60年代カルトSF傑作選
PART 2

 

人類SOS!
The Day Of The Triffids (1962)
日本では1963年劇場公開
VHS・DVD共に日本発売済み

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(P)2004 Film Prestige (Russia)
画質★★☆☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(ロシアPAL盤)
カラー/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語・ロシア語/字幕:英語・ロシア語/地域コード:ALL/86分/製作:イギリス

特典映像
オリジナル劇場予告編
監督:スティーヴ・セクリー
製作:ジョージ・ピッチャー
製作総指揮:フィリップ・ヨーダン
原作:ジョン・ウィンダム
脚本:バーナード・ゴードン
撮影:テッド・ムーア
特殊効果:ウォーリー・ヴィーヴァーズ
音楽:ロン・グッドウィン
出演:ハワード・キール
   ニコール・モーレイ
   ジャネット・スコット
   キエロン・ムーア
   マーヴィン・ジョーンズ
   ユアン・ロバーツ
   アリソン・レガット
   ジャニーナ・フェイ

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ロンドン上空に降り注ぐ無数の流星群

多くの人々が流星群の様子を見守っていた

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病院の静けさに不安を感じるメイセン(H・キール)

メイセンは病院の惨状を目の当たりにして呆然とする

 イギリスの作家ジョン・ウィンダムが1951年に発表した傑作SF小説『トリフィド時代』をベースに、流星群の飛来によって地球に繁殖した食人植物トリフィドの恐怖を描いたSFパニック映画。数ある英国産SF映画の中でも、ハマー製作の『原子人間』(55)と並んで特に高い評価を受けている名作だ。
 物語の発端は、無数の流星群が地球へ飛来するという怪現象。その光を目の当たりにした世界中の人々が失明してしまい、さらに流星に付着していた花粉からトリフィドと呼ばれる食人植物が繁殖する。たまたま入院していたおかげで失明を免れた軍人ビル・メイセンは、同じように難を逃れた僅かな人々と共にトリフィドと闘いながら、安全に暮らせる新天地を捜し求めて各国を旅する。
 50年代末の『マックィーンの絶対の危機』(58)に代表されるSFクリーチャー・ホラーの流れを汲みつつ、侵略型SF映画の原点である『宇宙戦争』(53)の基本プロットを踏襲したストーリーは実にシンプルで分りやすい。人類滅亡の危機に直面した人々の不安と恐怖をストレートに描いていると言えるだろう。列車の脱線事故や旅客機の墜落事故など派手な見せ場も随所に用意されており、パニック映画らしいスケールの大きさも観客の興味を惹きつけるに十分だ。
 さらに、メイセンを中心に展開する上記のメイン・プロットと並行して、離島の展望台に取り残された生物学者トム・グッドウィンと妻カレンがトリフィドの恐怖と対峙するサブプロットを挿入したのも名案。未知の食人植物トリフィドの習性や弱点をグッドウィン夫妻が解明していくことになるのだが、メイン・プロットでパニックの全体像をカバーしつつ、そこで描ききれないディテールをサブ・プロットで補足するというのは効果的だった。
 しかしその一方で、本作は原作小説のファンから批判されることの多い作品でもある。というのも、映画化に際してストーリーの大幅な削除・改変を行った結果、原作小説に含まれていた政治的メッセージや文明批判的な側面がそっくり失われてしまったからだ。
 原作の中で描かれているトリフィドの正体は、ソヴィエトの医用工学によって開発されたミュータント植物。流星群の飛来に関しても軍事兵器の誤作動が示唆されており、人類滅亡の危機は東西冷戦によって引き起こされたものと解釈することが出来る。
 さらに、映画版では軍人となっている主人公のメイセンだが、原作ではトリフィドの研究に携わる生物学者。たまたま失明を免れた彼はジョセラという若い女性と共に安全な場所を探して旅するのだが、その過程で世界的な混乱に乗じて権力を我がものにしようとする人々の抗争に巻き込まれていくのである。
 このような原作の社会派的要素をそっくり取り除いてしまったことには賛否両論あるところかもしれないが、純粋なエンターテインメントを目指すという意味においては、これもまたアリなのではないだろうか。
 ちなみに、クライマックスではある“意外”なものがトリフィド退治に有効だと判明する。それは地球の生命の源という意味では象徴的なのだが、パニック映画のオチとしてはちょっと安易なのでは?という気がしないでもない。

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離島に取り残されたトム(K・ムーア)とカレン(J・スコット)

ロンドンの街は視力を失った人々であふれていた

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列車の脱線事故でホームは大パニックに

孤児の少女スーザン(J・フェイ)と親しくなったメイセン

 ある日突然、無数の流星群が地球へと飛来。ロンドンでも夜空を色とりどりの光が行き交い、多くの人々が窓から身を乗り出してその驚くべき光景を眺めていた。しかし、海軍将校ビル・メイセン(ハワード・キール)は目の手術を終えたばかり。世間のお祭り騒ぎには興味津々だが、翌朝まで両目の眼帯を外すことが出来ない。
 一方、離島で研究活動を行っている海洋生物学者トム・グッドウィン(キエロン・ムーア)と妻カレン(ジャネット・スコット)の二人は、夫婦関係の危機に直面していた。長いこと二人きりで展望台に閉じこもる生活を送っていたことから、お互いに相手への不平不満が積もり積もっていた。このままではいけないと感じた二人は、翌朝迎えに来るボートで本土へ戻ることを決心する。
 やがて朝がやって来た。病院で目覚めたメイセンは、静まり返った病院内の雰囲気を察知して不安に駆られる。自ら眼帯を外して病室を出た彼は、もぬけの殻となった病院の様子を目の当たりにして驚いた。しかも、まるで嵐が通り過ぎた後のような惨状だ。
 そこへ、主治医のソームス(ユアン・ロバーツ)が手探りをするような様子で現われた。彼は目が見えなくなっていたのだ。そればかりか、昨夜の流星群を眺めていた人々が一斉に視力を失ってしまったのだという。絶望したソームス医師は、メイセンが目を離したすきに窓から飛び降りて自殺した。
 その頃、離島のグッドウィン夫妻はボートを待っていたが、一向にやって来る気配がなかった。天候に問題があるのかとラジオ情報を確認しようとするが、どこも放送を行っていない。いろいろと周波数を調整したところ、緊急放送が飛び込んできた。流星群を見ていたイギリス中の人々が失明し、恐ろしい食人植物が各地で繁殖しているという。その植物は猛烈な毒で人間を即死させ、犠牲者の肉を食らうというのだ。しかも、自らの意思で動き回ることが出来るらしい。
 病院の外へ出たメイセンは、とりあえず鉄道の駅へと向かう。そこには、家へ帰りたくても帰れない人々でごった返していた。その時、列車の汽笛の音が響き渡る。次の瞬間、ホームへと飛び込んできた暴走列車が脱線した。たちまち駅は大パニックに。その混乱の中で目が見える少女スーザン(ジャニーナ・フェイ)を発見したメイセンは、彼女を連れて駅を脱出した。
 スーザンは寄宿学校から逃亡した孤児で、列車の貨物車両に忍び込んでいたため流星群を見ていなかった。路上に乗り捨てられていた車に乗り込んだメイセンとスーザンは、海軍の軍艦が停泊している港を目指すことにする。その途中で食人植物トリフィドと遭遇した彼らだが、なんとか逃げおおせることができた。
 ようやく港へとたどり着いた二人。しかし、軍艦には誰も乗っていなかった。ラジオ放送によると、ロンドンだけでなくパリやニューヨーク、東京でも同じような現象が起きているという。燃料の尽きた旅客機が近くに墜落し、たちまち港町は炎に包まれる。小型ボートに乗り込んだメイセンとスーザンは、緊急対策会議が行われるというパリを目指すことにした。
 離島の展望台に隠れていたグッドウィン夫妻だったが、隙をついて食人植物トリフィドが侵入してくる。猛烈な力と毒をもつトリフィドに立ち向かうトム。シャベルを使って何とか相手を倒した彼は、実験用の機材を使ってその正体と弱点を突き止めようとした。しかし、あらゆる点で地球上のいかなる生物とも異なっており、トムは途方に暮れるばかりだった。その上、夫妻が仮眠を取っている間に倒したはずのトリフィドは蘇生してしまい、展望台の外へと逃げ出してしまった。果たして、奴らを倒す方法はあるのだろうか?
 フランスへと上陸したメイセンとスーザンだが、パリはほぼ壊滅状態だった。郊外へとやって来た二人は、デュラント(ニコール・モーレイ)というフランス人女性と知り合う。彼女は自らの運営する医療施設を、盲人たちの避難所として開放していた。そこでは、メイセンらと同じように逃げてきたコーカー氏(マービン・ジョーンズ)とその妻(アリソン・レガット)が手伝いをしている。
 コーカー氏は以前に食人植物トリフィドを見たことがあった。彼によると、数年前隕石に付着していた花粉を研究機関が培養したところ、巨大な食人植物になったのだという。そして、今回の流星群の飛来によって大量の花粉が地球へと降り注ぎ、その結果猛烈な勢いでトリフィドが繁殖するようになったのである。
 そのコーカー氏もトリフィドの犠牲となってしまった。さらに、刑務所を脱走した囚人たちが避難所を占拠し、そこへ無数のトリフィドたちが襲いかかる。メイセンはスーザンとデュラントを連れて命からがら逃げ出し、海軍の移動先であるスペインを目指すことにするのだったが・・・。

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食人植物トリフィドと遭遇したスーザン

世界各国でもパニック状態だという

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展望台に戻ったカレンが目にしたものは・・・

巨大なトリフィドがトムとカレンに襲いかかる

 先述したように『マックイーンの絶対の危機』と『宇宙戦争』を合体させたような内容となった映画版だが、もともとジョン・ウィンダムは『宇宙戦争』に着想を得て原作を書いたとのことで、脚色の方向性としてはあながち間違っていなかったのかもしれない。
 その脚色を手掛けたのは、『北京の55日』(63)で知られるバーナード・ゴードン。しかし、実際の本編では製作総指揮のフィリップ・ヨーダンが脚本にクレジットされている。というのも、当時ゴードンは赤狩りでハリウッドを追放された身。本作はイギリスで製作された作品だが、表立って彼の名前がクレジットされると全米公開時に問題が生じる恐れがあった。レイ・ハリーハウゼンの『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』(56)などではレイモンド・T・マーカスという偽名を使用していたゴードンだが、本作ではオスカー受賞経験もある名脚本家のヨーダンが、彼の隠れ蓑となったのだ。
 そのヨーダンは、『折れた槍』(54)の脚本でオスカーを獲得した人物。『探偵物語』(51)や『キング・オブ・キングス』(61)、『ローマ帝国の滅亡』(64)など数多くの名作・大作を手掛けたが、実は昆虫パニック映画の原点『黒い絨毯』(54)やジョージ・パルの『宇宙征服』(55)などSF映画にも造詣が深い脚本家だった。
 監督のスティーヴ・セクリーはハンガリーの出身で、戦前はドイツ、フランス、オーストリアでも活躍した人物。ナチスの台頭を逃れてハリウッドで低予算映画を撮っていた時期もあったが、戦後は再びヨーロッパに活動の拠点を移していた。なお、本作では尺を増やすために追加シーンの撮影が行われているのだが、そちらの演出はフレディ・フランシスが手掛けたらしい。
 撮影監督を担当したのは、『わが命つきるとも』(66)でオスカーを獲得したイギリスの名カメラマン、テッド・ムーア。『007/ドクター・ノオ』(62)から『007/黄金銃を持つ男』(74)まで全てのジェームズ・ボンド映画を手掛けた人物としても有名だが、『シンドバッド黄金の航海』(73)や『タイタンの戦い』(81)など特撮映画でも優れた実績を残している。
 そのほか、音楽にはヒッチコックの『フレンジー』(72)や『素晴らしきヒコーキ野郎』(65)などで知られるロン・グッドウィン、特殊効果には『ナバロンの要塞』(61)や『博士の異常な愛情』(64)のウォリー・ヴィーヴァース、そして全編に渡ってフル活用されているマット・ペイントには、『史上最大の作戦』(62)や『恐竜100万年』(66)、『2001年宇宙の旅』(68)、『プリンセス・ブライド』(87)、『バロン』(88)などを手掛けたイギリスを代表するマットペイント・アーティスト、ボブ・カフが携わっている。

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一路パリを目指して船出するメイセンとスーザン

フランス人女性デュラント(N・モーレイ)らと知り合う

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避難所が暴徒と化した囚人たちに占拠されてしまった

囚人たちに襲いかかる無数のトリフィド

 主人公の軍人メイセンを演じているのは、『アニーよ銃をとれ』(51)や『キス・ミー・ケイト』(53)、『掠奪された七人の花嫁』(54)などのハリウッド・ミュージカルで一世を風靡したイギリス人俳優ハワード・キール。当時はハリウッドでのキャリアが低迷しており、生まれ故郷のイギリスへ出稼ぎに戻ることが多かった。
 フランス人女性デュラント役のニコール・モーレイは、ハリウッド映画『インカ帝国の秘宝』(54)でチャールトン・ヘストンの相手役を演じていたフランス人女優。また、メイセンを父親のように慕う少女スーザン役には、『吸血鬼ドラキュラ』(58)で吸血鬼と化したミーナに狙われる幼い少女タニアを演じていた子役ジャニーナ・フェイが扮している。
 一方、離島の観測所でトリフィドの恐怖と対峙する生物学者トム・グッドウィン役には、『アンナ・カレニナ』(48)でヴィヴィアン・リー扮するアンナと恋に落ちるヴロンスキー伯爵を演じたキエロン・ムーア。その妻カレン役を演じているジャネット・スコットは、アメリカの大物ジャズ歌手メル・トーメの奥さんだった女性だ。
 そのほか、ヒッチコックの『巌窟王』(39)など数え切れないほどの映画に出演したイギリス映画界きっての名脇役マーヴィン・ジョーンズ、『ウォタルー街』(45)や『チップス先生さようなら』(69)などで口うるさいオバさん役を演じ続けた性格女優アリソン・レガットなどが脇を固めている。

 

 

Invasion Of The Star Creatures (1962)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2004 MGM Home Entertainment (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(レターボックス収録)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語/地域コード:1/70分/製作:アメリカ
※『インベージョン・オブ・ザ・ビー・ガールズ〜蜂女〜』とカップリング

特典映像
オリジナル劇場予告編
監督:ブルーノ・ヴェソタ
製作:バージ・ハゴピアン
脚本:ジョナサン・ヘイズ
撮影:ベイジル・ブラッドベリ
音楽:エリオット・フィシャー
出演:ボブ・ボール
   フランキー・レイ
   グロリア・ヴィクター
   ドロレス・リード
   マーク・フェリス

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ダメ兵卒コンビ、フィルブリック(B・ボール)とペン(F・レイ)

ランク大佐(M・フェリス)の命で怪事件の調査隊に加わる

 初期ロジャー・コーマン映画の常連俳優であり、ピアノ線に引っ張られた雑巾型エイリアンが登場する伝説的Z級SFホラー『脳を喰う怪物』(58)で知られるブルーノ・ヴェソタ監督。本作は、そんな彼が正面きって挑んだ正統派(?)Z級SFコメディである。
 舞台はとあるアメリカ陸軍基地。砂漠で起きた謎の大爆発の調査隊に加わったダメ兵卒コンビが、地球侵略を企むセクシー美女エイリアンと野菜人間軍団の陰謀を阻止するために大活躍するというお話だ。
 『脳を喰う怪物』では大真面目に侵略型SFホラーを目指したものの、そのあまりのポンコツぶりで観客の失笑を買ってしまったヴェソタ監督。本作では完全に開き直ってしまった感がある。超低予算映画ゆえの弱点や欠点を、逆にジョークとして笑い飛ばしているのだ。
 なんといっても最大の見物は、エイリアンの歩兵部隊である野菜人間軍団の強烈なまでにチープなクリーチャー・デザインだろう。なにしろ、全身タイツに麻袋を被って、雑草の髪の毛とピンポン球の目玉をくっ付けただけ。果たして、これをデザインと呼んでいいのか!? 誰もが思わず首を傾げるに違いない(笑)。
 ある意味、『惑星アドベンチャー』のモグラ・エイリアンに匹敵するほどの酷い出来栄え。しかし、コメディ映画というだけでワリとすんなり許せてしまうのは、やはり作り手側の作戦勝ちといったところだろうか。50年代B級SFジャンルのパロディ的な要素を全面に押し出したのが、結果的に功を奏したのだろう。
 また、全編をベタ過ぎる古典的ギャグで貫き通したのも好感が持てるところ。ケツにタバコの火がついてロケットみたいに宙を飛んだり、主人公たちと野菜人間との追いかけっこを早回しで撮ったりと、まるでサイレント映画かルーニー・チューンズみたいなギャグ・シーンの数々は、定番といえば定番だが妙に微笑ましくもある。アボット&コステロさながらの主人公コンビも憎めないし、彼らと長身美女エイリアンたちとの凸凹ぶりも悪くない。
 欧米では歴代ワーストSF映画の上位にランクされることの多い作品だが、そこまで出来の悪い映画ではないように思う。というか、そもそもこういう映画をまともに評価しようとしちゃいけない。言うなれば、これは『最終“絶叫”計画』シリーズみたいなもの。バカバカしいことを承知の上で作られた映画をバカバカしいと酷評することほど、無駄でバカバカしいことはないのだから。

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小さな洞窟セットの中を行ったり来たりの調査隊

すっかり眠りこけたフィルブリックとペン

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野菜人間たちが二人をさらっていく

美女エイリアン、プーナ博士(D・リード)とタンガ教授(G・ヴィクター)

 核兵器の開発を急ピッチで進めるアメリカ陸軍。そのメッカであるニコルソン駐屯地に勤務するフィルブリック(ボブ・ボール)とペン(フランキー・レイ)は、何をやらせても失敗ばかりの万年兵卒コンビだ。
 そんな彼らが、ある日ランク大佐(マーク・フェリス)のオフィスへと呼ばれる。実は、ニコルソン駐屯地の近くにある砂漠で、大規模な爆発が確認されたのだ。それは核爆弾にも匹敵するほどの大きさで、砂漠には巨大なクレーターが出来てしまった。しかも、そのクレーターの中心には洞窟らしき穴があるという。ランク大佐はすぐさま調査隊を編成し、フィルブリックとペンの二人も荷物持ちとして加わることになったのである。
 洞窟の外で待機することとなったフィルブリックとペン。しかし、彼らはこっそりと荷物に忍ばせてきたランチを平らげ、ウトウトと居眠りを始めてしまう。その間に洞窟内を探っていた調査隊は、植物のような姿をした野菜人間軍団に拉致されてしまった。さらに、洞窟の外へと出た野菜人間たちは、イビキをかきながら眠っているフィルブリックとペンをもさらっていく。
 眠りから覚めた二人の目に飛び込んできたのは、野菜人間軍団の指揮官である二人のセクシー美女。タンガ教授(グロリア・ヴィクター)にプーナ博士(ドロレス・リード)と名乗る彼女たちは、ベルファー星雲の惑星カーナールから地球征服のためにやって来たエイリアンだった。
 彼女たちは地球人の知識を探るためにフィルブリックとペンの脳をチェックするが、なぜか(?)二人とも頭の中は空っぽ。タンガ教授がいなくなった隙に、プーナ博士を説得して逃がしてもらおうと考えた二人だが、どうやら惑星カーナールには優しさや愛情という概念が存在しないようだった。
 “愛とはなんだ!?”と詰め寄るプーナ博士にキスをするフィルブリック。すると、二人の間には電気ショックのようなものが走り、プーナ博士は我を失ってしまった。その隙に二人は洞窟から脱走。野菜人間軍団の追跡をかわし、なんとかニコルソン駐屯地へと逃げ帰った。
 二人の報告を聞いたランク大佐はバカにするなと激怒するが、指にはめているリングからフィルブリックと大佐が同じ宇宙マニア・クラブのメンバーであることが判明。しかもフィルブリックの方が上級メンバーであることが分り、大佐は二人と一緒にエイリアンを倒すべく洞窟へ向かうこととなる。
 ところが、その途中でインディアンの一群と遭遇。殺されそうになる3人だったが、インディアンの酋長もまた宇宙マニア・クラブのメンバーだった。エイリアン退治などそっちのけで、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎを繰り広げるインディアンたち。その間にも、エイリアンたちはロケット発射の準備を進めている。彼女らは地球で集めた情報を惑星カーナールへ持ち帰り、地球征服軍を率いて再びやって来るつもりなのだ。
 ようやくインディアンたちが酔いつぶれ、洞窟へとたどり着いたフィルブリックとペン。基地の内部へ忍び込んだ二人は機材を片っ端から壊したところ、ロケットは無人のまま発射してしまった。これで地球は救われた!と喜んだのもつかの間、二人はタンガ教授とプーナ博士に捕えられてしまう・・・。

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フィルブリックとペンの頭の中は空っぽだった

野菜人間軍団を培養するエイリアンたち

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フィルブリックとキスをしたプーナ博士は我を忘れてしまい・・・

二人の報告を信用しないランク大佐だったが・・・!?

 “R.I. Diculous Presents”“A Impossible Picture”とオープニングのクレジットからして人を食ったようなこの作品。日本語に訳すならば、“クダ・ラナイ提供”“ソンナバカナ映画社製作”といったところだろうか(笑)。脚本を手掛けたジョナサン・ヘイズは、ロジャー・コーマンの名作『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(60)に主演した俳優。当初は本人も出演するつもりで、相棒役にはディック・ミラーを予定していたらしい。ちなみに、舞台となるニコルソン駐屯地とは、AIPの社長ジェームズ・H・ニコルソンの名前から取ったオマージュなのだそうだ。
 その他のスタッフは、いずれも当時インディペンデントの低予算映画に携わっていた人々ばかり。撮影のベイジル・ブラッドベリはテッド・V・マイケルズ作品にも参加したことのあるカメラマンで、AIPではプロデュース業にも手を出したことがあった。また、美術デザインのマイク・マクロスキーは『とむらいレストラン』(66)を手掛けた人物。音楽を手掛けているエリオット・フィシャーは、『チェリー、ハリー&ラクエル』(69)や『スーパー・ヴィクセン』(75)などのラス・メイヤー作品で知られる作曲家ウィリアム・ルーズの変名である。

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ランク大佐を連れてエイリアン討伐へ向かうフィルブリックとペン

インディアンたちと意気投合をしてしまって・・・

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無人のまま発射してしまったエイリアンのロケット

美女エイリアンたちからボコボコにされるフィルブリックとペン

 役者についても分る範囲内で紹介しておこう。マヌケ顔のフィルブリックを演じているボブ・ボールは『脳を喰う怪物』にも出ていた人物で、主にテレビで活躍した喜劇役者だったようだ。あの『イージー・ライダー』(69)にも顔を出しているらしい。一方、ちょっと強面のペンを演じているフランキー・レイはスタンダップ・コメディアン。あのレニー・ブルースなんかとも親交があったという。
 セクシー美女エイリアン役で登場するグロリア・ヴィクターとドロレス・リードは、どちらも低予算のB級映画でその他大勢のお色気要員を務めていた端役女優。もしかしたら水着モデルなんかの出身ではないかと思うのだが、残念ながら詳細は全く分からない。

 

 

The Earth Dies Screaming (1964)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2007 20th Century Fox (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語・スペイン語/字幕:英語・スペイン語・フランス語/地域コード:1/62分/製作:イギリス
※『大襲来!吸血こうもり』とカップリング

特典映像
オリジナル劇場予告編
スチル・ギャラリー
監督:テレンス・フィシャー
製作:ロバート・L・リッパート
   ジャック・パーソンズ
脚本:ヘンリー・クロス
撮影:アーサー・ラヴィス
音楽:エリザベス・ラティエンス
出演:ウィラード・パーカー
   ヴァージニア・フィールド
   デニス・プライス
   トーリー・ウォルタース
   ヴァンダ・ゴッドセル
   デヴィッド・スペンサー
   アンナ・パーク

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ある日突然、イギリス中の人々が一斉に死亡する

小さな村へやって来たアメリカ人ジェフ(W・パーカー)

 1940年代から全米で100以上もの映画館を経営し、メジャー・スタジオの配給で数多くのB級映画を製作した商売人ロバート・L・リッパート。サミュエル・フラー監督を育てたことでも知られる彼だが、60年代に入ると人件費の高いハリウッドを去ってイタリアやイギリスでB級映画を作り続けた。そんな彼がハマー・ホラー・ブームの立役者である名匠テレンス・フィシャーと組んだ異色のSFホラー映画が、この“The Earth Dies Screaming”である。
 ある日突然、イギリスで人々が一斉に死んでしまう。それからしばらくして、ロンドン郊外の小さな村で7人の生存者たちが出会った。彼らが助かった理由、それはたまたま外気から遮断された状況にいたということ。毒ガス兵器による大量殺人が想定された。ということは、戦争が始まったのか?
 生存者たちの疑問と不安が増す中、宇宙服を着た奇妙な集団が村へとやって来る。その正体はロボットだった。やがて生ける屍となって甦った死者たちが、次々と生存者たちに襲いかかる。果たして、これはエイリアンによる人類掃討作戦なのか?かくして、何一つ具体的な状況が分らぬまま、人々の生き残りを賭けた戦いが展開していく。
 欧米ではカルト映画として人気が高く、過去にトム・ウェイツが同名タイトルの楽曲を発表したり、ゲーム・ソフト化までされたこともある本作。ある日突然人類が一斉に死んでしまうという設定は、恐らく『未知空間の恐怖/光る眼』(60)からヒントを得たのであろう。エイリアンのロボットが地球へ降り立つというのも、当時のB級SF映画にありがちなネタ。本作の場合、宇宙からの影響で死者がゾンビとして甦るという展開を加えたのが画期的だった。言うなれば、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(68)のご先祖様みたいな映画なのである。
 とはいえ、ロボットもゾンビもただノロノロと歩き回るだけで、緊張感や恐怖感などほとんどナシ。ストーリー展開にしても非常にスローペースで、62分というコンパクトな上映時間ですら少々長く感じられるかもしれない。ロボットのデザインやスーツも大変チープ。侵略型SF映画に初めてゾンビ・ネタを仕込んだというアイディアが人気の秘密なのかもしれないが、作品の完成度自体は平凡なB級作品といったところだろう。
 ただ、ゾンビとして甦った人々の目が真っ白に見開かれているというのは、ビジュアル的に十分なインパクトがある。暗闇の奥から歩いてきた女性にカメラの至近距離でライトが当たり、そこで初めて彼女がソンビだと分るシーンは、テレンス・フィシャーらしいケレン味の効いた恐怖演出として印象的だった。

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怪しげな男タガート(D・プライス)とペギー(V・フィールド)

ヴァイオレット(V・ゴッドセル)とエド(T・ウォルタース)

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ジェフは生存者たちの共通点に気がつく

宇宙服の集団を救援隊だと思ったヴァイオレットだが・・・

 ある日突然、イギリスの各地で人々が一斉に死んでしまう。走行中の列車は脱線し、車は壁に激突し、旅客機は森へと墜落。平凡な日常を過ごしていた人々も、自宅や職場や道ばたで次々と息絶えてしまった。
 場所はロンドン郊外の小さな村。ジープに乗ったアメリカ人ジャック・ノーラン(ウィラード・パーカー)は、住民の死体が散乱する広場へと降り立つ。彼はアメリカ空軍のパイロットで、英国軍との合同練習で戦闘機の高度テストを終えて地上へ戻ったら、人々が死んでしまっていたのだ。
 村の電気店でラジオを手に入れた彼は、近くのホテルに腰を落ち着ける。テレビやラジオをつけてみるものの、妨害電波らしき奇妙なシグナルが鳴り続けるだけだった。そこへ、一組の男女がやって来る。彼らはジャックのことを警戒している様子だったが、お互いに同じ状況下に置かれていることをすぐに理解した。
 男性はクイン・タガート(デニス・プライス)、女性はペギー・ハドン(ヴァージニア・フィールド)。ペギーは入院していた病院の隔離室にいて助かったというが、見るからに怪しげなタガートは自分のことを一切語ろうとはしなかった。
 さらに、村の雑貨店に身を隠していた男性エド・オーティス(トーリー・ウォルタース)、女性ヴァイオレット・コートランド(ヴァンダ・ゴッドセル)の二人も加わる。彼らは同じ職場の同僚で、パーティを抜け出して会社の隔離実験室で密会していたのだという。
 生き残った人々の状況をまとめてみると、どうやら全員がたまたま外気から遮断された状況にいたことから死なずに済んだようだった。ジャックは毒ガス兵器が使用されたのではないかと疑う。
 その時、バイオレットは宇宙服を着た集団が村を歩いていることに気付く。救援隊が来たものと早合点して外へ飛び出すヴァイオレット。しかし、その集団には顔がなかった。彼らはショックで凍りついたヴァイオレットを殺害。ジャックらはライフルや拳銃で攻撃するが、宇宙服の集団はそのまま消え去ってしまった。
 ヴァイオレットの死体をホテルの二階へ運び込んだジャックたち。すると、遠くから車のエンジン音が聞こえる。やって来たのはメル・ブレイナード(デヴィッド・スペンサー)に妊娠中の妻ローナ(アンナ・パーク)という若い夫婦だった。彼らはリヴァプールへと向かう途中だったが、ジャックの助言で一緒に行動することとなる。
 ひとまず、彼らは村はずれの軍事訓練所で武器を調達し、ホテルで一夜を過ごすことにした。例の宇宙服の集団が村を徘徊しているため、男性陣は交代で見張りをすることに。すると、明け方になってタガートがホテルを抜け出そうとした。そこへ、死んだはずのヴァイオレットが襲い掛かってくる。タガートは持っていた拳銃でヴァイオレットを射殺した。
 死者が甦って襲い掛かってくる。そうと知った彼らはホテルも決して安全ではないと感じ、村はずれにある軍事訓練所へと移動した。出産を間近に控えたローナの体調を考えると、すぐ遠くへ逃げるわけにもいかないからだ。だが、独善的なタガートはペギーを拳銃で脅し、二人だけで先に車で逃げようとする。
 しかし、ペギーは隙を見て車を脱出。そこへ宇宙服の集団やゾンビが現われたことから、タガートはペギーを見捨てて逃げ去ってしまった。ホテルへと駆け込んだペギーだったが、既にそこにはゾンビたちが。命からがら外へと逃げ出したものの、ついに宇宙服の集団とゾンビに囲まれてしまった。
 そこへ、ペギーたちの行方を追うジャックが到着。車で敵をなぎ倒していく。なんと、宇宙服の集団はロボットだった。ジャックはエイリアンの地球侵略を直感する。彼はペギーを連れて軍事訓練所へと戻った。すると、ローナの陣痛が始まっていた。その晩、彼女は無事に女の子を出産する。
 出産を終えたばかりの母子を動かすわけにはいかない。こうなると、先にロボットたちを倒さねばならなかった。ジャックはあることに気付く。テレビやラジオから流れてくる奇妙な電波音は、エイリアンがロボットを捜査する信号なのではないか。その送信機を特定して破壊すれば、ロボットは動かなくなるはず。
 ジャックとメルはすぐさま行動に出た。ラジオの受信状況をたどりながら、送信機の場所を探そうというのだ。ところが、彼らが出かけている間に、ゾンビと化したタガートがロボット軍団を従えて軍事訓練所へとやって来る。逃げ場を失ったペギーやローナたち。果たして、彼らの運命やいかに・・・!?

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若夫婦メル(D・スペンサー)とローナ(A・パーク)も加わる

夜中に村を徘徊する宇宙服の集団

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死んだはずのヴァイオレットが甦った・・・

村はずれの軍事訓練所へと避難した一行

 とまあ、かなりご都合主義的で無理のあるストーリー展開がご愛嬌(笑)。設定のワリにやたらとスケールが小さかったりするのも、当時の典型的なインディペンデント系B級SF映画といった感じだ。
 脚本を書いたヘンリー・クロスという人物は、当時ロバート・L・リッパートのもとで“The Day Mars Invaded Earth”(63)や『蝿男の呪い』(65)など数多くの低予算映画を手掛けていたハリー・スポールディングの変名。『呪われた森』(80)や『エクソシストの謎』(88)など、ホラー映画にも縁のある脚本家だ。
 そのほか、撮影監督のアーサー・ラヴィスや美術監督のジョージ・プロヴィスなど、スタッフの殆んどが当時リッパート作品の常連だった人物ばかり。そうした中で異色なのが、音楽を手掛けているエリザベス・ラティエンスであろう。ラティエンスは英国クラッシック音楽界を代表する女流作曲家で、大英帝国勲章も授与されたことのある人物。当時ハマーやアミカスの作品を何本か手掛けたことはあったが、その2社以外で仕事をするのはとても珍しい。
 なお、ロケ地となったのは『ハリー・ポッター』シリーズの舞台としても知られるサリー州の小さな村シェレー。主人公たちが立てこもるホテルとして使用された建物は、音楽を担当したエリザベス・ラティエンスの父親である有名な建築家サー・エドウィン・ラティエンスがデザインしたものだという。

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ペギーを脅して連れ出すタガート

ロボットを見たタガートは一人で逃げ去る

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ホテルに独り残されたペギーが見たものとは・・・

ゾンビと化した人々の群だった

 主人公のジャック・ノーラン役を演じているのは、40年代にB級西部劇のヒーローとして活躍したアメリカ人俳優ウィラード・パーカー。ヒロインのペギー役を演じているヴァージニア・フィールドは彼の奥さんで、20世紀フォックスの大物製作者デヴィッド・O・セルズニックにスカウトされてイギリスからハリウッドへ渡ったものの、低予算映画の色添え役専門で終ってしまった女優さんだった。
 素性の怪しげな中年紳士タガートを演じているのは、イギリスの傑作ブラック・コメディ『カインド・ハート』(49)でアレック・ギネス扮する10人の親戚を次々殺していく主人公を演じたことで有名な俳優デニス・プライス。この手のエレガントな悪役はお手のもので、イタリア映画やジェス・フランコ作品にも数多く出演している名脇役だ。
 そのほか、ハマー・ホラーの常連脇役トーリー・ウォルタース、ブレイク・エドワーズ作品の常連女優ヴァンダ・ゴッドセル、ハマー作品『陰母神カーリ』(60)にも出ていたデヴィッド・スペンサーなどが脇を固めている。

 

 

決死圏SOS宇宙船
Doppelgänger (1969)
日本では劇場未公開
VHSは日本発売済・DVDは日本未発売

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(P)2008 Universal Studios (USA)
画質★★★★★ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:英語・フランス語/地域コード:1/102分/製作:イギリス

特典映像
なし
監督:ロバート・パリッシュ
製作:ジェリー・アンダーソン
   シルヴィア・アンダーソン
脚本:ジェリー・アンダーソン
   シルヴィア・アンダーソン
   ドナルド・ジェームス
撮影:ジョン・リード
視覚効果:デレク・メディングス
音楽:バリー・グレイ
出演:ロイ・シネス
   イアン・ヘンドリー
   リン・ローリング
   パトリック・ワイマーク
   ロニー・フォン・フライドル
   ハーバート・ロム
   フランコ・デ・ローサ
   ジョージ・シーウェル
   エド・ビショップ
   ヴラデク・シェイバル

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ユーロセックの資料室を訪れたヘスラー博士(H・ロム)

博士はソヴィエト側のスパイだった

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テレビを通じてユーロセックの審議会が行われる

太陽の真裏に地球と似た惑星があると報告するケイン(I・ヘンドリー)

 『海底大戦争スティングレイ』(64)や『サンダーバード』(65)などのSF特撮人形劇で知られるジェリー・アンダーソンとシルヴィア・アンダーソンの夫婦が、初めて生身の俳優を使って製作したSFサスペンス。太陽の裏側に存在する地球のパラレル・ワールドを描いた異色作だ。
 舞台は近未来。地球から見て太陽の真裏の位置に、地球と同じ速度で太陽系の軌道を回る惑星が発見された。アメリカ人の宇宙飛行士グレン・ロスとイギリス人の天体物理学者ジョン・ケインの二人は、その未知の惑星を目指して宇宙へと旅に出る。ところが、なぜか彼らが降り立ったのは地球だった。
 関係者はロスたちが計画を途中で放棄して戻ってきたものと考える。しかし、ロス自身はある重大なことに気付いた。自宅の間取から家具の位置、車の運転席から看板の文字まで、全てが鏡に映したかのごとく正反対だった。つまり、ここは地球のように見えて地球とは違う、ドッペルゲンガーのような惑星だったのである。
 まるで『ミステリー・ゾーン』を彷彿とさせる不思議な物語だが、実際『ミステリー・ゾーン』にも“The Parallel(邦題『宇宙飛行士の幻想』)”という似たようなエピソードがある。そもそも“パラレル・ワールド”というのは映画やドラマに限らずSFのジャンルで繰り返し取り上げられてきた題材の一つ。本作の場合、太陽の裏側に地球と対を成す世界が存在するというアイディアがとても興味深い。
 ただ、そのアイディアが全てとなってしまったため、結局そこから物語を十分に広げることができず終ってしまったという印象も否めないだろう。あともう一ひねりくらいはして欲しかった、というのが正直な感想だ。
 とはいえ、全編に散りばめられたメカや美術セット、衣装などのデザイン、クールでスタイリッシュなカメラワークといったビジュアルに関しては文句なしのパーフェクト。監督には編集者としてオスカー受賞経験もあるハリウッドのベテラン、ロバート・パリッシュが当たっているものの、撮影監督のジョン・リードや特撮のデレク・メディングスなど主要スタッフは全てアンダーソン組で固められており、仕上がりはどこからどう見てもジェリー・アンダーソンの作品だ。
 幾何学的でリアルなデザインが特徴のメカや特撮、ウルトラ・モダンで洗練された近未来的美術セットやコスチューム。ハードでシニカルなストーリーの語り口も含めて、アンダーソン夫妻が後に手掛ける『謎の円盤UFO』(70)や『スペース1999』(75)の原点となった作品とも言えるだろう。全体的にちょっとスローペースだし、物語のオチに少々パンチが足りないのは玉に瑕だが、その映像だけでも十分に一見の価値がある隠れた名作だ。
 なお、アメリカでは“Journey To The Far Side Of The Sun”というタイトルで劇場公開されている。

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宇宙ロケット発射計画は加盟国の同意が得られなかった

ウェッブ(P・ワイマーク)はヘスラー博士の暗殺を指示する

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アメリカ代表オールソン(E・ビショップ)は資金提供を約束

アメリカ人宇宙飛行士ロス(R・シネス)が搭乗することに

 ヨーロッパ宇宙開発評議会ユーロセックの資料室に、へスラー博士(ハーバート・ロム)という人物が訪れる。実は、彼はソビエト側のスパイだった。義眼に仕込まれた超小型カメラで極秘資料をコピーした彼は、そこに記録されたデータを確認して不敵な微笑を浮かべる。
 その翌日、イギリスの天体物理学者ジョン・ケイン(イアン・ヘンドリー)と上司ジェイソン・ウェッブ(パトリック・ワイマーク)は、ユーロセックのテレビ電話会議に出席。そこで彼らは、地球から見て太陽の真裏に未知の惑星が存在することを報告。太陽系の惑星をほぼ調査し終えた人類にとって、それは驚くべき新発見だった。
 ケインとウェッブは新惑星を調査するための宇宙ロケット発射計画を提案するが、その高額な費用から各国代表の同意を得るに至らなかった。頼みの綱はアメリカ合衆国の資金援助だったが、アメリカ大使デヴィッド・オールソン(エド・ビショップ)もなかなか首をたてに振らない。
 しかし、辣腕として知られるイギリス代表ウェッブがここで引き下がるわけはなかった。彼は部下のパウロ・ランディ(フランコ・デ・ローサ)に命じてヘスラー博士の身辺を調査させる。博士がソビエトのスパイであることに気付いていたのだ。ランディはヘスラー博士を射殺し、研究室に隠された資料などを手に入れる。
 ソビエトが新惑星の調査に強い関心を示していることが分り、先を越されてはならないアメリカは宇宙ロケットの発射に資金を提供することとなった。ただし、アメリカ人の宇宙飛行士を採用するという条件付きで。
 かくして、世界的に有名なアメリカ人宇宙飛行士グレン・ロス(ロイ・シネス)が新惑星へと向かうことになる。だが、ウェッブとしてはみすみすアメリカにお手柄をそっくり渡してしまうわけにはいかない。そこで、彼は新惑星の発見者であるケインを同行させることにした。
 だが、宇宙飛行士としてケインは全くの素人。リスクが高すぎるとロスは猛反対するが、強引なウェッブに押し切られてしまった。早速、ケインは宇宙飛行士としての訓練を受けることに。短期間で訓練を終えさせるため、ウェッブは強行スケジュールを断行する。
 一方、世界的な英雄として尊敬されるロスだったが、私生活では妻シャロン(リン・ローリング)との不仲に悩まされている。多忙を極める夫に対してシャロンは不満を募らせており、自分の重責やストレスなど全く理解しようともせず放蕩三昧の妻にロスは愛想を尽かしていた。そんな彼の心の拠り所は、宇宙開発局の美しい秘書リサ・ハートマン(ロニー・フォン・フライドル)。二人は無意識のうちに心惹かれあっていた。
 そして、いよいよ宇宙ロケット発射の日がやって来る。ロスとケインは生命維持装置につながれ、数週間に渡る宇宙飛行を睡眠状態で過ごすことになった。体力の消耗を最小限に食い止めるためだ。多くの人が固唾を飲んで見守る中、宇宙ロケットは無事に新惑星へと旅立っていく。
 それから数週間後。ロスとケインは予定通りに目を覚ました。軌道から外れていないことを確認した彼らは、目指す新惑星を目の当たりにする。そして二人は着陸用の小型機へと乗り換え、一路新惑星を目指した。
 ところが着陸は失敗してしまい、小型機が大破炎上。直前に放り出されたロスは無事だったが、ケインは意識不明の重体となってしまう。そこへ近づいて来る無数の光。果たして、それは宇宙人なのか?力尽きたロスは、その場で気を失ってしまう。
 意識を取り戻したロスの目の前に、なんとウェッブが怒りを隠せない表情で立っていた。新惑星へ向けて地球を後にしたはずのロスとケインが、なぜ戻ってきてしまったのか?激しい口調で問いただすウェッブだったが、ロス自身も状況を全く呑みこめないでいる。
 ケインが依然として意識不明の状態であることから、ロスは一人で事情聴取を受けることになった。関係者は二人が勝手に調査を放棄して地球へ戻ってきたと疑うが、当然のことながらロスはそれを否定。ウェッブは事の真相が明らかとなるまで、二人の帰還を関係国に対して伏せておくことにした。
 シャロンの運転する車で自宅へ戻ることになったロス。だが、運転席や道路標識の位置が逆であることに気付いて首をかしげる。さらに自宅へ到着した彼は、部屋の間取や家具の位置、印刷物の文字までもが逆だと気付いて動揺。夫の頭がおかしくなったと思ったシャロンはウェッブに連絡し、ロスは身柄を拘束される。
 当初、関係者もロスが正気を失ったものと考えた。しかし、彼が鏡に映した文字をいとも簡単に読んだこと、そして意識不明のまま死亡したケインを検死したところ内臓の位置が逆だったことなどから、ウェッブはロスの言葉に耳を貸すようになる。
 ロスはこう考えた。自分が現在いる場所は、少なくとも自分が生まれ育った地球ではない。つまり、太陽を挟んだ両側に2つの地球が存在し、それはまるで鏡に映したかのような対称関係にあるのだ。ということは、もう一人のロスがもう一つの地球で同じような状況に置かれているに違いない。その仮説を証明するため、ウェッブはロスを再び宇宙へ送り出すことにするのだったが・・・。

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ケインの宇宙飛行へ向けた訓練が始まった

ロスと妻シャロン(L・ローリング)の仲は冷め切っている

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いよいよ宇宙ロケット発射の準備が整った

ロケットへ乗り込んだロスとケイン

 アンダーソン夫妻と共に脚本を手掛けたのは、これをきっかけに『謎の円盤UFO』や『プロテクター・電光石火』(72)、『スペース1999』など夫妻の作品に数多く参加するようになったドナルド・ジェームス。彼はもともと小説家で、『スパイ大作戦』や『セイント天国野郎』など人気スパイ・ドラマの脚本も手掛けた人物だ。
 太陽の反対側にもう一つの左右対称な地球が存在するという設定は、見る者の想像力や好奇心を掻きたてるという意味で秀逸なアイディアだったと言えよう。ただ、その左右対称という以外に両者を識別する違いが全くないため、よくよく考えると“だからどうした?”という疑問が残ってしまうのも否定できまい。たとえば、登場人物の性格までもが正反対であったりとか、もっとプラスアルファの要素が加われば、より示唆に富んだ深い物語になったのではないだろうか。
 また、全体的にストーリー・テリングよりも特撮やセットなどのティテール描写に重点が置かれてしまい、スリルやサスペンスを盛り上げるリズム感が希薄になってしまったというのも大いに惜しまれる。確かにセットやミニチュアの出来栄えが見事だというのは紛れもない事実なので、痛し痒しといったところではあるのだが。
 その特撮を担当したデレク・メディングスや美術監督のボブ・ベル、撮影監督のジョン・リード、音楽のバリー・グレイなど、主要スタッフは全てアンダーソン夫妻作品の常連ばかり。翌年の『謎の円盤UFO』に流用されたミニチュアもあったらしく、それも含めてファンには嬉しい映像が満載だ。
 ちなみに、後半の左右対称なパラレル・ワールドを再現するに当たって、製作費を抑える必要もあったことから、普段通りに撮影したフィルムを単純に左右反転させて使用したのだそうだ。なので、後にイギリスのテレビで放送されることになった際、ストーリーをよく理解していない局関係者は誤ってフィルムが左右逆になっているものと勘違い。直前になって気付いたから良かったものの、危うく“修正”されたバージョンを放送するところだったらしい。

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ついに目指す新惑星へと到着したロケット

着陸用の小型機へと移動するロスたち

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小型機は着陸に失敗してしまう

負傷したケインを介護するロスに謎の光が近づく・・・

 主人公グレン・ロス役を演じているのは、大ヒットSFドラマ『インベーダー』の主演で当時脚光を浴びたばかりのアメリカ人俳優ロイ・シネス。『インベーダー』の人気とイメージにあやかったキャスティングであったろうことは想像に難くないが、クールでミステリアスな個性はロスという役柄のイメージにピッタリだ。
 一方、非業の死を遂げる天体物理学者ジョン・ケイン役のイアン・ヘンドリーは、『反撥』(65)のカトリーヌ・ドヌーヴの相手役や『狙撃者』(71)の悪役で知られるイギリスの名優。こちらも極めて渋いたたずまいが共演者ロイ・シネスの個性と見事にマッチしており、なかなかのはまり役だと言えよう。
 さらに、彼らを宇宙へ送り込む策士ジェイソン・ウェッブ役のパトリック・ワイマークが、そのパワフルかつアクの強い演技で強烈なインパクトを残す。『荒鷲の要塞』(68)や『空軍大戦略』(69)といった戦争映画の将校役でお馴染みの俳優だが、これが最大の当たり役なのではないだろうか。
 女優陣に目を移してみると、ロスの妻シャロン役のリン・ローリング、秘書リサ役のロニー・フォン・フライドルと、どちらも色添えではあるものの印象に残るタイプのキレイどころが揃っている。ローリングはアメリカの昼メロ“Search For Tomorrow”で有名になった女優で、後に映画プロデューサーへ転向した人。フライドルはオーストリア出身の女優で、ミヒャエル・アンデ原作の『ほがらかに鐘は鳴る』(59)などの映画に出演していた。今も現役で活躍中だそうだ。
 また、『戦争と平和』(56)や『スパルタカス』(60)、『ピンク・パンサー』シリーズのドレフュス署長役などでお馴染みの名優ハーバート・ロムが、ソヴィエト側のスパイであるヘスラー博士として登場。悪役として物語に絡んでくるのかと思いきや、あっという間に殺されてしまうのにはビックリした。
 ちなみに、『謎の円盤UFO』の主人公ストレイカー司令官役でお馴染みのエド・ビショップと、その右腕であるフリーマン大佐役のジョージ・シーウェルが脇役で顔を出しているのも要注目。有名な悪役俳優ヴラデク・シェイバルが精神科医役として登場するが、彼もまた『謎の円盤UFO』のレギュラー・メンバーの一人だった。

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ロスとケインが新惑星だと思ったのは地球だった!?

事情聴取を受けることになったケイン

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ケインは文字や標識などが全て逆であることに気付いて動揺する

シャロンは夫が正気を失ったと思い離婚を決意する

 

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