アマズル Amazulu
〜キュートでポップなガールズ・スカ・バンド〜
80年代に一世を風靡したUKのスカ・バンド、アマズル。キャッチーで覚えやすいメロディと底抜けに陽気なサウンドがバカ受けし、4年間で9曲のUKチャート・ヒットを放つという大活躍ぶりだった。
スカといえばジャマイカ発祥のストリート・ミュージックで、ジャズやR&B、パンクとの繋がりが深いジャンル。マッドネスやスペシャルズといった名前を思い浮かべる人も多いと思う。どちらかというと不良の聴く音楽なわけだが、アマズルのサウンドはあくまでもポップでダンサンブル。キュートなガールズ・スカといった形容詞がふさわしいバンドだった。
彼女たちのプロデュースを務めたのはアンディ・ヒルとクリストファー・ニール。アンディ・ヒルはUK版アバとして80年代に大活躍したポップ・グループ、バックス・フィズのプロデューサーとして名高いヒット・メーカー。片や、クリストファー・ニールは初期シーナ・イーストンやポール・キャラック、セリーヌ・ディオンなどのプロデューサーとして有名な人物。この顔ぶれを見れば、アマズルのサウンドが極端にポップス寄りだったことも十分に納得できるだろう。
バンドの結成は1983年。当初のメンバーはアン=マリー・ルドック(ボーカル)、マーゴ・サゴフ(ギター)、クレア・キニー(ベース)、レスリー・ビーチ(サックス)、シャロン・ベイリー(パーカッション)、ナード・ベイリー(ドラムス)の6人編成だった。女性5人に男性1人という大所帯である(ただし、最盛期には7人編成だったこともある)。
アダム&ジ・アンツのマネージャーだったファルコン・スチュアートに見出され、83年にシングル“Cairo”でレコード・デビュー。これはUKチャート86位というマイナー・ヒットとなった。その後、2枚のシングルが不発に終わったものの、4枚目のシングル“Excitable”がUKチャート12位を記録。次の“Don't
You Just Know It”も15位をマークし、北米でも評判となった。さらに、86年にシングル“Too Good To Be
Forgotten”がUKチャートで最高5位を記録し、その人気は決定的なものとなった。
しかし、人気上昇と共にバンド内の不和も表面化し、メンバーが相次いで脱退。念願のファースト・アルバムがリリースされた頃には、アン=マリーとレスリー、シャロンの3人しか残っていなかった。さらに、翌年にはレスリーまでもが脱退。アン=マリーとシャロンの2人だけでアマズルを名乗って活動を続けたが、シングル2枚を残してあえなく消滅してしまった。
その後、アン=マリーはアレックス・コックス監督の映画『ストレート・トゥ・ヘル』('87)にコートニー・ラヴやジョー・ストラマー、グレース・ジョーンズ、エルヴィス・コステロらと共に出演。初期メンバーだったクレア・キニーは、シェイクスピアズ・シスターやシンニード・オコナーのバック・ミュージシャンとして活躍した。
Cairo (1983) Moonlight Romance
(1984) Excitable
(1985) Don't You Just Know It
(1985)
(P)1983 Towerbell Records
(UK)
(P)1984 Island Records
(Germany)
(P)1985 Mango/Island (USA)
(P)1985 Ariola/Island
(Germany)
side 1
1,Cairo 4:20
Side
2
1,Greenham Time 2:37
2,Nuya Deya 2:53
produced by Richard
Hartleyside 1
1,Moonlight Romance
5:51
side 2
1,MoonlightDub 7:10
produced by Jerry Dammers
& Dick Cuthellside 1
1,Excitable 6:37 *
side
2
1,Excitable (The Smart Mix) 5:20 **
produced by Christopher
Neil
* remixed by Jonn Morales
** remixed by Stephen
Streetside 1
1,Don't You Just Know It
5:50
side 2
1,Upright Forward 8:26 *
produced by Christopher
Neil
* produced by Cliff Whyte
これが彼女たちの実質的なデビュー盤。後のアルバムに収録されているのとは別バージョンです。エキゾチックなオリエンタル・スカといった感じで、86年バージョンよりもコアな雰囲気。プロデューサーのリチャード・ハートレーは、映画『ロッキー・ホラー・ショー』の音楽プロデューサーとして知られ、初期バナナラマやミート・ローフなども手がけている人物です。
なんともほのぼのとしたムードの、超ハッピーで楽しいポップ・スカ。こちらは後のアルバムに収録されたバージョンのエクステンデッドに当たります。プロデュースを担当したジェリー・ダマースとディック・カテルの2人は、あのスペシャルズを手がけたコンビ。それにしては陽気で能天気な楽曲に仕上がっています。残念ながらチャート・インはしませんでしたが、個人的にはお気に入り。
こちらはさらに陽気で愉快、能天気でハッピーなポップ・スカの傑作です。このキャッチーさときたら!思わずウキウキ・ワクワク(笑)といった感じですね。サイド1のリミックスを手がけたのは、セルジョ・マンジバイとのコンビで一世を風靡したミキサー、ジョン・モラレス。いかにも彼らしいディスコティックな仕上がり。恐らくスカとして正しいのはサイド2でしょう。こちらもグッドです。
ハッ・ハッ・ハッ!イェ〜エオ〜!というサビのフレーズが余りにも有名なヒューイ・スミスの名曲を、ウルトラ・キャッチーなポップ・スカとしてカバーしたシングル。楽しすぎます!しかも、両面エクステンデッド・バージョンというのが嬉しいですね。カップリング曲はのんびり&ほのぼのとしたミディアム・ナンバー。ポップで優しいメロディに心癒される名曲です。
Things The Lonely Do
(1986) Too Good To Be Forgotten
(1986) Montego Bay
(1986) Amazulu
(1986) (P)1986 Island Records(UK)
(P)1986 Island Records
(UK)
(P)1986 Ariola/Island
(Germany)
(P)1986 Island Records
(USA)
side 1
1,The Things The Lonely Do
6:10
side 2
1,Sez Who 7:49 *
produced by Christopher
Neil
* produced by Amazuluside 1
1,Too Good To Be Forgotten
5:32 *
side 2
1,Sez Who 7:49 **
produced by Christopher
Neil
* remixed by Stephen Street
** produced by Amazuluside 1
1,Montego Bay 5:18
*
side 2
1,Only Love 5:42 **
produced by Andy Hill
* remixed
by Stephen Street
** produced by Amazulu1,Too Good To Be Forgotten 3:03 ビデオ
2,Excitable
(Soca Mix) 3:27 ビデオ
3,After
Tonight 3:57
4,All Over The World 3:19
5,The Things The Lonely Do
3:43 ビデオ
6,Montego Bay
3:02 ビデオ
7,Don't You
Just Know It 3:05 ビデオ
8,Cairo
3:27
9,Moonlight Romance 3:29
10,Upright Forward
4:04
#1,#2,#5,#7 produced by Christopher Neil
#6,#8 produced by
Andy Hill
#4 produced by Dennis Bovell & Andy Hill
#3 produced
by Dennis Bovell
#9 produced by Jerry Dammers & Dick Cuthell
#10
produced by Cliff Whyte
こちらは素朴でほのぼのとしたミディアム・バラード。ちょっとセンチメンタルなところがキュンと来ますね〜。全英最高43位の小ヒットでしたが、なかなか心に染み渡る名曲だと思います。ちなみに、このエクステンデッドは基本的にインスト部分を増やしただけ。アルバム・バージョンの方がコンパクトにまとまっていて聴きやすいかもしれません。カップリング曲はイマイチ。
アマズルにとって最大のヒットとなった名曲。ポップで爽やかな最高のスカ・ナンバーです。リミックスを手がけたのはスティーブン・ストリート。ザ・スミスやクランベリーズ、ブラーなどで有名な大物プロデューサーですが、その一方でロビー・ネヴィルやスキップワース&ターナーなどのリミックスも数多く手がけています。ツボを心得たキャッチーなミックスに仕上がってますね。
1969年にボビー・ブルームが放った一発ヒットをカバーしたシングル。思わず笑顔がこぼれてしまうような、ハッピーで楽しいナンバーです。アマズルの12インチは基本的にエクステンデッド・バージョンばかりなのですが、これは完全なリミックス。アルバム・バージョンよりもベース・ラインを強調し、ずっしりとしたダンス・フロア映えするミックスに仕上がってます。全英16位。
アマズル唯一のフル・アルバム。10曲中9曲がシングル・カットされており、殆どベスト盤と呼んでもいいような内容です。アルバムってのは必ず何曲かは聴き飛ばすような“捨て曲”が入っているもんですが、本作に関しては最初から最後までたっぷり楽しめること請け合い。当時は夢中になって聴きまくったもんでした。キュートでハッピーなスカ・ナンバーがたっぷり詰まった1枚です。
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Mony Mony (1987) |
Wonderful World Beautiful People (1987) |
(P)1987 EMI Records (UK) | (P)1987 EMI Records (UK) |
side 1 1,Mony Mony (Extended Mix) side 2 1,Mony Mony (7" Version) 2,Mony Mony (Instrumental Version) produced by Barry Blue mixed by Pete Hammond |
side 1 |
アン=マリーとシャロンの2人だけになったアマズルのEMI移籍第1弾シングル。1968年に大ヒットしたトミー・ジェームズのヒット曲をカバーした作品。ビリー・アイドルも歌ってましたね。プロデュースは70年代のUKアイドル、バリー・ブルー。PWLのピート・ハモンドがリミックスを担当しており、普通にハイエナジーしてます。アマズルである必要もない、ごく平均的なダンス・ナンバー。 | こちらはレゲエ界の大御所ジミー・クリフの名曲をカバーした作品。しっかりとアマズルらしさを生かした、ハッピーで楽しいナンバーに仕上がっています。ピート・ハモンドのミックスはレゲエを基調にしつつ、PWL特有のベース・ラインやドラム・パターンを導入し、彼らしさをアピールしております。ただ、惜しむらくは全英97位という結果。これが最後のシングルになりました。 |