アクション映画ブルーレイ レビュー

 

 

殺しの分け前/ポイント・ブランク
Point Blank (1967)

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(P)2014 Warner Home Video (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.4:1/HD規格: 1080p/音声:DTS-HD MA 1.0・DOLBY DIGITAL 1.0/言語:英語・スペイン語(※英語)/字幕:英語・フランス語・スペイン語(※日本語・英語)/地域コード:ALL/92分/制作国:アメリカ
※日本市場向け再生機で再生した場合

<特典>
・ドキュメンタリー「The Rock Part 1」&「The Rock Part 2」
・オリジナル劇場予告編
・ジョン・ブアマン監督とスティーブン・ソダーバーグ監督の音声解説
監督:ジョン・ブアマン
製作:ジャド・バーナード
   ロバート・チャートフ
原作:リチャード・スターク
脚本:アレクサンダー・ジャコブス
   デヴィッド・ニューハウス
   レイフェ・ニューハウス
撮影:フィリップ・H・ラスロップ
音楽:ジョン・マンデル
出演:リー・マーヴィン
   アンジー・ディッキンソン
   キーナン・ウィン
   ジョン・ヴァーノン
   シャロン・アッカー
   キャロル・オコナー
   ロイド・ボクナー
   マイケル・ストロング
   ジェームズ・B・シッキング

 チャールズ・ブロンソンと並んで“野郎に愛される野郎”の代表格とも呼ぶべき強面スター、リー・マーヴィン。そんな彼が当時まだ新進気鋭の映画監督であり、後に「脱出」('72)や「エクスカリバー」('81)などの傑作を手がけるジョン・ブアマンと組んだ作品。ブアマンにとってはハリウッド進出第一弾でもあった。
 原作はメル・ギブソン主演の「ペイバック」('99)としても映画化されたリチャード・スタークの犯罪小説「悪党パーカー/人狩り」。相棒の裏切りによって盗んだ現金も妻も奪い取られ、自らも殺されかけてしまった男が、背後で操る犯罪組織を徹底的にたたきつぶしていく。
 まるでとり憑かれたかのごとく“復讐”に走る主人公パーカーの凄まじい執念、スタイリッシュなビジュアルとハードなバイオレンスを織り交ぜた切れ味鋭い演出。セリフや状況説明などを最小限に抑えつつ、フラッシュバックやスローモーションを多用することによって様々な解釈を可能にした、ブアマン監督の語り口が実にクールだ。カリスマ性の塊みたいなリー・マーヴィンの存在感も素晴らしい。

 上記の北米盤ブルーレイは、基本的に日本盤と全くの同一内容。ジャケット裏には字幕が英語とフランス語とスペイン語のみになっているが、日本市場向けのプレイヤーで再生すると字幕オプションは日本語と英語のみになる。音声も同様で、国外市場向けプレイヤーだと英語とスペイン語を選択できるが、日本市場向けでは英語音声しか再生することができない。
 本編映像の画質はほぼ完璧。イメージはクリアかつシャープで色彩も鮮明。フィルムのキズや経年劣化は殆どないに等しいし、フィルム・グレインもちょうどいい按配だ。もともとDVD盤の画質もハイクオリティだったので、今回のBD用に改めてリマスタリングされたのかどうかは疑問の余地ありだが、それにしても映像の滑らかさやキメ細かさは旧DVD盤よりも一目瞭然で向上している。
 特典ではブアマン監督とスティーブン・ソダーバーグ監督による音声解説が白眉。お互いを尊敬する一流映像作家同士だからこその充実したコメントは聴いているだけで楽しい。また、メイキング・ドキュメンタリー2篇は当時プロモーション用に制作されたもので、内容としては宣伝以外の何物でもないのだが、それでもアルカトラズ島ロケの撮影風景や、合間に雑談を交わすリー・マーヴィンとキーナン・ウィンの姿を見ることが出来るだけでもワクワクする。

 

 

 

大侵略
Play Dirty (1968)

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(P)2014 101 Films/MGM (UK)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆

ブルーレイ仕様(英国盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:B/118分/制作国:イギリス

<特典>
なし

監督:アンドレ・ド・トス
製作:ハリー・サルツマン
脚本:メルヴィン・ブラッグ
   ロッテ・コリン
原案:ジョージ・マートン
撮影:エドワード・スカイフェ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:マイケル・ケイン
   ナイジェル・ダヴェンポート
   ナイジェル・グリーン
   ハリー・アンドリュース
   アリ・ベン・アイド
   ヴィヴィアン・ピックルス

 下手をするとスペクタクル史劇か?なんて間違えてしまいそうな邦題が紛らわしいが、こちらはれっきとした戦争アクション。主にハリウッドの低予算西部劇や犯罪サスペンスで知られるアンドレ・ド・トスを監督に迎え、彼ならではの傍若無人なB級センスが良い効果を発揮している。
 第二次世界大戦のアフリカ戦線。ロンメル率いるドイツ軍に苦戦するイギリス軍は、敵の燃料基地を爆破するため、石油の輸送ルートに詳しいダグラス大尉(マイケル・ケイン)率いる特殊部隊を派遣する。ところが、この特殊部隊というのが前科者や同性愛者など、いずれもかなりワケありな人物ばかり。要は、使い棄てオッケーのならず者を集めた傭兵部隊だったというわけだ。
 で、実際こいつらがけっこう鬼畜というか、薄情というか、割り切っているというか。ドイツ軍の罠にかかった味方の別部隊を見殺しにし、死んだ奴には不要だよね♪と時計やら何やらの貴重品を死体から略奪し、食べ物を分けてくれた遊牧民も正体がバレそうになったら皆殺しにし、捕虜にしたドイツ人看護婦のオバサンを輪姦しようとする。でも、ぜーんぜん悪びれた様子はなし。彼らにとっては当たり前のサバイバル術なのだが、常識人で優等生のダグラス大尉はどうにも我慢がならず、リーダー格のリーチ大尉(ナイジェル・ダヴェンポート)としばしば衝突することになってしまう。
 そうした戦争の非情な現実というか、戦場で勝つためには名誉だとかモラルだとか言ってられません、最前線では基本的にみんなケダモノですというニヒリズムが徹底的に貫かれており、ある意味でとっても痛快。クライマックスの皮肉すぎる運命と相まって、かなり変化球的な反戦映画に仕上がっている。

 今のところイギリス、スペイン、フランスの3カ国でブルーレイ発売されている本作。筆者が手に入れた英国盤は独立系メーカー、101Filmsの“The War Collection”シリーズの1枚で、MGMから提供されたHDマスターを使用している。フィルムの状態は概ね良好で、キズやノイズなどはもほとんどなく、グレインのチラツキも目立たないのだが、一部でフィルムの退色が著しく目立つ箇所がある。なので、恐らくレストア作業はされていないと見た。
 音声に関しても、劣化によるヒスノイズやホコリの雑音などはほぼ皆無に等しく、全般的にクリアなサウンドなのだが、かといって特に高音質ってわけでもない。DVDよりはハイクオリティだけど、ブルーレイとしては平均点といった感じだろうか。オリジナル予告編すら付いていない特典ゼロの不親切な仕様も惜しまれる。

 

 

 

メカニック
The Mechanic (1972)

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(P)2011 Euro Video/MGM (Germany)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(ドイツ盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声: DTS MONO/言語:英語・ドイツ語/字幕:なし/地域コード:B/100分/制作国:アメリカ

<特典>
・新作予告編集
監督:マイケル・ウィナー
製作:アーウィン・ウィンクラー
   ロバート・チャトフ
脚本:ルイス・ジョン・カリーノ
撮影:リチャード・H・クライン
音楽:ジェリー・フィールディング
出演:チャールズ・ブロンソン
   ジャン=マイケル・ヴィンセント
   キーナン・ウィン
   ジル・アイアランド
   リンダ・リッジウェイ

 後に「狼よさらば」('74)で大ヒットを飛ばすチャールズ・ブロンソンとマイケル・ウィナー監督のコンビ作。2人のタッグは「チャトズ・ランド」('72)に続いて本作が2回目だった。粗筋そのものは極めてシンプル。ブロンソン扮するベテランの殺し屋が腕を見込んだ若者を弟子にするものの、やがて自らがその弟子の標的になってしまう。裏社会の非情な世代交代を描いたハードボイルド映画だ。
 本作の魅力は、最大限に無駄を削ぎ落とした点にあるだろう。物語の焦点は主人公2人に集中しており、サブキャラの出番も役割も必要最小限。ある意味でカギを握るキーナン・ウィンも早々に消されてしまうし、ブロンソン夫人のジル・アイアランドや若手女優リンダ・リッジウェイなどは、殆どカメオ出演に近いような扱いだ。あくまでも新旧殺し屋の奇妙で宿命的な師弟関係にポイントを絞ることで、男の世界の抜き差しならない緊張感を存分に漂わせる。
 必要最小限なのはセリフや説明も同じ。冒頭の約16分間などは一切のセリフがなく、ブロンソンが標的の部屋に忍び込んで巧妙な細工を仕掛け、それが実際どのように使われ、最終的に相手をどう仕留めるのかを淡々と描いていく。これだけで、彼がいかに凄い殺し屋なのかが端的に分かるのだ。ブロンソンとジャン=マイケル・ヴィンセントの会話も大半が素っ気ない。しかし、その僅かなセリフや言葉の言い回し、表情や動作などで彼らの立場や思惑を自ずと理解することができる。男は多くを語らず。そんな美学が全編に貫かれ、独特のクールな世界を作り上げているのだ。

 目下のところ日本ではDVDしかリリースされていないものの、ドイツとアメリカではブルーレイが発売中。どちらも同一の映像素材を使用しているようだ。筆者は先にドイツ盤を入手していたこともあり、3000枚限定プレスの高額なアメリカ盤の購入は見送った。
 画質に関しては殆ど文句のないレベル。ごく一部でフィルムが色褪せているシーンも見られるし、ナイトシーンでは若干傷が散見される部分もあるが、全体的には驚くほどクリアだ。輪郭も極めてシャープだし、役者の肌の質感などもリアル。ディテールにも奥行きがある。音声はモノラルのDTS。こちらはワリと平坦な印象だが、目立った経年劣化はほとんどないので、可もなく不可もなくといったところだろうか。
 なお、ジャケット裏にはドイツ語字幕ありと表記されているが、実際は字幕のオプションなし。特典もビデオメーカーの新作映画の予告編が4本収録されているのみで、その点に関しては撮影監督リチャード・H・クラインの音声解説とオリジナル予告編を収録したアメリカ盤に軍配が上がるかもしれない。

 

 

 

ジョン・カーペンターの要塞警察
Assault on Precinct 13 (1976)

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(P)2013 Scream Factory (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.35:1/HD規格: 1080p/音声:DTS-HD MA 5.1ch SURROUND ・DTS-HD MA 2.0ch MONO/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/91分/制作国:アメリカ

<特典>
・ジョン・カーペンター監督による音声解説
・音響効果担当トミー・リー・ウォーレスによる音声解説
・ジョン・カーペンター監督と俳優オースティン・ストーカーのインタビュー(2002年収録)(23分)
・俳優オースティン・ストーカーの最新インタビュー(約8分)
・女優ナンシー・ルーミスの最新インタビュー(約13分)
・オリジナル劇場予告編
・ラジオ・スポット集
・スチル・ギャラリー
監督:ジョン・カーペンター
製作:J・S・カプラン
脚本:ジョン・カーペンター
撮影:ダグラス・ナップ
音楽:ジョン・カーペンター
出演:オースティン・ストーカー
   ダーウィン・ジョストン
   ローリー・ジマー
   マーティン・ウェスト
   トニー・バートン
   ナンシー・ルーミス

 これを傑作と呼ばずしてなんと呼ぼうか。カーペンター監督作品の中でもダントツの面白さ。正直、出世作の「ハロウィン」('78)よりも出来が良いと思う。ストリートギャングに囲まれた警察署の攻防戦を描いたバイオレンス・アクションだが、ノリはほとんど西部劇。しかも、ゾロゾロと湧き出てくる不気味なチンピラどもはゾンビの如しで、まるでホラー映画のような恐怖感すら漂うのだからアッパレだ。
 ことの始まりは、ロサンゼルスの物騒な地域に平凡な親子が迷い込んでしまったこと。娘をストリートギャングに殺された父親が犯人を射殺したところ、武器を手にした仲間たちに追いかけられてしまう。命からがら警察署に逃げ込んだ父親だが、そこは閉鎖寸前で引越しの後始末をしているところ。数人の警察官と護送中に立ち寄った囚人がいるだけだった。
 そこへ大勢のストリートギャングが襲来する。電源は落とされ、電話線もカットされ、外部との通信手段はゼロ。しかも、敵はサイレンサーを使っているので銃声が響かず、よって近隣住民に非常事態を察知してもらうことも叶わない。まさに孤立無援、絶体絶命の危機的状況の中、次から次へと押し寄せるチンピラ軍団との凄まじい攻防戦が繰り広げられていく。
 不穏な空気の漂うオープニングからヒリヒリとした緊張感を漲らせ、幼い少女の殺害というショッキングなシーンで一気に戦慄が走り、警察署への集中砲火によってアクションの火蓋が着られる。その展開の見事なこと!ストリートギャングたちにセリフをほとんど与えず、神出鬼没で得体の知れない殺戮集団として描いたことも大きな成功の要因。理屈の通用しない敵を前にした絶望感と切迫感が、この上ないほどのスリルとサスペンスを盛り上げる。ビショップ警部補をはじめとする登場人物たちも魅力的だし、彼らの対立と友情のドラマにも人間的な温もりがある。低予算の限界を逆手にとった、B級娯楽映画のお手本的な作品だ。

 日本では'08年にデラックス版DVDがリリースされたものの、現在は廃盤になっている本作。アメリカではカルト映画の再発に定評のあるスクリーム・ファクトリーからコレクターズ版ブルーレイが発売されている。画質はメジャー映画と比べても遜色ないほどの仕上がり。一部ではDVD用に制作したHDマスターを使用しているとの噂もあるが、新たに5.1chサラウンド音声を収録していることを考えると、本編マスター自体が改めて作り直されている可能性も否定できない。
 全編に渡ってキズやノイズがほとんどないのはもちろん、明暗のコントラストや被写体の質感などもほぼパーフェクト。暗がりのシーンではフィルム・グレインのチラツキが目立つ部分もあるが、全体的にはちょうどいい按配だと言えよう。ただ、留置所から囚人を解放するシーンなど、一部で上映用プリントを使用したと思しきボヤけた映像が紛れ込んでいる点だけ気になるが、恐らく原版フィルムが失われてしまったのだろう。それも本当に僅かなので文句は言うまい。
 特典はデラックス版DVDから移植されたものが大半だが、ブルーレイ用に新しく製作されたものも3つ含まれている。まずは、本作で音響効果を担当したトミー・リー・ウォーレス監督による音声解説。カーペンター監督の幼馴染であり、学生時代からの映画仲間でもあるウォーレスならではの蔵出しエピソードが満載だ。
 さらに、ビショップ警部補役を演じたオースティン・ストーカーの単独インタビュー。ナポレオン役のダーウィン・ジョンストンは演技講座時代からの友人だったそうで、先にキャスティングされていた彼がカーペンター監督にオースティンを推薦したという。しかも、殺された少女の父親を演じているマーティン・ウェストも、実は演技講座で一緒だったのだそうだ。
 そして、初期カーペンター映画の常連でもあった女優ナンシー・ルーミスの単独インタビュー。カーペンターやウォーレスとは学生時代に知り合っていたらしく、本作のみならず「ハロウィン」や「ザ・フォッグ」などの思い出、映画界引退後のキャリアについても語っている。

 

 

 

オクタゴン
The Octagon (1980)

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(P)2012 Anchor Bay (UK)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(英国盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM・5.1ch DTS-HD MA/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/104分/制作国:アメリカ

<特典>
・メイキング・ドキュメンタリー
・オリジナル劇場予告編
・TVスポット
・ドキュメンタリー「How America Changed Hollywood Forever」
・エリック・カーソン監督による音声解説
監督:エリック・カーソン
製作:ジョエル・フリーマン
脚本:リー・チャップマン
原案:リー・チャップマン
   ポール・アーロン
撮影:ミシェル・ヒューゴ
音楽:ディック・ハリガン
出演:チャック・ノリス
   カレン・カールソン
   リー・ヴァン・クリーフ
   アート・ヒンドル
   キャロル・バッジャサリアン
   キム・ランクフォード
   タダシ・ヤマシタ
   ユキ・シモダ
   アーニー・ハドソン

 日本では'80年代に入るまで知名度が低かったものの、アメリカでは独立系B級映画専門スタジオ、アメリカン・シネマと組んだサプライズ・ヒット「暗黒殺人指令」('77)を皮切りに、アクション映画スターとして頭角を現したチャック・ノリス。そんな彼がアメリカン・シネマ時代に残した最後の主演作が、この「オクタゴン」だ。
 たまたまテロ事件に遭遇したことから、世界各地に傭兵を送り出している忍者訓練施設オクタゴンの存在を知った武術家スコット(C・ノリス)。日本人の師範に育てられた彼は、かつて師匠に破門されて悪の道へ走った義兄弟セイクラ(T・ヤマシタ)がオクタゴンのボスだと知り、彼らの悪事を阻止して長年の因縁関係に決着をつけるべく戦いを挑んでいく。
 その後「燃えよNINJA」('81)や「アメリカン忍者」('85)などで全米をブームに巻き込んだ、いわゆるニンジャ映画の走りとも言える作品。必要以上に入り組んだ人間関係なんかははっきり言って無駄だし、やたらとインサートされるエコーのかかった主人公のモノローグも失笑ものだが、さすがに体を張ったアクション・シーンの数々は迫力がある。日本の武士道や忍術と中国のカンフーをゴッチャにしたいい加減さもご愛嬌だ。
 もともと筆者はチャック・ノリスの魅力が今ひとつ理解できず、ただの地味な髭面のオッサンとしか思えないのだけれど、本作の彼はまだ若くで活きがいい分だけ納得できるものもある。ただ、せっかく当時イタリアから帰国したばかりで、これが久々のアメリカ映画復帰だったリー・ヴァン・クリーフが、ストーリー的に有効活用されていないように感じるのは残念。次々とバトンタッチする相手役の女優陣も今ひとつ魅力不足だった。

 日本では過去にVHSで発売されたきりでDVD化もされていない本作だが、アメリカとイギリスではそれぞれノーカットの完全版でブルーレイが発売中。筆者は単価の安い英国版を入手した。マスターとして使用されている原版フィルムの保存状態は概ね良好だが、特に修復作業などは施されていないため、細かい傷の目立つシーンも少なくない。とはいえ、インディペンデントの低予算映画ということを考慮すれば十分な高画質。フィルム・グレインもほとんど目立たない。音声は2.0chステレオのリニアPCMと5.1chサラウンドのDTS-HD MAの2種類から選択できる。
 特典の目玉は39分強のメイキング・ドキュメンタリー。恐らく過去のDVDリリース時に製作されたものと思われるが、エリック・カーソン監督を筆頭に製作者のジョエル・フリーマン、音楽のディック・ハリガン、さらにアメリカン・シネマの関係者らのコメントを交えながら、撮影の舞台裏や低予算映画製作の秘訣などが興味深く語られていく。
 さらに、制作会社アメリカン・シネマの歴史を振り返ったドキュメンタリー「How American Changed Hollywood Forever」(約30分弱)も収録。ちょっと大袈裟なタイトルではあるものの、コアな映画マニアの間でも見過ごされがちな同スタジオの短い全盛期を関係者の証言から検証する。これはこれで面白い。

 

 

 

デルタ・フォース
The Delta Force (1986)

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(P)2014 Arrow Video/MGM (UK)
画質★★★★★ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(英国盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.85:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch リニアPCM STEREO/言語:英語/字幕:英語/地域コード:B/129分/制作国:アメリカ

<パッケージ>
・ジャケット2種類(リバーシブル)
・フルカラー・ブックレット封入(40p)

<特典>
・ドキュメンタリー「Genre Hijackers」 映像作家マーク・ハートレイが振り返るキャノン・フィルムズとゴーラン&グローバス(約14分)
・脚本家ジェームズ・ブラナーのインタビュー(約23分)
・元デルタ・フォース教官クリスチャン・プルートーのインタビュー(約23分)
・オリジナル劇場予告編
監督:メナハム・ゴーラン
製作:メナハム・ゴーラン
   ヨーラム・グローバス
脚本:ジェームズ・ブラナー
   メナハム・ゴーラン
撮影:デヴィッド・ガーフィンケル
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:チャック・ノリス
   リー・マーヴィン
   マーティン・バルサム
   ジョーイ・ビショップ
   キム・デラニー
   ロバート・フォスター
   レイニー・カザン
   ジョージ・ケネディ
   ハンナ・シグラ
   スーザン・ストラスバーグ
   ボー・スヴェンソン
   ロバート・ヴォーン
   シェリー・ウィンタース

 チャック・ノリスといえばキャノン・フィルム。「地獄のヒーロー」('84)に始まり「ヘルバウンド」('94)へと至るキャノンでの10年間は、まさに彼にとって黄金時代だったといえよう。とはいえ、その大半が「ランボー」の2番煎じみたいなB級アクション。映画自体は興業的に大ヒットしても、ノリス自身の名声は二流アクション・スターの域を出るものではなかった。それだけに、キャノン時代の彼にとって最大規模の製作費を投じた戦争アクション「デルタ・フォース」には、チャック・ノリスを名実共にハリウッドの一流スターへ押し上げようという製作サイドの意図が少なからずあったことは想像に難くないだろう。
 なにしろ、アカデミー主演男優賞に輝くベテラン大御所俳優リー・マーヴィンとのダブル主演。共演陣もオスカー女優のシェリー・ウィンタースやドイツの大女優ハンナ・シグラ、名脇役マーティン・バルサムなど、これまでのチャック・ノリス映画の出演者とは明らかに格が違う名優を揃えたオールスター・キャストだ。
 しかも、演出はキャノン・フィルムの総裁メナハム・ゴーラン自身が担当。当初は「地獄のヒーロー」のジョセフ・ジトーが監督する予定で、内容もデルタ・フォースが中東のテロ組織と戦う低予算アクションだったが、脚本の執筆中にトランスワールド空港のテロ事件が発生。それをストーリーに盛り込んだところ、作品の規模が一気に膨らんだ。しかも、過去にエンテベ空港奇襲作戦を題材にした「サンダーボルト救出作戦」('77)を撮っていることからも分かるように、ゴーランはこの手の題材が好みで、なおかつ得意なジャンルだったことから、自らメガホンを取ることになったのだった。
 前半は旅客機ハイジャックに焦点を絞った航空パニック、後半はテロ組織との攻防戦を描いたバトルアクションと、一粒で二度美味しい構成。しかも、テロリストと乗客の人間ドラマを織り込んだドキュメンタリータッチのサスペンスフルな前半に対し、後半は荒唐無稽なガジェットや大量のエキストラを投入したスペクタクルな戦争エンターテインメントに徹しており、観客を飽きさせないよう工夫されたバランス感覚は評価されてもいいだろう。
 また、「エアポート」シリーズや「特攻大作戦」などを彷彿とさせる懐かしさ('80年代当時でも)、ハリウッドのメジャースタジオ以上にハリウッド的な王道感覚というのもキャノン・フィルムならではの醍醐味。ま、確かにアラブ人の描写を含めてイスラエル寄りのプロパガンダ臭は否めないし、アメリカ=正義というレーガン政権時代ならではの保守主義に抵抗を感じなくもないのだけれどね。

 で、日米共に20世紀フォックスから映像特典が予告編のみというブルーレイが発売されている本作。一方、イギリスではカルト映画専門の独立系メーカー、Arrow Videoが独自の特典を盛り込んだ豪華仕様のブルーレイをリリースしている。本編はパラマウントが35ミリのインターポジからテレシネを行い、そこからMGMがHDマスターを制作。パッと見たところ20世紀フォックス版と画質はほとんど変わらないので、おそらく同じマスターを使用しているのだろう
 画像の第一印象はとてもクリーン。全体的にシャープネスは甘めだが、それでも'80年代のアメリカ映画にしてはマシな部類だと思う。目に見えるキズやノイズは皆無に等しいし、色彩や質感にも奥行きがあって自然な仕上がり。フィルム・グレインも殆ど気にならない。音声は非圧縮のリニアPCMで、アクション・シーンの音響効果もまずまずの迫力。こちらは20世紀フォックス版よりも厚みがあるように感じる。
 特典映像の目玉は脚本家ジェームズ・ブラナーのインタビューだろう。ノリスとは「香港コネクション」('81)からの付き合いで、彼の紹介でキャノン・フィルムと深く関わるようになった彼だが、ここでは本作だけでなく「地獄のヒーロー」や「地獄のコマンド」('85)などの裏話もたっぷりと語っている。「アメリカン忍者」が最初はチャック・ノリスの主演企画で、そのボツになった脚本が「地獄のコマンド」になった、なんて目からウロコの話がボロボロと出てくる。そもそも、「デルタ・フォース」も当初はチャック・ノリスとチャールズ・ブロンソンの主演を予定していて、実際に予告ポスターまで作られていたらしいし。
 さらに、キャノン・フィルムの足跡を追ったドキュメンタリー映画「Electric Boogaloo: The Wild, Untold Story of Cannon Films」('14)の監督マーク・ハートレイが、キャノンの歴史を駆け足で振り返るミニ・インタビューも収録。また、本物のデルタ・フォースの初代教官だったクリスチャン・プルートーが、その成り立ちから実際の任務まで詳細に語ったインタビューもけっこう面白い。

 

 

キャプテン・アメリカ/帝国の野望
Captain America (1990)

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(P)2013 Shout Factory (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:1.78:1/HD規格: 1080p/音声:2.0ch DTS-HD MA STEREO/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/97分/制作国:アメリカ

<特典>
・メイキング・ドキュメンタリー(アルバート・ピュン監督、俳優マット・サリンジャー出演)(20分)
監督:アルバート・ピュン
製作:メナハム・ゴーラン
   スタン・リー
   ジョセフ・カラマリ
   トム・カルノフスキ
脚本:スティーブン・トルキン
撮影:フィリップ・アラン・ウォーターズ
音楽:バリー・ゴールドバーグ
出演:マット・サリンジャー
   スコット・ポーリン
   ロニー・コックス
   ネッド・ビーティ
   ダーレン・マクギャヴィン
   マイケル・ヌーリ
   メリンダ・ディロン
   キム・ギリンガム
   フランチェスカ・ネリ
   カルラ・カッソーラ

 「スパイダーマン」の実写映画化を最初に企画したのがキャノン・フィルムだったことは知る人ぞ知る有名な話だが、メナハム・ゴーランは早い時期からアメコミの映画化に興味を示した数少ない製作者の一人だった。その足がかりとなるはずだったのが「スーパーマン4」('87)。さらに、'86年頃からはマーベルと提携を結んで「スパイダーマン」の企画準備を推し進めていたものの、残念ながらゴーランは'89年にキャノンを追い出されてしまった。そんな彼が新たに社長に就任した21世紀フィルムでの製作第一弾として選んだのが、同じくマーベルのコミックを映画化した「キャプテン・アメリカ」だったというわけだ。
 とはいえ、なにしろ21世紀フィルムといえば「プリズン・エンジェル/女囚たちの夜」('86)とか、ロバート・イングランド版「オペラ座の怪人」('89)みたいな超低予算のエクスプロイテーション映画を専門にしていた弱小スタジオ。恐らく本作は同社にとって「シールズ/栄光の戦士たち」('91)と並んで最大規模の製作費をつぎ込んだ作品であったろうと思われるが、それでもなお低予算であることには変わりなかった。きっとキャノン時代に撮っていれば、そこそこの大作になったろうと思うのだが…。
 ゆえに、ヒーロー映画の体裁を取りながらも実際はスパイアクション的なノリ。お金のかかるSFXは必要最小限で、見せ場の大半はドンパチの銃撃戦や体力勝負の格闘アクションで占められている
。最近のディズニー・スタジオ版「キャプテン・アメリカ」シリーズに比べると、スケール的には100分の1以下といっても過言ではあるまい。
 ただ、正義の味方キャプテン・アメリカと悪の権化レッドスカルを合わせ鏡のような存在として捉え、戦争によって人生を狂わされてしまったそれぞれの悲劇を織り交ぜることにより、単純明快なストーリーにある種の反戦的な意味合いを持たせたことは評価に値するだろう。ただの勧善懲悪に終始しない脚本はなかなか良くできている。

 日本ではVHS時代にビデオリリースされたっきり、アメリカでもオンデマンドのDVD-Rでしか発売されていなかった本作だが、MGMおよびマーベルからライセンス許諾を受けた米シャウト・ファクトリーよりコレクターズ版ブルーレイが出ている。
 映像のクオリティはまずまずといったところか。もともとソフトフォーカスがキツめで撮られているし、HDマスター作成にあたってレストア作業のされた形跡もないため、全体的なイメージはいまひとつ締まりがない。とはいえ、フィルムの傷や汚れなどの経年劣化はほとんど目立たないレベルだし、部分的ではあれど画質が鮮明できめ細かいシーンも少なからず見受けられる。20年以上前のB級映画としては十分に合格点だろう。DTS-HD MAにリマスターされたステレオ音声も、とりあえずは平均レベルといった感じだ。
 特典はアルバート・ピュン監督と主演俳優マット・サリンジャーのインタビューで構成されたメイキング・ドキュメンタリーのみ。賞味20分程度の短いものだが、国民的人気のコミックヒーローを低予算で映像化せねばならないという、今となっては無茶な使命を託されたピュン監督の苦労は伝わって来る。ちなみに、サリンジャーはあの「ライ麦畑でつかまえて」で有名な作家J・D・サリンジャーの息子なのだそうだ。

 

 

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