 

悪魔と魔女の世界
The Undead (1957)
日本では劇場未公開・TV放送のみ
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2003 Direct Video (UK)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(イギリスPAL盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:オランダ語・ドイツ語/地域コード:ALL/75分/製作:アメリカ

映像特典
サミュエル・Z・アーコフ インタビュー
オリジナル劇場予告編集
監督:ロジャー・コーマン
製作:ロジャー・コーマン
脚本:チャールズ・グリフィス
    マーク・ハンナ
撮影:ウィリアム・A・シックナー
音楽:ロナルド・ステイン
出演:パメラ・ダンカン
    リチャード・ガーランド
    アリソン・ヘイズ
    ヴァル・ドゥフォア
    メル・ウェルズ
    ドロシー・ニューマン
    ビリー・バーティ
    ブルーノ・ヴェ・ソータ
    リチャード・ディーヴォン
    ディック・ミラー

 催眠術によって自分の前世へと旅をした女性が、中世の暗黒時代で魔女の嫌疑をかけられるというホラー・ファンタジー。『怪物の女性/海獣の霊を呼ぶ女』でも催眠術とタイムスリップが題材になっていたが、当時のアメリカでは“催眠術によって前世を探る”というのがちょっとしたブームになっていたようだ。
 そのきっかけとなったのが、モーリー・バーンスタインという人物の書いたベストセラー本“The Search for Bridey Murphy”。催眠術が趣味だったバーンスタインが、知人のヴァージニア・タイという女性に催眠術をかけたところ、彼女の前世だというアイルランド人女性ブライデイ・マーフィの人生について話し始めたという。これはその内容を詳細に綴った本で、実際のところヴァージニアの話した内容は彼女の幼少期の記憶だったということが後に判明したものの、その綿密な描写に説得力があったことから当時は大変な話題になったらしい。
 すぐさまハリウッドではパラマウント映画がテレサ・ライト主演で同著を映画化。そのブームに便乗すべくロジャー・コーマンが即席で撮った作品が、この『悪魔と魔女の世界』だったというわけである。

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異端の精神医学者ラトクリフ(V・デュフォア)

ラトクリフは娼婦ダイアナ(P・ダンカン)に催眠術をかける

ダイアナの前世ヘレーヌは魔女の嫌疑をかけられていた

 異端の精神医学者ラトクリフ(ヴァル・ドフォア)は、恩師であるオリンガー教授(モーリス・マンソン)のもとを7年ぶりに訪れる。これまでの自分の研究成果を実証するためだ。彼は道で拾った娼婦ダイアナ(パメラ・ダンカン)に催眠術をかけ、彼女を前世にタイムスリップさせるのだという。半信半疑のオリンガー教授だったが、催眠にかけられたダイアナが知る由もないフランスを流暢に喋り始めたことから、ラトクリフの実験が本物であると確信する。
 ダイアナがタイムスリップしたのは中世の暗黒時代。彼女はヘレーヌ(パメラ・ダンカン・二役)という女性で、魔女の嫌疑をかけられて牢屋に繋がれていた。ヘレーヌは夜明けと同時に処刑される運命にある。隙を見て逃げ出した彼女は、墓堀人のスモーキン(メル・ウェルズ)に助けられる。
 スモーキンに案内されたヘレーヌは、メグ(ドロシー・ニューマン)という魔女のもとへとやって来た。メグは善良な魔女で、ヘレーヌが無実の罪を着せられていることを知っている。ヘレーヌにはペンドラゴン(リチャード・ガーランド)という恋人がおり、メグは急いで彼を呼び寄せた。久々の再会を喜ぶヘレーヌとペンドラゴン。
 一方、ヘレーヌの行方を追っている魔女リヴィア(アリソン・ヘイズ)と子分の餓鬼(ビリー・バーティ)。実は彼女こそヘレーヌを貶めた張本人であり、ペンドラゴンを自分のものにしようと画策していたのだ。
 リヴィアの陰謀を知ったメグは、ペンドラゴンに黙ってヘレーヌを隠す。そうとは知らないペンドラゴンは彼女の行方を捜して奔走していた。そこへ現れたリヴィアが、ヘレーヌを救うための唯一の方法を提案する。ペンドラゴンの魂を悪魔に売るのだ。
 その頃、事情を知ったラトクリフは自ら開発した催眠術マシンで、自分も過去にタイムスリップすることを決意する。ヘレーヌの命が助かればその後の歴史が書き換えられ、現在のダイアナは死んでしまう。しかし、転生して娼婦になるよりも、最愛の人と結ばれたほうが彼女にとっては幸せに違いない。そう考えたラトクリフは、過去へ行ってペンドラゴンの助太刀をしようというのである。
 今まさに悪魔(リチャード・ディーヴォン)のサバトが始まろうという時に、ラトクリフはタイムスリップしてきた。悪魔のノートにサインしようとするペンドラゴンを説得し、ヘレーヌの行方を捜すラトクリフ。果たして、彼らはヘレーヌを探し出すことが出来るのか?そして、彼女はヘレーヌとしての人生を選ぶのか、それともダイアナの体に戻ることを選ぶのか?

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恋人ペンドラゴン(R・ガーランド)と再会したヘレーヌ

ヘレーヌを貶めた悪い魔女リヴィア(A・ヘイズ)

善良な魔女メグ(D・ニューマン)はヘレーヌをかくまう


 といった具合で、ストーリーの科学的・精神医学的な根拠は一切皆無。ついでに時代考証もムチャクチャ。催眠術で前世の体に魂が乗り移ってしまうなんて荒唐無稽は映画だから許されるとしても、中世ヨーロッパでピンヒールのサンダルというのはあり得ないだろう(笑)催眠にかけられたダイアナがフランス語をぺらぺらと喋りだしたことから、オリンガー教授は前世へのタイムスリップというものを信用するが、娼婦だからといってフランス語が話せないとは限らんだろうに。
 そういった安直な姿勢が全編を通して貫かれているわけだが、そもそものアイディア自体が荒唐無稽なホラ話なのだから、これはこれで正しいアプローチなのだろう。改装中のスーパーマーケットを利用したというセットの安っぽさ、陳腐なセリフと大仰な演技。まるで素人劇団のコスチューム・プレイといった按配だ。
 森の中を駆け抜けるシーンなんぞは、同じところをグルグル廻っているのがマル分かりだし、中世の王国という舞台設定にしては住民が2〜30人というのはいくらなんでも少なすぎだろう。過疎化した村じゃないんだから(笑)
 ただ、そうした低予算映画ゆえのみすぼらしさに目をつぶれば、これはこれでなかなかユーモラスで楽しいファンタジー映画。子供向けのおとぎ話と考えれば十分だろう。ロジャー・コーマン・ファンにとっても、後の『忍者と悪女』(63)や『古城の亡霊』(63)の原点という意味で興味深い作品に違いない。

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死者のダンスで幕を開ける悪魔のサバト

リヴィアの子分である餓鬼(B・バーティ)

悪魔(R・ディーヴォン)に魂を売ればヘレーヌは助かるのか?

 脚本のチャールズ・グリフィスは『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(60)や『デス・レース2000年』(75)などロジャー・コーマン関連の映画には欠かせない常連組。一方のマーク・ハンナも、『戦慄!プルトニウム人間』(57)や『妖怪巨大女』(58)などのB級カルト映画でお馴染みの脚本家だ。
 また、撮影を手掛けたウィリアム・A・シックナーはトーキー初期からユニヴァーサル専属のカメラマンとして数多くの低予算映画を撮ってきた人物で、ロン・チャニー・ジュニア主演の『ミイラの執念』(44)などのユニヴァーサル・ホラーも手掛けたことがある。
 ダイアナとヘレーヌの二役を演じているパメラ・ダンカンは、美人コンテスト出身のB級映画女優。主に低予算の西部劇で活躍した人だが、ロジャー・コーマンとは“Attack of the Crab Monster”(57)でも組んでいた。当時は美人スターとして通用したのかもしれないが、残念ながら今の価値観では決して美人とは言えないだろう。
 逆に、ヘレーヌを亡き者にしようとする悪い魔女リヴィアを演じるアリソン・ヘイズの方が、今でも十分に通用するセクシー美女だ。ヘイズといえば、なんと言っても『妖怪巨大女』(58)の巨大女役が有名だろう。アメリカではいまだに熱心なファンの多いカルト女優である。
 その相棒である餓鬼を演じているのが、有名な小人俳優のビリー・バーティ。『レジェンド/光と闇の伝説』(85)や『ウィロー』(88)などでユーモラスな小人の老人を演じ、ファンタジー映画には欠かせない名優だった。
 また、墓堀人スモーキン役を演じているメル・ウェルズも、アメリカでは結構有名なB級コメディアン。低予算のインディペンデント映画に数多く出演し、『フランケンシュタイン・娘の復讐』(71)のような監督作もある。
 その他、B級映画の女王ビヴァリー・ガーランドのダンナだったリチャード・ガーランドがペンドラゴン役を、後に昼メロスターとして有名になるヴァン・デュフォアがラトクリフ役を、コーマンの『古城の亡霊』でも魔女役を演じていた老女優ドロシー・ニューマンが魔女メグ役を演じている。また、サバト・シーンでコーマン映画の常連俳優ディック・ミラーがチラリと顔を見せているのも注目だ。

 

恐怖の獣人
Teenage Caveman (1958)
日本では劇場未公開・テレビ放送のみ
VHSは日本未発売・DVDは日本発売済

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(P)2006 Lions Gate (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/
66分/製作:アメリカ
※『女バイキングと大海獣』とカップリング

映像特典
なし
監督:ロジャー・コーマン
製作:ロジャー・コーマン
製作総指揮:ジェームズ・H・ニコルソン
         サミュエル・Z・アーコフ
脚本:R・ライト・キャンベル
撮影:フロイド・クロスビー
音楽:アルバート・グラッサー
出演:ロバート・ヴォーン
    ダーラ・マーシャル
    レスリー・ブラッドレー
    フランク・デコーヴァ
    チャールズ・P・トンプソン
    ジョナサン・ヘイズ
    エド・ネルソン

 石器時代を舞台にした非常に風変わりで奇妙なSFドラマ。とある集落では先祖代々からの言い伝えで、河の向こう側へは絶対に行ってはいけないという掟があった。ところが、好奇心旺盛な若者は外の世界を見たいという気持ちを抑えられず、掟を破って河を越えてしまう。果たして、そこで彼が目にしたものとは・・・!?
 というわけで、石器時代の話だと思ってたのが実は・・・!?というのが最大の見どころ。というか、そのアイディアひとつだけで無理やり映画を成立させしまったといった印象だ。言うなれば、『猿の惑星』や『ビレッジ』のご先祖様に当るような作品なわけだが、いかんせん30分くらいで終るような話を1時間以上に渡って繰り広げるもんだから、退屈なことこの上ない。
 しかも、セットを使わずに近所の裏山で撮影したような映像や、『恐竜百万年』(40)から拝借した特撮シーンなど、猛烈な低予算による安っぽさはいかんともしがたいものがある。たったの3日間で撮影を終えたという伝説すらある作品だが、この内容であればそれも納得だろう。
 ひとまず、クライマックスのアイディアは悪くないし、デビュー当時のうら若いロバート・ヴォーンの姿を見ることが出来るというのも映画マニアには興味深いところ。逆に言えば、それ以外は全く見るべきところのない作品でもある。
 ちなみに、もともとは“Prehistoric World(原始世界)”というタイトルで製作された作品だったが、AIPの意向で勝手に“Teenage Caveman(10代の石器人)”へと変えられてしまった。というのも、当時アメリカでは“I Was A Teenage Werewolf(私は10代の狼男だった)”(57)とか“Teenagers from Outer Space(外世界からやって来た10代たち)”(59)など、ティーンエイジャー物のB級映画がちょっとしたブームだったから。ロジャー・コーマン自身は、このタイトル変更に関して相当ご立腹だったようだ。

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石器人たちの集落

好奇心旺盛な石器人の若者(R・ヴォーン)

集落には先祖代々伝えられている掟があった

 とある石器人の集落で暮らす若者(ロバート・ヴォーン)は、好奇心旺盛で聡明なことから年長者たちから一目置かれる存在だった。集落には先祖代々伝えられている掟があり、何があっても絶対に河の向うへと渡ってはいけない。そこには“触れるだけで人を殺す”という恐ろしい神がいるというのだ。
 しかし、若者はこの狭い集落の中だけで人生を終えることに疑問を持ち、外の世界を見てみたいという欲求に駆られる。そこで、ある日彼は若い仲間たちと共に掟を破り、河を渡って向こう岸へと足を踏み入れてしまう。彼らの目の前に現れたのは巨大な恐竜やマンモスたち。恐れをなした若者たちは、逃げるようにして集落へと戻った。
 集落では若者の父(レスリー・ブラッドレー)ら長老たちが会議を行い、初めての過ちゆえに今回は許そうということに決まる。しかし、恋人(ダーラ・マーシャル)の心配をよそに、若者は外の世界への興味を失ってはいなかった。今度こそ“触れるだけで人を殺す”という神を見つけ出して倒し、集落の人々を自由にするのだ。
 かくして、単身集落を抜け出して再び河を越えた若者。長老たちも今度という今度は若者を許すわけにはいかず、彼を殺すための追っ手を差し向ける。道なき道を行く若者と、彼に迫ろうとする追っ手たち。そんな彼らの目の前に、異様な姿をしたモンスターが現れた。果たして、このモンスターこそが“触れるだけで人を殺す”という神なのか?やがてその正体が明らかになったとき、若者たちは衝撃的な事実を知ることになる・・・。

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掟を破って外の世界へと足を踏み入れた若者たち

『恐竜百万年』から拝借された特撮シーン

石器人たちの目の前に現れたモンスターの正体とは・・・!?

 脚本を書いたR・ライト・キャンベルは、ロン・チャニーの伝記映画『千の顔を持つ男』(57)でオスカー候補になった脚本家。ロジャー・コーマンとは『機関銃(マシンガン)ケリー』(58)や『赤死病の仮面』(64)など数多くの作品で組んでいる。決して悪い脚本家ではないし、本作に関してもアイディアの着眼点は良かったと思うのだが、低予算映画ゆえの制約には打ち勝つことが出来なかったと言えよう。
 主演のロバート・ヴォーンは当時26歳。ティーンエイジャーというには無理があるものの、まだまだ若くてあどけなさを残した彼を見ることが出来るというのは貴重だ。この2年後に『荒野の七人』(60)で注目され、さらにその4年後にテレビ『0011ナポレオン・ソロ』(64−68)で大ブレイクすることに。そんな彼にとって本作は忘れてしまいたい過去の汚点だったようで、後に“自分の出演作の中でも最低の映画”と呼んで後悔している。
 その他の出演者はいずれも無名の俳優ばかりだが、ジョナサン・ヘイズやビーチ・ディッカーソン、エド・ネルソンといったロジャー・コーマン作品常連組が小さな役で顔を出している。ちなみに、エド・ネルソンはその後テレビ・ドラマ『ぺイトン・プレイス物語』(64−69)で全米の人気スターとなった。

 

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