The Purge: Anarchy (2014)

 

 

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(P)2014 Universal Studios (USA)
画質★★★★★ 音質★★★★★
ブルーレイ仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.40:1/HD規格: 1080p/音声:5.1ch DTS-HD MA ・5.1ch DTS Digital Surround/言語:英語・フランス語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/ 104分/地域コード:ALL/制作国:アメリカ
付属DVD仕様
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/画面比:2.40:1/音声:5.1 ch Dolby Digital/言語:英語・フランス語・スペイン語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/104分/地域コード:1/制作国:アメリカ

<特典>
・未公開シーン集(BDのみ)
・メイキング・ドキュメンタリー
監督:ジェームズ・デモナコ
製作:ジェームズ・ブラム
   マイケル・ベイ
   アンドリュー・フォーム
   ブラッドリー・フラー
   セバスチャン・レメルシエ
脚本:ジェームズ・デモナコ
撮影:ジャック・ジューフレ
音楽:ネイサン・ホワイトヘッド
出演:フランク・グリロ
   カルメン・イジョゴ
   ザック・ギルフォード
   キーリー・サンチェス
   ゾーイ・ソウル
   マイケル・K・ウィリアムス

<Review>
 舞台は“米国の新しき建国の父”なる政党が政権を握った近未来のアメリカ。厳格な法律と規則によって、悪化の一途をたどっていた犯罪発生率と貧困率の改善に成功した政府は、抑圧された国民のガス抜きのためと称して“パージ(粛清の日)”を設ける。これは、夜の19時から翌朝7時までの12時間、殺人や強盗、レイプなどあらゆる犯罪が合法化されるというもの。それによって人々の欲求不満が解消され、社会の治安が維持されるというのが政府の主張だった。
 夜の帳が降りる頃、パージ参加者は武器を手に外へ出て悪事の限りを尽くす。一方、それ以外の人々は暗くなる前に帰宅して戸締りを万全にし、我が身の安全を願って朝まで過ごす事になる。しかし、セキュリティ・システムを導入したりボディガードを雇ったりできる富裕層は安全だが、一般庶民はそうはいかない。その結果、中流以下の人々ばかりが狙われて殺される羽目に。ゆえに、パージの実態は貧困層を抹殺することを目的とした人口調整なのではと噂されていた…。
 実はこれ、2013年に製作されたハリウッド映画「The Purge」の設定。本作はその続編に当たる。パージの夜に自宅で武装集団や近隣住民に襲われるエリート家族のサバイバルを描いた1作目は、批評的には大惨敗と呼んでいいほどこき下ろされたものの、興業的には800万ドルの製作費に対して8900万ドル以上の興行収益を上げる大ヒットとなった。日本では劇場公開はおろかDVDリリースすらされていないのだが…。

 で、先述したように本作は「The Purge」のサプライズヒットを受けて製作された続編。とはいえ、上記の“パージ”の設定を引き継いでいる以外は、ストーリー的な関連性は殆どない。知っておくべき基本情報も全て冒頭で説明されるので、1作目を見ていなくても一切問題はないだろう。
 今度の舞台は1作目から約10年後。アメリカでは相変わらず年に一度の“パージ”が行われている。主人公は貧しいシングルマザーのエヴァと娘カーリ。無事に一夜を明かせるようにと戸締りをした2人だったが、彼女たちの住むアパートに謎の武装集団が乱入して母娘を拉致する。しかし、そのユニフォーム姿は、どう見ても一般のパージ参加者ではない。
 たまたま通りがかった刑事バーンズに救出されたエヴァとカーリ。そこへ車の故障で表に取り残された夫婦シェーンとリズが加わり、5人は安全な場所を求めて無法地帯と化した夜の街を彷徨うこととなる。そんな彼らを執拗に狙う先ほどの武装グループ、そして不気味なマスクを被ったバイク集団。果たして、5人は無事に朝を迎えることができるのだろうか…!?

 ってなわけで、前作が一軒家に舞台を限定していたのに対し、本作は夜の街全体でストーリーが展開。激しいバトルシーンやカーチェイス、バイクチェイスなども盛り込まれている。1作目に比べて予算がガッツリ増えていることは明らかだ。まあ、それでも低予算であるには違いないのだが、ロサンゼルスのダウンタウンで真夜中にロケを敢行しただけあって、ウォルター・ヒル監督の「ウォリアーズ」('79)にも似たリアルなストリート感とヒリヒリする緊張感が漂う。
 さらに、本作はその政治的なメッセージ性も際立つ。前作でも政府による貧困層の切り捨てや格差社会の不公平に対する風刺を多分に込めていたが、今回はひと握りの富裕層によってその他大勢の庶民が搾取され、銃の蔓延によって人間同士の信頼関係が希薄となったアメリカの現実を浮き彫りにしつつ、最後に明かされるパージの真の目的が、軍需産業や銃器産業に支えられたアメリカ国家の実態を痛烈に皮肉るのだ。
 パージに便乗した大富豪たちが金と引き換えに貧乏人をなぶり殺したり、庶民を誘拐して人間狩りを楽しんだりといった展開は確かに荒唐無稽だが、格差社会の構造と仕組みをカリカチュアした風刺ファンタジーとしてはアリだろう。また、理性と良心が殺人衝動に勝ることでヒューマニズムへの希望を残すクライマックスも悪くない。

<Story>
 2023年3月21日。今年もいよいよ“パージの日”がやって来た。ロサンゼルスのダイナーに勤めるウェイトレス、エヴァ(カルメン・イジョゴ)は、年老いた父親リコ(ジョン・ビーズリー)と娘カーリ(ゾーイ・ソウル)との3人暮らし。娘の教育費で家計は苦しく、上司に給与のアップを相談しようとしていたエヴァだが、パージの準備に慌ただしく言いそびれてしまう。
 その頃、車で帰宅途中の夫婦シェーン(ザック・ギルフォード)とリズ(キーリー・サンチェス)はコンビニに寄って買い物をするが、駐車場へ戻ると不気味なマスクを被ったバイカー集団が2人をじっと見つめている。急いで車へ乗り込み家路を急ぐ夫婦だったが、道の真ん中で車がストップしてしまう。よく見ると燃料パイプが切られていた。例のバイカー集団の仕業だ。パージの開始まであと僅か。しかも、バイカー集団が彼らを付け狙っている。シェーンとリズは急いで街中へと逃げ込むのだった。
 やがて午後7時を回り、サイレンとともにパージが幕を開ける。アパートの戸締りを済ませたエヴァは、父リコの姿が見えないことに気付く。実は、病気で先の長くないリコは娘と孫の将来を案じ、10万ドルと引き換えに大富豪一家に自らの命を売ったのだった。パージの期間中はあらゆる犯罪が許される。刺激に飢えた富裕層は貧乏人を金で買って殺していたのである。
 父親の残した置き手紙を読んで涙を流すエヴァとカーリ。すると、アパートの前にトラックが停車し、中から大勢の武装した連中が降り立った。その姿はまるで軍の特殊部隊だ。と同時に、エヴァの部屋に隣人の修理工がライフルを持って押し入ってくる。以前からエヴァにしつこく言い寄っていた男だ。彼女に無視されたことを逆恨みした修理工は、パージのどさくさに紛れて母娘を殺そうとしていたのだ。
 ところが、そこへ例の武装グループが乱入。修理工を射殺した彼らは、エヴァとカーリを拉致してトラックに連れ込もうとする。そこへ通りがかったのがロサンゼルス市警の刑事バーンズ(フランク・グリロ)。彼はある目的があって無法地帯と化した夜の街へ出たのだが、エヴァたちの悲鳴を無視して通り過ぎることが出来ず、武装グループを皆殺しにして母娘を救出した。
 エヴァとカーリを自分の車に乗せるバーンズ。すると、後部座席にシェーンとリズが隠れていた。必死に助けを求める彼らをバーンズは見捨てることができない。結局、5人でその場から逃げることになるのだが、殺したはずの武装グループのリーダーが生きており、バーンズたちに向かって機関銃を乱射する。慌てて車を走らせるバーンズだったが、弾丸がタイヤに命中してしまった。
 仕方なく車を乗り捨てて裏通りへと逃げる一行。エヴァの同僚ターニャ(ジャスティーナ・マチャード)の住むアパートだったら近い。ターニャなら車を貸してくれるというエヴァの言葉を信じて、一行はターニャのアパートを目指すことにする。その途中で、彼らは皆殺しにされた武装グループを発見。どうやら、反パージを掲げるレジスタンス集団と戦った様子だ。
 やっとの思いでターニャのアパートへ到着したエヴァたち。夕飯をご馳走になって、ようやく安堵の表情を浮かべた一行だったが、そんな彼らの目の前で思いもよらぬ惨劇が起きる。姉ターニャと夫の浮気に激怒した妹ロレインが銃を乱射し始めたのだ。しかも、そこへ先ほどの武装グループのリーダーが部下を引き連れて乱入。命からがら逃げ出したエヴァたちだったが、今度は例のバイカー集団に捕まってしまった。
 トラックに乗せられたエヴァたちが連れて行かれた先には、大勢の金持ちたちが待っていた。彼らはパージに便乗して一般庶民を誘拐し、人間狩りを楽しんでいたのだ。果たして、エヴァたちはこの絶体絶命のピンチを切り抜けられるのか?さらに、彼らを執拗に追う武装グループの正体とは?そして、刑事バーンズはなぜパージの夜に外出したのか…?

 

<Information>
 監督と脚本は前作に引き続いてのジェームズ・デモナコ。極限状態の緊迫した人間描写や畳み掛けるようなサスペンスは、さすが「交渉人」('98)や「アサルト13 要塞警察」('05)の脚本家として知られる人物ならではといったところだろうか。既に「The Purge 3」の製作も決まっているらしいので楽しみなのだが、やぱり日本公開は望み薄いのだろうなあ…。
 で、本作はプロデューサーの顔ぶれも興味深い。「パラノーマル・アクティビティ」シリーズや「インシディアス」シリーズのジェームズ・ブラム、「テキサス・チェーンソー」('03)や「13日の金曜日」('09)、「エルム街の悪夢」('10)などホラー・リメイクを連発するブラッドリー・フラー、そして天下のマイケル・ベイ御大。メジャーとインディペンデントのヒットメーカーがガッツリとタッグを組んだといった感じだ。
 撮影監督は「トランスフォーマー」シリーズや「ローン・サバイバー」('13)などのステディカム・オペレーターとして有名なジャック・ジューフレ。さらに、「エクスペンダブルズ2」('12)のトッド・E・ミラーが編集を、「インセプション」('10)や「フォックスキャッチャー」('14)のブラッド・リッカーが美術デザインを、「Facebookで大逆転」('14)など近年インディペンデントで頭角を現しているネイサン・ホワイトヘッドが音楽スコアを手がけている。

 刑事バーンズ役で主演にクレジットされているフランク・グリロは、「ゼロ・ダーク・サーティ」('12)や「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」('14)などのアクション映画で軍人役や捜査官役を数多く演じているタフガイ俳優。名前は分からずとも顔に見覚えはあるという映画ファンも少なくないはずだ。
 実質的なヒロインであるエヴァ役を演じているのは、'14年度アカデミー賞作品賞候補となった映画「Selma」('14・日本公開未定)でキング牧師夫人を演じ、数々の映画賞で助演女優賞にノミネートされたカルメン・イジョゴ。その娘カーリには「プリズナーズ」('13)のゾーイ・ソウルが扮している。
 そのほか、人気ドラマ「Friday Night Lights」('06〜'11)でブレイクしたザック・ギルフォード、大ヒットドラマ「LOST」('04〜'10)のニッキ役が印象深いキーリー・サンチェス、「シックス・フィート・アンダー」('01〜'05)のヴァネッサ役で知られるジャスティーナ・マチャードなどが脇を固めている。

 

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