60年代カルトSF映画傑作選
〜PART 1〜

 

 空前のSF映画ブームに沸いた50年代。しかし、『光る眼』(60)が大ヒットした辺りを境にして、ブームは急速に沈静化していった。やはり過度な量産が災いしたのだろう。また、ブームに便乗しただけの安手な作品が横行したことも、SF映画全体のイメージを傷つけてしまったのかもしれない。
 だが、時代の目線は着実に宇宙へと向っていた。人類の宇宙開発事業は進展を重ね、69年にはアポロ11号が月面着陸を成功させることとなる。アメリカではUFOの目撃事件が増加の一途を辿り、67年には政府が本格的な調査へと乗り出す。『インベーダー』や『謎の円盤UFO』といったテレビ番組も人気を呼んだ。
 そうした状況下で、60年代のSF映画は秘かに、しかし着実に変化・進化を遂げていった。この時代のSF映画は、大きく二つのタイプに分けることが出来るかもしれない。1つは従来型のオーソドックスなSFモンスターもの。そして、もう1つは“スペース・エイジ”らしいリアルなSFドラマである。
 60年代は人々にとって宇宙がより身近なものになりつつあったことから、映画にも現実的で科学的な視点が求められるようになったと言えるだろう。その集大成と呼べるのが、キューブリックの『2001年宇宙の旅』(68)だった。また、人間の体を1つの宇宙と見立てたリチャード・フライシャーの『ミクロの決死圏』(66)も、ある種のリアリズムに根ざしたSF映画だったと考えられる。
 また、当時は環境問題が初めて取り沙汰されるようになり、公民権運動やウーマン・リブといった社会問題が大きくクロースアップされた時代。SF映画もそうした時代の空気を敏感に取り込み、ゴダールの『アルファヴィル』(65)やトリュフォーの『華氏451』といったかなり変化球的なSFドラマが生まれる。ちょっと作風は異なるものの、フランクリン・J・シャフナーの『猿の惑星』(68)などは、まさにこうした文明批判的な社会派SF映画の金字塔と呼べるものだったと言えよう。
 もちろん、従来のようにエイリアンやモンスターが登場するSF映画も数多く作られた・・・というよりも、こっちの方が相変わらず主流ではあったものの、宇宙植物の来襲にリアルな文明批判を盛り込んだ『人類SOS』や、核戦争後の世界を描いた『地球最後の男』(64)など、リアリズムは60年代SF映画の重要なキーワードだったと言えるかもしれない。

 

The Day The Earth Caught Fire (1961)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2001 Anchor Bay (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ(一部着色)/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:
1/99分/製作:イギリス

映像特典
オリジナル劇場予告編
オリジナルTVスポット集
オリジナルラジオスポット集
スチル・ギャラリー
V・ゲスト監督による音声解説
V・ゲスト監督バイオグラフィー
監督:ヴァル・ゲスト
製作:ヴァル・ゲスト
   フランク・シャーウィン・グリーン
脚本:ヴァル・ゲスト
   ウォルフ・マンコウィッツ
撮影:ハリー・ワックスマン
音楽:スタンリー・ブラック
出演:エドワード・ジャッド
   ジャネット・マンロー
   レオ・マッカーン
   マイケル・グッドリフ
   バーナード・ブレイデン
   レジナルド・ベックウィズ
   ジーン・アンダーソン
   ルネ・アシャーソン
   アーサー・クリスチャンセン

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廃墟と化した灼熱のロンドン市街

この数ヶ月に起きた出来事を回想するステニング(E・ジャッド)

 ハマー・プロ製作のSFホラー『原子人間』(55)で大ヒットを飛ばしたヴァル・ゲスト監督によるSFパニック映画。未知の宇宙生命体が人間を乗っ取っていくという『原子人間』とは180度方向を転換し、米ソの度重なる核実験の影響で滅亡への道を辿っていく地球の姿をドキュメンタリー・タッチで描いた傑作である。
 地球の環境問題や核実験の悪影響などは50年代から指摘されていたものの、レイチェル・カーソンの著作『沈黙の春』によって地球環境問題へ注目が集まるようになったのは62年、そして世界で初めて部分的核実験禁止条約が締結されたのは63年のこと。そうしたことを考えると、本作はかなり時代を先駆けた映画だったと言えるかもしれない。それゆえに、ヴァル・ゲスト監督が本作の映画化へと至るまでには長い紆余曲折があった。
 実は、監督が最初に本作の草稿を書き上げたのは1954年。イギリスが初めての核実験を行う2年前のことだ。もともとジャーナリストから身を起こしたゲスト監督は、当時アメリカやソビエトが行っていた核実験に対して大きな不安と不信感を抱いていた。
 しかし、当時はまだ核実験や放射能の地球環境へ与える悪影響については過小評価されており、またそうした問題への意識も一般的に低かったことから、彼の脚本に見向きをする者は誰もいなかったという。
 その後、『原子人間』と続編『宇宙からの侵略生物』(57)でヒットを飛ばしたゲスト監督。世界的な反核の気運も徐々に盛り上がってきたが、依然としてこの企画に興味を示す映画会社はなかった。しかし、ハマーがSF映画から怪奇映画へ路線をシフトすると、ライバル会社であるブリティッシュ・ライオンが製作・配給を引き受けることとなる。それでも、監督自身が製作費の一部を負担するという条件付きでの契約だったのだが。
 物語は廃墟と化したロンドンに独り残された新聞記者ステニングによる回想形式で語られていく。世界各地で起きている温暖化や豪雨などの異常気象を取材していたステニングは、度重なる核実験の影響で地球の回転軸にズレが生じてしまったことを知る。それによって地球は本来の軌道から外れてしまい、徐々に太陽へと接近しているというのだ。このままでは地球の温度は上昇の一途を辿り、やがてあらゆる生物が消滅していまう。果たして、人類は地球を破滅から救うことが出来るのか・・・?
 低予算映画ゆえにモノクロ(灼熱シーンだけオレンジ色で着色)で撮影された作品だが、それが逆にニュース映画のような緊迫感とリアリズムを生み出すこととなった。また、離婚によって幼い息子と離れ離れになった主人公ステニングの苦悩や仕事仲間との友情、電話交換手の女性ジーニーとの淡い恋など、市井の人々の日常を丁寧に描いていくことで、核実験による地球の滅亡という題材をより身近なものとして浮き彫りにしている。
 また、最終的な地球の運命を観客の想像に委ねるというクライマックスも素晴らしかった。科学的にどこまで正確な情報に基づいているのかは定かでないものの、総じて非常に知的で示唆に富んだ作品であることは間違いないだろう。もちろん、娯楽映画としても十分に合格点。ジョージ・パルの『地球最後の日』(51)ほど派手なスペクタクルはないものの、脚本のスケール感やドラマの厚み、終末の時へと向っていく生々しい緊張感は遥かに充実している。
 なお、本作は翌年の英国アカデミー賞で最優秀脚本賞を受賞。また、小説や絵画を含むSF界の最高権威であるヒューゴ賞の映像部門にノミネートされ、批評的にも高い評価を受けた。これがいまだに日本未公開のままというのは残念。

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ステニングは“デイリー・エクスプレス”紙の記者だった

社内で孤立する彼にとって唯一の味方マクガイアー(L・マッカーン)

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世間では反核運動が高まりつつあった

各地で異常気象が目撃される

 灼熱のロンドン。廃墟と化した街に独り留まった男ステニング(エドワード・ジャッド)は、この数ヶ月間で起きたことを思い返していた。新聞社デイリー・エクスプレスの中堅記者として活躍するステニングだったが、私生活では離婚をきっかけにアルコールで身を持ち崩し、近頃では社内での評判もあまり良くない。
 唯一の理解者は科学記事担当のベテラン記者マクガイアー(レオ・マッカーン)。仕事帰りに彼の愚痴を聞くばかりでなく、入稿に間に合わなかったステニングの記事を代筆するなど、公私に渡って彼の味方に付いてくれている。
 ちょうどその頃、米ソが相次いで大規模な核実験を行い、その直後辺りから各地で異常気象が報告されるようになった。とはいえ、社内ではあまり重要なテーマとは目されず、誰も取材をしたがらないことから、ステニングに担当が回ってきた。大いに不満を漏らすステニングだったが、自分の置かれた立場を考えると引き受けざるを得ない。
 渋々ながら気象庁へ取材に出かけたステニングは、関係者が何か重要な事実を隠しているのではないかと疑うようになる。核実験が地球環境に影響を及ぼしつつあることは明白だった。ロンドンでも次々と異常気象が発生し、気温がうなぎ上りとなっていく。
 最愛の息子と離れ離れになってしまったことで深く落ち込んでいたステニングだが、その一方で気象庁の電話交換手として働く女性ジーニー(ジャネット・マンロー)と急接近する。正義感が強くて勝気な現代っ子のジーニーに、ステニングは忘れかけていたジャーナリストとしての使命感を思い起こさせられた。
 やがて、ロンドンの異常気象は激しさを増していく。突然市内が濃い霧に包まれ、交通機関が完全に麻痺してしまう。しかも、この霧は非常に重たく、地上から数メートル上は晴れているという異様な光景が広がっていた。さらにロンドン全土を大暴風雨が襲い、市内で多数の死傷者が出る。
 そんな折、ステニングはジーニーから重大な情報を知らされる。彼女が気象庁幹部の会話を偶然耳にしたところによると、核実験により地球の回転軸がずれてしまい、急速に太陽へと近づいているというのだ。
 ジーニーからは決して他言しないでくれと念を押されたステニングだったが、これが事実ならば報道しないわけにはいかない。長年科学記事を担当してきたマクガイアーに相談すると、ここ最近の異常気象もこれで納得のいく説明がつくという。2人からの報告を受けた編集長(アーサー・クリスチャンセン)は、自らの首をかけてこの事実を報道することにする。
 翌朝のデイリー・エクスプレスの記事は大きな波紋を呼び、政府機関も渋々ながら事実を認めた。世界各地での異常気象はさらなる激しさを増し、人々はパニックに陥る。一方、機密情報を漏洩したとして逮捕されたジーニーは情状酌量となり、デイリー・エクスプレスで勤務することとなった。
 ほどなくして、政府は非常事態宣言を発令。都市部の住民は比較的気候の穏やかな田舎へと移動させられ、物資は全て配給制となった。もちろん、それも気休めにしか過ぎない。果たして地球を滅亡から救う方法があるのか?
 やがて科学者たちの研究から、唯一可能性のある解決法が導き出された。世界中の核兵器をシベリア北部で爆発させ、その衝撃で地球の回転軸を元に戻すというのだ。世界中の人々が固唾を呑んで見守る中、運命の瞬間がやって来る・・・。

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米ソの核実験が地球環境に悪影響をもたらしていた

ロンドンの街も猛暑に見舞われる

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気象庁の電話交換手ジーニー(J・マンロー)と親しくなるステニング

突如として発生した霧がロンドンを包み込んだ

 主人公ステニングが勤務している“デイリー・エクスプレス”は、ご存知の通りイギリスに実在する大手新聞社。実際に当時の“デイリー・エクスプレス”本社ビルでロケ撮影が行われており、当時の編集長アーサー・クリスチャンセンまでもが本人役として出演しているのが面白い。ヴァル・ゲスト監督自身が新聞記者出身であったことから、オフィスや取材現場の描写は実に生き生きとしていて活気が溢れている。
 また、ステニングが反核運動のデモ集会に潜入取材するシーンでは、実際に本当のデモ会場でのロケ撮影を敢行。さらに、特撮によるディザスター・シーンと記録フィルムを巧みに織り交ぜ、ハリウッド映画とは一味違うリアルなドキュメンタリー・スタイルを貫いている。
 ヴァル・ゲストの書いた草稿に手を加えて最終的な脚本に仕上げたのは、『文なし横丁の人々』(55)や『外套』(55)などの名作で知られる脚本家ウォルフ・マンコウィッツ。脚本に参加した『007/ドクター・ノオ』(62)を失敗作だと判断して、クレジットから名前を外させたという逸話でも有名な人だ。その後、この一件を後悔したらしく、『女王陛下の007』(69)と番外編『007/カジノ・ロワイヤル』(67)に参加。ヴァル・ゲスト監督とはヒット作『女体入門』(60)でも組んでいる。
 撮影監督のハリー・ワックスマンは、名匠ベイジル・ディアデン監督の犯罪ミステリー『サファイア』(59)で英国撮影監督協会賞を受賞したハリー・ワックスマン。戦争アクションからホラー映画まで様々なジャンルを手掛けた人だが、ドキュメンタリー・タッチのリアルなカメラワークで定評のあるカメラマンだった。ジョー・マソット監督のサイケな実験映画『ワンダーウォール』(68)やカルト・ホラーの傑作『ウィッカーマン』(74)なども、彼の手掛けた作品だ。
 さらに、特殊効果を担当したのは、『スーパーマン』(78)でアカデミー賞を受賞した英国を代表するSFXマン、レス・ボウイ。彼は特にマット・ペイントのエキスパートとして有名で、『原子人間』(55)や『吸血鬼ドラキュラ』(58)など一連のハマー・プロ作品を筆頭に、『華氏451』(66)や『2001年宇宙の旅』(68)、『スター・ウォーズ』(77)にも参加している。

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ステニングはジーニーから衝撃的な事実を知らされる

“デイリー・エクスプレス”は事実の報道を決断する

 ステニング役のエドワード・ジャッドはもともと舞台俳優として有名だった人物で、映画では本作が初めての大役。当時29歳というから、比較的遅咲きだったと言えるかもしれない。本作の成功をきっかけに『H.G.ウェルズのS.F.月世界探検』(64)や『燃える洞窟』(67)などのSF映画に次々と主演し、SFファンには御馴染みの人気スターとなった。嫌味のない素朴なイメージで幅広い世代に好印象を与えるタイプの役者だ。
 一方のジーニー役を演じているジャネット・マンローは、『四つの願い』(59)や『南海漂流』(60)といったディズニー映画のヒロイン役で売り出したアイドル女優。当時はSF映画にも数多く出演していた。どこかエキゾチックな魅力のある清楚な女性だったが、72年に38歳の若さで病死している。
 ステニングを公私に渡って支えるベテラン記者マクガイアーを演じているのは、『オーメン』(76)の考古学者ブーゲンハーゲン役や『ライアンの娘』(70)のライアン役で有名な個性派レオ・マッカーン。頼りになるオヤジさん的雰囲気が見事にハマっている。
 その他、副編集長役には戦前にロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの看板俳優として鳴らした名優マイケル・グッドリフ、記者たちが集うパブの女主人役にはローレンス・オリヴィエ主演の『ヘンリィ五世』(44)で王女キャサリン役を演じた名女優ルネ・アシャーソンが扮している。
 なお、無名時代のマイケル・ケインが交通整理の警官役でワン・シーンだけ登場する。

 

Battle Beyond The Sun (1962)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2004 Retromedia (USA)
画質★☆☆☆☆ 音質★★☆☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/スタンダードサイズ/モノラル/音声:英語/字幕:なし/地域コード:
ALL/64分/製作:アメリカ(ソヴィエト)

映像特典
オリジナル劇場予告編
イタリア産SF映画“Star Pilot”
監督:トーマス・コルシャート
製作:トーマス・コルシャート
製作補:フランシス・フォード・コッポラ
脚本:ニコラス・コルバート
   エドウィン・パーマー
特殊効果:フランシス・セルビン
     ネルソン・ローリン
音楽:ジャン・オネイダス
   カーメン・コッポラ
出演:エド・ペリー
   アーラ・パウエル
   アンディ・スチュワート
   ジーン・トナー
   バリー・シャートック
   ローレンス・ローベン
   カーク・バートン
   フレデリク・ファーリー
   トーマス・リトルトン
   メアリー・キャノン
   リンダ・バレット

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南ヘミスのゴードン博士と妻ルース

彼らは人類初の火星探検を計画していた

地球を離れる宇宙飛行士クレイグたち

 無名時代のフランシス・フォード・コッポラが手掛けたSFアドベンチャー・・・なのだが、実はこれ、ミハイル・カリューコフとアレキサンドル・コズィールが監督したソビエト映画『大宇宙基地』(60)を再編集し、コッポラが別途撮影したモンスター・バトル・シーンを勝手に付け加えてしまった作品。本来はソビエトの宇宙開発を鼓舞するプロパガンダ映画だったらしいのだが、このアメリカ公開版ではごくありきたりな宇宙冒険譚に仕上がっている。
 舞台は核戦争後の近未来。僅かに生き残った人類は二つの国家に分かれ、互いに宇宙開発を競い合っている。恐らくオリジナルではソビエトVS某西側大国という図式だったろうと思われるが、それじゃアメリカでは上映できないので(笑)、架空の2大国家というものをでっち上げたのだろう。
 で、彼らが目指すのは人類初の火星着陸。ところが、主人公たちは敵側の宇宙船パイロットを救出しようとしたため、不本意にも謎の惑星へと不時着してしまい、そこで世にも醜悪なモンスターたちと遭遇する・・・というが大まかな粗筋だ。
 ひとまず、フル・カラーで撮影された特殊効果の出来栄えは素晴らしい。宇宙ロケットや宇宙ステーションのデザインも非常にスタイリッシュだし、不時着した謎の惑星の幻想的な世界観にも目を奪われる。少なくともオリジナル版の特撮に関しては、当時のハリウッド・メジャーのSF大作にも全く引けを取らない完成度の高さだ。
 ただ、問題なのはストーリーとアメリカ公開版追加シーン、そして英語吹替えの出来の悪さ。もともとプロパガンダ映画ゆえにストーリーが面白くないのは仕方がないが、上映時間77分の映画を追加シーンも含めて65分にまで縮めてしまったこともあってか、結局何の話だったわけ?という大きな疑問が残る。
 オリジナルはソビエトの宇宙開発を邪魔しようとするアメリカ人たちを、無欲で寛大なソビエトの宇宙飛行士たちが決死の覚悟で救出し、見事に地球へ戻って故郷に錦を飾るという美談。そこには崇高な精神を持ったソビエトと邪悪で愚かなアメリカという明確な対比とテーマがあった。それをアメリカ公開版では、北と南に分断された人類の和解という博愛主義にすり替えたわけだが、いまひとつ焦点の定まらない中途半端な印象を受ける。
 さらに、コッポラが撮影を行った追加シーンも、残念ながらあまり出来が良いとは言えない。とはいえ、悪趣味極まりないクリーチャー・デザインは、その手のものが好きな人にはたまらない、という意味での面白さはあるだろう。中でも、モロに女性器を連想させるエイリアンのポンコツな醜悪ぶりは、ゲテモノ映画好きだったら結構楽しめるはずだ。
 その一方で、英語吹替え版のあまりに粗雑な出来栄えはちょっと頂けなかった。もともとがロシア語なので口元がシンクロしないのは仕方がないにしても、声優たちの投げやりすぎる演技はどうにかならなかったものか(笑)それだけでも、かなり萎えてしまうこと必至だ。

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ゴードン博士らは宇宙ステーションへ到着した

ステーションでの和やかなひと時

北ヘミスの宇宙飛行士たちがステーションを訪れる


 舞台は1997年。核戦争によって一度は絶滅しかけた人類だが、北ヘミスと南ヘミスという二つの国家に分かれて、それぞれ著しい発展を遂げてきた。南ヘミスのアルバート・ゴードン博士(エド・ペリー)は、妻ルースの協力のもと人類初の火星探索計画を秘密裏に進めていた。しかし、北ヘミスでもその情報をいち早く掴み、南に負けじと火星探索の準備を着々と進めていたのだ。
 やがて、ゴードン博士は優秀な部下クレイグ(アンディ・スチュワート)とその妻ナンシー(アーラ・パウエル)らを連れて、火星探索の最終準備をするために宇宙ステーションへと出発する。ステーションで盛大な歓迎を受けるゴードン博士たち。
 そこへ、北ヘミスのトレンス隊長とマーティン博士からの連絡が入った。宇宙船が故障してしまったため、南ヘミスの宇宙ステーションに緊急着陸させて欲しいというのだ。ステーションの指揮官やゴードン博士は、迷うことなく彼らを受け入れた。
 ところが、南ヘミスがすぐにでも火星探索へ向う予定であることを知ったトレンス隊長は、宇宙船の準備が不十分であるというマーティン博士の反対意見にも耳を貸さず、先に火星へ向けて出発することにする。
 一足遅れて火星探索へと旅立ったゴードン博士とクレイグ。その頃、トレンス隊長たちの宇宙船は進路から外れてしまい、太陽へと近づきつつあった。彼らからのSOS信号を受けたゴードン博士とクレイグは、火星探索を後回しにして救助へ向うことにする。
 全ては自分たちが欲をかいたせいだと観念し、最期の時を黙って迎えようとするトレント隊長とマーティン博士。だが、間一髪のところでゴードン博士たちが救助に駆けつけた。かくして、お互いの友情を確かめ合う北と南の宇宙飛行士たち。
 しかし、この救助作戦のおかげで南の宇宙船は燃料を使い果たしてしまい、火星探索はおろか、地球へ戻ることすら出来なくなってしまう。そこで、ゴードン博士は近隣の惑星に不時着。そこから宇宙ステーションへ発する信号を頼りに、燃料ロケットを打ち上げてもらうことにする。
 だが、無人の燃料ロケットは着地に失敗。そこで、最後の手段としてクレイグの同僚である飛行士ポールが宇宙船に乗り込み、燃料を送り届けることとなる。謎の惑星に無事到着したポール。だが、そこで彼は世にも恐ろしいエイリアンたちの壮絶な闘いを目撃することになる・・・。

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火星探索へ向うゴードン博士たち

火星を目前にしてライバルからのSOS信号を受けた

謎の惑星へ不時着したゴードン博士たち

 ソビエト映画『大宇宙基地』のアメリカにおける配給権を獲得したのは、“B級映画の帝王”の異名をとるロジャー・コーマン御大。そのままの状態ではアメリカ公開が出来ないことから、彼は愛弟子のフランシス・フォード・コッポラに再編集版の製作を一任した。当時まだコーマンのもとで仕事を始めたばかりだったコッポラにとっては、これが初めての大役(?)だったと言えるだろう。
 ちなみに、コーマンは本作の後にも『火を噴く惑星』(62)というソビエトのSF映画を購入し、それを再編集して『原始惑星への旅』(65)と『金星怪獣の襲撃』(68)という全く違う2本の映画を作ってしまった。さらに、本作のミハイル・カリューコフ監督の手掛けた『夢との出会いに向って』(63・日本未公開)というSF映画の権利も買い取り、カーティス・ハリントン監督の“Queen of Blood”(66)というSFホラーに作り変えている。
 ということで、監督・製作に名を連ねているトーマス・コルシャールなる人物は全くの架空。その他のスタッフ名も、基本的には殆んどがでっち上げだ。アメリカ公開版の実質的な監督は、もちろんコッポラ。そして、製作はロジャー・コーマンである。
 また、音楽にクレジットされているジャン・オネイダスという人物は、本作のアメリカ配給を担当したAIPの常連作曲家レス・バクスターとロナルド・ステインの合同変名。もう一人の作曲家カーメン・コッポラとは、もちろんコッポラ監督の父親であるカーマイン・コッポラのことだ。

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救援にやって来たポールの見た光景とは・・・!?

こちらが衝撃(?)のワギナ型エイリアン

で、こちらは対する目玉エイリアン

 そんなこんなで、クレジットされている出演者の名前も全て変名。ただ、こちらは基本的に演じているロシア人俳優の名前をアメリカ風に変えてみただけのようだ。ゴードン博士(ソビエト版ではコルニフ博士)を演じているエド・ペリーとは、名匠セルゲイ・ワシリーエフ監督のカンヌ映画祭受賞作「シプカの英雄たち」(55・日本未公開)に主演した俳優イワン・ペレウェルゼフのこと。さらに、宇宙飛行士クレイグ(ソビエト版ではアンドレイ)役のアンディ・スチュワートは、こちらもカンヌで2部門を受賞したミハイル・カラトーゾフ監督の傑作『鶴は飛んでゆく』(57)にも出演していた若手俳優アレクサンドル・シュウォーリン。その妻ナンシー(ソビエト版ではコルネワ)役を演じているアーラ・パウエルは、当時まだ新人だった女優アラ・ポポーワのことである。
 その他、ジーン・トナーがグルゲン・トヌンツ、カーク・バートンがコンスタンチン・バルタシェビッチ、女優タイシャ・リトヴィネンコがなぜか男性名のトーマス・リトルトン・・・といった具合に、名前を照らし合わせていくのも結構面白いかもしれない(^^;

 

Creation of the Humanoids (1962)
日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2006 Dark Sky Films/MPI (USA)
画質★★★☆☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語:字幕:英語/地域コード:ALL/84分/製作:アメリカ
※『惑星大戦争』と2本立て

映像特典
劇場予告編集
ドライブイン広告集
監督:ウェズリー・バリー
製作:ウェズリー・バリー
原作:ジャック・ウィリアムソン
脚本:ジェイ・シムス
撮影:ハル・モーア
特殊メイク:ジャック・ピアース
出演:ドン・メゴーワン
   エリカ・エリオット
   ドン・ドゥーリトル
   ジョージ・ミラン
   ダドリー・マンラヴ
   フランシス・マッキャン
   デヴィッド・クロス

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ロボットが進化を遂げた近未来

自我に目覚めたロボットたちは独自のコミュニティーを形成

 戦前の人気子役スターから監督へと転じたウェズリー・バリー。主にB級西部劇を手掛けていた彼の唯一残したSF映画が、この“Creation of the Humanoids”である。公開当時はほとんど見向きもされなかったようだが、これが実はなかなかユニークで興味深い作品に仕上がっている。
 舞台は近未来の地球。人類に奉仕するため開発された青い肌のロボットたちは徐々に進化し、中には人間のような感情を持ったり宗教に目覚める者も現れていた。そんな彼らを脅威に感じた一部の人類は排他的な組織を結成し、自警団を作ってロボットたちの行動を監視するようになる。そんな折、ある科学者がロボットによって殺害され、事件を調べる組織の狂信的なリーダー、クレイグスは、ロボットたちが人間と瓜二つのヒューマノイドを開発していたことを知る。
 単なる奉仕道具から成長して自我に目覚めていくロボットたちと、それを一方的に弾圧しようとする人類。そう、本作は一応SF映画の体裁を取っているものの、実は当時芽生えつつあった公民権運動の精神を大胆に描く社会風刺ドラマなのである。
 しかし、残念ながらバリー監督の演出はまるでアングラ演劇のように平坦で娯楽性に乏しく、無名役者たちによる演技も決して上手いとは言えない。ただ、それもこれも予算が極端に少なく、幾つものセットを建てたり、まともな役者を雇うだけの余裕がなかったことの結果なのだろう。前衛的で独創的なプロダクション・デザインも悪い出来ではないが、やはり極端な低予算で作られているために舞台セットのような印象を受けることは否めない。
 とまあ、確かに技術的な面で欠点の目立つ作品ではあるものの、脚本の独創性と面白さは素直に評価すべきだろう。アンディ・ウォーホルのお気に入り映画だったと伝えられているが、それも十分に納得できる隠れた名作だ。

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ロボットたちは秘かにヒューマノイドを完成させていた

ロボットたちの動向を監視する自警団

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ヒューマノイドを開発したレイヴン博士(D・ドゥーリトル)

一部の人々はロボットを差別する秘密結社を組織していた

 核戦争の影響で出生率が極端に減った人類は、労働力不足を補うために青い肌を持つ人型ロボットを開発した。コンピューターによって改良を重ねていったロボットたちは、やがて自我や感情、宗教などに目覚めるようになり、独自のコミュニティーを形成していく。
 一方、そうしたロボットたちの進化を脅威に感じた一部の人類は、“血と肉の結社”と呼ばれる組織を結成。彼らはロボットたちを“クリッカーズ”と呼んで差別し、自警団を組んでその動向を逐一監視していた。
 そんなある日、科学者レイヴン博士(ドン・ドゥーリトル)がロボットに殺されるという事件が発生。自警団のリーダーで組織の幹部であるクレイグス(ドン・メゴーワン)は、博士を殺した犯人が人間と瓜二つのヒューマノイドであることを知る。
 実は、レイヴン博士はロボット・コミュニティーの指導者たちに協力し、ヒューマノイドの開発に尽力していたのだ。彼は不慮の事故や病気などで死亡した市民の遺体を秘密裏に回収し、本人にそっくりのヒューマノイドを作ることに成功していた。しかし、作業現場を自警団に発見されそうになったことから、ヒューマノイドに命じて自分を殺させたのだった。“血と肉の結社”に研究内容が知られてしまえば、必ずやロボットの弾圧に乗り出すはずだったからだ。
 博士を殺した犯人がヒューマノイドであることは判明したものの、その詳細までは分からずに手をこまねく“血と肉の結社”。だが、“ロボットが人を殺した”という事実だけでも、十分に大問題だった。なぜなら、本来ロボットには“殺意”という情報はプログラムされていないからである。それは逆に、彼らが人間に対する反逆を企てていることの証ではないか?そう考えたクレイグスら組織の幹部は、政府や警察にロボット取締りの強化を提言すべく決起集会を開く。
 そんな折、クレイグスの妹エスメ(フランシス・マッキャン)が召使ロボットのパックス(デヴィッド・クロス)と結婚したという情報が入る。組織幹部のクレイグスにとっては、まさしくメンツを潰されたような格好だ。怒り心頭の彼は、妹の自宅へと押しかけて激しく抗議をする。
 だが、憎しみや嫌悪、暴力を原動力にして生きる父や兄を幼いころから見てきたエスメは、人間よりもロボットに対して深いシンパシーを感じていた。なぜなら、他者へ奉仕することを目的に作られたロボットには、そうした負の要素がないからだ。そればかりか、長年虐げられてきた彼らには、他者に対する慈しみの心がある。彼女は人間の男性から得られない心の平安を、ロボットのパックスに見出していた。また、人間的な愛情を理解するようになったパックスの方でも、エスメのことを深く愛するようになっていたのだ。
 とはいえ、ロボットを心底憎むクレイグスは、そんな妹の気持ちが全く理解できない。一方的に罵声を浴びせる兄に対し、エスメは“なぜそんなにロボットのことを嫌悪するのか?”と納得のいく理由を問いただす。しかし、クレイグスは“自分と同じ人間ではないからだ”としか答えることが出来ない。
 そこへ、エスメの親友である女性マキシン(エリカ・エリオット)が現れる。彼女は以前に街中で見かけて一目惚れした女性だった。妹との言い争いで分の悪さを感じたクレイグスは、何もなかったような顔をしてマキシンと親しくなる。
 その晩、お互いの愛情を強く確信するようになったクレイグスとマキシンだったが、突如現れたロボットたちによって、彼らの本部へと連れて行かれる。彼らの前に現れたのは殺されたはずのレイヴン博士。当惑するクレイグスに対して、レイヴン博士は衝撃的な真実を語り始める・・・。

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結社はヒューマノイドの開発をロボットの叛乱だと糾弾する

召使ロボットと結婚した女性エスメ(F・マッキャン)

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エスメは結社の幹部クレイグス(D・メゴーワン)の妹だった

妹の行為に怒りを抑えることのできないクレイグス

 このラストのどんでん返しというのが本作の重要な核心であり、差別する側とされる側の表裏一体を痛烈に皮肉った展開が面白い。ただ、バリー監督は躊躇することなくさっさとネタを明かしてまうため、スリルや緊張感に欠けてしまうのが残念だ。
 そもそも、本作はセットの数が極端に少ないせいか、本来なら幾つものシーンで段階的に描いていかねばならないような展開を、1つの場面でまとめて片付けてしまうという傾向が強い。それゆえに、全体のトーンとしては非常にきめ細かく練られた脚本なのだが、部分的に違和感を覚えるくらいご都合主義的な展開が見られる。その点も、超低予算映画ゆえの弊害と言えるのかもしれない。
 先述したように、監督のウェズリー・バリーは子役出身。1907年ロサンゼルスで生まれ、8歳の時にスカウトされて映画デビュー。当時はまだサイレントの時代だ。一時は年間4〜5本の主演作が作られるほどの売れっ子だったらしいが、10代半ばになると人気も急落。40年代半ばから助監督の仕事をするようになり、“Steel Fist”(52)で監督に昇進した。以降、7〜8本の映画を監督しているものの、いずれも興行的には失敗し、60年代半ば以降はもっぱらテレビの助監督を務めていたようだ。
 原作は有名なSF作家ジャック・ウィリアムソンが1949年に発表した長編小説『ヒューマノイド』。脚本を手掛けたのは、『人喰いネズミの島』(59)や『大蜥蜴の怪』(59)といったB級モンスター映画で知られるジェイ・シムス。
 さらに、撮影監督にはユニバーサルの『オペラの怪人』(43)でアカデミー賞を獲得した大ベテラン、ハル・モーア。ロボットの特殊メイクには『フランケンシュタイン』(31)や『魔人ドラキュラ』(31)などユニバーサル・ホラーで活躍した大御所ジャック・ピアースが参加している。

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クレイグスは妹の親友マキシン(E・エリオット)に惹かれる

ロボットの本部へ連れて行かれたクレイグスたちだったが・・・!?

 主人公クレイグス役を演じているドン・メゴーワンは、50年代からB級アクションやテレビ・ドラマで脇役を務めたタフガイ俳優。一時期は第二のスティーヴ・リーヴスを目指し、イタリアへ渡ってスペクタクル史劇に出演したものの成功せず。本作はイタリアから戻った直後くらいに撮影されている。
 ヒロインのマキシン役を演じているエリカ・エリオットは、本作が唯一の大役だった無名女優。一方、クレイグスの妹エスメを演じているフランシス・マッキャンは40年代にMGM専属の映画女優だったが、もっぱらラジオの仕事しか与えられず、MGM時代は一本も映画に出演できなかったという不運な人。まあ、確かに演技力という点では大いに問題ありなのだが。大仰な割りには一本調子の棒読みで、態度ばかりは大女優の風情・・・という面倒くさいタイプの女優だ。
 また、40〜50年代にラジオのナレーターとして活躍したダドリー・マンラヴがロボットの一人として登場。その他は全て無名の役者で固められている。

 

H.G.ウェルズのS.F.月世界探検
First Men In The Moon (1964)

日本では劇場未公開
VHS・DVD共に日本発売済

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(P)2002 Columbia Pictures (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★★☆
DVD仕様(北米盤)
カラー/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/4.0chサラウンド/音声:英語/字幕:英語・フランス語・スペイン語・ポルトガル語・中国語・韓国語・タイ語/地域コード:1/103分/製作:イギリス

映像特典
フォト・ギャラリー
ダイナメーション解説
ハリーハウゼン ドキュメンタリー
オリジナル劇場予告編
監督:ネイサン・ジュラン
製作:チャールズ・H・シュニア
原作:H・G・ウェルズ
脚本:ナイジェル・ニール
   ジャン・リード
撮影:ウィルキー・クーパー
特殊効果:レイ・ハリーハウゼン
音楽:ローリー・ジョンソン
出演:エドワード・ジャッド
   マーサ・ハイヤー
   ライオネル・ジェフリーズ
   マイルズ・メイルソン
   ノーマン・バード
   グラディス・ヘンソン

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人類初の月面着陸に成功した国連の宇宙ロケット

飛行士たちは古いイギリス国旗を発見して驚く

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ベッドフォードなる人物を探す国連の職員たち

年老いたベッドフォードは65年前の出来事を語り始める

 H・G・ウェルズの書いた古典的空想科学小説『月世界最初の人間』を、『地球へ2千万マイル』(57)や『シンドバッド七回目の航海』(58)などで組んだネイサン・ジュラン監督と特撮の巨匠レイ・ハリーハウゼンのコンビが映画化した作品。まだまだ宇宙が謎に満ちた遠い世界だった時代のノスタルジーをふんだんに盛り込んだ、カラフルでファンタジックな特撮映画だ。
 原作が発表されたのは1901年のこと。主人公は実業家のベッドフォードと科学者のケイヴァー。2人はケイヴァーの開発した宇宙船で月へと向うが、そこは昆虫のような月世界人の支配する世界だった・・・というのが大まかな粗筋である。
 本作では前後に現代(1964年当時)のエピソードを付け加え、月面着陸に成功した宇宙飛行士たちが古いイギリス国旗を発見するところから始まり、65年前に月に降り立っていた老人ベッドフォードのフラッシュバックによって月世界探検が語られていく。
 さらに、原作には登場しないベッドフォードのお転婆なフィアンセ、ケイトが月世界探検に同行。また、原作では比較的友好だった月世界人がより恐るべき存在として描かれており、とても賑やかな冒険活劇に仕上がっている。
 やはり、一番の見どころはハリーハウゼンによるストップモーション撮影“ダイナメーション”の魅力。月世界人の住む色彩鮮やかな地下世界や、芋虫型の巨大モンスターなど、ハリーハウゼンらしいファンタジックな映像を存分に楽しめる。ゾロゾロと出てくる戦闘用アリ人間たちの着ぐるみは若干安っぽい印象があるものの、その造詣デザインはなかなかシュールで面白い。
 ただ、後半へ進むに従って徐々にシリアス路線へと変わってしまい、前半ののどかで楽しい雰囲気が失われてしまうのはちょっと残念。また、ジョージ・パルの『宇宙戦争』(53)を模したようなクライマックスもあっけなく、いまひとつスッキリとしない感じで終ってしまうのも悔いが残る。
 なお、ウェルズの原作を最初に映画化したのは、映画の魔術師として有名なジョルジュ・メリエスの名作『月世界旅行』(02)。これは前半がジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』、後半がウェルズの『月世界最初の人間』を原作としており、昆虫に似た月世界人が登場する。

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田舎へと移ったベッドフォード(E・ジャッド)と許婚ケイト

近隣に住む科学者ケイヴァー(L・ジェフリーズ)と知り合う

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ケイヴァーは反重力物質を使って宇宙ロケットを作っていた

月旅行に猛反対するケイト(M・ハイヤー)

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ケイトを乗せたままロケットが発車してしまう

月へと向って飛んでいく宇宙ロケット

 1964年、人類は遂に月面着陸を成功させた。ところが、月へと降り立った国連の宇宙飛行士たちは、そこで古びたイギリス国旗を発見して驚く。既に月へと降り立った人類が存在したのか?その国旗に書かれたベッドフォードとケイヴァーという名前を頼りに、国連関係者は人探しに奔走する。
 そして、ようやく精神病院に入院しているベッドフォードという老人にたどり着いた。国連職員が月で発見されたイギリス国旗の写真を見せると、老人は“月に行ってはいけない!”と口走りながら動揺する。そして、65年前に経験した月世界探検の様子を語り始めるのだった。
 冴えない実業家のベッドフォード(エドワード・ジャッド)は借金取りから逃れるため、婚約者のケイト(マーサ・ハイヤー)と共に田舎へと引っ越してきた。そんなある日、ベッドフォードの留守中にケイヴァー(ライオネル・ジェフリーズ)という近隣に住む科学者が訪れ、家を買い取りたいとケイトに申し入れる。どうやら彼は何らかの実験を行っており、それが近隣の家に迷惑をかけると考えているようだった。恋人の借金を心配していたケイトは、その場で家を売り払ってしまう。
 もちろん、帰宅したベッドフォードはその話を聞いて激怒。ケイヴァー宅へ抗議に向うが、そこで彼はこの老科学者が“ケイヴァライト”なる反重力物質の開発に成功していたことを知る。これは商売になると考えたベッドフォードは、ケイヴァーの研究に投資することを約束した。
 やがて、ケイヴァーは反重力物質を利用して月旅行を計画していることを告白する。既に宇宙ロケットも完成していた。ベッドフォードはそれに同行することを決めるが、ケイトは猛反対。ところが、ひょんなアクシデントからケイヴァーとベッドフォード、そしてケイトの3人を乗せた状態で、ロケットは宇宙へと発射されてしまった。
 ロケットは無事に月面へと着陸。自分たちの名前を記したイギリス国旗を月面に立てたケイヴァーとベッドフォードは、早速月世界の探索を始めた。すると、彼らは地下に広がる文明世界を発見。そこにはアリのような姿をした月世界人が住んでいた。
 捕らわれそうになったケイヴァーとベッドフォードだったが、間一髪で脱出に成功。ケイトの待つロケットへ戻ろうとしたところ、既にロケットは月世界人たちによって奪われていた。ケイトの救出に向った彼らは、そこで芋虫のような巨大モンスターと遭遇。逃げようとしたケイヴァーとケイトは月世界人に捕えられ、ベッドフォードは一人はぐれてしまった。
 月世界人の高度な文明技術を目の当たりにしたケイヴァーは、彼らと友好関係を結ぶことを考える。しかし、ベッドフォードは月世界人の恐るべき正体を見抜いていた・・・。

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ケイヴァーとベッドフォードは地底世界を発見する

アリに似た月世界人と遭遇するベッドフォードたち

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宇宙ロケットを月世界人に奪われてしまった

月世界人に捕らわれてしまうケイト

 ウェルズの原作を脚色したのは、ハマー・プロやBBCの人気SF“クォーターマス”シリーズの生みの親として有名な脚本家ナイジェル・ニールと、『アルゴ探検隊の大冒険』(64)でもハリーハウゼンと組んだジャン・リード。撮影監督のウィルキー・クーパーも、『シンドバッド七回目の航海』や『アルゴ探検隊の大冒険』などのハリーハウゼン作品を数多く手掛けたカメラマンだ。
 また、ヴィクトリア朝時代を再現したプロダクション・デザインは、『ニジンスキー』(80)や『死海殺人事件』(88)など時代物を得意とするジョン・ブリザードが担当。さらに、キューブリックの『博士の異常な愛情』(64)や60年代の人気ドラマ『おしゃれ(秘)探偵』で有名な作曲家ローリー・ジョンソンが音楽スコアを手掛けている。
 ちなみに、幻想的でミステリアスな地下世界の美術デザインは、ハリーハウゼンが多大な影響を受けたというメリアン・C・クーパー製作の空想冒険活劇『洞窟の女王』(35)にインスパイアされたものと思われる。

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芋虫型の巨大モンスターに襲われるベッドフォード

ケイトの体をレントゲンで検査する月世界人

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月世界人はすぐに英語を理解した

月世界の高度な文明に感銘を受けるケイヴァーだったが・・・

 主人公ベッドフォードを演じているのは、上記の“The Day The Eatrth Caught Fire”にも主演していた俳優エドワード・ジャッド。ちょっと軽い感じのお茶目なヒーローというのは彼の個性にピッタリで、これはなかなかのはまり役と言えるだろう。
 そのフィアンセであるケイト役には、ヴィンセント・ミネリ監督の『走り来る人々』(58)でオスカー候補になった女優マーサ・ハイヤー。ユニヴァーサルの清純派スターとして売り出された人で、隣のお姉さん的な親しみやすさが身上だったが、それゆえに二番手止まりという印象の強い女優さん。本作でもキュートな魅力を存分に発揮しているものの、どうもいまひとつ顔の印象が残らない。その後、大物製作者ハル・B・ウォリスと結婚して映画界を引退した。
 一方、反重力物質を開発する科学者ケイヴァー役を演じているのは、名作『チキ・チキ・バン・バン』(68)のお爺ちゃん役としても御馴染みの名優ライオネル・ジェフリーズ。実は意外と若かったらしく、本作の当時でもまだ38歳だった。
 なお、メッセンジャー役として『尼僧物語』(59)や『みどりの瞳』(64)、『遥か群衆を離れて』(67)、『ネットワーク』(76)などのオスカー俳優ピーター・フィンチがカメオ出演。たまたま撮影現場を見学していたところ、メッセンジャー役の俳優が休んでしまったため、急遽代役を引き受けたのだという。

 

フランケンシュタインの逆襲
Frankenstein Meets The Space Monster (1965)

日本では1967年劇場公開
VHS・DVD共に日本未発売

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(P)2006 Dark Sky Films/MPI (USA)
画質★★★★☆ 音質★★★☆☆
DVD仕様(北米盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(スクィーズ収録)/モノラル/音声:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/77分/製作:アメリカ

映像特典
オリジナル劇場予告編
スチル・ギャラリー
監督:ロバート・ギャフニー
製作:アラン・V・イセリン
   ロバート・マッカーティ
脚本:R・H・W・ディラード
   ジョージ・ギャレット
   ジョン・ローデンベック
撮影:ソウル・ミッドウォール
特殊メイク:ジョン・アリース
音楽:ロス・ギャフニー
出演:マリリン・ハノルド
   ジェームズ・カレン
   ルー・カテル
   ナンシー・マーシャル
   ロバート・ライリー
   デヴィッド・カーマン

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地球へと接近する火星人たち

ロケットをミサイルと勘違いして撃墜するナディール博士(L・カテル)

 “人造人間=フランケンシュタイン”という解釈に基づいたタイトルであって、ひとまずメアリー・シェリーの小説とは一切無関係の作品。地球の女性をさらうためにプエルトリコへとやって来たエイリアン軍団と、事故による故障で凶暴化したサイボーグ宇宙飛行士が対決するという、なんともけったいなZ級SFホラーだ。
 核戦争の影響で女性が生殖能力を失ってしまった火星からやって来たマーカザン姫とナディール博士は、地球の女性を誘拐して火星へ連れて帰ろうと画策。一方、人類はサイボーグの宇宙飛行士サウンダースを使って宇宙ロケットを発射するが、それを自分たちへの攻撃と勘違いした火星人たちが撃墜してしまう。で、その影響で回路が故障してしまったサウンダースは凶暴化。彼の行方を追った科学者スティール博士らは火星人の陰謀を知り、サウンダースを修理して火星人と対決する・・・という実にアホらしい映画(笑)
 しかもこの作品、なんと製作費がたったの2万5千ドルというのだから驚きだ。40年以上も前の映画とはいえ、2万5千ドルというのはいくらなんでも安すぎるだろう。当時でも、低予算映画の相場はだいたい10万ドル前後。まさに激安映画である。ちなみに、脚本を書いた3人が受け取ったギャラは、それぞれたったの50ドル。こちらも学生のアルバイト並みの安さだ。
 なので、そもそもまともな映画を期待する方が間違っているというもの(笑)そう割り切ってみれば、これはこれで意外と面白い作品ではある。“アダムス・ファミリー”に出てきそうなナディール博士やシェイクスピア劇(?)から抜け出てきたようなマーカザン姫のキャラクターはキッチュだし、彼らが飼っているモンスターのやけっぱちなクリーチャー・デザインも子供の落書きみたいでキュート(?)冗談なのか本気なのか分からないストーリー展開も、まさにZ級映画の王道を行くバカバカしさだ。また、若かりし頃のジェームズ・カレンの姿を見ることが出来るというのも、映画マニア的にはちょっとだけ嬉しい。
 なお、本作はイタリアのトリエステで行われたSF映画祭に出品されて大不評を博し、その後の劇場公開やテレビ放送でも非難・悪評の嵐。あまりの評判の悪さから、いつの間にかカルト映画として伝説化してしまった。
 さらに付け加えると、本作は当時アメリカでナタリー・ウッド主演の『サンセット物語』(65)と2本立て上映されたこともあるらしい。というのも、『サンセット物語』が公開第一週で興行的な惨敗を喫してしまったことから、配給元のワーナーは2本立て興行に変更することを決定。で、運の悪いことに(?)すぐにブッキングできる映画というのが“Curse of the Voodoo”というホラー映画と本作の2本だけだったらしく、ワーナーの関係者は本作の方を選んだというわけだったようだ。

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サウンダース大尉を記者に紹介するスティール博士(J・カレン)

実は、サウンダース大尉は博士の開発したサイボーグだった

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プエルトリコへ着陸した火星人のUFO

モンスターと化したサウンダース大尉(R・ライリー)

 宇宙開発を急ピッチで進めている人類。その頃、火星からのUFOが地球へと接近していた。指揮官はマーカザン姫(マリリン・ハノルド)と腹心ナディール博士(ルー・カテル)。地球から発射された宇宙ロケットをレーダーで感知した彼らは、人類からの攻撃だと思って撃墜してしまう。
 火星人が地球へやって来た理由は、若い女性を誘拐して連れ去ること。なぜなら、火星では核戦争の影響から女性の生殖能力が失われてしまったのだ。子孫を残すためにも、生殖能力のある女性を地球から大量に連れて行かねばならない。
 一方、宇宙ロケット発射に再チャレンジすることを決めたアメリカ政府は、サウンダース大尉(ロバート・ライリー)を新たな宇宙飛行士として任命することを発表。だが実は、サウンダース大尉はスティール教授(ジェームズ・カレン)が秘密裏に開発したサイボーグだった。
 再び地球からロケットが打ち上げられたことを知ったナディール博士は、今回も撃墜することに成功する。ところが、撃墜した物体から救命艇を使ってパイロットが脱出したことをレーダーがキャッチ。撃墜した物体が宇宙ロケットだったことを知ったマーカザン姫は激怒し、火星人の接近を悟られないためにもパイロットを見つけ出して殺すことを命じる。
 救命艇が落下したのはプエルトリコ。UFOも近くへ不時着し、救命艇を発見したエイリアンはレーザー銃でサウンダース大尉を射殺した。だが、彼らは大尉がサイボーグであることを知らない。
 頭部にレーザービームを受け、顔面の半分がグシャグシャに変形したサウンダース大尉。ほどなくして起き上がるが、強い衝撃によって回路がショートしてしまい、凶暴なモンスターと化してしまった。行きずりの人間を次々と殺していく大尉。一方、その目撃情報を受けた軍部とスティール教授は、怪物の正体がサウンダース大尉だと悟り、彼を保護・回収することとなる。
 その頃、秘かに地球の女性を誘拐したじめた火星人たち。大量にまとめて生け捕る方法はないかと考え、プールサイドで行われているゴー・ゴー・パーティを襲撃することにする。
 一方、助手のカレン(ナンシー・マーシャル)を連れてプエルトリコへと向ったスティール教授。2人は救命艇の墜落現場近くでサウンダース大尉を発見し、修理しようとする。しかし、修理道具の足りないことが分かり、カレンは一旦町へ戻ることにした。だが運悪く、その途中で彼女はエイリアンたちに遭遇してしまい、UFOへと連れ去られてしまう。彼女の行方を捜したスティール教授は、火星人たちによる誘拐計画を知るのだった・・・。

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凶暴化したサウンダースは次々と人を殺していく

地球の女性をさらうよう命じるマーカザン姫(M・ハノルド)

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セクシーなビキニ美女ばかりをさらう火星人たち

ようやくサウンダース大尉を発見したスティール博士たち

 脚本を書いたのはヴァージニア大学教授で詩人としても有名なジョージ・ギャレット、詩人・映画研究者として多数の著書を持つホリンズ大学教授R・H・W・ディラード、そしてエジプト文学の研究者であり翻訳家・詩人としても知られるジョン・ローデンベックの3人。
 いずれ劣らぬアカデミックなキャリアの持ち主である彼らが、なぜにこんなZ級映画の脚本を?という疑問が湧いてくるわけだが、本人たちも半ば遊び感覚で書いた脚本だったようだ。
 もともと映画の世界に興味のあったギャレットは、学生時代の友人だったB級映画プロデューサー、リチャード・ヒリヤードの仕事を時おり手伝っていた。で、そのヒリヤードが“映画作りの勉強も兼ねてやってみないか?”と紹介してくれた仕事が、この『フランケンシュタインの復讐』だったというわけだ。
 依頼人は一度も会ったことのないニューヨークの映画プロデューサー・コンビ。当時ヴァージニアの大学で教鞭を執っていたギャレットは、教え子であるディラードとローデンベックを誘い、予め決まっていた“Frankenstein Meets the Space Monster”というタイトルに沿って脚本を書くこととなる。
 当初SFホラーのパロディ的な内容を狙っていたギャレットたちだったが、プロデューサーはあくまでも“シリアスなホラー”を要求。結局、役名に知人の名前を使うなど内輪ジョーク的な内容だけを残し、プロデューサーの希望通りストレートなホラー作品に仕上げたのだった。ちなみに、エイリアンのモンスター、マルという名前は大学の同僚だった英文学教授から取ったらしい(笑)
 ところが、その後プロデューサー・コンビが仲間割れして製作会社は消滅。ギャレットたちはニュージャージーの映画会社が脚本の権利を買ったとまで聞かされたものの、その後は消息不明となり、近所の映画館で上映されることになって初めて映画が実際に作られたことを知ったという。もちろん、普通にチケットを買って見に行ったそうだ。
 監督を手掛けたロバート・ギャフニーは『2001年宇宙の旅』(68)の撮影にも参加していたらしいが、詳しいキャリアについては不明。監督を手掛けたのもこれ一作だけだ。音楽を手掛けたロス・ギャフニーとは血縁関係にあるかと思われるが、こちらも全くの詳細不明。
 撮影監督のソウル・ミッドウォールは『12人の怒れる男』(57)や『群衆の中の一つの顔』(57)、『ハスラー』(61)などのカメラ・オペレーターを務めた人物だったようだが、撮影監督を手掛けた作品はこれ一本だけだった様子。
 その他のスタッフも低予算映画を何本か手掛けたことのある無名の人物ばかりだが、衣装デザインだけは『ゴッドファーザー』(70)と『ラグタイム』(81)でオスカーにノミネートされたアンナ・ヒル・ジョンストンがクレジットされている。

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美女がわんさかと集まったゴー・ゴー・パティ

そこへ火星人たちが来襲する

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スティール博士の助手カレン(N・マーシャル)も捕まった

エイリアンの最終兵器であるモンスター

 一方の出演陣も無名の役者だらけ。ただ、スティール教授役を演じているジェームズ・カレンは、『バタリアン』(85)のオヤジさん役や『スペースインベーダー』(86)の将軍役などでホラー映画ファンには御馴染みの名優。特に『バタリアン』で自ら火葬場に入っていく最期は名シーンだった。その後も『ウォール街』(87)や『ニクソン』(95)、『ゴールデンボーイ』(98)、『マルホランド・ドライブ』(01)、『幸せのちから』(06)などのメジャー映画で重要な役を演じており、本作の出演者の中では一番の出世頭となった。
 その他、マーカザン姫役のマリリン・ハノルドは雑誌「プレイボーイ」のプレイメイト出身、ナディール博士役のルー・カテルは『フランケンシュタイン/桃色病院』(88)や『ミクロキッズ』(89)などで科学者役を演じている。

 

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