Afraid of the Dark (1991)

 

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(P)2005 New Line/Image (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/5.1chサラウンド・2.0ステレオ/音声:英語/字幕:なし/地域コード:1/92分/製作:イギリス・フランス

映像特典
なし
監督:マーク・ペプロー
製作:サイモン・ボサンクエット
脚本:マーク・ペプロー
   フレデリク・シーデル
撮影:ブリュノ・ド・ケイゼル
音楽:リチャード・ハートレイ
出演:ジェームズ・フォックス
   ファニー・アルダン
   ベン・キーワース
   ポール・マッギャン
   クレア・ホフマン
   ロバート・スティーブンス
   スーザン・ウールドリッジ
   デヴィッド・シューリス
   カトリオナ・マッコール
   ヒラリー・メイソン
   ストゥルーアン・ロジャー

 

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ロンドンに暮らす平凡な少年ルーカス(B・キーワース)

近所では盲目の女性ばかりが襲われる事件が多発していた

 アカデミー賞受賞作『ラスト・エンペラー』(87)や『シェルタリング・スカイ』(90)、『リトル・ブッダ』(93)といったベルナルド・ベルトルッチ監督とのコラボレーションで知られる脚本家マーク・ペプローの劇場用長編監督デビュー作。映画の前半と後半で主人公を巡る設定やストーリーが180度変わってしまうという、非常に実験性の高いユニークなサイコ・スリラーである。
 主人公はロンドンで暮らす少年ルーカス。警察署長の父親と盲目の母親に育てられている大人しい男の子だ。思春期に差し掛かりはじめた彼は、母親の友人である盲目の女性ローズのことが気になっている。しかし、このごろ住宅街では盲目の女性ばかりをターゲットにした連続暴行事件が相次いでいた。
 母親やローズを守りたいと考えるルーカス。盲人の女性に色目を使う窓拭き男やローズの様子を伺う鍵屋の男、裏で女性ヌード写真を撮って稼いでいるカメラマンなど、彼には周囲の大人の誰もが怪しく思えた。やがて、近隣の人々の生活を覗き見していた彼は、真犯人の正体を見破ってしまう・・・。
 と、ここまでは連続暴行魔を追う幼い少年の活躍を描いた猟奇サスペンスといった様子だが、実はさにあらず。なんと、以上の物語は主人公ルーカスが頭の中で思い描いていた妄想だったのだ。
 現実の母親は盲目などではないし、父親は警察官でもない。もちろん、ローズだって健常者。しかも、ルーカスにとっては義理の姉である。そればかりか、彼の妄想の中に出てきた盲人たちは、全て普通に目の見える隣人だ。実は、目が見えないのはルーカス自身だったのである。

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施設へ行く母ミリアム(F・アルダン)に付き添うルーカス

美しい盲目の女性ローズ(C・ホルマン)と知り合う

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ローズをいやらしい目つきで見る窓拭きの男(S・ロジャー)

カメラマンのトニー(P・マッギャン)も胡散臭そうな男だった

 厳密に言うと、ルーカスは全く目が見えないわけではない。原因不明の病気で極端に目が悪く、危険な手術をしなければ視力が完全に失われてしまうというのだ。視力が失われていくという不安、手術を受けなければいけないという恐怖。そんな彼の心情を周囲の大人は誰も気付かない。母親の妊娠やローズの結婚といった出来事が重なり、誰もルーカスのことに構っている暇などなかった。そんな大人たちのことを、ルーカスは“盲人”として見ていたのである。
 さらに、彼の妄想の中に出てくる“悪人”たちが、義姉ローズの婚約者とその友人たちであることも分かる。ローズのことを異性として意識していたルーカスにとって、婚約者とその仲間たちは大切な義姉を奪っていく汚れた大人と映っているのであろう。つまり、前半で描かれる妄想ストーリーというのは、彼の深層心理を浮き彫りにしたものなのだ。
 誰にも構ってもらえないような状況の中で、徐々に妄想と現実の区別がつかなくなっていくルーカス。先端の尖ったものに異常な執着を見せるようになった彼は、唯一の友達である近所の犬を間違って刺し殺してしまう。だが、ローズの結婚式や母親の出産で大忙しの大人たちは、彼の普通ではない行動や態度の変化に全く気付かない。
 やがて、生まれたばかりの妹を連れて母親が家に戻ってくる。大人たちの人気を独り占めにする赤ん坊を、メガネの奥からじっと冷静な目で見つめるルーカス。その手には母親がベビー服を編むために使っていた針棒が握られていた。そしてある晩、大人たちが目を離した隙に赤ん坊の姿が消えてしまう・・・。

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盲目の女性ルーシー(S・ウールドリッジ)が襲われる

ゴールデンレトリバーのトビーはルーカスの唯一の友達

 監督と共同脚本を手掛けたマーク・ペプローは、ケニアで生まれてイタリアで育ったというイギリス人。名門オックスフォード大学を卒業し、テレビのドキュメンタリー作家を経て映画脚本家となった。
 ジャック・ドゥミ監督の『ハメルンの笛吹き』(71)や巨匠ミケランジェロ・アントニオーニの『さすらいの二人』(74)、ルネ・クレマンの『危険なめぐり逢い』(75)で注目され、姉クレア・ペプローの夫であるベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』で見事アカデミー賞を受賞。過去にD・H・ロレンスの小説を映像化した短編映画“Samson and Delilah”(85)という監督作はあったが、本作が満を持しての本格的長編劇映画監督デビュー作となったというわけだ。
 精神的な問題を抱えた少年の妄想と現実を2部構成で描くというのは非常に独創的な手法で、実際に本作はその両者が密接に絡み合うことで主人公の内的世界を丹念に浮かび上がらせることに成功している。前半の妄想ドラマがなければ、後半の現実ドラマで描かれるルーカスの精神的な崩壊の過程は薄っぺらな描写に終始してしまっただろう。
 また、両者を同時並行ではなく別立てで描いたというのも、観客の混乱を避けるという意味でとても効果的だった。ただし、それでも難解に思えるような点は少なくない。特に、何を考えているのか全く分からない主人公ルーカスの無感情で常軌を逸した言動は、見るものを少なからず困惑させるだろう。
 最初は母親やローズの身の安全を心配しているようにも思えるルーカスだが、その奇妙で不可解な行動を見るうちにそれだけではないような気がしてくる。さらに、現実世界に引き戻された後の彼は、より一層のこと繊細で不気味な存在になっていくのだ。しかし、それは彼の深層心理を探りながら理解していく上で必要なプロセスの一環だし、果たして彼が正常なのか異常なのか?という疑問と不安を盛り上げていく上でも重要な演出と言えるだろう。
 惜しむらくは、そうした実験性の高いサイコロジカルな描写を駆使ながらも、肝心の“狂気”という世界にはいまひとつ足を踏み込んでいないという点。恐らくこれがデヴィッド・リンチやデヴィッド・クローネンバーグの監督作であれば、主人公ルーカスは完全にあちら側の世界の住人になってしまったであろうところを、本作ではその一歩手前のところで踏みとどまらせてしまったのだ。一応、思わせぶりなエンディングで彼の将来に疑問を投げかけてはいるものの、どうも子供を主人公にしているがために安全策を取ってしまったという印象は拭えない。傑作となり得る要素が十分あるだけに残念だ。

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ローズの安全を心配するように見えるルーカスだが

ローズの様子を怪しげに覗き見る鍵屋(D・シューリス)

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真夜中の写真館でヌード写真のモデルとなるローズ

犯人はカメラマンのトニーだった・・・!?

 舞台はロンドンの閑静な住宅街。11歳の少年ルーカス(ベン・キーワース)は真夜中に両親の動揺する話し声で目を覚ました。近所に住む盲目の女性が何者かに襲われ、顔面を剃刀で切り裂かれたというのだ。このところ同じような事件が多発している。ルーカスの母ミリアム(ファニー・アルダン)も盲人であり、被害者はいずれも親しい友人だった。不安と恐怖に駆られる彼女を、警察署長である父フランク(ジェームズ・フォックス)は力強く抱きしめた。
 翌朝、母ミリアムはいつものように盲人施設へと出かける。近隣に住む仲間とお茶と語らいを楽しむためだ。学校が夏休みに入ったことから、ルーカスは母親に付き添っていくことにする。そこで、彼は母の友人であるローズ(クレア・ホフマン)という若い盲目の女性と知り合う。
 ローズの美しさに惹かれるルーカスだったが、そんな彼女をいやらしい目つきで見つめる窓拭きの男(ストゥルーアン・ロジャー)が気がかりだった。これから婚約者と記念写真を撮るというローズ。ルーカスは写真館まで彼女に付き添うことにした。だが、写真館のカメラマン、トニー(ポール・マッギャン)も怪しげな男だった。ローズを眺めまわした彼は、ヌード写真のモデルにならないかと持ちかける。あくまでも“芸術的”なヌードだからと。
 婚約者が写真館に到着してお役御免となったルーカスは施設に戻る。すると、盲目の中年女性ルーシー(スーザン・ウールドリッジ)が施設から出てきた。なんとなく彼女の後をついていくルーカス。その気配に気付いたルーシーは暴行魔に狙われていると勘違いし、足早に自宅へと戻っていった。
 ルーシーが家へ入る様子を見届けたルーカスは、不自然に扉が開いている家へと入り込む。そこで見つけた望遠鏡でルーシーの自宅を眺めていた彼は、血みどろになって泣き叫ぶルーシーの姿を目撃する。その時、家の住人が戻ってきてしまった。ベッドの下に隠れたルーカスは、隙を見て逃げ出す。
 ルーシーの悲鳴を聞きつけた隣人の通報でパトカーが駆けつけた。父フランクが現場検証をしている。その様子を遠巻きに眺めていたルーカスは、そのまま施設へと戻った。施設にはローズが戻っていた。そこへ父フランクと施設長ダン(ロバート・スティーブンス)がやって来て、ルーシーの事件をみんなに報告した。
 施設で見つけた編み物用の針棒を手にしたルーカスは、ローズを自宅まで送り届けることにする。母ミリアムは父と共に帰宅した。ローズの部屋でおやつをご馳走になったルーカス。しかし、部屋のドアを修理しに来たという若い鍵屋(デヴィッド・シューリス)の怪しげな目つきが気になった。
 一人で家の近所をぶらつくルーカス。今度は鉄道の駅で盲目の老女が何者かに顔を切り裂かれた。通りをすれ違った窓拭きの男、道を歩いている鍵屋の男、墓地で墓石を撮影しているカメラマンのトニー。ルーカスには誰もが怪しく見える。
 そんな彼の唯一の友達は、近所の住人が飼っているゴールデンレトリバーのトビー。トビーと一緒に墓地でひとしきり遊んだルーカスは、夕暮とともに家路へとついた。
 その晩、こっそりと部屋を抜け出して外へと出たルーカスは、望遠鏡でローズの自宅を覗いていた。すると、そこへあの鍵屋の男が通りがかる。墓地を逃げるルーカスと、その後を追いかける鍵屋。間一髪のところでロビーが鍵屋に襲い掛かり、ルーカスはなんとか逃げおおせた。
 真夜中の町中を歩くルーカスは写真屋の裏へとやって来た。中を覗くと、カメラマンのトニーがローズのヌード写真を撮っている。すると、暗室へ入っていったトニーの手には剃刀が。連続暴行魔の正体はトニーだったのだ。急いで写真屋の中へ駆け込んだルーカスは、ローズに剃刀を振り下ろすトニーの眼球に針棒を突き刺した。

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現実世界のルーカスは視力を失いかけている

娘ローズの結婚を祝う父フランク(J・フォックス)

 針棒の尖った先でメガネの分厚いガラスを軽く叩いていたルーカスは、階下から聞こえてくる笑い声と音楽で我に返る。今日は義姉ローズ(クレア・ホフマン)の結婚式。母ミリアム(ファニー・アルダン)の妊娠とオメデタが重なり、義父フランク(ジェームズ・フォックス)はすっかり上機嫌だ。
 しかし、家中が喜びに包まれる中でルーカスだけは蚊帳の外。彼は視力が急速に低下しており、危険な手術をしなければ目が見えなくなってしまうのだ。両親は気落ちしているルーカスの様子を心配してはいるものの、ローズの結婚や自分たちの出産準備に忙しくて構ってあげる暇がない。それはローズも同じだった。
 結婚式場へと向かう一家。ローズと婚約者トニー(ポール・マッギャン)は幸せいっぱいで、そんな二人を親友のトム(デヴィッド・シューリス)や近隣の住人たちが賑やかに祝う。そんなパーティの様子を、ルーカスは隅っこで一人静かに眺めていた。
 すると、突然母ミリアムが産気づいて病院へ運ばれた。一斉に車を見送る参加者たち。母親のもとへ駆け寄ろうとしたルーカスは転倒し、メガネを落としてしまった。しかし、オメデタに夢中となった参加者たちはルーカスのことなど目に入らない。そればかりか、メガネが人混みで踏み潰されてしまい、ルーカスは手探りの状態で会場を出た。
 式場の目の前にあるメガネ屋にたどり着いたルーカスは、店主のダン(ロバート・スティーブンス)に新しいメガネを用意してもらう。ようやく目が見えるようになって表へ出たルーカスの前を、車に乗ったローズとトニーが参列者に祝福されて通り過ぎていった。ルーカスの存在すら気付かずに。ホコリを取るためにメガネを外したルーカスの目に、盲人となった参列者たちの姿が映る。
 一人でトボトボと家に帰り窓拭きを始めたルーカス。そこへ、トビーが尻尾を振って入ってきた。ところが、驚いてメガネを落としたルーカスの目には、トビーが血に飢えた狂犬に見えてしまう。とっさに針棒を手に取ったルーカスは、駆け寄ってきたトビーを刺し殺してしまった。
 何事もなかったように窓の縁についた血痕を拭き取るルーカス。その様子を、隣の家で仕事をしていた窓拭き男(ストゥルーアン・ロジャー)が怪訝そうに見ている。夕方になって義父フランクが戻ってきた。トビーのことを飼い主が探しているという。
 ルーカスはトビーを探しにいくふりをして、隠していた死体を外へ運び出した。夕飯の用意をしたフランクは、再び病院へと向かった。すると、家の前で人がざわめいている。トビーの死体が発見されたのだ。どうやらひき逃げされたらしい。だが、その頭部には何かに刺されたような傷跡があった。ふと、フランクはルーカスが持ち歩いている針棒のことを思い出して不安に駆られる。だが、考えすぎだろうと気を取り直した。
 やがて、母ミリアムが女の赤ん坊を連れて家に帰って来た。ローズやトニー、トムらも集まり、新しい家族の一員を賑やかに歓迎する。だが、ルーカスはその様子を遠くから無表情に眺めているだけだった。誰もがルーカスのことを忘れていた。
 夜になって赤ん坊を寝かしつけた大人たちは、リビングで団欒のひと時を過ごしていた。ふと、フランクは編み物用の針棒が見当たらないことに気付く。とっさに赤ん坊の様子を見に行った彼は、もぬけの殻になったベビーベッドを見て戦慄した。“ルーカスが赤ん坊を連れ去った!”
 暗闇の中を赤ん坊を抱えて逃げるルーカス。フランクやトニーたちは必死になってその後を追うが・・・。

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母ミリアムは出産を控えていた

幸せに包まれたトニーとローズ

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近所の住人や友人たちが祝福に集まる

会場の隅っこで一人遊びをするルーカス

 共同で脚本を手掛けたフレデリク・シーデルは、ペプローの短編処女作“Samson and Delilah”でも組んでいた人物。製作のサイモン・ボサンクエットは、『オネーギンの恋文』(99)や『ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方』(04)などを手掛けたイギリスのインディペンデント・プロデューサーだ。
 撮影のブリュノ・ド・ケイゼルは、ベルトラン・タヴェルニエ監督の『田舎の日曜日』(83)でセザール賞を受賞したフランスの名カメラマン。ペプローとは監督2作目『ヴィクトリー/遥なる大地』(95)でも組んでいた。
 音楽を担当したリチャード・ハートレイも、『ヴィクトリー/遥なる大地』で再び一緒に仕事をしている。彼は『ロッキー・ホラー・ショー』(75)の音楽監督を務めたことで知られる人物。ニコラス・ローグ監督の『ジェラシー』(79)やマルコム・マクダウェル主演の『スカイエース』(76)、マイク・ニューウェル監督の『サワースィート』(88)、スティーヴン・フリアーズ監督の『ザ・ヴァン』(96)など、個性的な監督の作品やカルト映画などを数多く手掛けているイギリスの作曲家だ。『魅せられて』(96)でベルトルッチと組んでいるという点でも、ペプロー監督とは共通項がある。

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ルーカスと遊ぼうとトビーがやって来る

メガネを落としたルーカスはトビーを狂犬と間違える

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ルーカスを置いて病院へ戻る義父フランク

その奇妙な態度の変化にフランクは全く気付かなかった

 主人公ルーカスを演じているベン・キーワースは、これが唯一の映画出演作となった子役俳優。とても奇妙で無機質な顔をした少年で、子供らしい可愛らしさがあまり感じられないという点ではルーカス役にピッタリとハマっている。そのまま性格俳優へと成長しそうな個性の持ち主だけに、これ一本で消えてしまったことは惜しいような気がする。それこそ、本作で共演しているデヴィッド・シューリスみたいな役者になっていただろうに。
 その義理の父親フランク役を演じているのは、『インドへの道』(85)や『パトリオット・ゲーム』(92)、『チャーリーとチョコレート工場』(05)などでお馴染みの名優ジェームズ・フォックス。さらに、母親ミリアム役にはトリュフォー映画のミューズにして、『永遠のマリア・カラス』(02)や『8人の女たち』(02)で大女優の風格を見せ付けてくれたフランスのスター、ファニー・アルダンが顔を出している。
 また、義姉ローズ役にはイギリスの人気テレビ・ドラマ『モース警部』シリーズの女性監察医ホブソン役で知られる女優クレア・ホルマン。その婚約者トニー役には、ブルース・ロビンソン監督の『ウィズネイルと僕』(88)やケン・ラッセル監督の『レインボウ』(89)で売れっ子となり、『エイリアン3』(92)でハリウッドにも進出したポール・マッギャンという、なかなか豪華な顔合わせ。
 そのほか、巨匠ビリー・ワイルダーの『シャーロック・ホームズの冒険』(70)のホームズ役で有名なロバート・スティーブンスや、ジョン・ブアマン監督の名作『戦場の小さな天使たち』(87)で英国アカデミー賞を獲得した名女優スーザン・ウールドリッジ、そして本作の翌年に出演した『ネイキッド』(93)で絶賛されて『太陽と月に背いて』(95)や『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(97)、『ハリー・ポッター』シリーズのルーピン先生役などでイギリスを代表する名優となったデヴィッド・シューリスが共演している。
 また、近所の口うるさい老婆役で『赤い影』(72)や『ドールズ』(86)のヒラリー・メイソン、施設に集う盲人の女性役で『地獄の門』(80)や『ビヨンド』(81)のカトリオナ・マッコールが顔を出しているのは、ホラー映画ファンにとって嬉しいキャスティングだろう。中でも、白いコンタクト・レンズを付けて登場するカトリオナ・マッコールの姿は、まさに『ビヨンド』のクライマックスを彷彿とさせて興味深いはずだ。

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盲目の女性役で登場する『ビヨンド』のカトリオナ・マッコール

 

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