アグネッタ ソロ・ワークス (2)
Agnetha Fältskog Vol. 2 (1969)

 

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オリジナルLP盤ジャケット

Royal Records CD盤ジャケット

オリジナルLP盤

CD盤(Royal Records)

CD盤(Sony)

(P)1969 Cupol AB (Sweden) (P)2000 Royal Records (Netherland) (P)2004 Sony Music Entertainment (SW)
side 1
1,Framfor Svenska Sommaren
2,Lek Med Dina Dockor
3,Ge Dej Till Tals
4,Skal Kara Van
5,Glom Honom
6,En Gang Fanns Bara Vi Tva
side 2
1,Hjartats Kronprins
2,Det Handlar Om Karlek
3,Som En Vind Kom Du Till Mej
4,Senor Gonzales
5,Zigenarvan
6,Tag Min Hand, Lat Oss Bli Vanner
1,Framfor Svenska Sommaren
2,Lek Med Dina Dockor
3,Ge Dej Till Tals
4,Skal Kara Van
5,Glom Honom
6,En Gang Fanns Bara Vi Tva
7,Hjartats Kronprins
8,Det Handlar Om Karlek
9,Som En Vind Kom Du Till Mej
10,Senor Gonzales
11,Zigenarvan
12,Tag Min Hand, Lat Oss Bli Vanner
bonus tracks
13,Nu Ska Vi Opp, Opp, Opp
14,A Medley Of Songs:Varkanslor (Ja Da' A' Varen)/Det Kommer En Var/Nu Ska Vi Vara Snal
15,En Stilla Flirt
1,Framfor Svenska Sommaren
2,Lek Med Dina Dockor
3,Ge Dej Till Tals
4,Skal Kara Van
5,Glom Honom
6,En Gang Fanns Bara Vi Tva
7,Hjartats Kronprins
8,Det Handlar Om Karlek
9,Som En Vind Kom Du Till Mej
10,Senor Gonzales
11,Zigenarvan
12,Tag Min Hand, Lat Oss Bli Vanner
#13〜15はテレビの音楽番組用にレコーディングされたスタンダード・カバーで、ビヨルンとの共演作品。
※詳細は下記解説を参照のこと。

 

 デビューからほどなくしてスウェーデンの国民的アイドルとなったアグネッタだったが、その翌年に当たる1969年は彼女にとって、言うなれば試練の一年だったと言えるかもしれない。ドイツ人の若きヒット・メーカー、ディーター・ジンマーマンと恋に落ち、彼の言うがままに西ドイツへ進出を果たしたアグネッタ。しかし、この右も左も分からない異国の地ではなかなかヒットに恵まれなかった。
 その最大の要因は、彼女に一切の発言権が認められず、彼女が書いた楽曲すら全く取り上げてもらえなかったことにあるとも言われている。恩師であるカール=ゲルハルド・ルンドクヴィストによると、“アグネッタは自分がレコーディングしたい作品はどれなのか、逆に嫌なのはどれなのか、明確に分かっているタイプのアーティスト”だった。しかも、地元スウェーデンでのヒット・チャートの実績からも分かるように、一般のリスナーに最も受けたのは彼女自身の書いたメロディだったのである。しかし、ヒギンズ教授気取りのジンマーマンとその取り巻きの男性スタッフは、経験の浅いアグネッタに選択の余地を与えようとはしなかったそうだ。
 おのずと、アグネッタ自身も不満を募らせるようになる。当時の彼女は有り余るほどの創作意欲に溢れていた。“アイディアは常に湧き続けていたわ。街を歩いているときも、ツアー・バスの中でも、どこでもよ。急いで紙とペンを手に取るのが大変だったくらい”。当然のことながら、ジンマーマンとの間の溝は瞬く間に深まっていき、2人は顔を合せるたびに口論となるような状態だった。やがて婚約は破棄され、69年の春頃にはジンマーマンとの契約も解消されることとなる。その後も72年までアグネッタは西ドイツでシングルを発売しているが、残念ながら成功を収めることが出来なかった。
 約半年以上に渡って西ドイツでの活動に重点を置いていたことから、すっかりスウェーデンではヒット・チャートから遠のいていたアグネッタ。それでも、5月には久々の新曲“Framför Svenska Sommaren(スウェーデンの夏を前に)”を発売し、スヴェンスクトッペンで最高4位のスマッシュ・ヒットとなった。
 そんな彼女にとって、さらに嬉しいニュースが飛び込む。8月にテレビ放送される音楽特番“Räkna de lyckliga stunderna blott(楽しい時間を刻んで)”でビヨルン・ウルヴァースと共演することが決まったのだ。1年ほど前の初対面ではお互いに気まずい思いをし、さらにはディーター・ジンマーマンとの婚約などもあってビヨルンとは疎遠になっていたものの、アグネッタにとって彼が憧れのアイドルであることは変わらなかった。
 この番組はスウェーデンの有名な作曲家ジュール・シルヴァンの名曲を当時の人気歌手たちがカバーするという企画で、アグネッタは3曲で歌声を披露しており、その中の1曲(メドレー)がビヨルンとの初共演だった。撮影が行われた時期は定かでないものの、8月16日(日曜)の午後7時15分より番組は放送されている。
 その直後から、アグネッタとビヨルンのロマンスがマスコミで報道されるようになった。アグネッタはビヨルンのレコーディング現場を頻繁に訪れ、秋頃には2人で新しいアパートを借りて同棲生活を始めている。共に誰もが知っている人気スターであることから、たちまち“スウェーデン音楽界で今年最大のロマンス”と呼ばれるようになったという。
 このように、私生活では嬉しい転機を迎えたアグネッタだったが、アーティストとしての厳しい試練は依然として続いていた。9月にはジャーマン・ポップスのカバー曲“Hjärtats Kronprins(心の王子様)”をシングルとしてリリースするものの、なんとチャート・インすら逃すという悲惨な結果に。この時期に及んで、ようやく周囲の関係者はファンが求めているのは彼女の書いた作品なのだと気付き始めたのだという。
 実は、アグネッタはこの年のサマー・ツアーで自ら書いたある新曲を積極的に歌っていた。ところが、この曲には決まったタイトルがなく、歌詞もまるで即興のようにコロコロと変わっていた。もともと作詞があまり得意ではない彼女のこと、恐らく満足のいく歌詞がなかなか出来なかったのかもしれない。それでも、アグネッタ自身はメロディに大変な愛着があったし、周囲からの反応も非常に良かった。そこで、作詞家のベングト・ハスルムがアグネッタと相談の上でちゃんとした歌詞を書き上げ、“Zigenarvän(ジプシーの友達)”というタイトルで楽曲を完成させたのである。
 11月にシングルとして発売されたこの作品は、ジプシーの少年と恋に落ちた少女の気持ちを歌ったアップテンポな歌謡ポップス・ナンバー。スヴェンスクトッペンで最高5位をマークし、アグネッタにとっては約半年ぶりのスマッシュ・ヒットとなった。ところが、この作品が思いもよらぬバッシングを受けることとなってしまう。というのも、当時スウェーデンではジプシーの存在を巡って排斥派と擁護派が激しく対立し、ちょっとした社会問題となっていたのである。マスコミは“話題性を狙ったキワモノ音楽”だとして一斉に非難し、ジプシー排斥派も“ジプシーを一方的に美化した歌詞はゆゆしき問題だ”と強く反発した。カール=ゲルハルドのもとには“ラジオでの放送を自粛しろ”という圧力までかかったという。
 そもそも、この楽曲が完成したのはジプシー問題が浮上する以前のことで、たまたま発売のタイミングが悪かったというだけのことだった。しかし、アグネッタ側は公に一切の反論をせず、バッシングの嵐が過ぎ去るのを待つことにした。それでも、12月には1年ぶりのセカンド・アルバム“Agnetha Fältskog Vol. 2”をリリース。アグネッタ自身による楽曲はまだまだ少ないものの、よりソフト・ロック的な方向性を明確に打ち出したという点では大きな進化を遂げており、その後のアーティストとしての飛躍を予感させるような作品に仕上がっている。女性ポップス・ファンならば必聴の名盤だ。

 

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<楽曲解説>

1, Framför Svenska Sommaren (スウェーデンの夏を前に) ビデオ
 スヴェンスクトッペン・チャートで最高4位をマークしたヒット曲。アメリカの古いフォーク・ソング“Chick-a-chick-a-dee”という曲のカバーで、なんとも牧歌的で心癒されるポップ・ソングに仕上がっています。スウェーデン語の歌詞を付けたのは、恩師であるカール=ゲルハルド・ルンドクヴィスト。ただ、アグネッタ自身はこの曲を歌ったという記憶すら定かではないらしく、今となっては思い入れも全くないのだそうです。いい曲なんですけどね〜。

2,Lek Med Dina Dockor (あなたの人形で遊んで) ビデオ
 明らかにトム・ジョーンズを意識したと思われる、アップテンポでグル―ヴィーでダンサンブルなポップ・ナンバー。程よく乙女チックなメランコリーを加味したメロディがまた最高です。作曲はディーター・ジンマーマン。アグネッタ自身がスウェーデン語の歌詞を付けています。シングル・カットこそされませんでしたが、本アルバム中でもベスト・トラックの一つだと思います。

3,Ge Dej Till Tåls (辛抱して) ビデオ
 こちらもグル―ヴィーなダンス・ナンバーで、よりラウンジ・ポップ色を濃厚にしたような仕上がり。ただ、メロディに今一つインパクトが足らないなと思ったら、原曲はバリバリのアシッド・ジャズだったんですね。イギリスのミュージシャン、アラン・ホークショーのインスト・ナンバーがオリジナルで、そこにスウェーデン語の歌詞を乗っけたようです。ホークショーの原曲と聴き比べると、さすがにカッコ良さでは到底敵わないなといったところですが、アグネッタのバージョンもナイス・トライといった感じではあります。

4,Skål Kära Vän (乾杯、親愛なる友たちよ) ビデオ
 どことなくバート・バカラックを意識したような、ちょっとメランコリックで洒落たポップ・ナンバー。ダスティー・スプリングフィールドが歌っていてもおかしくないかもしれません。作曲はディーター・ジンマーマンで、アグネッタがスウェーデン語の歌詞を付けています。バイオリンやSEのお洒落な使い方なんかは、当時のA&Mサウンドを彷彿とさせるような…。

5,Glöm Honom (彼のことは忘れて) ビデオ
 ソフトで軽快なビートに哀しげなクラリネットの音色、さりげなく被さる美しいストリングス、そして切なげなアグネッタのボーカル。まさしく、愛すべき胸キュンの失恋ナンバーといったところでしょうか。イギリスだったら確実にサンディ・ショーが歌っていたはず。こちらも作曲はディーター・ジンマーマンで、アグネッタがスウェーデン語の歌詞を付けています。

6,En Gång Fanns Bara Vi Två (かつて私たちは2人きりだった) ビデオ
 のどかで牧歌的、フォーキッシュな心温まるポップ・ナンバー。いわゆるシュラゲル的な要素が濃厚な作品ですね。ちょっと泥臭いところが逆にいい。師匠のカール=ゲルハルド・ルンドクヴィストが作詞・作曲を手掛け、シングル#1のB面ソングとして使用されました。

7,Hjärtats Kronprins (心の王子様) ビデオ
 これはなんとも可愛らしい!中世ヨーロッパの宮廷音楽をモチーフにした、実にキュートで乙女チックなポップ・ソング。コッテコテのアイドル歌謡といった感じです。当時シングル・カットされながらもチャート・インすらできなかったのは残念ですが、個人的にはとっても大好き。どうやら原曲は西ドイツのポップ・ナンバーらしく、後のアバのマネージャーであるスティッグ・アンダーソンがスウェーデン語の歌詞を付けています。

8,Det Handlar Om Kärlek (それは愛について) ビデオ
 程よくスパニッシュ・テイストを盛り込んだ甘いラブ・ソング。なかなか印象に残るキャッチーなナンバーです。実はこれ、アグネッタ自身が西ドイツで発売した曲“Concerto D'amore”のセルフ・カバー。作曲はドイツの有名なヒット・メーカー、ハンス・ブルーム。ベングト・ハスルムがスウェーデン語の歌詞を付けています。ちなみに、アレンジを担当しているのはマイケル・B・トレトウ。そう、後にアバの全作品を手掛ける名エンジニアです。ビヨルンとベニーだけでなく、アグネッタとも長い付き合いだったんですね。

9,Som En Vind Kom Du Till Mej (私に吹きつける風のように) ビデオ
 なんか聴いたことのあるような曲だな〜と思ったら、アグネッタが敬愛するコニー・フランシスの「ボーイハント」にメロディからサウンドまでソックリなんですね(笑)。しかも、出だしのメロディはジュディ・ガーランドの「虹の彼方に」に瓜二つ。作曲はディーター・ジンマーマンですが、もうちょっと上手くパクってほしかったもんですね(^^;

10,Señor Gonzales (セニョール・ゴンザレス) ビデオ
 これはいいです!言ってみれば子供向けの愛唱歌みたいな楽曲なんですけど、この突き抜けたおバカさんぶりといい、ぶっちぎりにハイテンションなサウンドといい、あまりにも楽しすぎます。アイドル・ポップスはかくあるべし!といった感じの見事な出来栄えですね。こちらも、もともとは西ドイツでシングル発売された作品のスウェーデン語セルフ・カバー。作曲はディーター・ジンマーマンです。

11,Zigenarvän (ジプシーの友達) ビデオ
 そして、これが当時バッシングに晒された問題のシングル。とはいっても、東欧ジプシーのロマ音楽をモチーフにした他愛のないポップ・ソングで、今となってはどうしてこれが批判されたの?と首を傾げてしまうはず。コッテコテに泥臭い歌謡ポップスなので好き嫌いは分かれるかと思いますが、個人的には悪くないと思います。作曲はアグネッタで、作詞がベングト・ハスルム。先述したように、スヴェンスクトッペン・チャートで5位を記録しました。

12,Tag Min Hand, Låt Oss Bli Vänner (私の手を取って、友達になりましょう) ビデオ
 キャッチーで爽やかで愛らしいポップ・ナンバー。本アルバムで唯一、アグネッタが作詞・作曲の両方を一人で手掛けた作品。まだまだ洗練されているとは言い難いけど、それでも彼女の優れたメロディ・センスの片鱗が伺える名曲です。シングル#7のB面ソングとしても使用されました。

※アルバム未収録曲

Nu Ska Vi Opp, Opp, Opp (さあ、上へ上へ上へのぼろう) ビデオ
A Medley Of Songs: Värkänslor (Ja Da' Ä' Vären)/ Det Kommer En Vär/Nu Ska Vi Vara Snälla (歌のメドレー) ビデオ
En Stilla Flirt (沈黙の戯れ) ビデオ
 いずれもテレビ特番“Räkna de lyckliga stunderna blott ”のためにレコーディングされた曲で、1930年代にスウェーデンで流行したスタンダード・ナンバーです。アグネッタとビヨルンが初めて共演した作品(楽曲としてはメドレーのみ)という以外には、今となっては特筆に値するものはないかもしれません。オフィシャルでCD化されているのは、上記のRoyal Records盤のみです。

 

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