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80s SOUNDTRACK ALBUMS

 

 80年代のハリウッド映画における特異な現象といえば、なんといっても空前のサントラ・ブームが挙げられる。『フラッシュダンス』(83)の大ヒットをきっかけに、『ゴーストバスターズ』(84)や『フットルース』(84)、『ビバリーヒルズ・コップ』(84)、『トップ・ガン』(86)などのサントラ・アルバムがビルボードのアルバム・チャートで上位を駆け上り、次々とミリオン・セラーを記録した。ハリウッドの長い歴史の中でも、サントラ盤というフォーマットそのものがこれほどまでに脚光を浴びた時代は他にないはずだ。
 これらのサントラ盤アルバムの最大の特徴は、有名なロック・アーティストやポップ・アーティストの楽曲で構成されていること。つまり、ポップ・ミュージックを集めたオムニバス形式である。
 映画音楽にポピュラー・ミュージックが使用されること自体は、プレスリーの時代から決して珍しいことではなかった。『イージー・ライダー』(69)や『アメリカン・グラフィティ』(73)のサントラ盤は既成のポピュラー・ミュージックで埋め尽くされていたし、ディスコ全盛期には『サタデー・ナイト・フィーバー』(77)や『イッツ・フライデー』(78)といった最新ディスコ・ヒットを収めたサントラが爆発的に売れたものである。
 80年代サントラ・ブームのルーツもその辺にあると思われるが、それにしてもサントラ盤のアルバム自体があれだけ巨大なビジネスと化したのは、こと80年代に限った現象だったと言えよう。
 この時代、ハリウッドではこうしたオムニバス形式のサントラ盤で溢れかえり、中には映画とサントラ盤のどちらが主体なのか分からないような作品も少なくなかった。その背景には、当時のMTVブームの影響も挙げられよう。『フラッシュダンス』や『フットルース』などはミュージック・クリップを寄せ集めて作られた映画といっても過言ではなかった。
 もちろん、こうしたムーブメントには反発も強くて、特に熱心な映画音楽ファンからは痛烈に揶揄されたものだった。ブームの仕掛け人でもあるジョルジョ・モロダーに対する批判も少なくなかったように思う。また、ブームが長引けば長引くほど、それに便乗しただけの安上がりな作品も増えていった。
 筆者は当時映画音楽に興味を持ち始めた頃で、ブームの前身ともいえる『フェーム』(80)や『アーサー』(81)などは好きな作品だったこともあり、当初は特に違和感も感じなかった。とはいえ、あまりにも主題歌や挿入歌ばかりに話題や注目が集まり、肝心の音楽スコアがなおざりにされるような現象が続くと、いい加減ウンザリさせられるようになったのも事実。
 なので、『ボディガード』(92)辺りを最後に、そうした商業主義的サウンドトラック・アルバムが急速に鳴りをひそめるようになったのは嬉しい限りだった。もちろん、その全てを否定するつもりなどサラサラないが、それでも映画音楽の本来あるべき姿とはちょっと違うのではないかとも思う。
 ということで、今回はオムニバス形式から正統派まで、80年代(及び90年代初頭)のハリウッド映画を彩ったサントラ盤の中から、個人的に特に思い出深い名作・佳作をピックアップして紹介してみたい。

 

ARTHUR.JPG FAME.JPG EDUCATING_RITA.JPG TWO_OF_A_KIND.JPG

アーサー
Arthur (1981)

フェーム/青春の旅立ち
The Kids From Fame (1982)

リタと大学教授
Educating Rita (1983)

セカンド・チャンス
Two Of A Kind (1983)

(P)1990 Warner Bros. (Japan) (P) MGM Film/BMG Records (UK) (P)2004 Pucka Records (UK) (P) MCA/Universal (USA)
1,Christopher Cross
  Arthur's Theme
  (Best That You Can Do) ビデオ
2,Nicoletta Larson
  Fool Me Again
3,Ambrosia
  Poor Rich Boy
4,Stephen Bishop
  It's Only Love
5,Touch
6,It's Only Love
7,Money
8,Moving Pictures
9,Arthur's Theme
  (Best That You Can Do)
1,Starmaker ビデオ
2,I Can Do Anything Better Than You Can
3,I Still Believe In Me
4,Life Is A Celebration
5,Step Up To The Mike
6,Hi-Fidelity ビデオ
7,We Got The Power
8,It's Gonna Be A Long Night
9,Desdemona
10,Be My Music
1,Educating Rita ビデオ
2,Franks Theme Pt.1
3,Franks Theme Pt.2
4,Variations On Grank And Rita
  (Innocence And Experience)
5,Reprise Theme From Educating Rita
6,A Thought For Rita Pt.1
7,University Challange
8,Burning Books
9,Franks Theme Pt.3
10,A Thought For Rita Pt.2
11,An Educated Woman
12,Macbeth

composed by David Hentchel
1,Olivia Newton-John
  Twist Of Fate ビデオ
2,Olivia Newton-John & John Travolta
  Take A Chance ビデオ
3,Patti Austin
  It's Gonna Be Special
4,Steve Kipner
  Catch 22
5,Olivia Newton-John
  Shaking You ビデオ
6,Olivia Newton-John
  (Livin' In) Desperate Times ビデオ
7,Boz Scaggs
  The Perfect One
8,Journey
  Ask The Lonely ビデオ
9,Chicago
  Prima Donna
10,David Foster
  Night Music ビデオ
 当時日本でも大ヒットしたダドリー・ムーア主演のコメディ映画『アーサー』。なんといっても、クリストファー・クロスの歌った主題歌#
1が有名ですよね。このサントラの面白いのは、#2〜4までのボーカル・ナンバーのいずれも映画本編では使用されていないこと。バカラックの書いたスコアに感銘を受けたアーティストが参加し、このアルバムのためだけにレコーディングした、とのことでした。個人的には二コレット・ラーソンの歌った#2が大好きでした。後半の#5〜#9は全てバカラックによる音楽スコアです。当時は映画も見たことないのに、サントラ盤だけは何故か持っていたんですよね(笑)

 高校時代に深夜放送で楽しみにしていたドラマ『フェーム/青春の旅立ち』。映画版よりも個人的には思い出深い作品でした。その本編中で出演キャストたちが歌った挿入歌を集めたのが、このサントラ盤。なんといっても、キャスト全員で歌ったバラード#1の印象が強烈で、当時すぐさまレコード店を探し回って、アナログ盤を手に入れた記憶があります。作詞・作曲はキャロル・ベイヤー・セイガーとブルース・ロバーツですが、メロディはほとんどバカラック。#6も本編では印象的な使われ方をしていました。ただ、それ以外の楽曲は地味なものが多く、アルバムを通して聴くのは若干苦痛かもしれませんね(^^;

 日本ではビデオ発売のみでしたが、主演のジュリー・ウォルターズがアカデミー主演女優賞にノミネートされるなど、欧米では大変な評判となったイギリス映画。映画本編も大好きでしたが、このサントラ盤も非常に印象的な1枚です。シンセサイザーを駆使したサウンドは、明らかにヴァンゲリスやジョルジョ・モロダーの影響を受けましたという印象ですが、テーマ曲#1の爽やかで甘酸っぱいメロディは秀逸。作曲を手掛けたデヴィッド・ヘンチェルは、ジェネシスやマイク・オールドフィールドのプロデューサー、クィーンやエルトン・ジョン、ジョージ・ハリソンなどのエンジニアとして有名な人です。  『グリース』の主演コンビが再び!ということで当時話題になりながらも、いまいちヒットしなかったファンタジー・ロマンス映画。しかし、サントラは素晴らしい楽曲が揃っています。当時はオリビア人気にも翳りが見え始めてきた頃でしたが、主題歌#1を筆頭に、いずれもポップスの真髄を感じさせてくれる名曲ばかり。他にも、パティ・オースティンにシカゴ、ジャーニー、ボズ・スキャッグスなど豪華なアーティストが揃ってます。個人的にはラテン風味なパティの#3や、オリビアのソングライターとしても知られるS・キップナーの#4が好き。あと、デヴィッド・フォスターによる美しいスコア#10も絶品です。

SCARFACE.JPG STREETS_OF_FIRE.JPG THE_LAST_DRAGON.JPG WHOS_THAT_GIRL.JPG

スカーフェイス
Scarface (1983)

ストリート・オブ・ファイアー
Streets Of Fire

ラスト・ドラゴン
The Last Dragon (1985)

フーズ・ザット・ガール
Who's That Girl (1987)

(P) MCA/Universal (USA) (P) MCA Records (USA) (P) Motown/Universal (USA) (P)1987 Sire/Warner Bros. (USA)
1,Paul Engemann
  Scarface (Push It To The Limit)ビデオ
2,Deborah Harry
  Rush Rush ビデオ
3,Amy Holland
  Turn Out The Light ビデオ
4,Maria Conchita
  Vamos A Bailar ビデオ
5,Giorgio Moroder
  Tony's Theme ビデオ
6,Amy Holland
  She's On Fire ビデオ
7,Elizabeth Daily
  Shake It Up ビデオ
8,Beth Andersen
  Dance Dance Dance ビデオ
9,Elizabeth Daily
  I'm Hot Tonight ビデオ
10,Giorgio Moroder
  Gina's And Elvira's Theme
1,Fire Inc.
  Nowhere Fast ビデオ
2,Marilyn Martin
  Sorcerer
3,The Fixx
  Deeper And Deeper
4,Greg Phillinganes
  Countdown To Love
5,The Blasters
  One Bad Stud
6,Fire Inc.
  Tonight Is What It Means
 To Be Young ビデオ
7,Maria McKee
  Never Be You
8,Dan Hartman
  I Can Dream About You ビデオ
9,Ry Cooder
  Hold That Snake
10,The Blasters
  Blue Shadows
1,Dwight David
  The Last Dragon ビデオ
2,Vanity
  7th Heaven ビデオ
3,Alfie
  Star
4,Charlene
  Fire ビデオ
5,Willie Hutch
  The Glow ビデオ
6,DeBarge
  Rhythm Of The Night ビデオ
7,Stevie Wonder
  Upset Stomach ビデオ
8,Smokey Robinson & Syreeta
  First Time On A Ferris Wheel ビデオ
9,Rockwell
  Peeping Tom
10,Willie Hutch with The Temptations
  Inside You
1,Madonna
  Who's That Girl ビデオ
2,Madonna
  Causing A Commotion
3,Madonna
  The Look Of Love
4,Duncan Faure
  24 Hours
5,Club Nouveau
  Step By Step
6,Michael Davidson
  Turn It Up
7,Scritti Politti
  Best Thing Ever
8,Madonna
  Can't Stop
9,Coati Mundi
  El Coco Loco (So So Bad)
 壮絶なバイオレンス・シーンでカルト映画となったブライアン・デ・パルマ監督のギャング映画。音楽は全てジョルジョ・モロダーが担当しています。当時モロダーの秘蔵っ子だったポール・エンゲマンを筆頭に、元ブロンディのデボラ・ハリー、マイケル・マクドナルド夫人としても有名なエイミー・ホーランド、後にE・G・デイリーと改名するエリザベス・デイリー、当時西海岸の有名なセッション歌手だったベス・アンダーセンと、参加者の顔ぶれは比較的地味。しかし、ハイエナジー路線のユーロ・ポップなモロダー・サウンドは絶好調で、『フラッシュダンス』や『トップ・ガン』なんぞよりも遥かに良く出来た1枚です。

 いやあ、青春ですね(笑)当時は日本のみで大ヒットしたダイアン・レイン主演の傑作青春アクション映画。#6は日本のドラマの主題歌としてカバーされてバカ売れしましたよね。同じ路線の#1も含めて、当時ボニー・タイラーで大当たりだったジム・スタインマンの個性が十二分に発揮されています。演奏するファイアー・インクは、当時CBSから売り出し中だったロック・バンド、フェイス・トゥ・フェイスのメンバーによる覆面バンド。ダン・ハートマンによる#8も当時ヒットしました。また、#2のマリリン・マーティンや#7のマリア・マッキーは後に全米トップ10ヒットを持つ人気アーティストへと成長しましたね。

 こちらは、ソウルの殿堂モータウン・レコードが満を持してサントラ・ブームに挑んだ1枚。本編はなんだかけったいなB級カンフー・アクションという感じでしたが、サントラ盤の方はなかなか充実しています。デバージの歌った挿入歌#6が当時は全米ヒットしましたが、主題歌#1やスモーキー・ロビンソンとシリータの素晴らしいデュエットを堪能できる甘いラブ・バラード#8も秀逸。また、当時モータウンに移籍したばかりだった元プリンス・ファミリーのヴァニティによるエロ・ファンク#2や、日本でも『愛はかげろうのように』で有名なシャーリーンによる歌謡曲風の哀愁系ロック・ディスコ#4もお気に入り。  当時は女優としての評価の最悪だったマドンナが、性懲りもなく(笑
)挑んだ主演映画第3弾。本編そのものは、まあ、こんなもんでしょうといった感じのクソみたいな映画でしたが、さすがにサントラ盤は充実しています。マドンナ自身による主題歌#1が全米ナンバー・ワン、#2が全米2位を記録したほか、まだ無名の新人だったマイケル・デヴィッドソンの歌う挿入歌#6がアメリカやUKのクラブ・チャートで大ヒット。これは当時世界中で大ブームを巻き起こしていたPWLのストック/エイトキン/ウォーターマンのプロデュースによる作品で、なかなかカッコいいユーロ・ハイエナジー・ナンバーでした。

ACTION_JACKSON.JPG COUSINS.JPG RUSSIA_HOUSE.JPG LAMBADA.JPG

アクション・ジャクソン
Action Jackson (1988)

今ひとたび
Cousins (1989)

ロシア・ハウス
The Russia House (1990)

ランバダ/青春に燃えて
Lambada : Set The Night On Fire (1990)

(P)1988 Lorimar Records/Atlantic (USA) (P)1989 Warner Bros. (USA) (P)1990 MCA Records (USA) (P)1990 Epic/CBS (USA)
1,The Pointer Sisters
  He Turned Me Out ビデオ
2,Madame X
  Action Jackson ビデオ
3,Levert
  For The Love Of Money
4,Vanity
  Undress ビデオ
5,Building Up "Action Jackson"
6,Sister Sledge
  Keeping Good Loving
7,David Koz and Vanity
  Shotgun ビデオ
8,Vanity
  Faraway Eyes
9,Skyy
  Lover's Celebration
10,M.C.Jam and Pee Wee Jam
  Protect And Serve
1,Overture
2,Maria's Theme
3,Adulterer's Blues
4,Love Theme From Cousins ビデオ
5,Adulterer's Blues Two
6,Cousins Waltz
7,Montage (Maria's Theme)
8,Love Theme From Cousins
  (Piano Solo)
9,Adulterer's Blues (Jazz Quintet)
10,Classical Restaurant
11,I Love You For Today
12,Love Theme From Cousins (Finale)
13,Cousins Waltz (Credits

composed by Angelo Badalamenti
1,Katya
2,Introductions
3,The Conversation
4,Training
5,Katya and Barley
6,First Name, Yakov
7,Bon Voyage
8,The Meeting
9,I'm With You/What Is This Thing Called Love
10,Patti Austin
  Alone In The World
11,The Gift
12,Full Marks
13,Barley's Love
14,My Only Country
15,Crossing Over
16,The Deal
17,The Family Arrives

composed by Jerry Goldsmith
1,Sweet Obsession
  Set The Night On Fire ビデオ
2,Absolute
  This Moment In Time
3,Dina D!
  Perfect
4,Tony Terry
  Tease Me, Please Me
5,Kathy Sledge
  Lambada Dancin'
6,Absolute
  Gotta Lambada
7,Carrie Lucas
  I Like The Rhythm
8,Johnny Thomas Jr.
  Rock Lambada
9,Bill Wolfer
  Wes' Groove
10,Brenda K. Starr
  Sata ビデオ
11,Judette Warren
  Give It Up
 『ロッキー』で有名なカール・ウェザース主演による、80年代版ブラクスプロイテーション映画。これも本編そのものは平凡なB級アクションでしたが、当時の新旧ブラック・コンテンポラリー系アーティストを揃えたサントラ盤はなかなかの出来栄え。中でも、元クライマックスのバーナデット・クーパーが育てた女性グループ、マダムXによる超グルーヴィーでエロい重量級ファンク#2は最高のカッコ良さ。主演も兼ねるヴァニティによる激エロ・ファンク#4や#7もグッドだし、シスター・スレッジやスカイといったオールド・スクール系グループまで参加しているのが嬉しいですね。  イザベラ・ロッセリーニとテッド・ダンソン主演による恋愛メロドラマ。70年代のフランス映画『さよならの微笑』のリメイクに当たります。作曲は『ツイン・ピークス』で有名なアンジェロ・バダラメンティ。フランス映画のリメイクだからというわけなのでしょうか、そのメロディアスでロマンティックでクラシカルな音楽は、まるで全盛期のフランシス・レイやミシェル・ルグランを彷彿とさせるような出来栄え。このスコアを聴く限りでは、とてもハリウッド映画のサントラとは思えません。中でもラブ・テーマ#4のノスタルジックなセンチメンタリズムは絶品。文句なしの傑作です。  冷戦時代末期のロシアを舞台にしたショーン・コネリーとミシェル・ファイファーのロマンティックなスパイ映画。こちらも、ハリウッド映画とは到底思えない叙情的なスコアが印象的です。中でも、ロシア的なセンチメンタリズムを全面に押し出したテーマ曲#1は傑作中の傑作。赤の広場を歩くミシェル・ファイファーのバックで流れていましたが、社会主義時代のロシアの空気感を的確に表現した素晴らしいスコアだと思います。ただ、これに歌詞を付けてジャズ・バラード風にアレンジしたパティ・オースティンの主題歌#10は及第点。いずれにせよ、巨匠ゴールドスミスの見事な仕事に感服。  当時下降線を辿りつつあったキャノン映画がランバダ・ブームに便乗する形で製作したダンス映画。とはいえ、実際に収録されている作品はランバダというよりも、当時のラテン・フリースタイル系の音に近い感じです。当時売り出し中だった黒人女性グループのスウィート・オブセッションやシスター・スレッジのキャシー・スレッジ、70年代のディスコ・クィーンとして有名なキャリー・ルーカスなど、参加アーティストのB級感は否めないかも(笑)しかし、フリースタイル・ファンなら楽しめること請け合いの1枚。特にブレンダ・K・スターの#10とC・ルーカスのバラード#7はオススメ。

 

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